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トルコの為替・金融政策の変更とリラ相場の行方!

トルコは、一昨年来、利下げがインフレ率を下げるとの奇妙な金融政策を実行したため、実質金利が低下し、為替市場にリラ売り圧力が高まった。トルコ中央銀行(以下、トルコ中銀)は、リラ防衛の観点からリラ買い介入を実施してきたが、外貨準備高の減少に見舞われ、やむなくリラ買い介入の停止に追い込まれた。現状の為替、金融政策の動向と今後のリラ相場の行方を追った。


1.外貨準備高の推移と為替・金融政策の現状

図表1の通り、今年に入りトルコの外貨準備高は、リラ防衛のためのリラ買い介入に外貨準備を投入した結果、600億ドルを下回る額まで減少し、それ以上機動的なリラ買い介入が出来ない水準となったことで、トルコ中銀は、リラ買い介入を停止した。
その結果、トルコ中銀は、やむなく金融緩和策を放棄し、リラ防衛のための金融引き締め策に6月以降転換せざるをえなくなった。その陣頭指揮をエルカン新中銀総裁が担うこととなった。
しかしながら、不合理な金融政策を長期間続けた結果、トルコ中銀による小出しの金融引き締めでは、図表2の通り、インフレ率の悪化に歯止めをかけることができず、経常収支の悪化とリラ安進行の悪循環に陥っている。

(図表1 トルコ外貨準備高推移チャート 右軸単位:百万ドル Trading Economicsからの引用)
(図表2 トルコインフレ率推移チャート Trading Economicsからの引用)

2.今後の金融政策の行方

足元のトルコのインフレ率は図表2の通り、60%近い水準まで、前月比で10%以上悪化している。従って、今月末の金融政策委員会では、政策金利を少なくとも現行の25%から15%引き上げて、40%まで金融を引き締めないと足元のインフレ率の悪化に歯止めを掛けられない状況だと思われる。
その一方で、6月にリラ買い介入を停止したため、トルコ中銀の外貨準備高は、800億ドル程度まで回復しており、今後、再びリラ買い介入を再開できる余力を回復しつつあるとも言える状況にある。今後は、思い切った金融引き締めとリラ買い介入を同時に行うようなアグレッシブな金融・為替政策が必要となっており、エルカン新中銀総裁の手腕が期待される。
今までのような小出しな金融引き締め策では、とても現在のインフレ率の悪化と経常収支の悪化の悪循環を断ち切れないことは明白で切羽詰まった状況に追い込まれているとも言え、今月末の金融政策委員会が注目される。

3.今後のリラ相場の行方

足元のリラ相場は、図表3の通り、先月の金融政策委員会で市場の予想を上回る25%への利上げで、一時的に反騰する局面もあったが、先月のインフレ率の悪化が想定以上となると再度、対ドルで27リラ近い水準まで下落しており、リラ安に歯止めがかかっていない。最終的には、エルドアン大統領が、どこまで強力な利上げを容認するのかが、今後のリラ相場の行方を決めるとも言え、今後の発言に注意していきたい。

(図表3 ドルリラ推移チャート Trading Viewからの引用)

前回のトルコ記事はこちら

20230914執筆 チーフストラテジスト 林 哲久


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