元永 知宏『期待はずれのドラフト1位――逆境からのそれぞれのリベンジ』(岩波ジュニア新書、2016年)を読みました。

プロ野球は厳しい世界で、ドラフト1位の選手でも活躍できるのは一部です。この本ではドラ1でありながら思うように活躍できなかった選手たちの人生模様を追ったノンフィクションとなっています。プレッシャー、ケガ、人間関係など様々な要因がありますが、どの選手も自らを変えていきます。その変え方は選手により異なり多様なのが興味深いところです。コーチのアドバイスを聞けばよかったという人がいればコーチのアドバイスを聞かなければよかったという人もおりなかなか興味深いです。U理論などとも通じる話ですがプロ野球という極端に競争的な世界だからこそよく見える人生模様がありました。

本書より…

「プロ野球選手でもよくいるのですが、本人はすごく勇気を出して変えたつもりでも、まわりから見たらほとんど変化を感じない場合があります。少しフォームを変えても、うまくいかないからと言って、すぐに元に戻してしまうことも。これではまったく意味がありません」
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「右バッターが左で打つくらいの覚悟で、変えないとダメだ」
変えようと心を決めたら、徹底してやるべきだという教えです。「うまくいくかどうかわからないけど、退路を断って自分を変えようとする姿は美しいと思います。崖っぷちにいるプロ野球選手ががんばる姿はすばらしい。それまで自分がやってきたことを捨てるのは大変ですが、そこでどれだけ我慢できるか・・・」
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ここで河原さんの器用さがいい方向に作用しました。痛くないフォームでそれなりのボールを投げるピッチャーにマイナーチェンジすることに成功したのです。「自分らしいピッチングはもうあきらめました。完治しない肩で、悪いなら悪い状態でどうやってバッターを打ち取るか、それを徹底して考えました」
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「足の速さや肩の強さ、バッティングの確実性は、プレイを見ればすぐにわかります。表面に出にくいのが、頭の中、考え方の柔軟性です。プロの壁をと突破できずレギュラーをつかめない選手の多くが、やわらかさに欠けているように思います。「自分」を持つことは大事ですし、頑固でもいい。ただ、視野が狭くて誰のアドバイスにも耳を貸さない選手は長く活躍するのが難しい。人の意見を聴いたうえで役に立つことだけを受け入れる選手や、頭の切り替えの早い選手は上達のスピードが速いですね」
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「最初にいくらいい成績を残しても、頭が固くて意見を聞かない選手はそれなりのところで止まってしまいます。自分で思っている通りにやれないのに、現状を変えることもできない。これが数年続くとトレードに出されたり、ユニフォームを脱ぐことになったりします。アドバイスを聞かないから、周囲から人が消え、チームで孤立することになります。やっぱり大切なのは頭の柔軟さです」
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「壁に当たってからまた伸びる選手は、みんな自分の頭で考えて、自分で行動しています。「言われたことだけやる選手」「やらされる選手」にはいずれ限界がきます。いくら力があっても厳しい。いきなりプロでレギュラーになれるのはひと握り。それ以外の選手は失敗して、壁に跳ね返されて、自分に絶望して。。。。。。そこからがんばるしかありません」

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