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漁夫の利を得る日本市場?!

7/9日経平均株価は、突然1,000円近い急騰を見せ、史上最高値を更新した。背景にオイルマネー流入観測がある。欧米の政治情勢の混迷や地政学リスクの高まりを嫌気して、日本市場を緊急避難としての資金の逃避先にする意図があるのかもしれない。今後の日経平均株価動向を占った。


1.混迷の度合いを深める欧米の政治情勢

フランス下院議会選挙は、事前の予想を裏切り、極右政党の国民連合が3位に沈む一方、左派連合が最大議席を占めることになった。マクロン大統領率いる中道連合は、最大多数を失ったことで、政治的な主導権を失う事となった。中道連合と左派連合との政策の方向性の差は大きく、フランス議会は当面の間、機能不全の状態に陥る可能性が指摘されている。
米国の大統領選挙では、バイデン大統領が、トランプ候補とのTV討論会での敗北により、民主党内から退陣要求を突き付けられる事態に陥っており、今後、11月の投票日まで大統領候補として踏み止まれるのか、正念場を迎えている。

2.米国政権交代のインパクト

トランプ候補の勝利確率が上がったことで、来年以降の大規模減税が米国の財政規律を緩め、将来的なインフレ懸念の高まりから長期金利が急騰するリスクが指摘され始めている。加えて、米国第一主義の考え方からウクライナ支援への消極姿勢に対して、イスラエル支援への積極姿勢とのダブルスタンダードを明言することで、現行の国際協調の枠組みが損なわれる可能性が出てきている。

3.地政学リスクの高まり

ウクライナ戦争には終結への動きは見られず、イスラエルによるガザ侵攻は、レバノンのイスラム武装組織ヒズボラとの本格戦闘に発展するリスクが懸念される状況にある。一方、東アジアでは朝鮮半島の緊張激化や、台湾情勢悪化、南シナ海での中国・フィリピンの摩擦激化など潜在的な地政学リスクへの懸念は存在するものの、現状大きな戦争が顕在化する状況にはない。

4.日本市場が選好される理由

中国の不動産不況の長期化観測に伴うデフレ経済入りや、米中対立に伴う経済安全保障の観点からの日本への生産拠点移転傾向がここにきて強まっている。中国株式市場から日本株式市場への資金シフトの動きに加え、オイルマネーは時価総額の大きい大型株に集中投資する傾向があるため、欧米株式市場から日本への資金移転の動きが活発化すると、日経平均株価は、経済ファンダメンタルズとは無関係に上昇する可能性がある。
日経平均株価は、図表1の通り、3月に付けた41,000円を明確に上抜け、42,000円を目指す動きとなっている。7/30-31での日本の金融政策決定会合での利上げ観測から長期金利は上昇傾向にあるが、実質賃金は、26ヵ月マイナスに沈んでおり、個人消費が上向く気配はなく、日本銀行が国債買い入れ減額のみで、短期金利の引き上げを見送ると日経平均株価が更に騰勢を強めることには留意したい。

(図表1 日経平均株価推移チャート 右軸:単位 円 Trading View提供のチャート)

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20240710執筆 チーフストラテジスト 林 哲久




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