ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(50) 2020/6/23(和訳)

ベルリンシャリテ ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン 
聞き手 コリーナ・ヘニッヒ

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また、学校と保育施設が閉鎖されました。「ロックダウン」という言葉が、ノルトライン=ヴェストファーレン州のレダ=ヴィーゼンブリュックにある食肉加工場のアウトブレイクによりまた身近なものとなってしまいました。ローカルではありますが。ー ノルトライン=ヴェストファーレンよ、どこにいくのか。ドイツよ、どこにいくのか。ー これは地域限定の感染状況にとどまるのでしょうか。外国との比較ではまだ良い状況です。ブラジルやアメリカではウィルスはまだまだ落ち着く気配すらみせていませんし、イスラエルでは第二波が訪れている可能性があります。ドイツが学ぶべきことは何でしょうか。 今日も最新情報をみていきたいと思います。それに関連するクラスター、つまり、ある特定の場所で同時におきるの集団内の感染です。そして、今、パンデミックのどの位置にいるのか。夏を無事に越すためのガードとして何を日常ですれば良いのでしょうか。今日も、ベルリンのウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン氏にお話を伺いたく思います。聞き手はコリーナ・ヘニッヒです。

今、私たちは現実に、この間のポッドキャストで話し合った通りのシチュエーションになっています。再生産数がまた上がりました。期間的なことも配慮されなければいけませんが、ロベルト・コッホ研究所の発表によると、大体R値が2くらいです。しかし、これは広範囲におけるウィルスの拡散、ということではなく、地域でのアウトブレイクです。ノルトライン=ヴェストファーレン州をみると、多くの感染が大きな食肉加工場で起きています。どのくらい感染伝播をコントロールができる状態だと思われますか。

私が考えるに、このアウトブレイクには特別な対策が必要でしょう。もうすでにウィルスが周りに運び出されている、ということを示す 指標はいくつかありますから。発見が遅れても不思議はありません。(発見されるには)まずは症状がでなければいけなく、そして、その症状を軽く捉えることなく病院にいかなければいけません。そして、検査。それから登録、です。多くのケースが気がついたときにはもうすでに危険な状態になっている可能性があります。

10万人の人口につき、50人以上の新感染者をだしてはいけない、というのが、政治的な規定でした。もしそうなれば、また制限がかけられる、と。しかし、今、ギュータースローでは、10万人につき250人です。これは、数的にも限界ではないでしょうか?科学的な視点からも。

この数は政治的な合意だった思います。科学的な理由づけはされていません。もしあったとしたら、キャパを決める際に多少の参考にされた程度でしょう。私にはこの数字がどこから来たのかということも、誰がだしたのか、ということもわかりません。しかし、この背景にあるのはその地域の保健所が平均的に対処できる範囲の数ではないか、とは思います。今問題になっているこのアウトブレイクでは、すぐに支援がされていますし、連邦軍もむかいました。これらすべてが特別な方法で対処する理由かもしれません。Das mag alles ein Grund sein, auf spezielle Art damit umzugehen. 決断をする側のするべきことは、なんとしてでも、この地域外に拡げないように食い止めることです。入院患者のなかにも、このアウトブレイクとの関連性が認められる患者が含まれています。そして、今後増える可能性も高いでしょう。とはいっても、医療が崩壊する恐れはありません。もし、重症化する患者がでたとしても、違うところへも行けるからです。その地域の病院で集中治療をうけなければいけない、ということはありませんから。 そのような視点でみると、これは国全体の問題、というよりも、(他の地域へ)知らないうちに拡散していくのを防ぐ、というところが重要です。ここでつけたしておきますが、これは後からでもウィルスのシーケンジングをすれば検証できることです。このかなりの増殖、このようにウィルス学的には爆発的な感染を言いますが、、、ウィルスが爆発しているような状況では、大体特定の(機能的な変化とは関係のない)突然変異がおこっていますから、どこにウィルスが運ばれていったとしても、そのウィルスを特定することが可能です。これから数ヶ月後、ドイツの地域でのウィルスを、このギュータースローから発生したものだ、ということを追跡することが多分可能でしょう。保証はできませんが、できると思われます。

今、現場で何をしなければいけないか、ということには、科学者もアドバイザーとして参加しているわけですよね。 先生の研究所、シャリテは、コロンウィルスのリファレンスセンター、公的な諮問機関ですが、ノルトライン=ヴェストファーレンへの助言などには関与されているのでしょうか。

いえいえ、そこでの役割は全くありません。ノルトライン=ヴェストファーレンには知る限り、専門家からなる諮問委員会があるはずです。

このポッドキャストでも、精肉加工場の環境については話題にしたことがあります。42回目でした。あの時には、感染の原因は、粗悪な住居環境だけではなく、職場にあるのではないだろうか、ということでした。なぜなら、加工所内では、重労働がされ、呼吸も荒くなりますし、なんといっても、低温、というところも重要なポイントです。冷蔵庫のような温度です。トゥーニエス社でおこったようなアウトブレイクが、今後、秋冬に気温の効果によって起こる可能性はありますか?かなり速度で拡まる可能性の警告でしょうか。

秋と冬では、この加工場の解体所内のように気温が8度くらいになることがあるでしょう。しかし、それは屋外で、です。風もふいていますから、ウィルスは飛んでいってしまうでしょう。勿論、冬でも暖房がされていない室内で、空調も悪い、となると、、、電車の待合室とか、バスの停留所とか、そのような場所、寒いけれど暖房されていない。それでも、屋根があって四方を壁で覆われいる。そのような環境では、解体場のと同じような状況になるかもしれません。これは、勿論、あまり気持ちの良い想像ではありませんね。しかし、言っておきたいのは、これが、第二波の原因にはならないだろう、ということです。そうではなくて、今の時点から第二波への発展について注意をしなければいけない。
私たちは、アメリカの南部で気温が高いのにも関わらず最悪な状況に陥っていることを知っています。多くの地域では集中治療は満杯です。今朝のニュースでみたのですが、アメリカ南部で収容キャパが超えて、小児科病院が大人のため開放されたそうです。ここからも、気温とは無関係にどの状況になってしまう可能性があるのか、ということがよくわかると思います。アメリカでは、第一波をきちんと押さえ込まなかった。そして、緩和するのがはやすぎた。これは、ドイツでも起こりうることです。夏になります。多分、これから数週間、感染状況的にはリラックスした時間を過ごすことはできるでしょう。しかし、周りの状況と照らし合わせてみると、これは夏効果ではなく、ドイツが単純に効果的に感染を押さえ込んできた結果から勝ち取った静けさだと思うのです。ドイツでは、そこまで厳格なロックダウンはされませんでした。期間も長くもありませんでしたし、厳しくもありませんでした。全ての行動での自由は奪われず、短期間のものでした。しかも、学校の学期末でイースターの休みも入っていましたし。そのように、ドイツではとても軽いロックダウンだったのです。にも関わらず、この落ち着いた時期に突入することができています。しかし、ウィルスはまたやってきます。それは、アウトブレイクは起こっている周辺だけではありません。ベルリンでも、他のドイツの都市でも、ウィルスがまた来る兆しがみえています。

特に、特殊な住居環境にも目を向けた方が良いのでしょうか。例えばゲッティンゲンでは、高層マンションでした。そのようなところでは、特殊な条件がありますよね。狭いフロアやエレベーターなど。もっと注意されるべきですか?

うーん、それは具体的すぎますね。同じくらいに注意しなければいけないことと言えば、例えば、現在の天候で、レストランの屋外のテラスに座ること自体にはあまり問題はないでしょう。しかし、テラス席がいっぱいになって、屋内の席もいっぱいになって、、夜になっていくにつれてアルコール度も高くなっていったとしたら。 ここでの問題は常に、いつ誰が、「ここからはちょっと危険ですよ!」と警告するのか。もちろん、誰もそんなことは言わないですよね。そのようなことが拡散されることは勿論あります。ここで、直接介入しなければいけない、ということを言っているのではありません。しかし、今現在、私たちはとても用心深くなければいけない、ということには変わりはないのです。1ヶ月後にもまだこのような平和な状態が続いているだろう、と、楽観的に考えることは私にはできません。もし、用心深くセンサーを張り巡らせない、としたら。保健所はしっかりとサポートされるべきですし、春に大きな力を発揮できたのも、社会の団結と国民の理解があったからだということを、きちんと社会全体で自覚しないかぎり、2ヶ月後には大変なことがおこるでしょう。

wenn wir nicht jetzt wieder alle Alarmsensoren anschalten und wenn wir nicht auch jetzt wieder einsehen in der Bevölkerung, dass die Gesund- heitsbehörden Unterstützung und Konsens brauchen und dass das, was im Moment in einigen Teilen der Gesellschaft immer noch passiert, auch zersetzend ist für genau das, was unsere große Kraft gewesen ist im Frühjahr - nämlich der gesellschaftliche Zusammenhalt und die Informiertheit der allgemeinen Bevölkerung.

そのためにも、クラスターに注目するこが重要ですね。先ほどの食肉加工所でのアウトブレイク、狭い住居環境など。スーパースプレッディングについてはもうこのポッドキャストで話題にしました。地域でおこる激しい感染状況をみてみると、どのようなパラメーターが、短期間での感染拡散に影響を持つのか、ということが重要になってきます。  日本からの論文があります。ここでは、1月〜4月までの約3000件を調査し、60件のクラスターが発見されていますが、そのなかでインデックスケース、つまり感染がはじまったケースも追跡できたようです。そこでわかったことは、引き続き大きな意味を持つのは、病院と介護施設で、46%。その後に、レストラン、バー、職場、つまり会社内ですね、イベント、音楽関係が11%、コンサート、カラオケなどです。ここから何がわかるのでしょうか。私たち、普通の消費者にとって何が重要なパラメーターでしょうか。

そうですね。興味ぶかいです。ここでは、クラスターのアウトブレイクがどのように発生するか、ということが説明されています。しかし、この研究から直接多くを関連づけることは避けたいと思うのです。なぜなら、これはパンデミックの初期の段階で行われた調査ですし、何かを関連づけるとしたら、今後、近い将来に焦点をあてて、どのように応用できるか、ということだからです。(あの頃から)現在のシチュエーションは変わりました。それは、世界中どこの国でもそうで、日本でも同じですし、ドイツもです。例えば、病院や介護施設が大きなクラスターの巣だ、ということですが、たしかに多分そうだったのでしょう。その時のシチュエーションでは。まだあまり患者がいなかったでしょうから。当時は、医療分野での危機感も高くなかったでしょうし、誰もそこまで気にしていなかったばずです。今ははるかによく準備ができている部分もあるなか、まだあまり注目されていない部分もあるはずです。
ウィルスが拡散していくことは、このポッドキャストでも何度も話してきていますが、この拡散は、違う年齢層、地理的にも社会構造でも違う部分に拡がってきています。そのような理由から、今度、秋に起こりうることが、初期の研究の際に観察されたことの延長線である、とは限りません。これは、世帯内調査など、他の分野にも言えることです。学校についてもそうでしょう。そして、クラスターの発生場所についても同じことがいえます。勿論、アジア圏でのカラオケは、狭い部屋のなかで歌がたくさん歌われるでしょうから、エアロゾルが発生する、ということはわかりますね。そして、お酒も入るでしょう。典型的なシチュエーションです。しかし、ここで起こる、という発言については少し躊躇します。なぜなら、そう言うと、他のシチュエーションでは起こらない、という結論に安易に達する可能性が高くなってしまうからです。 初期のパンデミック状況では、偶然、他の場所ではまだ起こらなかった。そういうことです。しかし、ウィルスが知らないうちにどこにでもいる可能性がある今、これはドイツ国内だけではなくて、一般的にという意味で、他の国をみてみると、全く違う次元のことも起こっています、、、ウィルスはどこにでも発生する可能性があるのです。全体的に考えるのが重要です。つまり、大勢の人が集まるのは避ける、密室を避ける。お酒が入り注意力が散漫になるのも危険です。大音量の音楽がかかっていれば、喋る声も大きくなるでしょうし、そうなればさらに多くのエアロゾルが放出されることになります。これらは全て危険です。

今、多くの人が思ってしまっていることだと思うのですが、最悪な事態はもう終わった。これからちょっと気楽にいけるだろう、と。無症状者の役割も重要になってきますよね。私たちがはじめ思っていたよりも。

それに関しては、今現在、無症状と症状前のはっきりとした区別もされてないため、定量化するのは難しいです。つまり、無症状とは、病症経過の初めから最後まで症状がないことを言いますが、これはとても主観的なことでもあるからです。ある人が、「症状はなかったです。ずっと元気でした」と言ったかと思うと、身体意識が異なる別の人は、「私はずっと鼻がつまっていました。息苦しくて、喉も痛かったと思います」と言うでしょう。このようなことをまとめるのは容易ではありません。

無症状者のウィルス濃度やどのくらいの間感染性が続くのか、ということはわかっているのでしょうか?

ウィルス濃度に関しては、若干少なく、ウィルスの放出期間も短めである、とする研究結果はでています。しかし、これをここで一般化することは避けたいと思います。

バカンスの期間が訪れようとしています。日本の論文に、クラスターのなかに、飛行機内で起こったケースのみをまとめたものがあるのですが、先生は旧型SARSウィルスの研究の経験もお有りかと思います。SARSでは機内での感染伝播はありましたよね。あの時は、満席状態だったのでしょうか。

勿論、旧型SARSウィルスでの経験値もありますが、もっと良い経験値として機内でのインフルエンザの伝播があげられると思います。基本的に、機内の空調システムは(感染防止には)優れています。縦方向に向かっての伝播はあまりおこりません。これは、特殊な機内の空調と関係があります。機内に感染者がいた、ということがわかればそれを追跡する術を保健所なども持っていますが、ここでの問いは、接触者も追跡しなければいけないのか、ということです。

空調システムとHEPAフィルターがどのくらい効果的であるか、ということに関しては評価がわかれるようです。これからまた人々が飛行機で移動するようになり、ぎちぎちに詰められて満席状態だった場合、感染伝播の機会が増える、とお考えですか?

私が技術的な環境条件について知る限り、それよりも、フライト前のゲートの待合室とか、着陸後の混雑する状態とか、短期間で大勢の人と一緒になるほうが、飛行中、機内での滞在よりもリスクが大きように思います。

第二波、ということに関連するテーマは、他の国々、です。ここ数日、数週間で、目についた国があります。そこではかなり制御され、対応もはやかったように思うのですが、またカーブが急上昇しています。イスラエル、です。ここでは実際に第二波がきているのでしょうか?どうお考えですか。

過去のポッドキャストでも言ったように、、、私たちに手にかかっているのです。 イスラエルでもそうです。勿論、第二波が起こりそうな際にまた初期の段階でストップさせることも私たち次第です。第二波とはなんでしょうか。その定義はなんでしょう。はっきりとした定義は実はないのです。ドイツのように、発生数が自然と収まっていって増加しない状態になったら、ここまでが第一波だ、ということができるでしょう。イスラエルでもそうでした。全面解除されて緩和された。ドイツのシチュエーションと似ています。そして、感染ケースが増加している。前から予測していた通り、学校でのアウトブレイク、それもかなり大規模なものです。そして、これを制御するために学校も閉鎖されました。これは私たちもしっかりと自覚しなければいけないことです。そして、夏の間に、考えていたほどそんなに簡単なことではないのだ、ということを社会の間で議論しなければいけません。子供は関係ない、では済まされないのです。

イスラエスの例から何か学べることはあるでしょうか。特に学校など、私たちができることや、私たち次第であることなど。

正しく理解したとしたら、、、私は新聞しか読まないのですが、、、イスラエルでは学校を再開させていて、そこで症状チェックの際に、学校での集団感染が始まっていることがわかった、と。今の時点では、これが間違った方法であるとか、解決法であるとかは言いません。それよりも、ここには、とても良く対応し第一波では効果をだしていた国が、少しだけ緩和するのがドイツよりはやかった。そう言うことだと思うのです。そして、それが今観察できることです。オランダの専門家の同僚と話したのですが、オランダでも学校は比較的はやく再開されました。しかし、全てを同時にではなく、全生徒ではなかったようです。オランダで問題に発展することはありませんでした。生徒のなかで症状がでている場合すぐにPCR検査がされ、検査をしないと学校に来れないようにきまっています。しかし、そこで起こったことは、、、これは、もし、私たちもそのようにしたらどうなるか、ということにも繋がりますが、、、、つまり、症状が出た生徒は全員検査されなければいけなかった。クラスではクラスメートのことは全員知っているわけですが、例えば、Aさんが検査のために学校に来なかったとしたら、、、え、どういうこと?検査、ってことは、数日間、無症状か症状前の状態でクラスに座っていてウィルスをばらまいてた、ってことじゃない?とクラス中に不安が広がって議論がはじまるでしょう。そして、Aさんが次の日に学校にきて、PCR検査が陰性だったとしても、、、検査の信憑性ってどのくらいなの?もう一回検査したほうがいいんじゃない?もし、それでも陰性だったら、、信じることはできるのか? と、また不安が起こり、議論、です。これは一種の社会的スティグマであって、とても気分が悪く差別的なことです。この話を専門家の同僚と話した際に、それが理由でオランダでは2週間後にこの検査方法を廃止した、と。全員にPCR検査、というのは、学校の再開を安全にしようとして始めた対策です。このような事態になって、この安全策を使えなくなるというのは馬鹿みたいな話です。 しかし、だからといって、学校をまた閉鎖する、というのも違います。たしかなことは、学校が閉鎖されない状態での安全対策がない、というところです。どうすれば良いのでしょうか?このクエスチョンマークだけが残ります。社会的なクエスチョンマークです。
このようなシチュエーションになる可能性がわかった今、それを初めから取り除くのではなく、隣国のもうすでに経験がある国などと意見交換をし、前もって答えをみつける努力が必要だと思うのです。誰かのせいにするなど以ての外です。グループのなかでも、政治のなかでも、ましてや、活動している個人でもありえません。そうではなくて、物事の本質に集中する。イギリスのサッカーでは、、、私はサッカーファンではないのですが、この言葉は知っています。Play the ball, not the man これが、私が考えるに、重要なポイントで、社会的な討論がされる際などに、常に心に置いておかなければいけないことなのではないでしょうか。

パンデミックに立ち向かうのであって、パンデミック対策の責任者にではない、ということですね。

うーん、責任がだれかにあるのであれば、ですけれど。それは、情報を提供する誰か、ということも言えるかもしれません。

先生のような。

まあ、私のような、ですね。それか、他の専門家とかです。この科学が果たす役割、という点では、科学の社会における位置付けの高さ、というものが以前よりもはっきりとしていると思います。勿論、これが例えば、環境問題に関する討論などに反映されてます。

もう一度、学校はどうすれば良いのか、という問いに戻りたいと思います。子供達は教育を受けることができない、もしくは、不均等な教育しか受けれない、ということを避ける為にも、学校は再開されなくてはいけませんが、検査方法の代案はありますか? 例えば、大量検査とか唾液検査とか、検便とか。その実用性についてはポッドキャストでも議論しましたが。

検査方法的には確実に多くの案があるでしょう。その事についてはもう確実に対策は考えられていると思います。連邦制のなかで、異なる方針と専門家委員会がありますが、各州のウィルス学者や違う専門家たちが政治家にアドバイスしているからです。技術的な実行案については、このポッドキャストでも、検査のパフォーマンスのパラメーターに及ぶまで、壮大な規模で話してきました。唾液による検査の感度についても話しまし、これらの事はもう一度話す必要はないと思います。 すべて、日々の状況でみていかなければいけません。何が適しているか、ということをみていくのです。
先ほど、学校での集団感染がイスラエルで起こった、という話をしました。新聞にも載っていましたが、メルボルンの学校にも感染が一旦落ち着いた状態からまたウィルスが持ち込まれました。ミュンスターやラインラントの地域、最近ではドルトムント、フランクフルトの学校でのケースも、集団感染だったのか、それとも、単独ケースなのか、ということを明確に判断しなければいけません。ベルリンのシャロッテンブルクでもアウトブレイクが、私の情報が正しければ、、アウトブレイクですが、、、がありました。そこからの感染伝播はあったのか?何人もの生徒と先生が同時に感染しましたが、これは、学校内での感染伝播としか説明がつきません。環境パラメーターについてもこのポッドキャストで話してきました。ウィルス濃度から、世帯内での二次感染率、なロックダウン中に行われた多くの世帯内調査の研究結果があまり参考にできない理由、など。これらのキーワードは全て、ロックダウンの後、緩和期間、そしてウィルスの復活、に関連してます。ウィルスは勿論、社会の年齢層に異なって分布していて、夏休み明けには全く違うシチュエーションが私たちを待ち受けている事でしょう。これらは全て、思考力がある人々に危機感を持たせていることです。なぜなら、情報が矛盾している。思考力のある人は、ウィルス濃度が何か、というのを理解することができると思います。このポッドキャストのリスナー数が多いのもちゃんと理由があるのです。ポッドキャストを聴くのは、別によく眠れる話を聴きたいからではなくて、内容が興味深く、それを理解したいと思うからでしょう。そのような思考力のある人は勿論、どこかのメディアに、「子供は関係ない」と書かれていたとしたら信じられないわけです。なんと、「子供は感染状況にブレーキをかける役割をする」と書いていたメディアもありました。ここまでくると、別に生物医学を勉強していなくても、何かがおかしい。矛盾している。情報が変だ、ということに気がつくと思うのです。
この不一致から起こることは、例えば、学校という形態が、継続する大人数による集会である、ということがはっきりしているのにも関わらず、対策なしで学校を再開する、というような決断を下してしまう。「かわいそうな子供達!子供は病気にならないんだし、教育をうける権利があるんだから!」といっていても意味がありません。勿論、正しくもあります。私も、一市民であると同時に父親でもあり、特に頭がおかしいわけでもなく普通に暮らしていますが、その一方で科学者でもあるのです。科学者は恐ろしく冷静です。科学というものは、表向きには陽気に振舞って、裏で、ヘイ!我々科学者は、本当のところは全員意見が一致してるんだから、君の意見をちょっと変えようよ、などと言うことはありえません。科学には意見、というものはないのです。科学とは、事実です。科学者は、その業務経験や知識をもって、全くの素人よりは論文を深く読み取ることが出来るでしょう。しかし、最近は、多くの、、、全くの資格も専門知識も持ち合わせない人たちが、、ここでまた、後から新聞などで切り取られてここだけ引用されるでしょうから、この部分ははっきりと言っておきますが、私はここで、小児科学会やそのような協会のことを言っているのではありません。彼らは資格をもっています。

小児科医などですね。

そうです。彼らが発言するのは正しく、重要です。しかし、その他の、、、グループ、SNSなどで議論している人たちは、時にものすごく攻撃的で、していることは、個人的攻撃です。普段そんなことをしたら罰せられます。しかし、ネットという匿名性の環境がそれを可能にしてしまっている。しかし中傷行為であることには変わりません。この人たちの目的はひとつです。彼らの議題は競合する議題で、ソーシャルメディア上で、科学的な内容を全く知識がないのに攻撃し、誤謬をふりかざし、学校を閉鎖したままにしようと試みる。その一方では、また違う誤謬をふりかざし、学校を無理やり再開させようとする。最終的には、個人的なモチベーションからきているのかもしれません。しかし、個人的な事情は、私にだってあります。しかし、それについてはここでは話しません。ここで話されるのは科学についてです。

先ほど、科学は冷静である、とおっしゃいました。しかし、データの解釈には、ある程度の許容範囲があると思うのです。リスナーへの問いかけもありましたから、ここでリスナーからの質問から。バーデン=ヴュルテンベルクの論文で、先週のポッドキャストの収録の直後に発表されたものです。ここでも、子供の抗体についての内容ですが、ここでの研究対象は、家にいた子供達だけではなく、学校や保育施設に緊急託児で預けられていた子供達です。ここから、結果は他の調査結果、ロックダウン下によるものよりも現実に近い、ということでしたが、つまり、ロックダウンの間は、子供達は家にいたので通常の日常のシチュエーションとは異なる。どのように評価されますか?この緊急託児というデータはどのくらい使えるものなのでしょうか。

まず、言っておかなければいけないのは、このバーデン=ヴュルテンベルクの論文は、私が知る限り、まだ調査途中である、ということです。統計的な分析がまだ継続中だったはずです。聞いたところによると、、、正直なところ、この論文についてはメディアでも特に気をつけてみていなかったのですが、、部分的に記者会見をみたところ、この論文を発表した専門家自身も、結果が持つ意味には限定的です。
このような研究に関わっている学者は皆、自分たちが行なっている研究が、世間から求められる結果に結びつかない可能性につながる様々な要因を含んでいることを自覚しています。 研究自体は何も求めませんが、世間は答えを求めますから。学校は再開できるのか?もしくは、保育施設はどうなるのか? しかし、学術研究は、求められる答えを用意することはできません。この研究の形態は、答えをみつける用途に使えるのか?ということは考慮できます。今現在の社会の背景的なシチュエーション、つまり流行初期のですね、これは、流行後期には役に立たないのです。適しているのかどうか。それに関しては、ポッドキャストでも数多くの事を話してきました。

ここで、前回のポッドキャストのある部分の訂正をしたいと思います。前回も、抗体のスクリーニングについてでした。スウェーデンの研究です。そこでの調査方法についての情報が正しくありませんでした。どこが違っていたのでしょうか?

はい。これは、完全に私の勘違いでした。PCR検査の調査についての説明に、患者がランダムに検査された、とありました。つまり、志願者を募るのではなく、偶然の参加者を選んだ、という事なのですが、これを、血清検査でもそうだろう、と思ってしまったのです。私的には、1つの研究でしたが、後に、勘違いしていることを指摘されました。この血清調査では、ランダムに患者を選んだのではなく、違う方法、ラボに残っていた検体、血液サンプルをランダムに選んで検査したのです。これも、種類としてはランダムな調査方法です。同じだ、とは言いませんが、同じような効果があり、しかも、ずっと簡単な方法です。結果は(ランダムに患者を選ぶのと)同じです。ここで、解釈的にも、どのくらいの血清有病率なのか、という問いは適していると思います。

どのくらいの抗体か、ということですね。

そうです。どのくらいの抗体か。子供と大人を比較すると、ここには、3つ、調査期間があります。そのなかで子供の血清有病率は上がっているのです。これは私にとっても注目する価値がある場所であり、この論文をポッドキャストでも紹介しようと思った理由でもあります。なぜなら、スウェーデンでは、高等部をのぞいては学校がずっと開いていたからです。私のこの研究に関しての解釈はそのままです。しかし、訂正はきちんとしなければいけないと思います。完全な誤解でした。調査方法について、勘違いをしました。

夏休みの後で、学校が再開されたら、まずは、どのような対策とともにそれが行われなければいけないか、ということを考えるべきですよね。そして、もう一度ウィルスの様子、アウトブレイクに繋がる可能性がある発展ををみる機会にもなると思います。

どちらに転んでも、そのシチュエーションになるでしょう。どちらかというと、これからどのようにしていくべきなのか、ということを社会のなかで、可能な限り公平な議論スタイルをもって模索してかなければいけないでしょう。学校を再開したいのです。保育施設も必要です。そうでなければ社会がやっていけないません。でも、どうすればよいのでしょうか。たとえ検査数を増やしたところで、ウィルスは少なくはなりません。ウィルスがみつかったら、 対処が必要です。この 対処が、学校の閉鎖だ、ということになってしまったら。学校をウィルスフリーにする為の唯一の方法が閉鎖だったら、、、ここからまた考えていくと、、もしかしたら、ウィルスのない学校などないのかもしれない。それはどういうことだろうか?教師にとっても?教師の家族は?生徒の家族がハイリスクだったら?義務教育はどうなるのか。これらは全て、激論に発展する議題ですが、まだ切羽詰まっていない今だからこそ、この問題の解決方法をみつけ、秋に討論ができるように努めるべきです。もう、「生徒は(感染状況とは)関係ないんだから、問題なく学校は再開できる」などということを、拡散するのはやめてください。これは単純に間違った情報です。しっぺ返しを食らうことになりかねません。 このようなこと、生徒は感染とは無関係だ、と、まだ言っているひとがいるならば、もう少し現在のシチュエーションをみて、積極的に生産的に、他の議論に参加してみてください。もし、ウィルスフリーの学校が不可能であれば、それが何を意味するのか、と。

教育についての議論をもっとしなければいけない、ということですね。

これが、教育についての議論なのか、はわかりません。もしかしたら、医療の議論なのかもしれません。そして、勿論、義務教育の議論でもあるでしょう。たくさんの視点があります。ウィルス学者として常に言っておかなければいけないことですが、、、私が議論をするのは、自分の専門分野のみです。他の科学分野ではしません。ウィルス学の他にも意見を述べるべき科学分野はたくさんあります。しかし、真の客観的な視点を持って、文献の事実と研究論文の背景をみていただきたい。論文は見出しの最後ではなく、本当の最後の最後まで、まとめの部分まで読んでほしい。そして、行間と方法も読まなればいけないのです。
ああ、何を言ってるのしょう。私自身もスウェーデンの論文できちんと読んでいませんでした。しかし、あの論文はスウェーデン語で書かれていましたので、、この言語はあまりよくできませんから、、、次は、翻訳者を呼ぼうと思います。とはいっても、あれはペーパーでもなく、査読された論文でもなく、保健機関のレポートでした。また、議論の本題からそれてしまいました。この議論は、政治が強く関与する必要性があり、さらに、指をお互いに刺しあって攻め合う事なく、特定の個人を危険にさらさないように進めなければいけません。今が正念場です。もう、以前のようなかたちの議論をしている時間はありません。

上から今の状態をみてみると、、、コロナ警告アプリには大きな期待がよせられています。感染の早期発見によって、より多くの人を敏速に自宅待機に導くことができ、アウトブレイクがおこりそうになったときの阻止につながる、というものです。しかし、古い型のスマートフォンではダウンロードできなく、アプリを使うことができない、などの不具も生じています。それでも、アプリの効果はある、とお考えですか?それとも、この辺りの改善も必要になってくるでしょうか。

またここで言わなければいけませんが、これは、私の専門分野ではありません。コンピューターの専門家ではないからです。その分野の専門家はいますから、その人たちにまかせるしかないでしょう。このテクノロジーに関しては、全く理解できません。個人的には自分のスマートフォンでアプリを使っていますが、それ以上のことは言えませんし、言いたくありません。専門ではないので。ただひとつ、言えるとしたら、、これも、以前に言ったことですが、研究論文を読んだ限り、私の解釈は、、、このアプリが確かな効果をもたらすであろう、ということです。もっと多くの人に利用されるべきですし、もしかしたら、もう少し説得力のあるキャンペーンが必要かもしれません。クラスターの早期発見と感染の追跡に確実に必要なものなので。

ドロステン先生、ここでは背景的な情報を提供していただいています。実践的な推奨に関しては、マスクの着用、接触距離以上になってくると難しくなっていくとは思いますが、夏に向けて、もう一度しっかりと自覚したほうがよいことはあるでしょうか。何に注意をしなければいけないでしょうか。例えば、日本政府は、「3つのC(3つの密)」の回避、というものを掲げています。英語では、closed spaces、密室、 crowded places、密集、多くの人が集まることですね、そして、close contacts、密接、距離をとらずに接触すること。 これらの3つを避ける。これを推奨していますが、これをドイツでも夏の間に実行するのはどうでしょうか? それとも、まだこれでは足りませんか?

そうですね。私はこの日本が旧型SARS時代の知識と見解をもってなしとげた結果には感心しています。この非常に独特なやりかた、厳格には介入しないという型で、ロックダウンをせずにコントロールした、というところにも、これが大きな役割を果たしたことは確かでしょう。ロックダウンには、何か特定の方向に向かった目標とかはなく、ロックダウンは、何が起こったかわからないので安全を確保するために全てを同時に閉鎖することです。それを日本では違う理解をもって判断しました。ここには多くのインテリジェンスが関わり、決断を模索する際にも確固たる根拠があったこととみられます。ただ、すごい、としか言えません。しかし、今後の日本に関してはわかりません。勿論日本でも持ちこたえていかなければいけませんし、日本で今、完全なる必勝法を見つけ出され、今後もずっと安全な状態である、ということではないからです。発生数だって、また違う展開をする可能性はありますし、再調整も必要になるでしょう。しかし、少なくとも中間決算の段階では、、脱帽の思いです。

ここで、リスナーのみなさまへのお知らせです。アップデートを楽しみにしていた方は気を落とさないでいただきたいのですが、、、この回で夏休みに入ります。ドロステン先生もお休みが必要です。勿論、何週間も、ということではなく、研究の為にも十分な時間が必要だろうと思いますし。ということで、ポッドキャストは8月末までお休みしたく思います。来週からの重要な研究などはありますか?

大きなプロジェクトの計画を実現しようとしているところです。どの研究分野になるかはまだはっきりとは言えませんが、大学ネットワークの研究プランになるだろうと思われます。私自体はこのプロジェクトの責任者ではないのですが、私たちも共同で研究する予定です。これは、幾つかの大学と大学病院が協賛し計画をたてるものですが、そこには、分子生物学、分子ウィルス学の分野で、宿主相互作用、つまり、ウィルスが細胞にどのような影響を与えるか、そのように細胞内で生き残るか、ということについての興味深い研究があります。その他にも、MERSウィルスの研究も引き続きされていますし、この研究は諦めるわけにはいきません。MERSウィルス別なコロナウィルスで、流行に発展するポテンシャルがあり、中東からアフリカに広がっています。全体的に私はアフリカが心配です。私の研究所の違うグループがアフリカの研究を熱心にしていますが、アフリカは緊急に援助が必要なのです。

コロナウィルスに関しても、ということでしょうか。

はい。アフリカで起こっているアウトブレイクもです。

常にワクチン開発において、治療成分の研究の成果がでています。最近では、オックスフォードで、治療薬デキサメタゾンについて、致死率を下げる効果がある、との発表がありました。しかし、これは重症患者に対してのみです。パンデミックに関してこれからも研究が進むのではないか、と希望を持っているのですが、どうでしょうか。

ワクチン開発は注目されていると言えるでしょう。成功報告が出るたびに大きな喜びを感じます。勿論、開発速度などに限界があることはわかっていますが、そのようなことからも、今は、感染流行をコントロールする為の研究に集中していかなければいけないと感じます。

リスナーのみなさまが夏の間、全くコロナウィルスの情報なしで過ごさなければいけない、ということは避けたいと思いましたので、先生が不在の間、2回、別の専門分野の専門家をお呼びしてポッドキャストをしたいと、同僚のアンニャ・マルティーニが計画しているところです。これは、先生的にも、科学的にも、他の専門家が発言する、ということに関しては賛同していただけますよね?

勿論です。私は常に、広範囲での科学の見解が必要だ、と言ってきました。ウィルス学だけではなく、違う近い分野など。勿論、ウィルス学でも、一人の意見だけが尊重されるべきではありません。同じ分野のなかでも違う意見がありますから。幸いなことにそのようにされていますが。

最後に、、、個人的なことをお伺いします。これまで、研究について話してきましたが、勿論、先生も休暇をとられるでしょうし、バカンスにも行かれることでしょう。少なくとも夏には。きちんと休暇はとられますか?小説を読んだりするのでしょうか。それとも、研究文献のみでしょうか? それとも、全く休暇中は何も読まない、とか?

読書は常にしています。様々なジャンルを、時間の許す限り。それは休暇中でも変わりません。

ドロステン先生、今日は50回目のポッドキャストでしたが、いままでどうもありがとうございました。素晴らしい夏を過ごされますように。そしてウィルス学者としてのご成功と、夏休み明けにまた良いニュースを持ってこの場でお話いただけることを心待ちにしています。ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。


ベルリンシャリテ
ウィルス研究所 教授 クリスチアン・ドロステン

https://virologie-ccm.charite.de/en/metas/person_detail/person/address_detail/drosten/








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