MTG世界2位によるTCGの大会で勝つための構築術
本記事は2年間、マジック:ザ・ギャザリングの競技大会の最前線に参加し続けた私がデッキ構築において学んだ経験から得た構築術をまとめたものである。
2023年は世界大会で2位になるほどの成功を収め、世界大会の勝率は過去数年間で1位であったらしい。しかし2024年は負けに負けた失敗年であった。
成功と失敗。両方を経験した私は過去の私の成績とデッキ構築とその過程を分析し、得た教訓を活かしてデッキ構築の成功例の反復、失敗例の反省を目的として私個人用に記事を執筆していた。しかしこの教訓はTCGプレイヤー達にも有意義になる可能性があると考え、共有するために今回は一般TCG理論向けに執筆した。
・丸い構築が良いとは限らない
どの相手にも満遍なく戦える丸い構築、聞こえはいいが要はどこを意識するか絞り切れていないということだ。採用できるカードには限りがある。ならばその大会のフィールドに適したデッキ、カード選択にするべきだ。
「Aが多いだろうからAにのみ有効だけど対策カードを多く採用しよう」
フィールドに多いと考えているなら有効である。しかし対策カードを多く採用する為に他のデッキへのガードが落ちているはずだ。そのせいで総合勝率が落ちては元も子もない。そこで考えるべきは
「Bは環境にはいるけれど、自分は弱いと思っている。このフィールドでは強者が選ぶとは考えずらく、Bの対策カードは抜くor減らそう」
という対策を諦めるデッキの選択だろう。特にあなたがフィールドのレベルの平均に近いプレイヤーならばこの考えは肯定されやすい。他のプレイヤーもあなたと同じ環境把握に至っている可能性が高いからだ。そうだとしたらBは少ないだろう。予想が外れる、多少は存在したそのデッキに当たるリスクはあるが、他にいるであろうAを始めとしたデッキにガードをあげられるのであればリターンは高い。噛み合う構築を目指そう。
・フィールドのレベルを高く見積もる
世間で流行っているリストがあるとしよう(特にTier1)。あなたはそのリストに勝てるデッキリストを用意できた。あなたの目標の大会のフィールドが流行ってるリストのコピーが蔓延るのであれば有効だが、もし出場選手たちのレベルが高く、強さが一段階上の調整されたものが出てくると予測できるのであれば下記を意識したい。
①強さが一段階上のレベルのリストを作成しそのリストとの相性を検証する
→これが一番良い。仮想相手としてだけでなく、そのデッキを使用候補にも考えられる。ただし複数のリストをより良くする手間がかかるので難易度が高い。自身が使わないデッキの使用者と一緒に調整することで解決しやすい。
②上記ができない場合は相性を一段階悪く考える(有利→五分、五分→不利)
→基本は想定しているよりも相性が悪くなっている場合がほとんどである。流行っているリスト相手に五分であった場合は、意識するならばガードをあげたい。
・リアルで練習する
ネット環境でのみ調整していた場合、リアルでは想定していないことは必ず起こる。リアルのほうが基本はやることが多くその動作に脳リソースが使われ普段通りではない最適でないプレイになってしまったり、想定以上のプレイ時間により時間切れが発生することがある。万全な状態でプレイするためにもリアルでの練習はデジタルで自動で処理されていた動作を、自分で習慣レベルでできるように練習するのが望ましい。それと時間の省略や識別が簡単になる方法を探そう。(見分けのつきやすいトークンの用意、処理の省略、ルールで可能であれば判別しやすいようにカードに印など)
練習やできるだけの準備をしても処理を忘れる、時間が足りないのであれば使用は諦めよう。デッキが強くともゲームができないのであればそれは大会辞退も当然。リアルで使えるかどうかもデッキ構築では重要だ。
・感覚の使いどころ
私はカードゲームのデッキ構築は
①論理で作成
②感覚で調整
③論理で補強
だと考えている。構築はイメージで1から作成、またはコピーで作成する。この段階ではベストな構築は作れない。様々な要素が交わるカードゲームにおいてすべてを論理で構築するのは現実的でないからだ。実際にプレイして感覚でカード選択、枚数調性を行っていく。ある程度煮詰まったその後、感覚では詰め切れない要素を論理で補強する。これらに要素に関しては下記の記事がより詳しく説明している。
経験と論理、この二つを要所で適切に使いわけることで適切に近い構築が可能であると同時に、使い分けられないと噛み合わず不適切な構築に至ることがある。
上記を前提として下記を解説する。
・自分のデッキ都合でのカード、戦略の追加
あなたがあるデッキに対して理解がある状況で、強化につながると思って新しいカード、戦略を取り入れようと思いついた場合、有効であることが多いだろう。なぜならばその直感はあなたが培った経験から発生したものであり感覚では有効であると判断したからだ。理論で理由付けできれば尚良い。実際に試行できるのが一番いいが、試す時間がなかった場合は是非採用してほしい。最後にものをいうのは直感だ。
・時間がないときの対策に対しての対策カードはオススメしない
自身のデッキに対して有効なデッキ、カードが見つかった場合それに対してカード単位で対策した場合(そのカードに対して有効な除去など)、時間が足りず検証ができない場合は採用しないほうが良い。
理由としてそれらのデッキ、カードがそれまでの調整において考慮に挙がってなかった時点そもそもそこまで環境に多くない可能性が高く、考え過ぎているパターンが場合が多い。検証の足りない状況で自己都合でなく相手都合でカードを選択する場合、自分のデッキに合っていない可能性があり、動きが悪くなってしまった場合デッキの弱体化につながる。負ける要素が突然浮かび上がってきて不安になるが、この感覚はバイアスであることが多い。信用すると痛い目に合いがちだ。時には目をつぶることも大切である。
・自分のプレイに合った構築を作ろう
構築はカード選択、バランス、そして自分のプレイングが合わさって初めて構築と言えると考えている。何しろプレイングは常に多くの選択肢が存在し、多岐にわたる。しかしその先にあるものは勝利で無くてはならない。ということは多岐にわたる選択肢を勝利に導くのは自分であり、その戦法を組み立てる自分に合わせた構築にすべきだろう。
そのためにも自分というプレイヤーを理解しておくのが大切だ。結果からはもちろん、経験から自分の得意な戦術が分かるだろう。アグロが得意ならばマナカーブは軽くしてランドを詰める、ロングゲームが得意ならば長期戦で強いカードを採用する、コンボを通すのが得意ならサイド後もコンボプランを強く使う、などだ。どの戦術も上手く使えるなら問題ないが、そうでないなら自分の得意なことを構築に反映させていこう。対戦ゲームはいかに相手を出し抜くかが肝である。相手より得意なことをして有利にゲームを進めよう。
ここまで読んで意外と特別なことを言ってないと思うかもしれない。おそらく昔だったら筆者もそう思っただろう。しかしいざその状況になると実践できないものだ。あるデッキは弱いと思っていたけれど、もしいたら負けてしまうからと強く意識してしまった。想像以上に他の参加者のデッキが強く対応できなかった。慣れないデッキで参加したら時間切れが頻繁に起きた。世界大会レベルで多くの失敗をしてきた。そんな失敗をした者がいたと同じ状況になった時に思い出して未然に防いでもらえたら幸いである。
他にもデッキ構築で上手くいき世界2位になった時の構築術も執筆したことがあるのでもし良かったら読んでほしい。
今後他にも構築術を思いついたら追加で執筆するのでよかったら♡押してフォローしてね!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?