元永知宏『補欠の力 広陵OBはなぜ卒業後に成長するのか?』(ぴあ、2018年)を読みました。

高校野球の名門広陵高校の中井監督にフォーカスしたルポ。野球よりも人間としてのあり方を重視しひとりひとりの生徒と向き合う様子にはある種の理想郷を見ました。思い出したくないほど厳しいが振り返るとそれが今の自分を作った…私にもそんな経験がありますが、そうした経験をできる事自体が幸福なことなのでしょう。

本書より…

「・・・だいたい、道具を大事にしない選手はうまくなれないじゃないですか。ものを大事にしないということは親を大事にせんということと同じ。親を大事にせんやつはえらくもうまくもなれるはずがない。そんなんでは、人に必要だと思われる人間にならんと僕は思うんですよ」
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「生徒にはよくこう言います。『俺が一回でもお前に来てくれ言うたことがあるか。おまえが来たいと思ってきたんじゃろ。やるなら本気でやれ』と」
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「生徒にはよく『俺が一回でもおまえに失礼なことをしたことがあるか』と聞きます。これが殺し文句みたいなもんですよ。『裏切ったことがあるか』『おまえらを軽蔑したことがあるか』とも言います」
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「大事なのは、生徒たちがのちのち困ったり迷ったりしたときに、『中井ならどうするか』と考えたり、苦しいときに励みになる言葉を思い出すことじゃないでしょうか。僕はそういう存在でありたい。教師なんで先生とは呼ばれますが、先に生まれただけですから。先生というよりも、そういう男でありたいと思っています」
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「中井先生には数えきれないほどのことを言っていただきました。『甲子園に出ることが目標じゃない立派な男になるためにいまがある』と。いまでも強烈に覚えているのは『野手が守ってやりたいと思うピッチャーになれ』ですね。このことは何度も何度も言われました。そう思ってもらうためには、練習をしっかりやらなければならないし、生活面でも気をつけなければいけない」
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「なかなか試合に出ることができない時期があり、そのころコーチに『一生懸命って何かわかるか?』と聞かれました。それまでは自分で一生懸命やればいいと思っていたんですが、『まわりから評価されなかったら、それは一生懸命じゃないからな』と教えてもらいました」

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