10. 声 ききとりから        主婦 四十五歳

 二年生まで土人学校にはいり、三年生の春、野深小学校に移されました。

 二年生までは、成績もよかったのですが、野深に移ったとたん、もうバカにされて、それはひどいものでした。

 わたしが、何かにさわると、ふうふうと吹いて「きたない、アイヌきたない」といい、つばをかけるのです。

 それまでは、どんな人でも友だちと思い、自由に遊び、話をしていたのに、話すこともできなくなって‥‥。もう、借りてきた猫みたいになってしまったんです。涙がながれるばかりで、学校へ行きたくなくなり、とうとうやめてしまいました。

 今になって、ようやく人の前で、自分の考えていることをいえるようになったのですが、今までは、不安で話もできなかったんです。


*** 1 今日まで生きてきて

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