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地方税法等の一部を改正する法律案についての調査②(政治家女子48党浜田聡参議院議員のお手伝い)

 今国会(第211回国会)に提出された「地方税法等の一部を改正する法律案」について、引き続き所感を述べてまいります。
 
提出された法案の概要
総務省のHPに掲載されている「地方税法等の一部を改正する法律案の概要」を見ると、要点がまとまっているので把握しやすいので掲載しておきますが、大きく食い分すると4点になります。

A自動車関連の税制区分の見直し
B納税環境の整備
C税負担軽減の創設と延長(固定資産税・都市計画税・環境性能割)
D航空機燃料譲与税の見直し・延長
 
今回はD航空機燃料譲与税の税制区分の見直しについてまとめてまいります。

①航空機燃料譲与税とは

航空機燃料譲与税とは航空機燃料譲与税法に定められており、航空機燃料税として国が徴収したものを空港関係市町村及び空港関係都道府県に対して譲与する税を指します。もちろん課税対象は航空機燃料であり、納税者は航空機の所有者または使用者になります。課税となる航空機は国内線のみとなっています。使途は航空機の騒音等により生ずる障害の防止、空港及びその周辺の整備その他の政令で定める空港対策に関する費用としています。(総務省「航空機燃料譲与税の概要」より)

航空機燃料(譲与)税は1㎘ごとに26,000円の課税率でしたが、訪日外国人旅行者2030年6000万人の政府目標などインバウンド需要の地方への波及を目的として、航空ネットワークへの軽減措置として平成23年度からは1㎘ごとに18,000円、コロナ禍による経済的打撃から令和3年度から1㎘ごとに9,000円とし、現在は1㎘ごとに13,000円となっています。今回の法改正では軽減措置の延長に伴い、地方譲与分の譲与割合の見直しというのが本旨になります。つまり令和9年度まで段階的に課税額を引き上げつつ、地方譲与分を現在の額を維持するということが今法改正の概要から読み取ることができます。税収はコロナ禍により令和2年度は大きく減収したものの、令和3年度は回復基調にあります。しかし、減額していた航空機燃料課税を引き上げる事は、段階的とはいえ本来の税率に戻ることで所有者や使用者の税負担は増すことになります。

国税庁ホームページより
総務省ホームページより

②航空業界の現状

国土交通省の航空輸送統計調査によると、2022年11月の国内線の旅客数は847.8万人、国際線の旅客数は84.5万人回復しており、訪日外国人の入国上限撤廃、ビザなし個人旅行が再開など国際線も回復しはじめており、コロナ前の状態に近づきつつあるのが現状といえます。

航空旅客数(国内・国際線)の月次推移(出所:国土交通省、グラフは業界動向サーチホームページより引用)

国土交通省の航空輸送統計調査によると、2022年11月の国内線の旅客数は847.8万人、国際線の旅客数は84.5万人回復しており、訪日外国人の入国上限撤廃、ビザなし個人旅行が再開など国際線も回復しはじめており、コロナ前の状態に近づきつつあるのが現状といえます。
コロナ禍による減収で航空各社は経営維持のために様々な工夫をおこなっています。JALやANAは採算の悪い国内路線の減便、保有機材数の削減、社員の外部出向などコスト削減に努めていました。大幅な旅客需要の補填に行ったのが国際貨物事業です。コロナ禍で需要が高まる電子部品や半導体、自動車、医薬品や医療機器などの国際輸送に注力し、ANAは2021年に2019年の貨物量を上回る水準を実現しています。JALもLCC路線の拡充を図っており、2021年6月には春秋航空の子会社化を実現し、ポストコロナ禍のLCC体制の構築に努めています。

③航空機燃料を取り巻く現状

 現在、航空機に使われている航空機燃料はケロシンと呼ばれているジェット燃料です。機材別に燃費を比較してみると、小差ではあるもののLCCで用いられている機材は燃費が良く、昨今のLCCの拡充を鑑みても環境への配慮と効率の良い燃料使用がおこなわれています。

 また現在では国際的な脱炭素の流れから、「SAF(Sustainable Aviation Fuel)」と呼ばれる次世代の燃料への転換が政府目標としても掲げられています。石油連盟はCORSIA規制や2030年目標(SAF混合率10%)達成に安定した国内SAF生産体制の構築を目指す取り組みについて令和4年4月に発表しております。また有志団体として「ACT FOR SKY」という団体も令和4年3月に設立され、本格的にSAFの国産化と普及に民間団体は動いています。


 こうした背景には世界的な脱炭素の流れから、SAFの確保は不可欠となっており、世界各国の航空会社でSAFの争奪戦になっており、日本の大きな課題となることは間違いないでしょう。SAFは様々な原料から生成することができることが利点とされています。しかし、懸念されることは原料の調達が争奪戦となる様相をみせており、製造コストがこのままだと跳ね上がるという点です。製造コストの高騰は、そのまま使用する航空機の所有者や使用者の負担になります。SAFの安定供給体制の構築や製造コストの削減に向けた原料の安定確保の実現が求められるなか、今後の展望が安心できる状態ではないことは間違いありません。

④航空機燃料譲与税は必要なのか?

 ここで本筋に戻りますが、今回提出された改正案では令和9年度に平成23年度の基準まで戻すことがもり込まれています。コロナ禍という不測の事態により、税の軽減措置がなされたことは評価されるべきであると思います。しかし、昨今の航空機燃料を取り巻く状況を俯瞰した際、課税率の引き上げをおこなう事は航空会社をはじめとする所有者及び使用者に負担を強いる結果につながるのではないかという懸念が生じます。

総務省の発表している各自治体(都道府県 市区町村)の決算カードを概観したところ、そもそも課税の必要があるのか疑問に感じる点があります。まず都道府県別の決算カードでは地方譲与税の内訳が記されており、航空機燃料譲与税の金額も記されています。譲与税が分配されている自治体の歳入構成比を確認すると、全体の0.0%に満たない額と記されており、大きな財源ではないことが明白です。
次に市区町村の決算カードを確認すると、地方譲与税でまとめられており、内訳を確認することができません。そこで各自治体に航空機燃料譲与税が総務省の発表している「地方譲与税譲与額一覧」を確認したところ、都道府県分と市町村分の二つに区分されているのみで、各基礎自治体に行き渡った金額と使途が不透明と言わざるをえません。ブラックボックス化していると考えてもよいと思います。

なぜこのような疑問に立つか。それは前述しましたが航空機燃料譲与税の使途は航空機の騒音等により生ずる障害の防止、空港及びその周辺の整備その他の政令で定める空港対策に関する費用です。目的に則った使い方をしているのかどうか不透明な税は廃止すべき、または使途を明確化すべきです。

⑤終わりに(質問考えてみた)

おそらく総務省の答弁で予想されることは「譲与分は各自治体に委ねられているのであるため、その情報公開の義務も自治体にある」というものではないかと邪推してしまいます。今回の調査で気になった点を質問するとしたら以下になります。

・今後、SAFの使用率を上げていくなかで、航空機燃料譲与税の税率の引き  上げ(より戻し)をおこなうことは決して航空業界をはじめとする所有者及び使用者にとって決して軽い負担ではないと容易に想像ができます。政府目標に向けて各業界が努力をするなかで、地方財源の確保とはいえ課税率の引き上げをおこなうことについて、総務省の見解をお伺いした。

・課税率の引き上げに伴う航空業界の経済的影響についてどのような展望をお持ちか、見解をお伺いしたい。また今後のSAF燃料のコストアップが懸念される中で、課税率の引き下げや据え置きなど柔軟な措置を施す考えがあるかどうかお伺いしたい。

・航空機燃料譲与税の使途は総務省の概要から確認が取れるところですが、各自治体の航空機燃料譲与税の使途状況について総務省は把握しているのか。仮に把握をしていて公開しているのであればわかりやすい形で公開することは検討されるのか。

・各都道府県の決算カードを確認した際、航空機譲与税の歳入構成比は0.0%の記載となっているほど小規模なものである。財源の確保という観点から少額でも取れるところから取ろうとする観点は理解できなくもないが、そのような少額を課税するのであれば、課税そのものを撤廃する考えはないのか。

今回は以上になります。ご拝読ありがとうございました。

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