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彼氏が北極に行きたいと言い出した(創作コント)

タカシとユイは高校生時代から付き合いはじめ、今年で同棲2年目になる。二人とも地元企業に就職し、貯金もでき、結婚も考え始めた。ユイがいつものように帰宅すると、異変に気付く。

ユイ  「タカシ…どうして家具が全部なくなってるの!?」

タカシ 「ユイ、すまない。全部売ってしまったよ。」

(タカシは半袖・半ズボン。顔にはサングラス。手にはキャリーケースを持っている。)

ユイ  「いくらになった!?」

タカシ 「最初にその質問が来る?」

ユイ  「タカシまさか…夜逃げでもする気なの!?」

タカシ 「俺はこれから北極に住むんだ。ユイには申し訳ないけど、もう決めたんだ。」

ユイ  「北極!?半袖半ズボンで?」

タカシ 「南の国は暖かいんだろ?」

ユイ  「北極の意味知ってる?」

タカシ 「ハワイよりも南にあって、ペンギンが住んでるんだろ。」

ユイ  「惜しいけどそれは南極だよ」

タカシ 「雪の反射で目が焼けるって聞いたから、サングラスも買ったんだ。」

ユイ  「正確な情報がピンポイントすぎるな」

タカシ 「今日のうちに出発するんだ。ユイには申し訳ないと思ってる。」

ユイ  「なんで北極に行きたいの?」

タカシ 「そうだな、少し話が長くなる。そう、あの時、俺はいつものように職場に向かっていた…」

ユイ  「何か始まったな。」

タカシ 「あれはまだ空が青い夏の頃…懐かしいと笑えたあの日の恋…」

ユイ  「…あいみょん?」

~回想シーン~

(タカシが運転する車でタカシと女は職場に向かっている。)

タカシ 「今日は天気がいいな。」

女   「そうね。」

~回想シーン終了~

タカシ 「ねえ」

ユイ  「なに?」

タカシ 「隣の女は誰?ってツッコまないの?」

ユイ  「私は質の悪いボケにはツッコまないのよ。修業が足りない。」

タカシ 「ぐ…こいつ…できる!」

~回想シーン~

女   「ねえ…なんで太陽が東から昇るか知ってる?」

タカシ 「何でって…地球が自転してるからだろ。」

女   「そうよ。でもなんで地球が自転しているか知ってる?」

タカシ 「それは…実はよくわからないな。」

女   「それはね、北極でローカパーラ神が地球をぐるぐる回しているからよ。」

タカシ 「何を馬鹿なことを言ってるの。」

女   「馬鹿なことかどうかは、このブレスレットを買って、北極に行ってみればわかるわ。ローカパーラ神に会えば、運気が上昇して、あなたもこんな生活ができるわよ。」

(女が写真を取り出す。写真には、札束風呂で美女二人とグラスを傾ける小汚い中年が写っている。「こんな生活ができるなんて信じられない!」「ローカパーラ神に感謝です!」といった煽り文が踊っている。)

タカシ 「俺もこんな生活がしたい!!」

女   「ブレスレットと北極旅行券、今ならセットで2000万円よ。」

~回想シーン終了~

ユイ  「2000万円払ったの?」

タカシ 「二人セット割引で5000万円って言われたから、ユイの分も買っておいたよ。」

ユイ  「算数もできないのかな?」

タカシ 「義務教育は終えたぞ。」(胸を張る)

ユイ  「どちらにせよ、5000万円なんて持ってないでしょう。まさか、借金したんじゃないでしょうね!?」

タカシ 「借金なんてしないよ! 3千円で10回払いのローンにしてくれって頼んだらOKしてくれたよ。」

ユイ  「相手も義務教育の敗北か。」 

タカシ 「どっちにしろ、もう北極に行くって決めたんだ。一時間後にフライトだから。さようならユイ。」

ユイ  「待って!タカシは騙されてるのよ!あと二人セットじゃなかったの!?」

(突然ドアが開き、回想で登場した女が入ってくる。)

ユイ  「誰よこの女!」

タカシ 「誰だこの女!?」

ユイ  「何で知らないの!?」

女   「ローカパーラ神の仰せのままに…」

(女がブレスレットを振ると、二人は気を失い、倒れる。)


タカシ 「いてて…何が起こった?寒い!」

(周囲は氷に閉ざされ、地平線上に弱々しい太陽が見える。)

タカシ 「ここは、ハワイ!?」

ユイ  「北極点よ」

タカシ 「ユイ!その格好は…」

(ユイは少しだけ宙に浮き、北極点から出たハンドルを握っている。)

ユイ  「そう。私がローカパーラ神よ、黙っててごめんね。」

タカシ 「そうだったのか…」

ユイ  「連れて来てくれてありがとう。タカシ。今までのお礼に、あなたを札束風呂に入れるようにしてあげるわ。美女を侍らせてもいいし、小汚い中年にもしてあげる。」

タカシ 「ユイ…。小汚い中年はいらない!!」

ユイ  「日本に転送するわね。」

タカシ 「待って!小汚い中年はいらない!!」

タカシは日本に転送された。幸運に恵まれ続け、誰もがうらやむ裕福な暮らしを送った。だが、その姿は生涯を通じて小汚い中年のようだったという…

~終~





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