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東欧随一の高金利通貨ハンガリーフォリントの魅力!

ハンガリーは、1999年にNATOに加盟し、2004年にはEUに加盟、2007年にはシェンゲン協定を結び、EU内では、国境検査なく渡航できる国であるが、財政赤字が大きく、通貨に関しては、未だユーロ導入を果たせていない。そのため、独自通貨ハンガリーフォリントを使用しているが、昨年来の世界的なインフレ高進の影響を受け、現在もハンガリーでは、10%以上の高金利政策を維持し、その結果、今年に入り、一本調子で上昇を続けるハンガリーフォリントの魅力を下記に探ってみた。


1.ハンガリーの独自外交路線と為替相場

現在のオルバン政権は、エネルギーをロシアに大きく依存している関係で、親ロシア政策を採っており、ロシアによるウクライナ侵攻以降も、EUの中で、唯一ロシアからの原油禁輸に反対するなど、ロシア制裁の強化には反対の立場を採ってきた。そのため、EU内では、唯一ロシアから天然ガスの安定供給を2035年まで保証する契約を取り付け、現在も、比較的安定した経済運営を維持しているため、金融市場は、堅調に推移し、ハンガリーフォリントは対ドルで、図表1の通り、1ドル340ハンガリーフォリント近くまで、一本調子に上昇を続けている。

(図表1 ドル/ハンガリーフォリント相場推移チャート Trading Viewからの引用)

2.ハンガリーの金融政策

ロシアのウクライナ侵攻後のエネルギー価格の高騰により、ハンガリーのインフレ率が高騰したことに対応し、ハンガリー中銀は図表2の通り、2021年後半から政策金利の引き上げを開始し、昨年後半以降13%まで引き上げている。その結果、一時25%を超えていたインフレ率もピークアウトし、20%程度まで低下してきている。

(図表2 ハンガリー政策金利推移チャート CEICからの引用)

3.ハンガリー経済のリスクファクター

今後インフレ抑制のため、当面現行の高金利政策は維持されようが、足元、図表3の通り、GDP成長率は小幅ではあるが、マイナス成長に陥っており、通貨高と相まって、景気減速の度合いが深まり、スタグフレーションに陥るリスクには、注意が必要だ。更に、コロナ後の景気低迷を受け、財政赤字が一時拡大し、足元減少傾向に入ってはいるものの、インフレ抑制に失敗すれば、今年1月に、S&PにBBB-の投資適格ぎりぎりまで、信用格付けを引き下げられており、次の格下げは、投資不適格となるため、正念場の状況にある。

(図表3 ハンガリーGDP成長率推移チャート Trading Economicsからの引用)

4.今後のハンガリーフォリント/円相場の予測

ハンガリーは、歴史的に安い人件費を背景に高い生産性を維持し、また、EU内で最も法人税率が低い国の一つであるメリットを生かし、海外からの直接投資を引き付け、足元の経常収支も急速に改善してきている。ロシアとの良好な外交関係により、エネルギーの安定供給に成功していることもハンガリーの強みとなっており、今後、欧米諸国が金融引き締めの最終局面を迎える中、ハンガリーの高金利の魅力が際立つ蓋然性が高く、特に大規模金融緩和を続ける日本との金融政策とのコントラストが大きく、ハンガリーフォリント/円は、図表4の通り、2018年以来の0.44台乗せも狙える状態にある。

(図表 4 ハンガリーフォリント/円相場推移チャート Trading Viewからの引用)


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20230727執筆 チーフストラテジスト 林 哲久


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