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「とよまだんご」が「森舞台」と「one world」に繋がる不思議

「とよまだんご」が大好きで、気仙沼から登米町(とよままち)への2回目の訪問は、朝9時半となっていた「とよまだんご」の開店時間に合わせた。その時間ぴったりにお店の前に行った。が、閉まっている。臨時の休業日?などと、ひとりで不安がっていたら、梅小路を南から歩いてくる女性が声をかけてくれた。

近所にお住まいの方で、お団子の持ち帰りの予約に来たという。お店が開くらしいことが分かり、待ち時間が、自然におしゃべりタイムに。

明日から2泊の予定で登米に泊まりたいのだが、いいところはないかとお聞きすると「それなら『かくやま旅館』にしたらいい。ここから近いから。連絡しようか?」と彼女が言いかけた時、北の方から軽自動車が近づいてきた。「あら、ちょうど来た。あの人や!」と言う。なんと「かくやま旅館」の女将さんが運転する車だった。

女将さんの車を、手を大きく振って停めてくれて、私のことを話し出してくれた。こうして、登米町での宿泊先は「とよまだんご」のお店の前で、しかも開店前に決まってしまった。

今度は、女将さんも交えて、3人のおしゃべりタイムだ。女将さんに「とよまで何をするのか」と聞かれたから「『おかえりモネ』のロケ地を巡っている、森舞台にはまだ行ってない」と言うと、お団子を予約に来た女性が、なんと「とよま能」をやっていたという。しかも、「数日後、仲間が森舞台で実際に演じるので、今から公民館に申し込めば、観られるかもしれない」と教えてくれた。早速申し込むことにした。

話が二つ、あっと言う間に決まった時、頃合いを見計らったように「とよまだんご」のご主人が、店の扉を開け、開店の準備を始めた。朝食を控え、だんごを食べるために来たのだが、食べる前に大事なことが、店頭で決まってしまった。ほんとに、ご縁とは不思議なものだと思った。

翌日から、私は「かくやま旅館」に泊まった。古い旅館で、畳敷の座敷がずらっと並んでいるような旅館だ。廊下はとにかく長い。部屋と部屋の間は襖だけ。入口は障子のみ。鍵は無い。ああ、これが昔ながらの旅館なんだなと理解した。

夕食は、畳の上に置く脚付きの御膳が運ばれてきて、また懐かしくなった。私の四国の田舎でも、昔の結婚式や法事はこうだった。畳の部屋にずらっと座布団を並べ、その前にお膳を並べて会食をしたものだ。木造なのに暖かかった。いや、木造だから暖かいのかもしれない。布団は綿。適度な重さがちょうど良く、ぐっすり眠れた。

もっともこちらでも、移流霧を見るために、起床は午前4時。その日は朝イチで中尊寺を目指すのだが、それはまた、別なお話ということで、その帰りに、トムさんの喫茶店のモデルとなった「one world」に、予定通りにお邪魔したことを書かなければと思う。

喫茶「one world」は、お兄さんと妹さんお二人でお店を切り盛りされている、心地よいお店だ。お兄さんは読書が大好きで、お店の中は本がたくさん、しかも美しく機能的に並べられている。私が、四国から来て『おかえりモネ』のロケ地を巡っていると言っても、積極的には反応してくれなかった。店内にも、ポスターは見当たらなかった。

本を読んでいる他のお客さんの邪魔にならないよう、静かにコーヒーを飲んでいたら、不意に妹さんが「どこに泊まってらっしゃるんですか?」と聞いくれた。気を遣わせてしまったんだと思った。

とよまの「かくやま旅館」だと答えた。すると、妹さんは一瞬「えっ?」とびっくりしたような顔をされたが、なぜか「そんなはずはない」みたいな表情になった。「かくやま‥ですよね?」と再度訊かれたので、GoogleMapのストリートビューを見せ、「これだと思います」と答えたら、「え〜っ、ウソ!」と驚いていた。カウンターの向こうにいた店主のお兄さんも、「また、レアなところに‥‥」と笑っている。

他所から来た人間が、普通は泊まらない旅館だと言う。確かにそうかもしれないと思ったが、私は気に入っていると伝えた。

なぜ、「one world」のお二人が驚いたかと言うと、「かくやま旅館」の真ん前に、おふたりのおばさんのお家があり、幼い頃は、よく遊びに行っていたらしい。しばらく行っていなかったおばさんの家の目の前の旅館の話題で、懐かしさが込み上げてきたみたいだった。

その後、店主のお兄さんが、店内外のどこにも「おかえりモネ」のポスターを貼っていない理由まで話してくれたのも、私が「かくやま旅館」に、たまたま泊まっていたからだと思う。こんな偶然があるのかと、私も心底驚いた。

旅館「かくやま」に戻り、夕食のお膳となった時、また驚かされた。くだんの向かいのおばさんが、「one world」の妹さんから電話を受けてびっくりし、なんと油麩を2袋を持って来られて、私に渡すよう女将さんに預けて行ったという。

実は翌朝、登米町にいるにも関わらず、早朝、気仙沼に戻り、気嵐の会に参加するつもりであったから、お礼は、帰ってきてから、ご紹介して頂けますかとお願いしたら、快諾してくれた。

翌日、気仙沼から帰ってきて、女将さんと一緒にお礼に行ったら、宿題を出された。「四国に帰ったら、是非、油麩丼を作って食べて欲しい」とのこと。少し時間がかかったが、色々調べて作ってみた。カミさんが白髪ネギが好きなので、青ネギを使っていないが、何とか格好にはなった。

予想してなかった油麩の食感に驚いた。いくつかのグルメサイトに「油麩は、煮すぎると美味くなくなる」と書いてあったから、そこはキッチリ守った。肉が入っていないのに、満足できたのは不思議だった。

何も決めないで旅を続けていると、思いもかけないことが、次々と起こる。今、思い出しても不思議な感じしかしない。旅館「かくやま」の女将さんも、この偶然をたいそう喜んでくれて、お土産まで頂いた。そのお礼に、今、『おかえりモネ』のロケ地を回った写真のアルバムを作っている。女将さん、もうちょっと待ってね。



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