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福島原発のALPS処理水とリスク管理の考え方

ゆっくりしていってね!

社会学者の宮台真司先生が、福島原発の処理水にトリチウムが含まれていることから、それが生物濃縮される可能性を指摘して、懸念を表明したわ。


まあ、ご心配は分かるわね。

とりあえず、生物濃縮について簡単に説明しておきましょう。

ある物質に着目した時(今回は「トリチウム」だと思えばいいわ)、環境中では薄い濃度であっても、小さな生物がそれを吸収し、その生物を捕食者が食べて、その捕食者をさらに上位の捕食者が食べて……とやっているうちに、食物連鎖の上位にいる生物ほどその物質の濃度が高くなっていく現象を指すわ。

「トリチウムは生物濃縮しない」 処理水の疑問 専門家の見解は


さて。

問題のトリチウムが生物蓄積されるかは、宮台先生が紹介している論文のように「そうなるかも?」と言っている論文もあれば、「多分しないでしょう!」と言っている論文もあって(Ferreira et al., 2018)、諸説あるところね。

どちらの見解の論文もずらずら並べるのはマジで単なる作業だから出来るけど、ぶっちゃけ真実はよく分からないのだわ。

もちろん、傍証的な議論は可能よ。代表的なものを挙げると、

「最もトリチウムを排出しているラ・アーグ再処理工場(※世界中の核燃料をここで始末しているわ)の付近でも特に問題が起きたという報告はない。」
「すでに核実験由来のトリチウムが地球上には超大量にあるが、今のところのそのせいで何か悪いことが起きたという報告はない。」

とか。

まあ、ザックリそれっぽいわね。SNS議論はだいたいここで終わりでしょう。

これではちょっと物足りなかったら、経産省の処理水関連のページを読むとか、Google Scholarで論文を検索しまくるとかして補強すればいいわ(少しは私もやってるからこちらのポストツリー参照)。

そして、私もトリチウムの悪影響について対立する見解のどっちかに全財産を賭けろと言われたら、「まあ、問題ないでしょう」側に賭けるわ。

けれど、今回は、リスクの取り扱いについて、単にある物質が安全かどうかという議論に留まらず、運用レベルにあるリスクや、それでも何かが起きてしまった場合の補償にまで踏み込んだ議論をしてみましょう。

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