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#7 場所のもつ力

それぞれの人のまわりに漂う独特の空気感があるように、それぞれの場所には独特の空気感がある。
落ち着ける場所、テンションの上がる場所、いろんな発想の浮かぶ場所、気分の悪くなる場所等々・・・、少なくとも自分の経験上はメンタルと場所との関連がある。

パワースポットと言ってしまうと胡散臭くなるが、人と話してみると、多かれ少なかれ、誰でもこうした場所と人の心理との相互作用は経験しているようだ。

それが気圧や温度・湿度などの気候条件によるものなのか、森の木が発散するフィトンチッドのような化学物質によるものなのか、視覚や聴覚等の感覚上の効果によるものなのか、磁力や超音波などの感覚では捉えられない刺激によるものなのか、はたまたそれらの複雑な組み合わせによるものなのかはわからない。

しかし少なくともそれは、施設の新旧、職場か観光地かといった場所の機能、またはそこで会う人との対人関係による間接的影響といった種のものではなさそうだ。

宗教学者の植島啓司氏によると現在イスラエル領のエルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教だけではなく、100以上の宗教の聖地であった形跡があり、聖地は1センチたりとも場所を移動することはないという。(『聖地の想像力 ―なぜ人は聖地をめざすのか』 集英社新書 2000)

私はエルサレムに行ったことはないが、砂漠の中の何もないような場所(ゴメンナサイ)の帰属をめぐって、信仰上の理由をこじつけて人類が何千年も争い続けている、と考えるのはそれこそあまり合理的ではない。

こうした場所と人との相互作用には、「相性」や「個人差」というものがきっと存在する。場所についての好みは人それぞれだ。誰にとっても理想の地域というものはないだろうし、その逆もないはずだ。

このような場所の発する空気感は地域の個性と言ってもいいだろう。

地域を考えることは、地域特有の個性と、その舞台で育まれる人間関係のかけ算を考えることだ。だからこそ面白い。