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性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案についての調査(政治家女子48党浜田聡参議院議員のお手伝い)

今回は法務省から提出された法案についてです。「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案」と長い法律案です。「デジタル性被害」という言葉をお聞きしたことがあるかもしれませんが、被害者の保護と加害者処罰のための法整備が今回の法律案になります。一般には撮影罪という名称で、撮影罪は盗撮や同意のない性的な画像撮影などを処罰するための規定と定義づけされます。

①ネット性犯罪の問題について

  昨今Colabo問題で貧困女性問題など話題を耳にすることが増えたと思います。ネット性犯罪については報道や情報発信についてはColaboがやはり積極的です。Colaboの問題は今回の主旨とはずれるため、あくまでネット性被害の状況のみに焦点をあてていきたいと思います。
まずは未成年や児童の性被害について触れておかなければならないかと思います。政府広報の記事によれば児童買春事件の検挙件数は年々減少傾向にあるのに対して児童ポルノ事件の検挙件数は増加傾向にあります。(警視庁資料より引用)
さらにSNSを利用した被害件数、児童自ら撮影した画像に伴う被害も増加傾向にあります。無限に繋がることのできるSNSを媒介して本人の知らないところで撮影物が拡散し、気づけば被害者となっている状況にあります。撮影物の取り扱いについて、慎重にならなければいけないのは当然ですが、このように撮影物を他者が利用するケースなど様々な手口が見受けられ、被害者女性が困難な状態に陥ってしまうのです。特に女性アスリートを対象とした撮影については非常に難しい問題ではあります。撮影側のモラルが問われますが、ネットに投稿された撮影物は投稿者の思いもよらないところで拡散され、女性アスリートが被害に遭うという事態もあります。そのあたりは後述させていただきます。

被害に遭った女性の心の傷は深く残ることを考えると許しがたい犯罪であることは論ずるまでもありません。事件の多くはグルーミングという行為から発生する傾向にあります。グルーミングとは性的目的で、未成年者を手なずける行為を指す言葉です。ネット(SNS)を通じておこなわれる事を「オンライングルーミング」という行為になります。
法務省の令和3年5月性犯罪に関する刑事法検討会の報告書にはグルーミング行為を含め性的被害に関する処罰や規定の在り方についてまとめられています。

内容を確認し、筆者個人が思うところは、やはり被害者意識の有無をどう捉えるかによるものが大きいと感じます。被害者にとって被害ではないという認識を周囲が訂正することは基本的には信条介入に当たるのではないかと思います。しかし、加害者側の立場を利用した操作誘導は許しがたい行為である事は是非に及ばないところであります。最近ではジャニーズ事務所の騒動などは記憶に新しいと思います。
加害者を擁護するつもりは一切ありませんが、SNSの拡散する恐ろしさや危険性を知ったうえで利用するというのは前提であると考えるため、被害にあう女性自身もリテラシーを持つべきかと思います。

②法律案の概要

 令和4年10月24日に出された「法制審議会刑事法部会第10回会議」で出された、性犯罪についての法制化の試案が今回提出された法案の土台になっております。

この資料のP10~16についての法律案が今回提出された内容になります。罪状を確認しますと以下になります。
 
1、撮影罪
2、提供罪・公然陳列罪
3、保管罪
4、映像送信罪
5、記録罪
 
罪状だけ見ると多岐に渡り、ネット性犯罪を網羅的に取り締まるための法整備であることが確認できます。今回提出された法案についてもまとめておくと以下の通りになります。
 
一、撮影行為について
性的映像の撮影・記録提供・記録保管・性的映像の送信・性的姿態等の映像記録・国外犯
 
上記は懲役または罰金刑に処される規定になります。
 
二、複写行為
映像の没収が可能・映像の所有者またはその他情報を知っているにもかかわらず保有している者から没収が可能となる
 
三、押収した映像の消去
消去及び廃棄の法的手続きについて、またその実施について・消去命令に違反した場合や虚偽の陳情をした際の罰則について
 
要点は上記の通りになります。

内容の中で少し分かりづらい点だけ補足させていただきます。
 
「正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為」というのは要約すると以下になります。
 
・現行では13歳未満を対象としていたものを、16歳未満まで年齢を引き上げ
・加害者が被害者よりも5年以上前に生まれたこと
 
グルーミング行為は、大人が社会経験や知識で優越していることを悪用した卑劣かつ悪質な行為であるため、厳罰に処されるような法整備になっています。

③法整備で撲滅できると期待しない

今回の法律案の概要は前述した通りですが、刑事罰による犯罪件数の減少には一定の効果が見込めるかどうか個人的には懐疑的ではあります。まず今回の法案について、次の記事のような問題が浮かび上がってきました。

今回の法案は女性アスリートの撮影物による心的被害が大きな課題として残りました。この点についてはこの記事で訴えかけている元バレーボール選手の大山加奈さんのお話が大きな問題提起になるでしょう。

ここで語られているように、一個人の趣向でおこなわれた行為ではなく、メディアも加担している点は非常に問題であると感じます。もちろん同意の上での掲載であれば問題ないのですが。しかし、撮影者の立場から、性的な趣向ではない撮影者も存在するのは事実であり、そのような純粋にアスリートの懸命な姿を撮影する方が不利益を被ることも考慮すると何とも難しい問題ではあります。
 
アスリートの問題以外にも撮影物に関して言えばグルーミンク行為による被害は法整備でどこまで被害を減少させられるか今後の検証が待たれるところであります。グルーミングは許される行為ではありませんし、被害者救済のための対策は議論が起こるのは必然ではあると思います。しかしアスリート選手のところでも触れたように、着衣状態の撮影物をどう扱いかについては非常に困難であると言わざる得ないものです。ただ、今回の法案で撮影物の処理について明文化された事は被害の拡散を防止できる事に期待をするところです。
 
次に、先ほど前述した信条介入やリテラシーの問題について触れたいと思います。まず人の心情を知ることは基本的にできないという前提に立たなければなりません。相手が何を考えているかは行動をもって判断するしかないので、一定の予防策にはなりますが、完全な撲滅を掲げてしまうと刑事罰かどうかは別として更なる規制が求められかねないのではと思います。女性の性被害に関しては表現の規制まで求める過激な団体が存在することも事実です。「表現の自由」ということを考える際、この法律の目的に係る前提となる考えが法務省から発信されることが必要ではないでしょうか。被害者女性の救済や加害者への制裁と「表現の自由」は分けて考えるべきでしょう。常識の範囲内で他人に危害が及ぶことなく個々人が楽しむ「表現の自由」は守られるべきでしょう。
 また被害者にならないためのリテラシーについても今回の法律案の整備とは分けて考えるべきです。思いもよらないところで女性は被写体として撮影物となり、被害に遭っている状況は決して好ましくありませんが、法整備で規制を増やし続ける事は「表現の自由」を制約することになる事は考えなくてはなりません。
 前述しましたが、法のできる限界とリテラシーの普及について国民が混同しないような広報を法務省には是非とも明言していただきたいものです。

最後までご拝読ありがとうございました。

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