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かわいい話

最近あった「かわいいな」と思った話。

(名前は伏せますが)とある先輩が稽古の時、私服で(吉﨑的に)かわいいズボンをお召しになっていたので、稽古終わって皆で集まっている所で話しかけた。

「先輩、ずっと言おうと思ってたんですけど」

冷やかし好きの先輩方がざわつく。

「なんや吉﨑、告白か」
「いや違います」

可愛いズボンをお召しになられている先輩は「何を言われるんや」と動揺している。
どうやら私は会話の最初の一文をミスったようだ。
というかそもそも私はこの先輩に自分から話しかけに行くことがほぼ無かった。何故なら先輩すぎて何喋ったらいいのかわからなかったからだ。失礼のないように会話を選ぶと、相槌と挨拶ぐらいしか無くなってしまうのだ。

急に私が先輩に話しかけたものだから、余計皆の好奇心を煽ってしまったようである。
周りはざわつくのを通り越して、私が何を言うのか固唾を飲んで見守っている。ズボン可愛いですねって言いたいだけなのに。

「ずっと言おうと思ってたんですけど」

逆に悪戯心が芽生えてしまった私は同じ言葉を繰り返した。先輩は私の目をみて固まっている。きっと私が何を言うのか全く予測がつかないんだと思う。めっちゃ動揺してる先輩を見て心の中で爆笑した。先輩ごめん。めっちゃおもろい。そしてあえて次の言葉を言うまでに間を置く。なんかわからんけど全員静かに私たちを見守っている。なにか大変な告白が行われるようである。私はただズボン可愛いですねって言いたいだけなのに。
本当に大した事じゃないのに、周りのせいで重々しくなってしまった空気の中、満を辞して口を開く。

「今日先輩が履いてるズボンめっちゃかわいいですね」

私がそう言い終わると、同じタイミングで皆一斉に息をついた。

「ズボンかい!」
「告白するんかと思った!」
「舞台終わるまで待って、って言うところやった」

皆口々に好き勝手言ってた。
先輩は「そんなん言われたらルーティンにめっちゃ組み込んでしまうやつや」などと頭を抱えていた。

言わなきゃ良かったぜと思ったが、ものすごい劇的だったので私は「劇的な瞬間ハンター」としてとても満足した。
ただ私はこの時直感的に「きっと先輩はしばらくこのズボンを履いてこないぞ」と思った。

そしてこの出来事は約1ヶ月程前の事である。
あれから、先輩は可愛いズボンを履いてこない。

言わなきゃ良かったぜ。

◆編集後記◆
皆素直でかわいいなと思ってしまいました。
楽しそうな出来事を楽しもうと最大限にぶつかってこられたような気がしました。笑
先輩はそろそろ可愛いズボン履いてくるかな…笑

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