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自国第一主義を掲げるハンガリーと欧州随一の高金利通貨フォリントの魅力!

今月、世界陸上選手権がハンガリーで開催され、ブタペストの美しい街並みに感銘を受けた方も多いと思うが、ハンガリーは、戦後、ハンガリー動乱により、ソ連の影響下に入り、1989年になって、議会制民主主義に移行している。民族の祖先は、ウラル山脈から来たマジャル人であるが、宗教はカトリックで、文化的にはオーストリアに近い。現在のオルバン首相は、ロシアによるウクライナ侵攻以降も、エネルギーをロシアに依存している関係で、ロシア制裁には消極的な立場を貫き、プーチン大統領とも良好な政治的関係を維持する「自国第一主義」を貫き、国内経済を安定させ、通貨フォリントを堅調に推移させている。


1.ハンガリーフォリント堅調の背景

世界陸上開催による海外からの観光客急増に伴うハンガリーフォリント買い需要の高まりや、ユーロ圏との8%以上の金利差を背景に、欧州随一の高金利国であるハンガリーへの資金流入が続き、図表1の通り、今月に入ってもハンガリーフォリントは、対ユーロで堅調推移を続けている。
一昨日開催された政策決定会合では、ハンガリー中銀は、政策金利を現行の13%に据え置く決定を行った。その一方で、一時25%を超えていたインフレ率が17%まで低下していることを踏まえ、翌日物預金金利を4会合連続引き下げ14%とした。中銀記者会見において、現行の金融政策を9月以降も維持すると発表したことが好感され、ハンガリーフォリントは対ユーロで続伸している。
また、ロシアによるウクライナ侵攻以降の急激なエネルギー価格の高騰により一時悪化した経常収支についても、石油、ガス価格が低下し貿易収支が黒字化したことで、足元、図表2の通り、改善傾向が顕著になっており、ハンガリーフォリントの安定に寄与している。

(図表1 ユーロハンガリーフォリント推移チャート Trading Viewからの引用)
(図表2 ハンガリー経常収支推移チャート Trading Economicsからの引用)

2.ハンガリー経済の展望

EU内でも法人税率が最も低いハンガリーは、安価な労働力を背景に、外国企業の国内誘致にも積極的で、最近では、韓国、中国からの車載用蓄電池企業の誘致に成功している。今後は、EUのEVシフトに向け、車載用蓄電池企業とEV完成車メーカーをつなぐハブ拠点の役割を担う取り組みを活発化させており、好調な経済状況を反映して、今年度中にハンガリーの一人当たりGDPは2万ドルに達すると予測されている。

3.ハンガリーフォリント円の行方

ハンガリーフォリント円は、図表3の通り、今年に入ってから一本調子に上昇を続けてきた。今月に入ってからは、上昇一服となっているが、大きく調整するような状況にはない。名目13%という欧州随一の高金利国であるハンガリーフォリントの認知度は、日本でも少しずつ増しており、良好なファンダメンタルズの割に、日本との10%を超える金利差は、EU加盟国において出色の大きさであり、日本の個人投資家からも着実な人気を集めている。こうした日本からの投資も支えとなって、当面、1ハンガリーフォリント0.45円に向け、緩やかに上昇傾向を続けるものと予想する。

(図表3 ハンガリーフォリント円推移チャート Trading Viewからの引用)

前回のハンガリー特集はこちら

20230831執筆 チーフストラテジスト 林 哲久


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