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米国経済に景気後退の影が見える?!

米国12月雇用統計では、20万人を超える新規非農業部門雇用者数増が観測された一方、内容的には、直近3か月平均の民間雇用者数が11万人台とコロナ前の18万人弱と比べると減速の兆しが見られる。今後の景気後退リスクとドル円相場への影響を探った。


1.米国ISM製造業並びに非製造業景況指数の低迷

米国ISM製造業景況指数は、図表1の通り、14ヵ月連続50を下回り、2022年以来のFRBによる金融引き締めの影響を受け、2000年8月-2002年1月以来の長期間に亘る景気低迷状態が継続している。
12月米国ISM非製造業景況指数が、図表2の通り、市場予想の52.5を下回り、50.6と2023年5月以来の低水準に落ち込み、好不況の分かれ目となる50に接近するまで低下を示した。米経済の3分の2を占める非製造業部門において、雇用指数、新規受注指数、価格指数が大きく前月比下落している。非製造業部門も、今後50を下回ると、全産業において不況入りとなる。

(図表1 米国ISM製造業景況指数推移チャート Trading Economicsからの引用)
(図表2 米国ISM非製造業景況指数推移チャート Bloombergからの引用)

2.米国GDP成長率推移

米国2023年第3四半期GDP成長率確報値は、4.9%と2021年第4四半期以来の高い伸びとなった。GDPの6割を超える個人消費が3.1%と伸びを牽引した一方、住宅投資も新築住宅投資が牽引して3.9%の高い伸びを記録している。

3.鬼門の2月雇用統計

過去2年、2月発表の1月雇用統計が大幅に上振れた(2023/02 19万人予想に対し52万人、2022/02 13万人予想に対し 47万人)ことが、FRBの景気判断や市場の金利見通しに大きな影響を与えており、今年もその結果が注目される。

4.足元の求人件数推移

米国労働省による労働動態調査による求人件数(JOLTS求人件数)では、図表3の通り、一昨年一時1,200万件に迫る水準となっていたが、足元800万件台まで減少してきている。但し、失業者1人当たりの求人件数は1.4件と依然として高い水準となっており、雇用状況の逼迫が鎮静化しない限り、平均時給の伸び鈍化や、個人消費の鈍化には繋がらず、GDP成長率の下振れも想定しがたい状況にある。

(図表3 JOLTS求人件数推移チャート 単位:右軸 千人 Trading Economicsからの引用)


5.今後の米国経済予測とドル円相場への影響

米国経済は、企業部門の景況感に鈍化の兆しが見られるものの、雇用状況に鈍化の兆しが見られないと、GDP成長率の鈍化には至らないと判断できる。特に来月の雇用統計が過去2年同様大きく上振れると、年前半の利下げ観測が吹き飛び、米長期金利上昇、ドル円上昇の流れとなることが想定される。米国議会における本予算の歳出規模に関する大枠合意の報道で、金融市場では、長期金利上昇圧力が弱まっているが、これが一時的な低下に留まるのか、引き続き注視していきたい。

前回の米国経済動向に関する記事はこちら

20240110執筆 チーフストラテジスト 林 哲久


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