「ブラックは嫌だ、ブラックは嫌だ……」と願う人にかぎって結局ブラック企業に入社してしまう怪現象のメカニズムに関する調査報告書
ブラック企業への就職——さながらアリジゴクに足を取られてそのまま滑落してしまうかのごとき不運である。可能なかぎり回避しなければならないイベントであることに、ほとんど疑問をさしはさむ余地はないだろう。
しかしながら、ブラック企業がなくなることはない。なぜなら、ほぼ全員が避けたいと願っているにもかかわらず、毎年必ずブラック企業に入社してしまう人が一定数いるからだ。
ブラック企業に入社してしまった人の多くは、なにも好きこのんでブラック企業を選んだわけではない。できるだけよい就職先を探そう、労働環境のよい場所を見つけようと、選びに選んだ挙句に、ブラック企業と巡りあってしまったのだ。
なぜこんな不幸なアクシデントが起こってしまうのだろうか。偶然なのだろうか。それとも、「貧乏くじ」を引いてしまう人には、なんらかの共通点が見いだせるのだろうか。それは、多くの若者が劣悪な求人に呑みこまれていった、リーマンショック世代の当事者としても、長年関心の対象となっていた。
数年間にわたってコツコツと溜めた「ブラック企業勤務経験者」たちの証言から、ブラック企業を避けようと願いながら、結局ブラック企業を引き当ててしまう不幸な人びとに、どうやら一定の共通点を見出すことができたのではないか——と、ようやくおぼろげな輪郭を描けるまでに至った。
今回の記事は「ブラック企業を避けようと行動しているにも関わらず、なぜか最終的にはブラック企業に入社してしまう人びと」の行動様式やそのメカニズムについての報告である。
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