元永 知宏『敗北を力に! 甲子園の敗者たち』(岩波ジュニア新書、2017年)を読みました。

甲子園での敗北から高校球児がどのように変わり、人生をつくっていったのかを追うノンフィクションです。元近鉄佐野投手の自由な生き方がヒッピーぽくて印象的。荒木大輔のいた早実が猛練習をしないカルチャーというのもはじめて知りました。開星の“やくざ監督”野々村直通さんのことは知りませんでしたが、辞任騒動の裏にある美しい物語も記録されています。PL学園で甲子園に出て漫画家になったなきぼくろさんの人生観もユニークです。日本における野球文化の濃さからか人生について学べることが詰まっていました。

本書より…

チームは着実に力をつけていましたが、佐野さんは相変わらすのマイペースぶりでした。「甲子園出場が決まってからは「1試合くらい投げられればいい」と思っていました。決勝まで行けるチームだとは考えていなかったので」
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「でも、すぐに冷静に分析してみました。これだけすごいボールを投げているのに結果を残せていないとすれば、何か原因が有るはずだと。今の戦力に足りないところがあるから自分が指名されたのだと思い直しました。自分の武器を見つけて、それを磨いていけばいいと考えたのです」
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「決勝で勝てなかったのは、単純に練習が少なかったから。苦しいことを避けて、楽しくやっていけばと思っていましたが、そんなに簡単に日本一にはなれません。勝てるわけがないんですよ。追い込まれたときに、それをはねのけるだけの精神的な強さはありませんでした」
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ビンタなんか暴力だとは思っていませんでした。むしろ、僕のなかの暴力は言葉です。ボコボコにしばかれたも何とも思わなかった僕が、たったひと言で言葉をなくしたことがありました。

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