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のっぱらへでかけよう!vol.6

てるさんの野遊び子育ち日記
「northern style スロウ」vol.66 Winter 2021 掲載

「とぅ!」ズボッ「楽しい~!」、「それ!」ドスッ「気持ちいい~!」、住宅の屋根から小学生達が雪の中へダイブして遊んでいる様子を幼児達が眺めています。すると、「ボクもやってみる!」「オレも~」と何人かが屋根に架かるハシゴへ向かいます。経験のある子や活発な子達は小学生と同じ住宅の屋根を目指しますし、それより低い物置の屋根を目指す子達もいます。そして、そのまま躊躇なく飛べる子、慎重に飛ぶ子、何度も躊躇った末にやっと飛べる子、どうしても飛べずに諦めてハシゴを降りてくる子、何度も飛ぶ子、1回で止める子・・・それぞれが各々の雪ダイブを遊んでいました。
そんな中、一人その遊びに加われずにいるAくん(4才)に向かって、この遊びを楽しんでいるSくん(5才)が「Aくんもお出でよ、楽しいよ~」と声をかけました。するとAくんは「ボク、高いところ怖いからいいや・・・」と返し、一人で別の雪遊びをしていました。ひとしきりこの雪ダイブ遊びが盛り上がった後、こども達は他の雪遊びへ散っていきました。そして、一人ハシゴの側に残ったAくんがハシゴに近づいていくのが見えました。彼はハシゴに足をかけ1段1段ゆっくり登り始めました。途中、何回か止まったり、何段か降りたりしていましたが、ついには住宅の屋根へ上がったのでした。その後、屋根からジャンプこそできませんでしたが、またゆっくりとハシゴを降りてきたAくん。そっと近づいて「登れたね!」と声をかけると、照れくさそうにしながらとても満足そうな笑顔でうなずいて応えてくれました。
 この時のAくんは、みんなが楽しんでいるから、誰かに誘われたからではなく、自分の意思でやろうと決めてチャレンジして、自分ひとりで完遂できたことに(完遂できなくても)意味があるのだと思います。最初は、やってみたいけど怖いという思いが強く、でもどこかで心の準備が整って「やってみよう!」いう気持ちになり、自分で決断してチャレンジし、何度か挫折しそうになりながら、最終的に屋根に上るという目標を達成できたのです。そこには、誰からの指示や強制もなく、従って比較や評価されることもない自分だけの世界の出来事でした。単にハシゴで屋根まで登るという体験ですが、彼はこの経験から自分への小さな自信を手にしたのだろうと思いました。幼少期の遊びを通したこの積み重ねが自分への信頼感となり、それが自己肯定感を少しずつ高めていくのだと考えます。今のこども達は、他者から与えられたこと、やらされることばかりで、それはつまり他者からの比較や評価にさらされ続けているということになり、そこから自分への自信や信頼を得ることはできません。本当の意味での自信とは、他者から与えられるものではなく本人の内面から出てくるものなのではないでしょうか。
 「遊び」は常に自分がスタート。面白そう、楽しそう、やってみたいと自分が思ったことから遊びが始まります。だから、過程も結果も全部自分のもの、他人からの比較や評価は関係ありません。好きなことをしながら、自分を作り上げていく行動なのです。そして、自然の中での遊びにはこの起点となる面白そうなこと、楽しそうなことがたくさんあります。今の雪の季節も、飛ぶ、滑る、固める、掘るなど楽しい要素がたくさんです。こども達には春までたっぷり雪遊びしてもらいましょう!


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