情報格差社会の怪物
近頃「ニセ科学批判」の潮流がますます大きくなっている。
とりわけ、医師の近藤誠氏の(反・ワクチン的な立場を支持する)近著に対する批判はすさまじく、同著によってそのうねりは決定的なものとなった。氏の近著をいわば台風の目として議論はいまなお継続している。
ニセ科学やデマに踊らされてしまったことで、せっかくの人生を、もっといえば命そのものを危険にさらしてしまうことは、たしかに避けたいことであるし、これをもって金銭的利益を得ようとする行為は、道義的な観点からも褒められた行為ではないだろう。
現代はさまざまなツールから容易に多様な情報にアクセスできるようになった便利な時代だ。しかしながら、それゆえにただしい情報にたどりつくためのリテラシーの要求値が高まったことは否めない。もちろん、価値ある情報を得ることが誰にとっても難しい時代になったわけではない。高いリテラシーを持っている人間にとっては、そのリテラシーがレバレッジとなり、みずからの情報検索効率を何倍にも高められる時代が訪れたことをも同時に意味しているからだ。
現代の人びとは、ある意味で恵まれた社会に生きている。先人たちは「調べもの」に何日もかけなければならなかったが、いまではポケットのなかのデジタル機器を少しいじれば、先人たちとは比較にならない効率で「調べもの」ができるからだ。だが、その「情報効率化社会」のベネフィットを拡大してきた結果、ある途方もなく大きな怪物を生みだしてしまったのだ。
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