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インドネシア銀行、予想外の利上げ再開を発表!

10/19、インドネシア銀行(中央銀行)が市場の据え置き予想に反し、1月以来9か月ぶりの利上げ再開に踏み切った。今後のインドネシアルピア相場の行方を占った。


1.想定外の利上げの背景

インドネシア銀行が0.25%の利上げに踏み切った背景には、図表1の通り、ドルインドネシアルピアが昨年11月の高値を抜けてきた為、インドネシアルピア急落のリスクを勘案し、予防的措置が必要と判断した可能性がある。
インドネシアルピア急落の原因は、今月に入ってからの米国長期金利の急上昇が理由として挙げられる。歴史的に慢性的な経常収支赤字に苦しんで来たインドネシアは、米国の金融引き締めや世界的な経済ショックが発生する度に、インドネシアルピアが売り込まれ、インフレ率の高騰や景気後退に見舞われてきた経緯があることから、先手を打つ行動に出たものと推察できる。

(図表1ドルインドネシアルピア推移チャート右軸:単位 ルピア Trading Viewからの引用)

2.インドネシアの経済動向

東南アジア随一の人口大国であるインドネシアは旺盛な国内需要を背景に図表2の通り、経常収支が趨勢的に赤字であったことに加え、資源国でありながら産業の付加価値化が遅れ、国内に精製施設がないため、安い原油を輸出し、高いガソリンを輸入するなど、経済システムの転換が遅れてきた。最近では、ニッケル鉱石の国内での精製を義務付け、EV向けバッテリー生産を本格化し、EVバッテリーの一大サプライチェーンの構築を目指すなど、産業の高度化に取り組んでいる。その結果、資源価格の高騰もあり、直近の経常収支が黒字化するなど、一定の通貨安定への道筋が見えてきていた中でのインドネシアルピアの下落であったため、早めの金融引き締めを実施したものと思われる。

(図表2インドネシア経常収支推移チャート 右軸:単位 百万ドル Trading Economicsからの引用)

3.今後のインドネシアルピアの行方

中東での地政学リスクの高まりなど、米国の金融引き締め以外にも複合的な不安定要素が発生したことで、インドネシアルピアが再度売り込まれるリスクもないわけではないが、上記の産業の高度化に加え、図表3の通り、外貨準備高の増加や、インフレ率の低下、日本との金融協力の枠組み構築による金融市場の安定化促進など、将来的な金融危機を抑制する仕組みを構築してきたことも事実であり、かつての様なインドネシアルピア急落という事態は避けられるもの予想する。現在、コロナショック以来の1ドル16,000ルピアが目前となっているが、コロナショック時の17,000ルピア近くまで急落するような事態は避けられるものと予測する。

(図表3インドネシア外貨準備高推移チャート 右軸:単位 百万ドル Trading Economicsからの引用)

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20231020執筆 チーフストラテジスト 林 哲久




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