審判の「見えない権力」について
久しぶりの質問箱コーナーです。最近はTwitterで要約した内容をそのまま回答してるんですけど、今回は真面目に答えてみます。
質問
審判が「ルールに抵触しない範囲」で片方の肩を持つ行為を「不公平」or「審判を味方につける事ができた選手の実力の範疇」どちらだと思いますか?
もちろん技ありを一本にする様なあからさまな行為ではなく、「肩を持つ選手が息を切らしていて且つ道着が乱れてたら直させて一呼吸置かせる」「赤白どちらに配置させるか決定権を持ってるとして、逆光が当たらない方に肩を持つ選手を配置する」程度のものとして
ざっくりと印象
これは凄く答えにくい質問というか、所謂ホーム判定と呼ばれるような審判・ジャッジの行動や言動があるように、どの競技でも極稀に見かける事象ではあります。それがポイントや勝敗に直結するもの(サッカーでいう中東の笛、アマチュアボクシングでいうロイ・ジョーンズJrの銀メダル…など)もあれば、勝敗に直結しないものの一方の選手に程度の差があれど有利に働いてしまうような判定まで。
この質問は後者について沼田が柔道の審判であるという仮定で答えたいと思います。
ケース1
「肩を持つ選手が息を切らしていて且つ道着が乱れてたら直させて一呼吸置かせる」
これはまず2つの事象を切り離さないといけません。
まず「息を切らしていて」というのは審判としては止める理由にはなりません。それが攻め疲れだろうが相手の戦略だろうが、「息が乱れている」だけでは「待て」を掛ける事はないです。
そして「道着が乱れて」については「待て」を掛ける理由にはなります。ただし、体力の回復を狙ってゆっくりと着衣の動作を行うことは遅延行為に当たるため「指導」の対象になります。
では、「肩を持つ選手が息を切らしていて且つ道着が乱れてたら直させて一呼吸置かせる」はどうなるかというと、「一呼吸置かせる」という思惑が入った時点で自分は不公平になると思います。
これは選手の実力でも何でもなく、審判としての責任能力の欠如です。
ケース2
「赤白どちらに配置させるか決定権を持ってるとして、逆光が当たらない方に肩を持つ選手を配置する」
これについては白状しますが、選手の実力のというよりも環境面でのアドバンテージがあったりするかもしれません。(詳しくは後述)
現状、日本では柔道の大会といえばトーナメントが基本。その他紅白戦や勝ち抜き戦といった方式で大会運営が行われます。
トーナメントであれば山組の最初の選手と最後の選手以外は勝ち上がりによって紅白の立ち位置が変わるため意図して「日差し」の位置によって決めることは非常に難しい気もします。そもそも試合中は選手は動き回りますし、カーテンでもなんでもいいので対策をする責任が運営にはありますし。
ただし、イレギュラーである「ワンマッチ形式」であれば話は別です。
日差しについては上記の通り試合中はそこまで気にならないと思うのでスルーしますが、いくつか主催者側が意図的にコントロールできる部分があります。
例えば道着の色を指定する場合はIJFルールでは白が山組の上の選手、青が山組が下の選手になります。ボクシングで言う赤コーナー(チャンピオンサイド)・青コーナー(チャレンジャーサイド)のようなものです。この場合、チャンピオンサイドは白道着を着用しますが、心理学的には白色というのは膨張色のため青道着と比べると大きく見えます。同じ体型の選手が青と白の道着を着用した場合は、青道着の選手のほうが微々たるものですが心理的に負担が重いと考えてもいいかもしれません。(阿部選手と丸山選手の一戦は阿部選手が青道着だったのが意外でした。もっとも、心理的な面というよりは「講道館で」青道着を着ることに対して。その数週間前の講道館杯の一件の余波もあったのかもしれませんが。)
また、入場曲があって片方の選手がそれぞれ入場してくる場合は「後入場のほうが自分の曲を聞いた直後だから気分が乗った状態で試合できる」「先入場の方が相手が入場してる間に軽くアップできる」など、選手によっては好みもあるかもしれませんが同格の選手と対戦する場合はある程度コントロールできる部分であるかもしれません。(ちなみに沼田は後入場の方がリラックスできるので好きです)
「環境面でのアドバンテージ」というのはワンマッチの場合は細かい点で主催者側がコントロールできる仕組みがあって、その恩恵を受けるのが主催者に近い側が多いことを言います。
沼田が2019年まで主催していたオトナチャレンジという大会はすべてワンマッチでしたが、赤コーナー側の選手は実績>段位>年齢(学年)>経験年数の順で定めていました。そして、それらすべてが同格の場合は、一方が開催地である古河市に近い方や、自分の道場にゆかりのある選手を赤コーナーに配置していました。
これは町道場の主催大会で、さらに非公式のワンマッチだから出来ることで、県柔連の公認大会やトーナメントであれば憚られることではあると思います。もっとも、オトナチャレンジは道着の色指定も入場曲も日差しも無いので全くといっていいほど影響力はありませんが。
環境面でのアドバンテージというのは主催者により近い位置に選手がいることですが、これが実力なのかは正直わからないです。言ってしまえば運に近いので。運も実力の内であれば実力なのかもしれませんが、不公平かといえばそういう訳でもないのかなぁと。
某格闘技団体のハナシ
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