terubose_1001

てるてる坊主

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花火

櫓を囲む屋台と刹那を舞う人々 離れた川沿いのベンチにしらけた背中を預ける 光の粒が弾けて溶けるのを見上げた 隣に座る人がいないことは この素晴らしさを拝まない理由に足らない 誰のものでもない夜の空が埋まる それを目の前にして あらゆる能力や、あらゆる差は 無力であり 同じ方向に釘付けになった無数の惑星が 同じ光を反射させて燦く 不偏 僕は花火が好きだ

    • 2時30分 上野公園

      ひと仕事を終えたビルたちの 残り火が水面にうつる 眼鏡を通さないと曇る僕の目が 潤っていくみたい 爽やかな風が触れた顔は 何か思ってるようで 昼は照らされて 夜は照らして 明日も精一杯回転する東京 目が回って見失っても こんな瞬間があれば 美しく転がれている そんな気がした

      • 目の前に扉がある ノブに手をかけた時 柔らかく引っ張られた感覚があった気もするけど 多分それは自分の力で 開けたんだと思う 扉の向こうに何が待っているのか 期待を膨らませていたのか 怖いもの見たさに似たものだったのか それとも何も思っていなかったのか 何かを思うことができるほど 言葉を知らなかったのかもしれない そこには何もなかった 何もなさすぎて 何かありすぎる世界に触れるだけで 全身が痺れるほど何もなかった 右も左も前も後ろも上も下もない

        • 鏡張りの夜の音

          手が透けてるみたいだよ。 初めて世界と繋がった日のこと 目が眩むほどの光とその温度に それを愛と知らずに染み込んでいく音に弾ませた モノクロームの霞の匂いで目を擦って ただ包み込まれるの 触れてなぞって掴む 遠くにいる僕の一部も みんなそうしていたんだ 音を括り付けて 記号を振った紙を巻きつける 繰り返して今 てっきり足りなくなることのないもの だとそう思ってたんだ でも最近 今まで気づいてなかっただけかもしれないけれど 崩れ落ちていってるみた

          くさい顔

          今にも破裂しそうな風船の中で 両手を広げた外のものは それそのものが ある ということすらも 危ういと 思っているよ。 今も溢れてこぼれ落ちているらしい。 でも 僕の目は2つしかない。 耳は2つしかない。 鼻は1つしかない。 口は1つしかない。 心に蓋をするみたいに覆った布だって 広げたら1枚なんだ。 これじゃ足りないよ。 僕は知っている。 僕を僕以上にしてくれる 僕だけのものを みんな持ってる みんな自分だけ持ってる 手をすり抜けた

          夏休み

          今あったこと 考えたこと その色もその温度も 全てそのまま 残って欲しい 色も温度も失ったそれは 創造性を失ったレゴみたいに 無造作に積み上げられて 名前のない植物みたいに 僕は踏みつけていることにも気づかない それは踏みつけられてることにも気づかない 大切に握りしめていたら それは氷のように 形を変えて やがて なくなる 痺れた感覚を頼りに 不確かな存在を頼りに

          プール

          自分が出せる精一杯の力で 浮き輪にしがみつく 引き摺り込もうとする力に 抵抗した先に見えたものは 滲みる目を開けて望んだものは 色以外曖昧な世界を繋ぎ合わせて 描いていたものとは違った 自分がその景色の違和感にならないように 元からないパーツをあるものとして 何も噛んでいない歯車がうなりを上げる 浮き輪に空いた穴は 1人で塞ぎ切れる量をこえていた どうにかしてあげられる存在は ただ1人しかない 浮き輪ごと体も処理しきれない感情も 飲み込まれて

          夜明け前のベランダ

          しょうがない不味さも ない唾と一緒に飲み込む 生ぬるい空気が じわじわ染み込んでいくのを 眺めながら優しく照らされてる よりかかって明日をこなす予定で今日も 深いため息に溶けていく

          夜明け前のベランダ

          踏切

          向こう側に確かに存在するお互いに、 もどかしさを預ける 何もかもが吹き飛ぶほどの音を立てて 全てを攫っていく

          梅雨時の晴れた夜に

          色のない重みが 染み込んでいく 声も音になって 喧騒になって 水を弾くみたいに 何も通さなくなる

          梅雨時の晴れた夜に

          くもった世界

          眼鏡を拭いても くもったまんま 眼を擦っても くもったまんま 自分でくもらせた景色に 自由を落書きした 息を止めて 目一杯力を溜めて 立ちあがったときに よろめいた 落書きは空気に溶けた

          くもった世界

          アカツメクサ

          絡まったイヤホンみたいな道をぬけた先の高台で 右目が覗き込んだ世界を埋めた 水に落とした紫みたいな花 ただ風に揺られて たまに踏まれたりして アカツメクサに僕はなりたい。

          アカツメクサ

          なぞる

          ぶつけない。 崩さない。 触れない。 ただ優しくなぞる。 砕いて、 粉々にして、 飲み込んで、 むせぶ。 清々しいほどに威勢よく飛び出したそれを、 塞ぎ込んで、 力強く握りしめたら、 誰も見えないところに押し揉んで、 何事もない。 横に引っ張って両端を釣り上げた感覚が、 僕を濯ぐ。

          何者

          何者でもない人が 走らせた曲線は、 誰の目にも止まらなかった。 何者でもない人が 叫んだ声は、 溶けて広がって滲んだ。 何者でもない人が 踏みつけた土は、 空が埋められた感覚を 確かに覚えていた。 何者でもない人は、 何者かになったことを知らない。

          ヨル

          夜は9時まで。 背中を撫でる優しい温度。 寝返りの唸り声がいびきとぶつかった時の 煙にサイレンが集まる。 空をなぞれば光と踊って 濁った感性に目を瞑る。

          ヘッドライトが照らした粒は クリスマスみたい。 アスファルトに打ちつけた一瞬の光は 繋がって、集まって、流れて、 空気にとけて、