伊勢旅行忘備録 旅館編

このプロジェクトはあかんなぁ。でもまぁ、失敗してもやるしかないなぁ。

「三世代8人(大人5子供3)を一部屋。3連泊。」

嫁から提示された宿選びの条件はこうであった。
そうして決めたのが、鳥羽 胡蝶蘭 さんである。
まぁ別にお宿は悪くない。それなりにやってくれたと思う。

だがこの選択は大失敗であった。

90過ぎた年寄りと1歳児までの8人パーティである。もうこうなると、実際問題泊まれる宿が限られる。仮に泊まれる部屋があったとしても、それは高級な部屋として扱われてることが多く、一人当たりの値段が跳ね上がる。一部屋あたりではなく一人当たりで料金が決まる日本の宿泊システムの問題が立ちはだかる。
極端なことを言えば大部屋を一部屋とるよりも3部屋くらいとる方が安上がりなのである。おかしいじゃん。

そもそも世の中のありとあらゆるシステムが2人のカップルか4人の家族に向けて設計されてるのである。子供4人を抱える知人が家族旅行で部屋がないと言ってたが、まさにそれ。根本的に誰も少子化を解決する気はないのである。

で、どうにか続き間の部屋を確保。そのうえ部屋食となれば、子連れ老人連れとしては楽だろうと。

続いて「楽だから」ということで嫁が決して譲らなかったのが連泊である。たぶん、海外旅行の感覚なのだろう。宿を確保し荷物を置き、周辺を観光しレストランで飯を食って帰ってくる。うん、悪くない。

で、この旅行における「連泊」だが旅行をチェックポイント周りだと理解している典型的日本人としての僕としては学会やテーマパークなどの滞在型であれば当然いいと思うが、観光旅行には向いてないというのが僕の立場であるし、さらに言えば

「外れ旅館だったら逃げ場ないじゃん。」

というネガティブ志向からくる。実際三日間ほとんど寝れなかったし。

「連泊してやるんだから、丁寧に扱ってもらえるに違いない」

という嫁のポジティブ思考との最大のミスマッチがここに誕生する。
かくして悲劇の進撃は実行されたのである。

ツアーのように工程を組み、それに合わせて宿を移動する。毎日新しい宿を楽しめるじゃん。ってのが僕の希望は抹殺された。安い宿、高い宿を組み合わせ緩急を楽しみ、行きたい観光地を確実に回っていく。間違いなく僕の方が日本人的正しさがある。

もちろん、連泊もメリットもある。豪雨の中で今日しかないからと屋外観光地を強行軍する必要もないし、体調を崩せば宿で寝てられる。実際連泊者用にサービスしてくれるところもあるし、中には一日で楽しみ切れない巨大旅館ホテルもあるだろう。

じゃあ、鳥羽 胡蝶蘭 さんはといえば・・・小さくもない大きくもない、滅茶苦茶高くもないが決して安くもない、そんな中途半端な旅館であった。
部屋数30室ちょっと。設備はくっそ古い。旧館の客室は露天風呂等をつけをリニューアルしてるが僕より年上であろう旧館エレベーターは沈黙し豪華部屋客に階段を利用させる始末。
料理は古き良き部屋食だが基本的には宴会料理をそのまま運んでる形の固形燃料祭りである。少量多品目で元がなんだかわかんないごちゃごちゃした料理はお義母さんに大変不評であった。
松坂牛に伊勢海老。美食で知られる三重県くんだりまで行き、漁港が近いから新鮮な魚介類が食べれると本気で思っていた嫁さんの前には、東北の山奥の旅館のような料理が並んだ。そしてやたら量の多い釜飯。
そう、ここは昭和から平成で時間の止まった、酒を飲むための料理がならぶ古き良き旅館なのだ。

温泉は運び湯であろうが、わりと良かった。ただし貴重品入れはボロボロであり、ようやく鍵の回るところを見つけたらバンドが切れてたりした。ここはさっさと直すべき。片方の浴室にはとってつけた露天風呂があり、男女入れ替えとなっていた。一応、トレンドは追っているんだろう。さんざん文句ばっか言ってるけど宿泊客は2月+コロナという悪条件でもそれなりにみえた。

客室はというと・・・レバーを下げて水を出すシンクは阪神大震災前のもので間違いない。冷蔵庫は中の品物を引き出すと金がかかる例のアレ。テレビの横に金を入れる箱がないだけ良しと思うべきか。空調も冷蔵庫もひたすらノイズを奏でていた。トイレに入ってカギを閉めたら閉じ込められかけた。中からカギをあけるコツを覚えるのに二日かかった。連泊したかいがあったというもんだ。景色は良かったが、二重ロックが機能しない窓は子供の転落等がマジ怖いので事故るまえに改善すべきだとマジで思う。

で、まぁ

せんべい布団の上で乾燥した空気に喉を傷めつけられながら苦しみぬいた三日間だけど、まぁもう二度と行かないとは思うけど、二日目の晩飯のしょぼさというかエース不在の内容も、それでもまぁ、僕も自営業であるから、経営の苦しさとかそういうのは見えるし、古い設備を補うべく今どきのサービス(湯上りのシャーベットとか)を行い、マンパワーでなんとかしている現状を見れば文句も言えないのである(さんざん言ったけど)

超高級旅館で超いい布団で寝て超美味しい飯を食って超満足しても、帰りがけの会計でぞんざいな宿の店員とトラブルになれば台無しになる。そこがサービス業の難しさである。設備が古くても料理がイマイチでも、働いてる人は一生懸命であったし(つうか規模のわりに人が多い)、連泊中もメンツが変わらないところを見るとそれなりにブラックなのだろう。まぁなんだかんだで「ありがとうございました」なのである。

東の栃木、西の三重。と勝手に今僕が決めたが、三重、特に伊勢志摩は廃墟マニアには廃墟ホテルの西のメッカとして有名である。名古屋・大阪からちょうどよい距離で伊勢神宮という無敵の観光スポットを持つ伊勢志摩は団体旅行向けに巨大ホテルがドンドン経ち、団体旅行の衰退とともに廃墟になっていったのだ。
鳥羽・胡蝶蘭さんも古い設備をなんとかリニューアルし、マンパワーで補い、時世と戦っているのだ。鳥羽駅まで歩くだけでも2,3の廃墟がある。
これからも頑張ってほしい。

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