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子どものための映画館ジャック

年末は映画を観ました。

ただ映画を観たのではありません。
ひとつの上映の席を買い占め、同じ属性の人をそこに入れて
「お互い様」の上映をしたのです。

この企画のきっかけ


本記事は
『「ちょっと育てづらい子を持つ親」の立場の人間が、最初一人だったところからちょっと大き目のイベントを成し遂げた話』だと思って読んでみて下さい。

それを前提にした上で最初にお伝えしますが私は「西野亮廣エンタメ研究所」のサロンメンバーでした。(2021年頭に退会しています)

このオンラインサロンに入っていたことが仲間同士をつなぎ、結果として企画の達成に繋がったので、これを最初に書いておきます。

企画のきっかけは、同じサロンに入っている友達が「全員プレゼント企画」のチケット応募に間に合わなかったことから始まりました。


西野さんは「団体応募者全員に映画鑑賞券をプレゼントする」という企画を一度やっていたのです。

友人は、この企画に応募するために「団体」を急ごしらえしようとしました。そこにはもちろん私も入っていました。

ですが、いざ応募しようとしたとき…申し込みは締め切られており、申し込みフォームは閉じられていたのでした。
友人は、それはもう落ち込んでおりまして。

そこで「無料でプペルの映画チケットが手に入る」なんて言ってしまったその人たちを巻き込んでなんかやれたらいいねぇという話をしていたのです。

私は「子連れだけの映画館を作るのはどう?」と、友人に言いました。

それが、企画について考え始めるひとつのきっかけでした。
このときは「わ~そりゃいいねえ、やれたらいいねぇ」と、その程度のものでした。


子連れで映画館に行く大変さ


その時期は「鬼滅の刃」公開直後。
鬼滅の勢いは最初からすさまじく、凄い話題になっておりました。

しかし映画の感想を見てみると


「近くにいた子連れがうるさくて集中できなかった」

「子どもが後ろから座席を蹴ってきてイライラした」

「躾が出来てない子どもは映画館に来るな」

「親としての常識を疑う」

などなど…子連れに対する辛辣な意見もそれなりに目に付いたのです。

鬼滅の刃は子どもたちの間でも大ブーム。
類に漏れず我が家の子ども達もしっかりハマって家では
「〇〇の呼吸、一の型!」
とか叫びながら技を出したりしている状況。
そりゃあ映画だって観に行きたがります。

でも。うちの子は盛り上がるとすぐに足をバタバタしてしまうし。
物語の途中で気になったことはおしゃべりしてしまう。
注意すればいったん止まりますが、映画に集中するとまたやってしまう。

今までは「プリキュア」とか「おかあさんといっしょ」のような、子連れが多いであろう映画しか連れて行っていませんでした。
そんな環境であっても、娘の動きは他の子と比べてよく目立ちました。

鬼滅の刃はさらに違います。
会場には大人の方が多いかもしれません。

ただでさえPG12指定されている映画ですし、騒いでしまう我が子を連れて行くのは無理だと思っていました。

でも、子どもは観に行きたい。
観に行きたいというなら、行かせてあげたい。
それもまた親心というものです。

会場にいるのが、子連れだけだったら?
多少バタバタしても、多少おしゃべりしても。
みんながそうなら「お互い様」。

大人が沢山いるとしても。
そういう空間で、のびのびした気持ちで映画を観られたら。
そんな話を友人としていたら、友人は
「それはやってみたいねぇ」と乗ってきたのでした。


1人で挑戦するのは怖い


この企画を他にも求めている人がいるのではないか。
そう思った私は、まずどうしたらいいかを考えました。

映画館のスクリーンを貸切る方法を調べると、レンタルシアターというものがあることを知ります。
シアターを貸切って使えるというものでした。
こんなものがあるんだ!これがいい!

しかし調べてみると
「コロナ禍で休止中」…。

それなら上映の中の一本を貸切ってしまえばいい。
全部の座席を買い占めればいい。

そうとうぶっ飛んだ思考です。

「子連れで気兼ねなく観られる映画上映を作りたい」
…という名目でクラウドファンディングを立ち上げられないだろうか。

私の方で座席を全部買い占めて、リターンを座席にして売る。

行きたくても行けない親なら、こんなクラファンも乗ってくれるかもしれない。

しかしクラファンは手数料が結構取られる。
赤字を出さずに実行するにはチケット代を通常上映を見に行くより高く設定しないといけません。重めの障害を持つ子の場合は障害者割引もあるというのに普段より高い設定のその座席を一体だれが買うというのか…。
座席を買う以外のリターンも考えようとしましたが、何も良いものが思いつきません。

しかも座席数の確定は上映の直前です。

何座席必要かもわからないのに、目標金額をいくらに設定してクラファンをしたらいいというのだろう。

でも、どうしてもこの企画に挑戦してみたかった私。
SNSなどで「誰か一緒に挑戦してくれる人はいませんか」と呼びかけます。

普段ちょっとした投稿に「いいね」やコメントしてくれる友人たちもその時はまるで反応がありませんでした。
気持ち程度の「いいね」が数件ついただけ。

私の普段の活動を応援してくれている方に、個別にメッセージを送ったりもしてみました。

しかし返事は

「コロナが落ち着いたらね」

「今、人を集めるイベントするなんて無理」

「子どもをたくさん集めたら会場が騒がしくて映画なんて楽しめない」

「それ、親のエゴじゃない?」

…そんな言葉ばかりでした。

これは、私のエゴなのか。
子どもを映画館に連れて行って、気兼ねなく映画を見せてあげたい。
それだけのことなのに。

何人か「いいじゃん」と言ってくれる友人はいましたが「あなたがやるなら協力するよ」程度のスタンス。
一緒にリスクを負ってまで挑戦すると言ってくれる人はいなかったのです。

まぁどう考えてもこの段階ではうまく行かない事がわかっておりましたのでそれもまた仕方ない事だったのかもしれません。


私を1人にしなかった仲間


私はこのあたりの想いを、オンラインサロンコミュニティでぶつぶつとぼやいておりました。
やっぱり出来ないのかなぁとか、でもやりたいなぁとか。

思いを言葉にし続けていたら、応援してくれる人がぽつぽつ現れました。

思いついたことはとりあえず発信して、出来る行動はして。
地元のビジネスサポートセンターに相談にも行きました。

そこで受けたアドバイスは、貸切る事を前提に上映を特別一本増やしてもらえないかということ。それであれば、シアターの収容人数も事前にわかるし、こちらの都合の良い時間を設定できる。

それを聞いて直接映画館に直談判にも行ってみました。
でも映画館の返事はまた色無いものでした。

「コロナ禍で人を集めてはいけない現状でやるなら目立たずやってくれ」

「この世の中で本当に満席にするほど人を集められる確証もないだろう」

「団体上映を許可していない現状、団体上映を認める事と同意になるので上映を一本増やすことは出来ない」

「映画館としての通常営業はしているので、通常通り正規に事前予約して全ての座席を買うのであれば何の問題もないし止める権利もない」


コロナ禍の現状、それもまた仕方ないことでした。
人をたくさん集めてくれるというのは、来場者が減っている現状ではきっとありがたいことだったのでしょうが…
もろ手を挙げて喜べる立場でもない。

映画館側の葛藤もまた、理解できるものでした。

普通にチケットを用意し、こちらで全ての座席をおさえるならばやっても良い。

やるとしたらこれは、イベントではなくて待ち合わせなのだ。
沢山の親子が同じ時間に約束をして同じ映画を観る…ただの待ち合わせ。


あなたの挑戦にチケット100枚を


クラファンも無理、映画館側も協力してくれない。
こんな企画をしたいと発信しても殆どの人が食いつかない。

こんなことに挑戦してもただ自分が痛い思いをするだけなのか。
やっぱり無茶だったのかな。


今やめるなら、誰も傷つけない。
ちょっぴり傷つくのは自分の自尊心。

「あの人、やるって言ってたけどやっぱり出来なかったんだ」

「どうせそうだろうと思ったよ」

…そう、誰かに陰で言われるぐらいで終わる。

そうやって諦めかけていたそのころ。

「協賛チケット100枚買うので、これをあなたの企画に寄付したい。
そうしたら企画は実行できますか?」


協賛チケットとは、映画を応援したいと思った企業が前売りチケットをまとめ買い出来る仕組みでした。
寄付してくれた方は、最初は協賛したかったけどチケットを配るアテがないのでチケットは買わないつもりだったとのこと。
が、私の行動を見て、映画と私を同時に応援できる最高のチャンスが来たと思ってくれたと。ありがたいことです。


行動して、もがいて、ダメで、それでもなんとか…と動いていた私を、実はずっと気にしてみていてくれた人がいたのです。

コロナ禍の現状、シアターは間引き上映でした。
200人収容のシアターでも、100人しか入れられない。

私の地元は田舎ですから、大半のシアターは100枚のチケットがあればほぼ押さえられる状態でした。
プペルはポケモンと公開日を合わせていました。

事前周知度の差からいけば、上映開始直後であれば間引きでも200人を超える一番大きなスクリーンはどう考えてもポケモンが取るでしょう。

100枚あれば、もし足りなかったとしてもその分ぐらいのお金を取る企画に出来る。
障害者割引の人も不満を感じない料金設定も可能です。

一気に企画が実現可能な方向に舵を切りました。


絶望が企画を止めようとしても


1人で勝手にやっていた企画がそこでついに現実味を帯びて動き出しました。
ただ、映画館は「出来るだけ目立たないで」と言っていた。

最初はラジオに出ようとか新聞に取材してもらおうとか言っていたのですがそうするとどうしても目立ってしまいます。


ならば、まずは活動の仲間を増やそう。
仲間を増やして、その人にまた仲間を呼んでもらう。
呼んだ仲間がまた仲間を呼ぶ。

参加者はみんなどこかで繋がっている。
そういう風に人集めをするなら広告を打たなくても良い。
人に説明するためのフライヤーや申し込みフォームをサロンの仲間が作ってくれました。
私は、文章でダラダラ書くより漫画の方がわかりやすいのではと漫画で企画の概要を描きました。

反応してくれそうな人にフライヤーデータを送って、仲間を増やしました。

そうやって、ついに企画が動き出したところで…

夫の母が体調を崩し緊急入院しました。

そこで告げられた言葉は
「いつ命を落としても、おかしくない」
私と夫は、あまりに突然の告知に動揺しました。

コロナ禍で病院面会は全面禁止。
その状況であるのに
「最後になるかもしれないから」と
ごく近い身内だけが面会を許されました。

”コロナ禍で面会が許される”

それは、相当に末期であることがわかることでした。
子どもの面会は禁止されていたので私は子どもと留守番。

つい先月元気な姿を見せていた義母が
もしかしたら明日には会えない存在になるかもしれない。
最後に会ったのはいつだったっけ?
子どもに取り繕った笑顔で「ババは大丈夫だよ」なんて言いながら、私は涙を抑えるのに必死でした。

そんな激しい動揺の中で、私の頭をよぎったのは映画の企画の事でした。

私がやりたいと騒いで、チケットまで寄付してもらって。
でも義母に何かあったら企画運営なんて出来っこない。

「やっぱりやれません」

なんて、仲間に言えるのか。
夫は長男でもあるので、何かあれば妻である私もそちらで忙しくなることは目に見えていました。

私はメンバーに前もって謝りました。

「義母が突然体調を崩して入院した。
現状、生きられる確率の方が低いらしい。
もし義母に何かあったら私は企画を抜けることになると思う。
ここまで「やる」と私が言って走ってきたのに…
あまりに無責任で申し訳ない」


しかし、そこに返ってきた仲間たちの言葉は本当に温かかったのです。

「大丈夫だよ、もしそうなったらうちらが最後まで走り切るから」
「あなたの精神的負担も今相当重いはず。無理はしないで」
「こっちのことは任せとけ!」

お義母さんの事と相まって、その温かい言葉に涙が出ました。

本当にありがたかった。


私はその日から毎日毎日神社で祈りました。
祈る事しか出来る事がなかった。
義母の回復と、企画の成功を。

神様にその思いが届いたのかはわかりません。
ですが「99%命を落とす」とまで言われた義母は奇跡的な回復を遂げ…
元気に退院することが出来たのです。

義母の回復もまた、メンバーは一緒になって喜んでくれました。

私は、本当に素敵な仲間に恵まれたものだと。

今思えばあの義母の入院は、私が仲間を信じるためのきっかけとして神様が与えた試練のようにも思えて仕方ありません。

それまでは「みんな協力するなんて言ってくれてるけど、やっぱり私が一人で頑張らないといけないんだ」と抱え込んでいた部分があったのです。


映画館での自己嫌悪


企画が進んでしばらくしてからの時期。

その当時娘は登校拒否をしていました。

どうせ学校を休んでいるんだから気分を上げてあげられたら…と

人がいないであろう平日午前中に鬼滅の刃を見に連れて行ってみました。
しかし大人気の鬼滅、平日午前中でもしっかり人は入っていました。

みんなが娘を見ている気がします。平日午前中に小学生が映画館にいるというのは気になる事ではあると思いますが。

(子どもがいない時間に映画を観たくて来たのに、何でいるんだよ)

…そう思われているのではないか…

私はつい、そう思ってしまいました。

上映が始まったら案の定…興奮した娘が騒ぎ出しました。
何度注意しても「キャー」とか声をあげてしまいます。

そして30分程度経った頃。
煉獄さんの心の核が壊されそうになったあたりで
娘は「怖い!怖い!」と叫びだしました。

(怖がってるんだからさっさと帰れ)

絶対周りの人はそう思っている。
本人も怖がっているし、周りにも迷惑をかけてしまう。

そう思った私は娘と途中退場しました。

娘は「最後まで観たかった」と泣きました。
でも仕方ないじゃん…
あんな序盤で怖がり叫ぶ子が、さらに話が激しく展開する最後まで大人しく映画を観られるわけがない。

そして集中して観たい人からしたら、子どもがきゃあきゃあ言ってる状況はイラつく以外の何物でもないだろうと。

しかし我が子が映画一本を最後まで観られなかったこと。
親の自分としては最後まで見せてあげたかったこと。
最後まで映画を観られない子を映画館に連れて行ったことは結構な自己嫌悪を招きました。

そして改めて思ったのです。

こういう思いをしている親や、同じ結果で映画を諦めている子どものために、今回の企画をやるのだと。


参加希望者が集まらない


いよいよ企画実行1か月前になりました。
説明書類や下準備も整い、本格的に友人などに声掛けを始めよう!とメンバーとやり取りをし、人集めをはじめます。

「コロナが怖いから人が多いところには行けない」

そういう方も結構いましたし、年末実行の企画に「予定がある」という方もいました。なので中々参加者が集まりません。

しかしそれ以上に辛かったのは、誘ったときの冷たい反応でした。

娘が特別支援級に通っていたこともあり、私は支援級のお友達も誘ってみたらどうだろうと考えました。
ちょうど娘の発表会がその時期にあり、クラスのお友達の親にも会えます。

発表会が終わり、私はお友達の親にフライヤーを渡して企画を説明しました。でも、その説明の後、冷めた目で言われました。

「うちのコ、映画館で普通に映画観られますけど」

特別支援級に入っている子→大人しく映画を観られない子であるとは限りません。でも私は、そういう前提のようなものを持って声掛けしてしまっていたと思います。
そしてそれは、きっと相手にとても失礼だったと思います。

フライヤーは受け取ってもらえましたが、絶対に来てくれないだろうことがわかる反応でした。
その後別な方にも企画について説明しようとしましたが、嫌な顔をしながら足早に私から逃げていくのがわかりました。
胸がきゅうっとなりました。

結局、その日学校で配ったフライヤーから申し込みに繋がったのは一組だけでした。

その行動が実らなかったことよりも、私としては
「うちの子は普通に映画館で映画観られますけど」
と返されたことがとにかくショックでした。

もっと困っている親子はたくさんいると思っていた。
でも、もしかして、私みたいに悩んでる親なんて実はほんの一握りなのかな…。

そう思いながらも、企画はもう実行直前。
とにかく来てくれる人を集めるんだ。
チケットを寄付してくれた方は

「人数が集まらなかった時は究極のソーシャルディスタンス映画館を楽しみましょう」

なんて素敵な事を言ってくれていましたが…

どうせなら、多くの人に見て欲しい。

だから私は、断られることも、嫌な顔をされることも覚悟しながら色んな方面に声掛けを続けました。

メンバーさんたちも参加者探しに奔走してくれて…

最終的には90名もの参加希望者を集めることが出来たのです。


座席を押さえろ!


映画館の劇場が確定したのは、イベント実行の1週間前でした。
確定したシアターは106名収容。
100枚のチケット寄付と、企画メンバーが色んな所で手に入れたチケットを6枚用意し座席を押さえるチケット番号はそろいました。

最前列はあまりにスクリーンに近すぎて、子どもの目には刺激が強すぎるのではないか?
空けておけば何かあったときの自由席にもしておける、ということからあえて最前列は空けることにしました。

90名でほとんどの座席が埋まりました。この時点でかなりの達成感でした。

さて、一番の難関はここからです。

映画館は本企画には一切関わらない話をされており
その条件は、我々としても十分理解しておりました。

しかしそれはつまり、座席予約を自分たちで手打ち入力するということなのです。ネット予約の開始は上映日の2日前。直前です。
2日前に106席全てを、手入力で予約するという事。

予約開始直後から我々の仲間で座席を全て押さえるミッションを立てました。早期予約が出来る有料会員に入り、3名で座席を分担。
そして予約開始時刻から予約サイトに張り付いて打ち込みをする計画でした。

しかし、何の運命のいたずらか。

予約サイトはサーバーが混雑しており、システムエラーが頻発。

一筋縄では座席を押さえられませんでした。

それでもチケット取り担当をした3名は死に物狂いで座席を押さえていきました。

そして、106席全て。
私達は、押さえることに成功したのです。

21時予約開始。
106全ての座席を押さえたときには日付が変わっていました。
そのときの3名の一体感たるや、素晴らしいものでした。

ちなみに後から映画館の方に聞きましたが劇場に「満席」表示が出たのは映画館設立以来初めてのことだったそうです。
ほとんどの席にちゃんとお客さんを入れての買い占めなので、迷惑行為ではなかったはず。他の時間はガラガラでしたし…。

子どもたちが落ち着いて映画を楽しむために


私達は上映封切りの25日、仲間同士で一度プペルを観に行きました。
映画そのものを楽しむ以外の仕事が私にはありました。
子どもがいかに映画を観る前に不安を感じないようにするか…ということ。

音楽を恐れる子どもはいないだろうか?
大きな音にびっくりする子どもはいないだろうか?
迫力ある映像を怖がる子どもはいないだろうか?
予告が長すぎて嫌になる子はいないだろうか?

また、最低限のマナーも子どもが理解できるように伝えておきたい。

あらゆることを想定しました。
あらゆることに対応できるようにしたいと思いました。

映画館が真っ暗になることが、私にとって一番の懸念事項でした。
暗闇が怖いから行けないと言う人は、やはり一定数居ました。
何とか明るい上映が出来ないかとサロン内で発信したり、映画館に打診したりしましたが結局それは叶いませんでした。

ただ、企画メンバーの中から出た「サイリウムがあると子どものテンションが上がって楽しく観られるのでは」というアイデアから、当日子どもたちに光るサイリウムの腕輪をプレゼントし映画館の暗闇を楽しい空間に変えることが出来ました。
暗闇を楽しむ、なんて素晴らしいアイデア!

また、西野さんがプロモーションであらゆる動画をあげていたものを集約し、事前にメンバーが手に入れていた台本からあらすじを書き起こし…

「不安を感じるお子様がいる方はこれを見せて予習させてあげて下さい」と伝えました。

会場写真も撮って、色んな注意事項を事前に送付しました。
マナー喚起のフライヤーも作成しました。

どこでも使える版



そして開催当日


当日、受付はてんやわんやでした。
来てくれた方々から素敵な企画をありがとうと声をかけてくれました。
私はそれだけでも、やってよかったと思えました。

そして上映開始。

真っ暗な劇場で青い光が沢山光りました。

それはさながら、星空のようで。
星を見つけに行く映画のストーリーとも最高に合う空間でした。

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上映が始まってびっくりしたことがありました。
会場の半分以上が子どもだったにもかかわらず、会場はとても静かだったのです。

多少のおしゃべりは聞こえましたが、ずっとしゃべり続ける子がいるわけでもありません。奇声を上げる子もいません。歩き回る子もいません。

参加した子どもの中には2歳3歳という、なかなか100分もじっとしていられないであろう年齢のお子さんもいました。

ですが、その時の空間は子どもだらけとは思えない静けさだったのです。
子どもたちは皆、映画を最後まで観ました。

そこにいた親子みんなが映画を本当に楽しめていました。

後からスタッフ同士で話したのですが、恐らく
『親が落ち着いていた事』も大きかったのだろうと。

『周りに迷惑をかけてしまうかもしれない』とピリついた親の空気は子どもを緊張させ、落ち着かなくさせるのかもしれないと。

多少は騒いでも大丈夫だしという、会場全体に充満する子どもを受け入れる大らかな空気が、子どもたちを映画に没入させたのかもしれません。

鬼滅の刃のとき声をだしていた私の娘も、多少声を出したりソワソワしたりしましたが…
私自身とても大らかな気持ちでそれを受け入れて、映画を一緒に楽しむことが出来ました。

それは本当に、とてもとてもやさしい上映でした。


自分の小さな勇気と行動が周りにも勇気を与える


当日お子さんが熱を出して欠席された方もいました。
その人がメッセージにこう書いてくれました。

私も色々やってみたい!って気持ちはあるけど、できるかな…とか周りの目とか意見に流されて失敗を恐れて何も出来ないタイプの人間だから、今回あなたが声をあげてそれに賛同する人がどんどん増えて、夢って大きな声で言わないと周りに伝わらないし、大きな声で言えばきっと実現するんだ!!
ってゆうのを見せてもらって勇気をたくさんもらったよ。

私の行動が、誰かに勇気を与えることが出来た。
それはとても嬉しい事でした。

企画終了後にあげたブログにも

素敵なみなさんのおかげで素敵な映画を映画館で観れた事は私にとっても子どもにとっても人生の宝物です!
息子とポップコーンとジュースを持って映画を観るのが夢でした。
とても幸せな時間でした。

…などのコメントを頂くことが出来ました。
何度も、やめようと思ったけれど、私は、この企画をやってよかった。


集まったお金の行先


この企画では、全ての座席のチケットを寄付で集めました。
ですが参加者全員『招待』ではなく、意味のある集金をしたいと思いました。
「このイベントだから行く」という人に来て欲しいという想いがあってのことです。

なので「お子様は招待」「大人は任意で千円から寄付を募ります」と募集をかけました。もちろん任意だから払わないで入場しても構いません。

大人の参加人数は38名でした。
1人千円寄付してもらえたら3万8千円集まるはず。
私は、集まる金額はそれより少ないであろうことを想定していました。
払わなくていいなら払わないわ、という人が何人かはいるだろうと思っていたからです。

でも終わってみて、数えてみたら。
集まったお金は46200円でした。

支払わないどころか、千円以上入れてくれた人がいる…!
世の中、捨てたもんじゃないと思いました。
なんて温かい世界。


1月5日追記


当企画で得た寄付金は青森イオンシネマで
同様のイベントを開催するこちらの方へ寄付しました。

青森の方で行ける方は、
是非参加して「優しい上映」を体感して欲しいです。


サポートいただけたらそれも創作に活かしていきますので、活動の応援としてぽちりとお気軽にサポート頂けたら嬉しいです。