ネオちゃんというアイドルがくれたもの

2023年1月8日 日比谷野外音楽堂

先日1月8日、私が推しているBiS -新生アイドル研究会-という当時5人グループの単独公演が日比谷野外音楽堂で行われた。
このライブをもって、現3期BiSのはじまりからのメンバーであるイトー・ムセンシティ部さんとネオ・トゥリーズさんがグループを脱退するということがアナウンスされており、二人にとって野音がBiSとして最後のステージとなった。
ここでは私の推しであるネオ・トゥリーズさんのことを中心にお話ししたいと思う。

野音でのライブは全体としてとても素晴らしかった。メンバーのトギーがそうしたいと言っていた通り、3年半の集大成と呼べるライブだったと思う。

私は、ネオ・トゥリーズさん(以下ネオちゃん)のことを目に耳に焼き付けようと必死で追っていた。その時、私の眼に映った彼女の笑顔は言葉に表すのは難しいけど、とても良い表情をしていて、それだけで自分は救われたように感じていた。
いまにして思えば、その優しい笑顔と全力パフォーマンスは彼女がBiSのネオ・トゥリーズとしての最後のエネルギーを振り絞って、私たち研究員(BiSのファンの総称)に贈ってくれたものであったとどうしても感じる。

2022年12月16日から野音まで

二人の脱退の発表は、この野音のライブからたった23日前の12月16日。この文章を書いている今からしても1ヶ月ほど前のこと。Twitterで発表を目にした時は混乱してなにもわからなかった事、とても信じられずいろんな考えが頭の中をぐるぐる巡ったのはよく覚えている。

その翌日12月17日、大阪でLONGMANというバンドとBiSの対バンが予定されており、私は元々行く予定ではなかったが、この報を聞きとにかくもチケット取って次の日大阪に向かった。
対バンでのライブは、とても良いライブで、BiSと研究員双方の色々な感情が入り混じった感じがして、かなりの盛り上がりを見せた。ただライブの中で、イトーさんとネオちゃんは、その存在が少し希薄というか、ふたりの命の炎が弱っているように私には見えた。考えてみれば脱退発表の翌日であるし、ファン以上に本人たちも傷ついてないわけはないし、普通の感情でできないのは当然のことだったと思う。
12月24日のリリイベでのライブでも回復は見えたが同じことを感じた。

そういった脱退発表からの過程があり、自分はファンとして来たる野音でのライブに関して変な心配の気持ちを持っていた。脱退する二人や残る三人のメンタルのこと、ファンの立場でもこれだけ心がかき乱されて安定しないのだから本人たちはもっと大変なはずだと。
私自身、発表から野音までの間いろいろなことをずっと考える日々が続いていたけどライブの前日はメンバーみんなには、推しメンには、なんでもいいから野音のライブをとにかくやり切って欲しいという気持ちになっていた。その後も続く人生のためにも悔いは残して欲しくなかったから。
そうして野音の日を迎えた。

蓋を開けてみれば野音では自分が心配しすぎたと感じるくらいネオちゃんもメンバー全員もめちゃくちゃ仕上げてきたと感じられたし、良いライブだった。本当にすごい人たち。

後日、野音ライブのアフタームービーがアップされて、5人のライブ前のインタビューもその中にあった。ネオちゃんは「お客さんの悲しい気持ちを和らげたい、少しでも笑って終わりたい、終わらせてあげたい」と言っていた。それを見てとても彼女らしいなと思った。

でもこれは私の勝手な気持ちだけど、最後はなにも気にせずただただ彼女自身のために、いろんな感情も全部自由に解き放って歌って踊ってくれればそれでいいという思いもあった。

けれども結局ネオちゃんは最後までこちらのことを思って、考えてくれていたんだなと…。
ライブでは晴々とした感じには見えなかったけど(それはそう)その表情はとても優しい笑顔と眼差しを私たちに向けてくれていたと感じた。

本物のプロ意識でもあるし、本当に優しい人。最後の最後までネオちゃんという人だったと思う。

そのことに救われたし、すごく切ない。

BiSというグループと私

バンドを中心にフェスなどで今まで色々と見てきたライブの中で、私が突き抜けてすごいと感じたり感動したりしたものは、先のことや周りにどう見られてるとかを気にしたりせずただただそれが好きでやっているというもの。そういうライブは言葉にならないくらいの迫力がある。
BiSにはそれがあると感じている。

今のBiSのライブを初めて生で見たのは2020年6月20日、コロナ禍での無観客配信ライブだった。画面で見るBiSのメンバーのパフォーマンスに純粋なエネルギーを感じた。ライブが絶たれているコロナ禍の状況で、ただ必死に生きようとしてる命の輝きと、真っ直ぐなひたむきな全力さに心打たれた。
画面を見ながら泣いていたし、自分がBiSのことを好きになって追うようになったきっかけの一つ。

現3期BiSはメンバー全員が音楽活動やステージは未経験でグループに入り活動が始まった。私は活動初期から見られていたわけではないが、相当な苦労があったと思う。
真っ白な状態から始まったわけだけど、活動するなかでBiSの歌唱の中心となっていたネオちゃんは、歌うことが楽しくないと思うくらい追い詰められる時期もあったということをドキュメンタリー映像での話し合いを見て知った。活動の中で悩んだり、苦しんだりすることの連続だったことが伝わる。

準備のためにとてつもなく練習をする人たちだというのも伝わってくる。さまざまなスケジュールもあり、いつも本当に忙しく大変な日々なのは間違いない。

そういった大変さの中でも、メンバーみんなBiSとしての瞬間瞬間を楽しんでることが伝わってきて、それを見ているのが好きだった。
私は音楽から入ったけど、Twitterやブログで上げてくれる写真や動画を見たりして、ちょっと近づいてみると、みんなをもっと好きになるのが自分にとってBiSというアイドル。

推し

そのなかでもネオ・トゥリーズさんの飾らない人柄、可愛さ、度胸、面白さ、笑顔に惹かれていた。そして、彼女のかっこよくて、かっこつけてなくて、透明で、魂を揺さぶる歌声をライブで聴けるのが自分が幸せを感じる時だった。

高い歌唱力が注目された。歌のことを言われすぎて悩んだり、正確さへの注力と楽しんでやることとの間の葛藤が多くあったことも知った。
ネオちゃんが楽しんでやってくれているのがこちらも笑顔になるし一番うれしいこと、でも音程やリズムへの努力も全部、音楽的に生きて私たちに届いて感動させてくれていたこと…
表現っていうのは内面にあるものが出るものだと思っているので、どこが良いとかもそうだけど、全部含めてネオちゃんの歌そのものが好き、、そんなことをもっと伝えれば良かった。

楽しむことと

去年のWACK(BiSが所属する事務所)の合宿オーディションにネオちゃんが現役メンバーとして参加した時に、BiSの好きなところは?という質問に
"なんでも楽しんでやるところ"
とネオちゃんは答えていた。
私はファンとしてその答えに納得したし、それは自分がBiSを好きなところでもあると思った。
楽しむっていっても、楽することじゃない、全力で死ぬほど楽しむってことを私に教えてくれたのがネオちゃんでありBiSのみんなだった。

いつしかそれが、心から楽しむことが難しくなってしまっていたんではないかという気がしている。脱退が発表された時の文章で、BiSとして活動していくことがもうできないと考える時間が多くなってしまっていたこと、続けていく自信がなくなってしまっていたというのを読んで、それが本当に辛かった。
二人の脱退が決まったというのは、こちらからは突然の事と感じられて、実際に急で、きっかけとする何かがあったのだろうとは感じてしまうところではあった。
けど、もしそうであったとしても、発表された文章や過去のインタビューを何回も読んだりして、2022年を振り返ってみると、いろんなバランスが崩れて、本当にもう続けられないという所まで悩みや辛さの方が多い状態で続けていたんではないかということ、この間そんなことを私はずっと想像していた。

インタビューでのネオちゃんの言葉
「とにかく研究員のみなさんを心配させないように笑顔でパフォーマンスをして、顔に出さないようにしようと思ってやっていました。それだけを考えていたと思います。」
「大変ではあったんですけど、ライブの時間はお客さんと一緒に楽しみたいなっていう気持ちでした。少しでも楽しませてあげられたらいいなと思って、毎回ライブをしていました」
大変な時でもファンのことを一番に考えてくれてた。
そんなような時期が続いていたことを改めて感じた。

去年の夏以降、BiSはフェスでのライブもあり、そして8月から11月にかけて全国ツアーが行われた。そこではとてもいいライブをしていたし、私は全国に遠征してたくさん参加して本当に楽しかった。
常に私たちをめちゃくちゃ楽しませてくれたし、BiSの姿勢は不変だったと思う。
でもその活動の背後で精神状態は限界を超えていたのかもしれない。

そんな悩みや苦しさの方が多い状況で続けているのはメンタルを蝕むだろうし、心から楽しむのも難しくなってくると思う。そういう状態が背後にあったのなら応援するのもつらくなってしまう。
応援が頑張る力になってくれていること自体は本当に尊いこと。
でも、自分は辛さの方が多いのに、応援する人のためや周りのために無理をしてでも続けるのは、そんな時間が長く続くと、仕事としても、特に音楽として健全とは言えないと思う。
このことは本人たちの責任ではもちろんない。

だから、もう十分に、本当にここまでよく頑張ったと言ってあげたい

ネオちゃん

「折れそうになる事も何度もあったけど
それでも応援してくれる研究員が居てくれたから
ここまで続けることができました。」

これはネオちゃんのウソじゃない本当の言葉だと思う。
そんな言葉をいつも言ってくれてた。
応援しているのが伝わってくれているのは心から嬉しくてありがたいこと、、それを力にしてくれていたことに感動する、応援してきて良かったと思える瞬間…
こちらこそ、本当に本当に感謝と敬意しかない。でも同時にいまネオちゃんのこの言葉には胸が締めつけられる。

そしてネオちゃんは最後までBiSのネオ・トゥリーズとしてのステージを全うした。
最後のネオちゃんの表情、私は決して忘れることはないだろう。

日常

脱退の発表から一ヶ月と十日くらい、そしてネオちゃんの最後のライブから二週間が過ぎてしまった。推しがいなくなった生活は慣れないけど、徐々に現実なんだと確認しはじめている自分がいる。

いま3人になっているBiSは頑張ってる。とっても良いライブをしていると聞いたし、今までのペースでは難しいけど、応援していこうと思っている。BiSのメンバーでいるってのは本当にすごいこと。

そうやって、どうしていても月日は進んでいってしまう。

脱退の発表がされてから野音のライブまでの時間と、現在までの時間は本当に辛くて、でも今までで一番推しのことを考えている期間だった。
ネオちゃんという人がアイドルでいた時間にくれた本当にたくさんのものへのありがとうの気持ち、推していた幸せな思い出が時間に流されてただの過去になってしまわないように(ならないけど)、この間に自分の頭のなかにあったことを残しておきたいと、ここに書いてみようと思いました。

アイドルであることで、辛いとか、苦しいとかなかなか言えないことも多いこと、いまになって本当に身に染みている。

本当にお疲れ様でした

こんなに素敵で優しいふたりが、どうしてこのようなつらい形で去らなければならなかったのか、辛くて悔しいというのが今も持っている正直な気持ち、これからもこの無念さは無くならないと思う。あなたたちのがんばりがBiSという活動のなかで報われて欲しかった。推しが世にもっともっと認められて欲しくて応援してたし、BiSというグループの力と素晴らしさ、今までやってきたことのすごさは申し分なくあったと強く思ってるだけに悔しい。

もしもまた表で歌うことがあるならば、あなたらしさ、心の優しさや、感性や、音楽に対する姿勢を大切にしつつも、あなたの心の中の夢、楽しさ、好きのために歌う時間がたくさんあったらいいなと思う。
そのためには世の中で色々なものと、そして自分と闘わなくてはいけないのは応援してきてずっと感じてきてるし、簡単に口にできることではないのはわかってるけれども。

がんばりすぎたくらい今まで頑張ってきた。彼女たちの選択したこと、することを全力で尊重します。いまはゆっくりと休んで欲しい。大変な日々だった。

いつもそばにあなたはいたし

私はオタクとして推し切ったともやり切ったとも思わないし後悔もある。
でも私はネオ・トゥリーズさんという人を推してきて本当に良かったし、幸せだった。このことは自信を持って言える。
絶対に忘れられない人生でかけがえのない時間になりました。

『いつもそばにあなたはいたし』

BiSの 『TOUCH ME』という曲のサビの歌詞で、ネオちゃんが担当した落ちサビの部分には、BiSと研究員の絆、後悔、ネオちゃんの苦闘、いろんな会場での無音の中でのプレッシャー、様々のものがここに象徴されていると思う。
ネオちゃんあなたはいつもそばにてくれてた。

BiSのネオちゃんの物語は終わってしまった…

さみしいけど、ネオちゃんが自分たちにくれた思い出や、楽しさ、残してくれた歌声はぜったいに色褪せないと思える、それくらい楽しくて素敵な時間でした。

元気でいてね!!
いつもあなたが私たち研究員のために願ってくれていたこと、それだけがいまの一番の願いです。
元気でいようね!!

BiSになってくれてネオちゃんでいてくれて
本当にありがとう。

いち研究員より

2023年1月
(※2023年2月加筆)

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