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2024年、スイスフラン円3連覇なるか?!

主要10通貨中、スイスフランは過去2年連続の最強通貨、日本円は3年連続の最弱通貨となった。過去2年ダントツのスイスフラン円の3連覇なるか検証してみた。


1.スイスフラン最強通貨の背景

スイス国立銀行(以下、スイス中銀)は、2022年度、過去最大の1,000億スイスフランを超える赤字を計上した。外貨準備高の評価損失が膨らんだことが主たる理由である。外貨準備高に評価損失が発生した背景は、外貨準備高の過半を占める外国債券と外国株式の評価額が、金利上昇と株価下落により大きく減少したことが挙げられる。また、外国証券売却に伴うスイスフラン買い介入により、外貨準備高保有に大きな実現損失が発生したことも大きい。この教訓を受け、2023年度も、スイス中銀は、外貨準備高の評価損失を減少させるために、外貨売りスイスフラン買い介入による外貨準備高の削減を継続した。その結果、2年間で3,000億スイスフランを超えるスイスフラン買い介入を行ったことが、スイスフランを最強通貨に押し上げることとなった。

2.2023年度スイス中銀の決算見込み

スイス中銀の決算報告を見ると、2022年度末の自己資本が658億スイスフランであったのに対し、2023年11月末の自己資本は過去最低の548億スイスフランまで減少してきた。その結果、2年連続の赤字決算の公算が大きくなっているが、2022年度のような巨額損失は回避でき、債務超過に陥ることは避けられそうな状況にある。

3.スイス中銀が抱える矛盾

スイス中銀が外貨準備高削減のために、スイスフラン買い介入を継続すればするほど、スイスフランが強くなるパラドクスに陥っている。2023年1月に7,800億スイスフランあった外貨準備高を同年11月末に6,600億スイスフランまで削減することが出来たが、その結果、ユーロスイスフラン相場は年間6%、ドルスイスフラン相場は同期間で10%下落し、外貨準備高の評価損失を膨らませる結果となっている。

4.今後のスイス中銀の外貨準備高の運営方針

2023年度は、ニューヨークダウが年間14%上昇するなど、海外株式市場が堅調であったにもかかわらず、赤字決算を免れそうもない状況を勘案すると、2024年度も、現行の外貨準備高削減のためのスイスフラン買い介入を継続する蓋然性が高い。

5.スイスフラン円相場の行方

スイス中銀は、過去2年間巨額の外貨売りスイスフラン買い介入を行っているが、現状でも6,600億スイスフランを超える外貨準備高を抱えており、2024年度も過去2年と同規模のスイスフラン買い介入を継続するものと思われる。もし、外国株式市場が下落に転じるようになれば、場合によっては、債務超過の事態を避けるために、更に巨額のスイスフラン買い介入を行う可能性すらあると思う。
図表1の通り、スイスフラン円は、過去2年間で35%も上昇しており、高値警戒感はあるものの、スイス中銀の介入が予想されるスイスフランは需給的にサポートされる。円相場に関しては、マイナス金利解除がスケジュールに上ってきているが、早急な金融正常化は考えにくく、総合するとスイスフラン円の3連覇の公算は大きいと判断できよう。

(図表1 スイスフラン円推移チャート 右軸:単位 円 Trading Viewからの引用)

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2024年1月5日執筆 チーフストラテジスト 林 哲久


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