てるるな話 第四葉 てるるとてるる子、海にいく
てるる子が誕生してからというもの、てるるとてるる子は、とにかくずっと一緒にいる。
冬が過ぎ、春がきても一緒。
春が過ぎても一緒。
ふたりはいつも、ずっと一緒。
梅雨の季節が来ると、外に出られないふたりは家にじぃっと篭るようになった。
てるるはひたすらだらだら過ごしている。
そろそろしまわなければならないこたつの中でお昼寝をしたり、
こたつでは暑いなと思えば、縁側でころがったりする。
楽しそうでもあるし、そうでもなさそうでもある。
一方、てるる子は、梅雨に入ってからずっとイライラしている。
「髪の毛がうねるし、暇だし、とにかく退屈ですぅ! てるる子、てるるちゃんみたいに暇を持て余すことが得意ではないんですぅ! もう!! 暇に暇っぽさが加味されて、やたら暇で困りますぅ!」
てるる子は、三本毛を気にしつつ、文句を言っている。女のヒステリーは嫌われるというのはわかっていても、止められない苛立たしさに、てるる子は悩まされていた。
「ああもう!! てるる子、悩みの最高潮ですぅ! 悩み岳の最高峰にいますぅ! エベレストですぅ!」
てるるは呆れ顔でてるる子を見つめている。
「ねぇ、てるる子、そんなにイライラしても仕方ないよ。あとね、『暇』っていうワードを連呼しないで。てるるだってあんまり暇だと、暇色に塗りつぶされちゃいそうでぶるぶるしちゃうじゃないか。」
てるるはいつだって、白くありたい。それが、てるるだから。
そんなやりとりが梅雨の間何度も繰り返された。ふたりは、てるてる坊主として書き入れ時のシーズンに、ただひたすら、哲学を繰り返していたのだ。
そしてめでたく梅雨があけると、待っていましたとばかりに、2人は海に来た。
ざっぱーーーーん。
波の音が気持ちよく耳に響く。
「ねぇ、てるるちゃん」
「なんだい、てるる子」
てるる子の頬は赤く染まっている。
(海のてるるちゃん、りりしい……。ああ、てるるちゃん、てるるちゃんはあたしのこと、どう思っているんだろう。今日はせっかくこんなに露出しているのに、なんの反応もない。てるる子、てるる子勇気を出すのよ。今日こそてるるちゃんの気持ちを確かめるのよ。)
「ねぇ、てるるちゃん」
「なぁに、てるる子。」
「あの……あたしの次に好きなてるてる坊主って誰?」
「え? いないよ。」
「それって!? や、やったぁー!!!!」
「てるてる坊主、てるるたちしかいないじゃん。 」
今日も二人は、大の仲良し。
そろそろてるてる坊主の仕事、してよね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?