ツムギハゼ素描s

TTXの必要性

これまでに挙げてきたTTXの効果は、産卵時の卵の保護と親の防御に関する2点でした。これは、産卵形態の違いはありますが、ツムギハゼもフグも同じであることが考えられます。ただし、ツムギハゼは孵化まで卵が固定されているのに対して、フグは放精放卵で受精後は浮遊します。

ところで、魚類好きの人にはお馴染みの話しですが、魚の図鑑をめくってゆくとある法則があることに気がつきます。ヌタウナギに始まり、サメ・エイの軟骨魚類をへて、最後はマンボウと言うお決まりの順番です。これは、系統的に原始的なグループからスタートして進化的なグループに移行していることを示しています。つまり、現在発見されている魚類では、マンボウが最も進化しているという構図です。また、この順番を辿ってゆくと面白いことが分かりますが、それはその魚類の摂食対象です。同じ目(もく)でも科によってはプランクトン食の例外も含まれますが、割りと前半部分はフィッシュイーターが多いことに気がつきます。それから、徐々に対象は細分化されてゆき、雑食になり、所々でフィッシュイーター科が出現し、だんだん摂食対象が少なくなってきます。最後に出てくるマンボウなんて...クラゲですからね(笑)。その手前で出てくるフグやハギの仲間でもクラゲを食べる種類はいますが、マンボウほど主体的な種は少ないようです。

さて、ここで食性の話しがでてきたことは、今回のタイトルと関係があるからなのです。もちろん、このことに関しても実証をしておりませんので、あくまでも仮定の話しです。もしかすると、私の勉強不足で、既に証明や実証をされた研究者がいるのかも知れません。残念ながら、私は今のところ、この件に関する実証の方法のアイデアがありません。なので、これから述べることを証明できる材料や方法を準備できる研究者がいれば、面白い結果や結論を導き出すことが可能でしょう。もちろん、その方がこのテーマに対して興味や意欲を感じる何かがあれば、という事になりますが。

冒頭に記述したハゼ科とフグ科の進化の間には、再びフィッシュイーターのカマス科、サバ科、ヒラメ科を挟んでマンジュウダイ科、モンガラカワハギ科がいます。実は、この括りの魚にもパフキシンやシガトキシンなどのマリントキシンを持つ種は含まれております。まぁ、このTTXとの関連性が無いわけではありませんが、少ないのでその論は飛ばします。

摂食対象の変化は、餌生物との量的関係性に基づいていることが考えられます。生物が繁栄してゆくためには、食が不可欠な要素であることは明白であり、対象が雑食になるほど、多様な環境に対応できる種になるであろうことが推察されます。しかし、雑食とは言え、その摂食対象が増えてしまうと、雑食の多様性の拡大が必要になり、これまでの在来種が食べなかった領域へと摂食対象を拡大してゆくことが考えられます。そこに、このTTXが深く関わっているのではないかと推察しています。つまり、食べることが不可能だった、あるいは食べても意味の無かった対象を雑食の1つに取り込める要因となったのではないかと考えています。

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