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【卓球】僕に影響を与えた裏面使い3人

今月の卓球王国は、石川佳純ファンにはたまらない内容になっている。

先日のNHKプロフェショナルで、改めて彼女の魅力に取り付かれた人も多かったのではないだろうか。

改めて僕もファンになってしまいそうだ。


そんな中で僕が最も気になったのは、もちろん、ペン裏面打法の系譜だ!!!

なんせ愛卓TTCの村守キャプテンが出ているからだ!!!

本人は、「これで卓球王国に載るのも最後かな?」と言ってたが、記事の内容はなかなか興味深いものだった。というか、全て知らない情報でびっくりした。

どれだけ、僕は昔の村守君に興味が無かったのか、記事を読んで思ったほどだ。


実は、僕の卓球人生において、裏面打法というのが、なかなか重要なものになっている。今回は僕に影響を与えた、3人の裏面使いの話をしたいと思う。


その前に、裏面打法の歴史は、詳しくは卓球王国を読んで頂ければ分かるのだが、簡単に書くと、

1992年に16歳で鮮烈の国際大会デビューを果たした劉国梁から始まり、馬琳、王皓、許昕という流れで発展していった。

この劉国梁の裏面打法というのは、卓球界に衝撃を与えた。1995年秋、神戸に転校し、僕がその田卓研に入った際、父親はTTSタカハシでラケットを新調した。

日本式のカーボン入りのペン表から、アバロックスの中国式にスピンピップスと裏面に裏ソフトという、完全に劉国梁コピーで、「裏面打法やる」と言い出したのだ。

結局、習得は出来なかったが、父親のような一般プレーヤーに影響を与える程、劉国梁の裏面打法というのは衝撃的だったのだ。



裏面使いの1人目は、滝川第二時代、1学年先輩の上西さん。

上西さんは、京都のグリーンネット出身で、アバロックスに表面スピンピップス、裏面トリプルと、完全に劉国梁を意識した戦型だった。もちろんサーブも右足を上げて出していた。

上西さんは、ショートを使わず、バックは全て裏面で対応するスタイル。下回転に対しては、下から上への大きくスイングでドライブをする。これも劉国梁的な打ち方だ。

そして、上回転に対しては、ドライブはせずに、全てミート系のプッシュで対応していた。

ちなみに、フォアはドライブが得意だが、スマッシュはあまりパンチ力がなく、ペン表なのにフットワーク練習を全くしない変わった人だった。

嘘ではなく本当にフットワークをしないのだ。フォアで動く練習は、半面オールまでだけだった。それ以上に動いた上西さんは見たことない。

少しぽっちゃりした体型だったので、恐らくフットワークは諦めていたのだろう。ペン表のパンチ力は無いが、その分、台上等のテクニック、ブロックは抜群に上手かった。


僕は、1年生のインハイが終わってから、上西さんとダブルスを組ませてもらうことになった。

ダブルスを組んで驚いたのだが、試合をすると失点はほとんど僕のミスだった。その度に「すみません」と一言いう。別に上西さんは怖い人ではなかったが、先輩なので「すみません」と一言いうのだ。

でも、あまりにも「すみません」が多いので、途中から「あれ、ダブルスって、ペアに謝る競技なんだっけ?」と勘違いする程、僕ばかりがミスをしていた。

ちなみに、上西さんとゲーム練習をすると、僕が勝つ。正直あまり負けた記憶がない。でも、ダブルスだと、僕が足を引っ張りまくる。ダブルスでの上西さんは本当に頼もしかった。


ひとつエピソードを。杜若カップだったか、なんだったか忘れたが、全国から高校が集まり、団体戦をする練習試合があった。

確か、杜若の石黒君とペアは誰だったか?中谷君だったか?と3番ダブルスで試合をして、2-2のデュース。上西さんがレシーブで、今まで使ってなかった、フォアへのフリックをノータッチで決めて勝利した。

レシーブのサインは決めていなかったので、僕はびっくりした。同時に「上西さんすごいっすね!やるなー!すげぇなー!」と大興奮した記憶がある。


もうひとつ。まだまだ謝りまくりの、1年生冬の近畿新人戦。上西さんのおかげでダブルス準決勝まで勝ち上がり、時吉・森下(東山)に2-3で惜しくも負けた。

ちなみに、僕は何もしていない。当時はフリックもできなかったので、バックにストップしかしなかった。でもほとんどワンバウンドで出てしまう。

もちろん相手に回り込まれて打たれるのだが、上西さんが全てブロックして、ラリーにしてくれるのだ。

時吉・森下ペアに先にドライブを打たせてから、勝てそうだったのだというのがよく分からない。残念ながら、僕にはストップ出て打たれる、ミスして謝る、でも勝てそうだった、というこの3つの記憶しかないのだ。


団体戦でも上西さんは頼もしかった。僕の人生で一番嬉しい試合。2年生の時、夏の近畿大会団体戦、決勝で上宮に勝って優勝できたのも上西さんがいたからだ。

僕が2-2ラスト、3-2で勝利するという一番おいしい部分は持っていったが。笑

(トップの画像は近畿優勝した時の写真)

高校1年冬から、「あれ?東山、上宮とも十分勝負できるのかな?」という気持ちにさせてくれたのは上西さんと一緒にダブルスを組ませてもらったからだ。



2人目は、滝川第二のツインエース、同級生の渡辺だ。(ツインエースとは、卓球王国さんが僕と渡辺のことをそう書いてくれたのだ)

兵庫県のジュニアロードスカイ出身で、小学生の時からのライバルだ。当時から実力も同じくらいで、良い勝負だった。

渡辺もアバロックスだった。つまり、当時は中ペンと言えばアバロックスだったということだ。

高校の途中から、フォア面は僕と同じキョウヒョウで、バックはハモンドやスレイバーFXを使っていたと思う。バックは、チャックでキョンキョン鳴らしたいタイプだ。



渡辺が裏面を使い始めたのは、1998年小学6年生から。小6の全日本ホープスの兵庫県予選で、渡辺を見るとバックは全て裏面打法になっていた。

裏面打法と言うのは、劉国梁、閻森、王飛、馮哲と中国選手がやる技術と思っていたので、初めて裏面打法を使いこなす選手と対戦したのだ。

当時は、互いにバックドライブは出来ないので、バックのハーフボレー、プッシュをしていたと思う。

余談だか、ホープス本戦でも、2回戦で裏面を使う千賀君(卓伸EC)と対戦をしている。


中学時代もずっと同じくらいの実力で、共に滝川第二に入学した。

確か2年の途中からか1コマ目はずっと渡辺と練習していたのだが、彼は1コマ25分間、ずっとワンコースで練習していた時が多々あった。

「僕はいつも、ずっと同じ練習をして面白いのかな?」「動いて打った方が効率的なんじゃないかな?」と思っていたのが、別に人は人、自分は自分なので、一度も聞いたことはなかったと思う。

ただ「練習相手退屈だなー」と思ってブロックしていた記憶がある。

今思うと、あれは、一球一球の精度を高める修行的な練習だったのかもしれない。でないと、ワンコース練習してるだけで、東京選手権のジュニアで準優勝出来るなんておかしい。


渡辺は、中学時代にショートも練習していたが、高校に入る時点で、バックは裏面だけで対応するスタイルになっていた。渡辺の裏面は、上西さんよりは、ワンランクレベルが高ったと思う。

元々は下回転に対してのバックドライブからのハーフボレーだったが、途中から上回転に対しても少し回転をかけてバックドライブを打てるようになっていた。

今では当たり前だが、僕らの時代、バックドライブというのは、下回転に対しての打法で、上回転に対しては、ハーフボレー中心に、弾くミートやプッシュをしていた。

青森山田、仙台育英の全国トップしか、上回転に対してドライブをしていなかったのだ。

その中で渡辺は上回転に対してもバックドライブが出来るようになっていき、何がすごかったかというと、バックストレートに裏面でバックドライブをしていたのだ。

渡辺は元々投げ上げサーブが上手く、高校から巻き込み系のサーブを覚えた。キョウヒョウでペンの先端から当てに行く巻き込みサーブだったのでめちゃくちゃ切れていた。

その為、どうしても、吸い込まれるようにバック側へのレシーブが中心となってしまう。渡辺は三球目で、裏面ドライブをバックストレートに打つ。これは本当に取れなかった。

このサーブ、三球目のセットは完璧で、僕は2年の夏から冬にかけて、全く渡辺に勝てない時期があった。嘘ではなく、本当に全く勝てなくなった。(僕がその状況を打破した、とっておきの秘策は、またいつか書いてみたいと思う。)


なので、高校3年当時、僕は、渡辺が日本で一番裏面が上手いと思っていた。チームメイトでありながら、それくらい評価するほど、あのバックストレートへの裏面ドライブすごかったのだ。

ちなみに、渡辺は近畿大学に進学し、翌年兵庫国体を控えた大学1年の全日本団体に兵庫県代表で出場した。そして、閻森(当時グランプリ)に勝ったのだ。

「閻森に勝つなんて、やっぱナベの裏面はすごいなー」と結果を検索した、大学の図書館のパソコン画面を見ながら思ったのを覚えている。



最後の3人目は、もちろん村守キャプテンだ。

村守君とは学生時代に接点はなく、社会人2年目から、愛卓TTCに誘われ一緒に試合に出るようになった。

小学生時代から日本トップで活躍し、青森山田、ドイツ留学、日本代表とスーパーエリートだ。スーパーエリートになるには、普通の人ではなく、負けず嫌いで、強気で、エゴイストでないとなれないと思っていたのだが、村守君は初めて会った時から、僕に優しく接してくれた。

それから今でも仲良くさせてもらっているのは大変ありがたいことだ。


村守君は、引退後は、フォア面を裏ソフトでやっていた時もあったが、ここ数年は表ソフトを使っている。ここ数年と言っても、年間数回しかラケット握っていないと思うが。

村守君の裏面は、上西さん、渡辺よりも、スイングがとてもコンパクトで、ヨーロッパ的な腰を捻ってバックドライブを打つことは無い。下回転に対しては、重心を下げ、上がりながら打つ、中国的なバックドライブだ。

そして、打点が普通の人よりもワンテンポ速い。このテンポでバックドライブを打つ選手は今どきの選手でもなかなかいないと思う。

特に、卓球王国にも書かれていたが、バックストレートへの裏面ドライブ。これはエースボールで、知り合って約10年間、試合を見ていても、これをカウンターされたことは一度もない。ノータッチで抜けることもしばしばある。

その度に「やっぱり、村守君ってすごいなー」と思っている。


村守君を見ていて、改めて実感するのが、表ソフトのスマッシュほど難しい技術は無い!ということだ。

引退してから全く練習をしていないが、裏面は安心して見られる。フォアに関しては、最初から絶好調というのは一度も見たことない。

こんなに実力がある選手でも、裏は使えても、表を使いこなすというのは難しいのだ。


「何で卓球って、シェーク裏裏ばかりなの?」と疑問に思っている方へ。「表というのは、裏よりも数倍使うのが難しいのです」「さらにペンホルダーというのも、シェークよりも数倍使うのが難しいです」

それに加えて、裏面まで振るのだから、村守君はやっぱりすごいのだ。



この3人は、裏面が普通では無い時にチャレンジして、自分の技術にした選手達だ。多分地道に裏面をたくさん振っていたのだと思う。

何事も、新しいことにチャレンジして、継続して初めて結果が出てくるのだ。

実は、来月渡辺に数年振りに会う予定がある。機会があれば、なんでワンコースで練習していたのかを聞いてみようと思う。


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