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国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(政治家女子48党浜田聡参議院議員お手伝い)

 今国会で財務省より提出された「国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案」について、筆者が調べた限りから所感を述べていきたいと思います。

今改正法案は端的に言えば国際通貨基金(IMF 以後IMFと略称)と国際復興開発銀行(IBRD 以後IBRDと略称)への基金を国債で可能にするものであり、次に当該基金に充てる国債を外国通貨建てによるものを可能とするものです。あまり国民が知る機会がないかと思いますが、我が国の財政に関することなので、着目したいと思います。


①IMFとIBRD

 IMFとIBRDに関しては高校までの社会科目で聞いたことがあるかもしれません。以下が概要になります。
 
国際通貨基金(IMF):生産性や雇用創出、健全な経済に必要不可欠となる金融の安定と国際通貨協力を促す経済政策を支援することで、全ての加盟国190か国が持続的な成長と繁栄を実現するための取り組みを行うもの。主な役割は国際通貨協力の強化、貿易の拡大・経済成長の促進、繁栄を損なう政策の抑制となる。
国際開発復興銀行(IBRD):世界銀行グループの一つであり、世界銀行グループは途上国における貧困の削減・繁栄の共有の促進を使命とする世界最大の援助機関である。IBRDは中所得国及び信用力のある低所得国を対象とし、中所得国及び信用力のある低所得国を対象とする。
 
概要は上記になりますが、日本は現在、世銀グループの各機関において世界2位の出資国となっています。
今回、IMFはウクライナへの追加融資が可能な状態にするため、G7各国と連携し、複数年にわたる融資を可能にすることを示しました。日本もこれに呼応した形で融資資源の確保を目的とし、法改正により捻出するものと思われます。

②どのように資金を融資するのか

 法改正の概要にもあるように、今回の融資のための資金調達は外貨建て国債の発行になります。
日本は外貨建て国債の発行をしていませんが、今回の国債発行は拠出国債という特殊なものになります。拠出国債とは交付国債の一種で、我が国が国際機関へ加盟する際に出資又は拠出する現金に代えて、その全部又は一部を払い込むために発行される国債です。当該国際機関が寄進を必要とし、その現金化について要求があったときは、いつでも現金化することが約束されているものではあります。また、拠出国債は無利子・譲渡禁止・要求払いとなっており市場に出回るものではありません。財務省の発表する法改正理由にも記載があるように、「国際開発復興銀行設けられる基金に充てるため」とあるように流用の可能性等は低いものと思われます。今回の拠出国債はドル建てによるものと推察され、すでに報道であるように、令和5年度予算案に盛り込んでおり、その額は6,850億円を上限とするものと思われます。

③ウクライナの財政状況

 ロシアの財政状況に関しては各方面から報道されていますが、そもそもウクライナの財政状況はあまり耳にしません。ロシアの侵攻により、深刻な財政難になっていることは周知の通りです。令和4年4月、IMFはウクライナの経済成長率の予測を発表しましたがー45.1%という数字でした。現在は危機的状況ですが、戦前の財政状況をみると、ウクライナの財政は上向き傾向であったようです。

ウクライナの基礎的財政収支の推移「世界経済のネタ帳」より

融資として支援する側の日本の立場としては、終わりが見えないロシアのウクライナ侵攻の早期終結が望まれるのは言うまでもありません。何年にもわたって融資を続ける事は資金を湯水のごとく他人に渡していることになります。もしウクライナが戦争終結後、デフォルトを起こすような国家であれば、融資を慎重に行わざるを得ないと思います。ただ、本来のウクライナの財政状況をたどっていった際、支援すること自体は決して国益を損ねるようなことはないのではないでしょうか。早期解決に向けて日本も憲法の範囲内で本格的な支援を行うかどうか国益を考えたかじ取りを日本政府には期待するところです。

④日本の国際的役割

 令和5年1月23日に政府が発表したウクライナへの融資に関する報道が今回の法案の内容になります。

ウクライナとロシアの武力衝突が始まってから1年以上が経過しているが、未だに収束の兆しを見ることができないでいる現状です。今回のウクライナへの基金は、欧米が中心となってこれまで行われてきましたが、G7各国がウクライナへの追加融資を本格的に行うことが報道されています。日本はこれまでのウクライナ融資額ではG7中最も少ない融資額であることが昨年6月に報じられている。

今年5月に行われるG7サミットの議長国として存在感を示す意図が伺えるところであります。記事にあるように、世界銀行グループのウクライナへの融資は上限額に迫りつつなるなかで、信用リスクの転用のため新基金が創設されます。その新基金に日本は外貨建て国債による拠出をおこなうため、今回の法改正をおこなう運びになりました。欧米を中心としたウクライナ支援に日本が参加することは国際的地位を考えた際、積極的に参加すべきではあると思いますが、私は無条件に融資に賛同することには慎重であるべき立場です。ウクライナにはウクライナの事情、日本には日本の事情があるため、今回の拠出国債が日本の国益が最優先になるものであることを期待したいと思います。

⑤ゲオルギエワ専務理事について

 今法改正と直接的な関係性は薄いのですが、一点気になった点にふれておきます。ウクライナのシュミハリ首相と会談し、支援プログラムの必要性についてゲオルギエワIMF専務理事が令和5年2月20日に述べています。ゲオルギエワ氏に関しては過去に以下のような報道がありました。

記事によると中国高官との接触によって不正をはたらいたとされるものです。世界各国がウクライナとロシアの勢力争いに複雑に自国の立場をとっているなかで、国際組織の幹部が、ロシアに近しい国の高官と不正をはたらいた点は注視して損はないと思います。今回の法改正において、大きな国民負担の増大にはならないものの、無駄な資金の使い方をするのは当事国でないにも関わらず、経済的打撃を被る可能性もないはありません。実際、この1年でガソリン価格の高騰や、我々の生活にも影響が及んでいます。早期解決のための支援なのか、それともウクライナに支援し続けることでG7各国の経済的打撃を仕向けるものなのか、あくまで邪推ですが、何度も主張しますが、日本の国益になるような拠出を望むところであります。

⑥質問したいこと

・今回の法改正で、なぜ外貨建ての拠出国債にしたのか。その理由を具体的に伺いたい。
・日本が拠出する額がどの程度、ウクライナへの支援になるのか、融資に見合う効果をどの程度想定しているのか。
・6,850億円を上限とする試算の根拠は何か。
 
ご拝読ありがとうございました。

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