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中国からの撤退準備を

共産中国で経済活動を行うリスクはますます高まっている。民主主義諸国は共産中国とのデカップリングを強めており、共産中国は自由な経済活動への締め付けを強化している。現時点の共産中国は巨大な経済規模であるが、停滞あるいは縮小していく可能性がある。共産中国市場の依存度が高い企業は、撤退準備を視野に入れるべきであろう。


共産中国での経済活動は割に合わなくなる


米中激突の行方-概説-」(2024年2月8日)で示したように、米中覇権戦争が継続する限り、日本及び世界の政治経済への影響は長期に亘り、「デリスキング(de-risking)」よりも「デカップリング(decoupling)」の色合いが濃くなっていくと推測される。米国では最先端半導体関連をはじめとして中華人民共和国(以下、共産中国)に関連する企業活動への規制を強めている。
米国の動きとは別に香港やマカオを含む共産中国統治地域では、中国共産党政府が、経済原則を無視し、企業活動を阻害するような統治行為を強めている。
2023年7月に改正された共産中国の「反スパイ法(反間諜法)」では、「国家機密」を盗むこと、スパイ行為、反乱の扇動、外国勢力による干渉、攻撃目標の指示、などが犯罪とされている。さらに、2024年7月には、共産中国の国家安全当局の担当者が、個人の携帯電話やパソコンを検査できるなどの取締り権限を強化した法令が施行されている。香港でも2020年に施行された「香港国家安全維持法」を補完する「国家安全条例」が2024年3月に施行されている。「国家機密」やスパイ行為等の範囲が曖昧であり、恣意的運用がなされることが懸念されており、企業活動にもマイナスの影響を及ぼす。
米国をはじめとする民主主義諸国による共産中国との取引に関する規制強化、共産中国自身による共産中国国内での自由な経済活動への締め付け強化を考えるなら、共産中国での経済活動は割に合わない度合いが強まっていくであろう。

規模にごまかされると痛い目に


現時点の共産中国はGDP世界2位、人口世界2位と巨大な規模である。
しかし、共産中国は既に人口減少局面に入りつつある(「米中激突の行方-概説-」(2024年2月8日)の図2参照)。人口規模は需要規模と大いに関連がある。また、共産中国の賃金水準は相対的に高騰しているが、人口減少が進むということは全体としては労働力の需給が引き締まるということであり、経済活動水準が維持される場合の賃金は上昇基調が続く理屈となる。
前章で書いたことも併せ考えると、自由な経済活動が困難になる上に、市場規模縮小(販売面でのマイナス)、賃金上昇(生産面でのマイナス、販売面ではプラス)の可能性がある共産中国で企業活動を継続するのは合理的と言えなくなるのではないだろうか。
現時点で共産中国での売上高比率が高い企業は、なるべく早く比率を下げることを検討すべきであろう。次章では、直近決算で売上高に占める共産中国比率が高い製造業の上場企業、及び地域別売上高等を紹介する。

売上高に占める共産中国の比率が高い製造業の上場企業

(1)売上高に共産中国が占める比率

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