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経済構造改革に成功しつつあるインドネシア経済の行方!

人口が2億人を超える内需大国インドネシアの経常収支の黒字化が定着しつつある。資源高による一時的要因だけに留まらないインドネシア経済の構造改革の現況を探った。


1.恒常的な経常赤字から脱しつつあるインドネシアの現況

東南アジア随一の人口大国であるインドネシアは、旺盛な内需に応えるため、歴史的に経常収支赤字体質であったが、コロナショック以降、図表1の通り、経常黒字に転換している。
原油、石炭、パームオイル、ニッケル、すずなど多様な資源輸出国であるインドネシアは、ロシアによるウクライナ侵攻後の資源高により、輸出が堅調に推移、経常収支の改善が著しい状況にある。

(図表1 インドネシア経常収支推移チャート CEICからの引用)

2.インドネシアの高付加価値化政策の導入

インドネシアは、歴史的に、資源国でありながら、国内に精製能力がないため、安い原油を輸出して、高いガソリンを輸入せざるを得ず、経常収支の赤字体質から脱却できてこなかった。しかし、最近では、ニッケル鉱石の輸出禁止を行うとともに、国内企業にニッケル精錬所施設の建設を義務付け、EV向けバッテリー生産に繋げることで、EVバッテリーの一大サプライチェーンを国内に構築する取り組みに着手している。こうした経済の高付加価値化政策が経常収支の安定的黒字化に寄与していくことになる。

3.インドネシア首都移転政策の着手

首都機能がジャカルタに集中していることで慢性的な渋滞が発生し、地盤沈下の発生など、ジャカルタの首都機能の低下が懸念される中、ジョコ大統領が打ち出した首都移転計画は国家の存続をかけた一大プロジェクトとなっている。
その第一段階として、インドネシア政府が東カリマンタン州に整備する新首都「ヌサンタラ」での独立記念式典を来年8月に行うための建設作業が急ピッチで始まっている。大統領宮殿の建設など、遷都という一大国家プロジェクトに日本のJICAも、積極的な技術支援を行っている。2045年の移転完了に向け、品質の高いインフラ整備のため、積極的な提言を行い、25-29年までに、すべての政府庁舎の移転を終え、公共交通機関の整備などを進める段階に入る予定になっている。

4.インドネシアのインフラの脆弱性

これまで、国家財政基盤の脆弱性の問題などから、ジャカルタから地方への高速鉄道の設置や、高速道路の建設も遅々として進んでこなかった経緯があり、莫大なインフラ建設費用を工面し、海外からの官民挙げての財政支援を取り付けつつ、首都移転を完遂するには、並はずれた努力が必要となる。

5.インドネシア金融市場への影響

こうしたインドネシアの経済インフラの整備は、インドネシア経済の成長ポテンシャルを飛躍的に高める。また、国内資源の有効活用により、国内産業の高付加価値化に繋げられれば、経常収支を着実に改善させていく可能性がある。
これは、図表2の通り、今まで東南アジア域内で比較的高水準にあったインドネシアのインフレ率を将来的に押し下げ、インドネシアルピア相場の安定に繋げることで、インドネシア経済を底上げしていこう。

(図表2 インドネシアのインフレ率推移チャート Trading Economicsからの引用)

6.日本とインドネシアの経済関係

こうした経済ファンダメンタルズの改善は、大きな人口と平均年齢が30代前半という桁外れに若い人口動態と相まって、インドネシア経済の成長を後押しすることは間違いない。
東南アジアにこれだけポテンシャルの大きな国が存在し、親日国で、天皇陛下の最初の外遊国がインドネシアであるほど親密で、日本車のシェアが95%近くを占めることなどに鑑みると、日本がインドネシアの成長を取り込めるチャンスは大いにある。
今後、インドネシア中心に東南アジアの成長を取り込むことが日本の将来の成長を支えることになることは言うまでもない。

前回のインドネシア記事はこちら

20230816執筆 チーフストラテジスト 林 哲久



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