今じゃベリーショートが私の代名詞
この、近所の銭湯に行ったら、
「1年前の自分に、ぜーんぜん大丈夫よ、こんな未来が待ってるわよ、って言ってあげたいわね」
って、言われました。
転移がんが見つかったのはちょうど1年前のこと。
どこに原発があるのかわからないところから始まり、病院探し、検査、他科診察とタスクをこなすのに必死でした。
大学病院に転院して1カ月で手術2回を終え、そのあと抗がん剤治療で脱毛……
スキンヘッドにはならなかったけど、人生初の出来事でした。
それでも毎日通っていたのが銭湯。
近所のおばちゃんたちが応援してくれ、入院しているときは励ましのメールをくれて、髪がなくても変わらず接してくれました。
もう10年以上腰までのロングヘアで、髪が抜けることも想像がつかなかった。しかも1週間ぐらいであっという間に髪が抜けまくるスピード感。
手術して入院中にがんの先輩(?)たとが「髪が抜けるなんてそのうちこんなもんかな、って諦めがつくわよ」って教えてもらっていなかったら相当動揺したんじゃないかと思います。
脱毛しはじめたときは「これか…」と思ったけど、先輩たちのおかげで心の準備ができていたので、心折れるほどではなかった。
ダンスの先生も「アンタを死なせない!」って言ってくれるし、
ダンス友達もSHEINで毛付きのバケットハットを探してくれたり、
美容師の友達はウィッグ探しのアドバイスから、ウィッグのカット、髪が生えてからのカラーリング&カットとずっと助けてもらいました。
医師に「年齢も若いのでスピード感をもって進めましょう」
と言われ、一瞬「人生詰んだー、終わりかー」と思ったこともありましたが、仕事もリモートワークでやっていたし、たまに外出もしていたし、案外普通。
少年のような坊主頭になって、髪をミルクティー色にしたら
オカマのダンスの先生が「いーじゃん!」
ってほめてくれて。
似たようなヘアスタイルのおしゃれなダンサーの子もいて、ダンスレッスンに行ったら思いのほかなじみました。
マシンピラティスのクラスに行ったら、インストラクターの先生が
「普段はキックボクシング受けてるんでしたっけ?」
すでに単にベリーショートのヒトという認識(笑)。
自分でもベリーショートに見慣れて、顔もそれにチューニングされている感じ。
「もうロングヘアのときを思い出せないくらい、ショートが似合ってるね」
と言われるほど。毎回髪色を変える楽しみもできました。
今、私のショートヘアに理由なんて聞かれることはなくて、見た目では何も変わらない。
おなかの手術跡も目立たなくなって、がんだったことすら本当かなと思うくらい健康です。
昔、転職するとき、肩書がなくなったら人は離れるかも、と思ってきたけど、変わらなかった。今回も病気になって周りが変わることはなかった。
メンタルが安定している理由は、周りの人が病気に関することや、脱毛ケアの情報などを教えてくれて、支えてくれたおかげです。
がんという大きな病気に直面してみて、それが大事件に思えないのは幸せなんだと実感しています。
そして、銭湯で知り合いのお姉さんに言われたのが、
「1年前の自分に〝大丈夫〟って言ってあげたいわね」
っていう一言。
今じゃベリーショートが私の代名詞。
ダンススタジオで私のことを聞かれたら
「ミルクティー色のベリーショートの人」
って言われています。
自分でもがんが1年前だったことすら忘れていました。