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2年?6年?10年?国際スポーツ大会の理想的な準備期間とは。

 突然ですが皆さんはオリンピック・パラリンピックやサッカーのワールドカップ、ラグビーワールドカップの準備期間がどの位あるか想像がつくでしょうか?

A: 〜2年
B: 3〜4年
C: 5〜6年
D: 7〜8年
E: 9年〜

 大会にもよるのですが、日本で行われた大会で言うと以下の通りとなります。

2002年 FIFA(サッカー)・ワールドカップ C:6年
2019年 ラグビーワールドカップ E:10年
2020年 オリンピック・パラリンピック D: 7年※延期により+1年

 先日、ラグビーワールドカップの主催者である国際統括団体ワールドラグビー(アイルランド・ダブリン)が2031年までの男女のラグビーワールドカップのPreferable(好ましい)開催都市候補を発表しました。2025年イングランド(女子)、2027年オーストラリア(男子)、2031年アメリカ(男子)と優先交渉権のような形で進めることで持続可能なパートナーシップを組むことを目的としています。

※ラグビーワールドカップは男子と女子があるが、去年これまで女子大会でWOMEN’Sと付いていたのを廃止し、大会開催地や開催年は別だが呼称としては男女両方同じ「ラグビーワールドカップ」に統一した。

 これに代表されるように、年々スポーツ国際大会は大きくなり、これまでのように競争入札的なBID(招致)ではなく、交渉により決まる事が多くなりました。パリとロサンジェルスで開催される2024年、2028年のオリンピック・パラリンピックも元々は同じ2024年を争っていたのですが、両都市で協議すれば開催は確約、できなければどちらかが2024年大会は落ちるというIOC理事会での決定の下、円満に解決しました。2031年のオーストラリア・ブリスベンでの開催も今年決定しましたし、ラグビーワールドカップ2019日本大会も2015イングランド大会と抱き合わせ発表だったので大会10年前に決定をしました。国際大会の巨大化により開催できる国や都市が限られているため、早く国際大会の決定時期が決まる傾向が近年目立ちます。

 ただ招致に成功すると契約で専門の準備組織=組織委員会を作らなくてはならないのでそこからお金が発生してきます。長ければその分予算も膨らみますが、その分前回大会や前々回大会を視察する機会にも恵まれますので一長一短あります。

 上記には招致の期間は含まれていませんので、招致成功までさらに2年〜が掛かっています。オリンピック・パラリンピックも、ラグビーワールドカップもそうですが一度招致に失敗しているため、さらに長い道のりを歩いています。

※但し招致委員会と組織委員会は法人としても中身も完全な別組織となります。なので招致委員会の提案をベースにしつつも組織委員会と主催者の最終決定では 会場が変わったりなどは当たり前のようにあります。ラグビーワールドカップでも当初は一部会場をアジアの他の地域で実施することが提案書に盛り込まれていました。


 さて、では国際大会のミニマムな準備期間というのはどの位でしょうか?これは東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の終わりの記者会見でも記者の方から上がった質問でもあります。

この会場でこの競技を滞りなく運営しろ!と言われてミニマムに掛かる期間は1年位です。それが国際大会だと独自ルールもあるのでさらに+1年。
でもその前に会場を借りたり、そもそも会場候補の検討をしたり、組織の計画を立てたりとこれに2年掛かります。足しあげると4年です。

 但し僕は個人的に「6年」がミニマムだと思っています。それは国際スポーツ大会はその巨大な体躯故に誰も全容を把握できない、明文化されていないことが多いからです。逆にその明文化されてない部分がホスト国のブランドを出せる調整弁になったりもするのですが、書かれていないことは見て知るしかない。そのために前回大会の視察はマストものです。でもただ見てもそれは仮説のない調査と同じで、ただ調査しただけになってしまいます。なので仮説を持つために、仮説を持てるだけの準備をしておく必要があります。それは先に書いた会場候補の検討や組織委の経営を考えていく2年の間に育まれるものです。なので前回大会の2年前から準備して、前回大会で仮説をぶつけ、それを次の2年で解消し、最後の2年で開催準備に集中する。その期間が6年となります。

 一般的なビジネスで経営計画を練る時、長期計・中期計画・短期計画を立てます。その期間は長期(〜10年)、中期(3〜5年)、短期(1年)位が平均値だと思いますが、国際スポーツ大会運営というのは職員7000人(※東京2020オリンピック・パラリンピックの場合)を抱えて一つの企業として営みがあります。なので長期計画にも入る6年以上を掛けて準備するのが事業規模、人員規模を考えても理想的だと思います。

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