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#2 学校統合のジレンマ①

地方部の地域コミュニティにとって大きな心配が人口減少だ。少なからずある。
そしてこの人口減少という問題が象徴的にクローズアップされることになるのが、学校の統合が持ち上がってきたときである。

実は私は静岡県下の10あまりの自治体で学校再編に関わってきた。現在もいくつかの自治体で学校配置についての議論に加わっている。けれどもこのテーマが好きなわけではない。むしろ気の重い仕事だ。学校配置の問題に踏み込まざるを得ない学校サイドの気持ちも、学校を守りたい地域サイドの気持ちもわかるからだ。

学校の大きさ(行政用語で適正規模という)を考える際にはいくつかの節目がある。

文部科学省は小学校についても中学校についても12学級から24学級を標準規模としている。しかし標準規模に満たいからといってすぐに心配する必要はない。

心配が生じ始める一つの目安は、クラス替えができなくなってきたときである。小学校なら250人、中学校120人くらいを下回ると単学級の学年が出始めて、クラス替えに支障を来すようになり、子どもの人間関係の固定化が心配され始める。

次の節目は集団スポーツが難しくなってくる数になった時だ。例えば一学年20人(男女がそれぞれ10人程度)を下回り始めると、サッカーやバレーボール、ソフトボールなどの集団スポーツが難しくなってくる。中学校では部活動の選択肢が非常に少なくなる。

さらなる節目は複式学級が生じ始めるときである。(学年によって基準が異なるが)、小学校では二つの学年を合わせて、16人を下回ると複式学級が生じる可能性がある。複式学級では一人の先生が進度の違う二つの学年を同時に教えなければならなくなるので、教育の中身の面でも制約が生じる。

もちろん小規模校には良い面もある。クラスの規模がやや小さい方が、きめ細かく指導することができ、保護者との信頼関係も構築しやすいという側面もある。一般に小規模校の方が地域との繋がりも強い。

とはいえ、保護者の視点から見ると、やはり生徒間でのコミュニケーションが限定され、また教員集団も小さくなることの心配の方が勝ってしまう。正確な統計はないが、私の見聞きした経験によると小学校で大体100人を切るくらいになると小学校入学前の段階で居住地を移動する保護者も目立って出てくる。

では可能なところから学校を速やかに統合をすすめたらいいのか?
実は地域コミュニティの側からすると学校統合は受け入れがたい選択であることがほとんどである。

(次号に続く)