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9年ぶりの高値を抜けてきたポーランドズロチ円相場の行方!

先月の総選挙で8年ぶりの政権交代が確実視されているポーランドだが、選挙対策として金融政策が利用されてきた疑惑が浮上している。ハンガリーとともに欧州の円キャリートレードの雄となっているポーランドズロチ円相場の行方を追った。


1.金融政策の政治利用疑惑

ポーランド国立銀行(以下、ポーランド中銀)は、昨年来1年間据え置いてきた政策金利を、今年9月・10月2会合連続で引き下げた。しかし、これは10月の総選挙を控えて、前与党PiSへの配慮との見方が浮上していた。今月11/8の政策決定会合は、10月総選挙後の初めての金融政策決定会合であったが、事前の利下げ予想を覆し、金利据え置き(5.75%)を決定したことで、過去2回の利下げが政治目的であったことが裏付けられたとの見方が浮上している。一時、20%近くまで上昇したインフレ率が足元低下基調にあるとはいえ、図表1の通り、依然政策金利を上回る6.5%のインフレ率である事を考慮すると、金利据え置きが妥当との本来のスタンスに回帰したとの見方も出ている。

(図表1 ポーランドインフレ率推移チャート Trading Economicsからの引用)

2.今後の金融政策の行方

今月の金利据え置きに当たり、ポーランド中銀は、今後の物価動向の不確実性を考慮しての判断と発表しており、2023年末の物価予想を7月時点より引き上げたことで、更なるインフレ率低下を確認するまで、現行金利を据え置く可能性もあろう。

3.ポーランド総選挙後の為替市場の反応

先月の総選挙を受けて、親EUのリベラル政権が誕生し、EUの右傾化に一定の歯止めがかかる事を市場は好感し、ポーランドズロチが対主要通貨で堅調推移を続けている。未だ、新政権発足には至っていないものの、前与党による新政権での組閣失敗がほぼ確実な状況であるため、ポーランドズロチの堅調地合いには変化は見られない。

4.今後のポーランドズロチ円相場の行方

ポーランドズロチ円は、図表2の通り、今週、2014年の高値36円10銭を上抜けてきており、目先大きな目標値が存在しない状況になっている。昨年来の金融引き締めにより、足元の経済成長率がマイナスに転落している状況に鑑み、インフレ率の低下に合わせ、利下げ再開に動く可能性はあるが、依然、現行の政策金利が、FRB(米国・連邦制度準備理事会)やECB(欧州中央銀行)の政策金利を上回る水準にあることから、目先ポーランドズロチ円が大きく調整する事態は想定しがたい。一方、日本の金融正常化には、尚、相応の時間を要することから、ポーランドズロチ円は、緩やかに40円に向けて上昇を続けていくものと予想する。

(図表2 ポーランドズロチ円チャート 右軸;単位 円 Trading Viewからの引用)

前回のポーランド特集はこちら

20231110執筆 チーフストラテジスト 林 哲久


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