ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(105)  2021/12/7(和訳)

ベルリンシャリテ ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン
聞き手 コリーナ・ヘニッヒ

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新しいvariants of concernが出ました。WHOが、オミクロンを懸念される変異株に指定してから2週間です。なぜそこまで懸念されているのか。そしてどこが違うのか。オミクロンはヨーロッパでも拡がりつつあるようです。そのくらいの速さなのか。どのような影響を与えるのか。今日も、ベルリンのウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン氏にお話を伺います。聞き手はコリーナ・ヘニッヒです。

変異株について始める前に、まずドイツの状況をみていきたく思うのですが、現在の感染はデルタが主流です。7日間指数は432、死者数がほとんど400人に近くなり、地域によっては医大生に集中治療のサポートをさせているところもあります。しかし、増加は緩やかになっています。7日間指数は、全体的には減少傾向にあり、ロベルト・コッホ研究所によるとR値も下がり、10日間1以下を維持しています。これをどのように解釈されますか?

R値が1以下である、ということは確かです。しかし、数値は数日後に訂正されることが多いので、今日の数値は0,88ですが、これに少し上乗せされることを考慮しなければいけません。これは、週末、という要因もありますし、Nowcastingもそこまできちんと補えていないようです。さらに、ラボの負担が大きくなって登録の遅延が起こっている、という話も聞きます。検査数にも影響があるということですし、そのようなことが全て関係するでしょう。とはいっても、全体的には、、ドイツは、、いままでもそうだったように、、またR値を1に近づけている、と言えます。ここでの問いは、今回、ワクチンやさらに強化された2G規制という新しく追加されたツールを持って1以下まで持っていく、、0,7まで下げる必要がありますが、、そこまで短期間でいけるのかどうか。それとも、1以下にすることができずに高いままでいってしまうのか。今日の400人の死者数はあまりにも多すぎます。今の状態から確実に下げなければいけませんが、ここでも先ほどの問い、2Gでそれを達成することができるのか。十分であるか、というところです。

行動様式が変わったり、ブースターをしたり、とポジティブな影響もあるかもしれません。60歳以上をみてみると、ブースター接種率が約30%です。地域によっては負担が多いラボがあり、陽性率も上がっています。バーデン=ヴュルテンベルクでは、ラボの計算上の稼働率が140%です。そのようなことも関係している、とお考えでしょうか?

そうでしょう。これらは地域で構造が違いますし、これらの観察されている因子自体は全て実際に起こっていることではありますが、相互で補正しあってるので現時点での答えを出すのはかなり困難です。印象としては、新規の集中治療患者の数が若干少なくなってきている、というところで、これはモデリング試算とも一致します。例えば、60歳以上のブースターの効果が出ている、ということも考えられます。高齢者の重症化リスクは高いですので。今、30%、33%のブースター接種率であれば、徐々に効果が目にみえて出てきた、ということも十分あり得ることです。

それでも、この年齢層にはワクチンを打っていない人もいます。非接種者率は約15%だったと思います。

これは、ドイツ特有の問題だと、そろそろ言わなければいけないでしょう。ヨーロッパの経済大国のなかで、ドイツだけが60歳以上の接種率が86%です。これは単純に少なすぎます。これが、他の国のように全ての緩和を許せない理由なのです。例えば、イギリスなどはかなり早い段階でブレーキ解除をし、まるでパンデミックがなくなったかの勢いで通常生活に戻していきましたが、良い接種率と高い抗体保有率によって状況はセーブされています。つまり、多くの人が感染経験がある、ということです。若い世代では、コロナで風邪をひくひとも多いですが、それが、いわゆる免疫獲得段階の後期の現象であることを多分自覚はしていないと思います。これに関しては以前のポッドキャストでも話したことがあります。これによって国民全体がウィルスに対して高い免疫レベルを持つことになるのです。そのような状態ではブレーキを解除した状態でそのまま走り続けることが可能ですが、ドイツではそのようにはいきません。つまり、引き続き対策が必要だ、ということです。2G対策はもっと強化されると思われます。高い発生指数の地域では、すでに強化されていますし、先日のザクセンの決断をみても明らかです。ここからの効果はみえてくると思います。オミクロンに関しても、ドイツはイギリスや南アフリカとは違うシチュエーションになるでしょう。

今日の話題は、ほとんどオミクロンになると思うのですが、まだはっきりしないところがたくさんありますので、初めから容易ではない、ということを言ってきます。ですから今日のポッドキャストでは、多くの憶測、現時点での憶測の話をすることになります。まだ疑問のほうが答えよりも多いのです。順を追って整理をしながら始めたく思うのですが、まずは南アフリカからの知見とヨーロッパ、特にイギリスを見ていきたく思います。南アフリカから初めます。南アフリカでの感染拡大速度はどのくらいなのでしょうか?そして、オミクロンでのR値はどのような意味があるのでしょうか?

南アフリカのデータのメインはハウテン州のものですが、これはここで初めて注目され発生指数も集中している、という点からも重要なデータだと思います。現時点は、毎日約10000人の新規感染者がでています。ここまで徐々に増えてきました。多分、登録統計を無視すれば、50000人、60000人くらいではないかと思われますので、新規感染者数というのは評価が難しいところです。南アフリカでの全体的なシチュエーションはドイツとは根本的に異なります。まずは、南半球だということ。南アフリカでは大きな冬の流行がもうすでに起こっていて、今回は第3波です。第1波は野生型でのもので、次にベータ株、B1351での第2波、そして、第3波はデルタ株で起こり、これは南半球での冬、つまりドイツの夏の間に起こっていました。この感染流行は自然に収まりましたが、これは別の言い方をすると免疫獲得が行われた、ということになります。多くの場合が自然感染によるもの、部分的に予防接種です。根本的には南アフリカでは、、このように言っても差し支えないと思うので言いますが、、コロナは収束していたわけです。発生指数は自然と下がり落ち着きました。言っておかなければいけないことは、これから南アフリカでは段々暖かくなっていく、ということです。もう少しで夏がきますから、これも発生指数が自然に下がる助けになったでしょうし、その結果感染防止対策もほとんど行われていませんでした。それが今、突然新しいウィルスが発生した。今回またspike gene target failure、つまり、S遺伝子を検出するPCR検査で発見に至ったのですが、ここで標的遺伝子が1つ欠如していたのです。これは、N-Terminus、N末端というスパイクタンパク質の先端ですが、これはゲノムのなかの小さな隙間で、アルファ株にもあったものなので覚えている人もいるのではないでしょうか。去年の初めに話したと思います。ここの部分がPCRで反応しなかったために当時イギリスでも疑われシークエンジングの結果新しい変異株の特定ができたのです。南アフリカでも同様です。PCRで気がつき、その後シークエンジングで確証されました。現在、大体毎日何人感染するかが予測出来る規模まで拡がっています。勿論、感染防止対策がされていない状況下で、ということを忘れてはいけません。これが一過性のものではい、ということは明らかですが、大学で集団感染が起こり感染追跡をしていった時には、他の一般人はすでに危機感なく暮らしていて検査もされていない状態でした。そして、南アフリカの登録システムはドイツとは異なります。少し鼻水が出たとしてもそれでコロナの検査をする人などいませんし、検査をする人というのはかなり重症になってからです。有症状の場合、しかもほとんどの場合は重症化して入院してから検査されます。全く状況が違います。そのような状況下で、確実に全国に拡大してきていることが明らかになってきて、1日の増加率が約25%。これは恐ろしいほど高いです。

これは、4日で倍増する、という計算になりますね。

大体そうなります。勿論、はっきりしないところもありますが、25%というのは本当に高い数値です。こうなってしまうと、R値に関して話すことも難しくなります。ハウテンでの状況を見る限り、オミクロン株のR値は2,2強、現在のデルタは0,8です。ほとんど、3倍です。これは大変懸念されるものだ、と言えます。勿論、3日、4日で倍増する、というのもかなり恐ろしい点です。

イギリスからは常に参考にできるデータがでますが、この南アフリカでの増加とイギリスでの状況を比較することはできるのでしょうか?オミクロンの全体のケース数は少ないものの、似たような増加率ではないのでしょうか?

イギリスでは、全体の数が少ない、ということです。この点では注意が必要です。イギリスでのケースはほとんどが直接入ってきたケース、つまり、直接入ってきたケースだけに限られているうちは、国内での拡大に関してはまだ分からず、ただ、外国から入ってくる状況の把握にしかならない、ということは言うまでもないでしょう。

明確な渡航歴、ということですね。

そうです。空港だけで検査した場合、、南アフリカからドイツへ入国する」人だけを検査した場合には、それはドイツにとっての検査ではなくて、南アフリカの状況の把握にしかならないことは自覚するべきです。イギリスのシチュエーションは、ちょうど南アフリカとドイツの中間かもしれなくて、南アフリカの若年層のワクチン接種率は22%、国民全体で30%強と大変低いです。ブースターもまだ全然追いついていません。そして、多くの人がジョンソン&ジョンソンの1回の接種ですから、全く異なる状況だと言えます。言い方を変えれば、感染が自然に落ち着いたのは、自然感染による免疫が国民レベルで獲得」されたからです。それに比べてイギリスは、接種率的にはドイツと変わりませんが、高齢者での接種率はドイツよりも高く、60歳以上でのブースター接種もドイツより進んでします。同時に、若年層がこの間の冬の感染流行で多く感染したためにその年齢層での抗体保有率が高い。そのように、全体的にみるとイギリスでも南アフリカと似たようなことが起こっている、と言えます。感染防止対策がほとんど行われていない環境での増加です。それでも、R値が爆発することはなく、大体1くらいをキープしているので、南アフリカに似ている、と思われます。大体、200ケースくらいになると、、イギリスでは現時点で200くらいですが、、そのくらいになると全体の把握ができるようになりますが、イギリスでも驚くべきことに1日の増加率が25%。これに関しては、本当に危機感を持たなければいけません。ここから単純に計算しても、クリスマス前には飽和に向かうのではないか、ということです。つまり、少なくともデルタと同じくらいになる計算です。

イギリスで、ということですよね。

そうです。イギリスで、です。私はここでデルタ株を押しやるだろう、とは言いたいのではありません。なぜなら、南アフリカのデルタ株のR値が0,7、0,8であるのに対して、イギリスのデルタは1くらい、1より少し上くらいなので。勿論、下がる可能性はありますが。どちらにしても、デルタを一掃することはないでしょう。というのも、この村にはデルタかオミクロンか、どちらかの1つしか存在できない、というような話ではないからです。変異株は共存できます。もし、両方のR値が1以上だった場合にはどちらも増るのです。現時点では、デルタが大変安定して高い数値を持続していますが、オミクロンも高いR値を持つようです。ここでイギリスのR値を出すつもりはありません。誰かそれを計算したいのであれば、、1日の増加率を25%、その0,25をウィルスの世代時間、いまのところ、4日から5日を目安にできるかと思いますが、、そうすれば出るでしょう。

感染者から感染者、ということですね。

そのとおりです。まだオミクロンの世代時間ははっきりしませんが、専門家の間では、世代時間の短縮が起こっている言われています。そうであれば、これは、オイラー数の指数の乗数で、つまり、オイラーの0,25乗、掛ける4か5か6、掛けたい数で計算すれば、R値の違いがでます。結果は脅威的です。これが何を意味するのか考えていかなければいけません。もし、このままクリスマスまでにオミクロンでの流行が起こって、デルタも残る、となると、、実際にそのような状況になることが予測されるのです。

ここでの質問ですが、どうしてそうなのでしょうか?先週、チーゼック先生と特別ポッドキャストを放送しましたが、このウィルスの変異株が拡大する、ということは、、南アフリカでは多くの人が感染から回復していて、ワクチンも少なからず接種しているわけですから、2つの異なる要因が感染爆発にある、ということになると思うのです。変異株的なメリットは、感染力が強い、というところと、すでに存在する免疫を回避できる、というところです。今のところ、免疫を回避する、というところでは意見は一致しているようですが、先生もそうお考えでしょうか?

私の研究所ではまだデータが出揃っていません。そして他の研究所のデータも出てきていないようですから、、つまり、ラボで、中和作用の力価が例えば予防接種者や感染回復者でどこまで下がるのか。中和作用の試験をオミクロンでする、ということです。

つまり、抗体がどれだけ中和作用できるか、ということですね。

そのとおりです。抗体の活性です。かなり強い削減があると思います。私は、いままでの変異株ではみられなかったレベルの中和作用の削減があると思っています。それは確信しています。結果はクリスマス前に出るでしょう。勿論、参考値、という位置付けで、です。他にも別の実験方法もありますし、南アフリカから発表されたプレプリントもあります。そこで行われた方法では、はっきりと何度も感染するケース、この場合には2度目の再感染ですが、それが増加している、というデータがでていて、分析方法にもよりますが、オミクロンがでてきてからの再感染率は大体2,5倍の増加です。勿論、直接的なオミクロンとの因果関係はないにせよ、タイミング的な関係性がある、というところで慎重にみていくべきです。このようなデータから、ワクチンブレイクスルー感染は、多分何倍にも上がると思われます。ここでもなんらかの数値を上げることはしたくありません。この論文でもデーターベース面での限界があります。統計的にはきちんとしたものですが、それだけではデータベースの不明確さや取りこぼしを補えるものではありません。絶対数が少ない、という問題も補足できません。この論文でのケース数はまだ少ないですが、これからオフィシャルに発表されるまでに、、あと2ヶ月、3ヶ月すれば、、査読プロセスにおいてもっと数も足されることになるでしょうし明確なデータが出てくると思います。しかし、現時点では少し注意が必要です。メディアの報道で、3倍の再感染率、というのをみましたが、私はそれに承諾できません。私はもう少し様子をみるべきだと思っています。とはいっても、疫学的にみて明確な増加がみられることは明らかです。多分、数%の増加ではなくて、もっと大きな%の次元でしょう。例えば、2倍の再感染率だとしても、それは懸念されるべきことです。それを念頭においてR値を計算できるかと思います。R値1のウィルスがあるとして、別のウィルスのR値が3か 3,5であった場合、全体の感染の約半分が免疫回避によりそのウィルスによるものになる。つまり、免疫を突破する、ということです。もう半分は、適応メリットによるものとなりますが、勿論、適応メリットと免疫回避の両方を持つとすれば一番最悪なコンビネーションです。しかし、この変異株ではその可能性が高いです。

特に最悪なのは、全員が対象になる、というところですよね。つまり、予防接種の効果があまりなくなる、という点です。しかし、予防接種者と感染回復者の間には免疫応答の面での違いがある、ということですが、先生も先ほど、南アフリカのシチュエーションは他の接種率が高い国とは比較できない、とおっしゃいました。

そうです。その点では、イギリスをみていくしかありません。イギリスでもこのままの速度で拡大していくのかどうか。少なくともこれから1週間、2週間は観察していかなけれいけません。まだケース数が少ない段階では何もわかりません。どのように拡がるか、ということもはっきりしませんし、現時点ではローカルなアウトブレイクで、外から入ってきた感染者に直接遡ることが可能なケースですし、高齢者ではなくてどちらかと言えば若年層、旅行によく行くような年齢層であると思われます。ここも変わってくるでしょうから、様子をみるしかありません。そして、免疫といっても多様なので、例えば、感染回復者なのか、ブースターを接種したワクチン免疫なのか。オミクロンに対しては、自然感染から獲得した免疫よりも、ブースターワクチンにワクチン免疫のほうが保護効果がある、と言えます。というのも、このウィルスは進化において、宿主集団がすでに感染を経験している地域で発生したものだからです。そう考えると、この変異株は、免疫獲得が完了している集団への感染に完璧に適応したものだと言えます。集団のなかの免疫の弱点を突いてくるもので、パンデミックが収束したと思っている集団で接触制限などの制約がなくなった場合に安易に拡大していきます。その点ではイギリスは違います。イギリスの免疫構造はもっと安定したものだと思われますし、応急処置、この場合にはブースター接種などでまた新しい粘膜の保護効果を持つIgA抗体などを持つ人の率も高いわけで、それによってこの冬の保護効果もあるでしょう。しかし、これは私が憶測しているだけで、データはありません。専門家の間では、オミクロンでの感染防止効果の差、自然感染とワクチンとの差は噂すらでていない状態です。

シチュエーションの把握ができないうちには、ベースとなる部分での考案をするしかありません。私がよく聞く素人的な考えは、、「どうしてワクチンのほうが保護効果があるのか?自然感染すれば、完全なウィルスとの接触があったのだから、スパイクタンパク質しか知らない予防接種者の免疫よりも優れた免疫を獲得できるはずだ」と。その他にも、自然感染からの免疫応答のほうが幅広いからメリットであるはずだ、という意見もあります。3回の接種をした場合の保護効果が高い、と言われる根拠は何でしょうか?

それは、ワクチンが安定しているからです。勿論、自然感染では本物のウィルスの全てのタンパク質と接触する、ということは間違ってはいません。確かに、T細胞エピトープの多くはスパイクタンパク質だけにあるものではなくて、ウィルス全体に存在します。特に構造タンパク質に多いです。これはワクチンには含まれません。ただ、自然感染の弱点は、自然、というところです。軽い自然感染をした人は、ウィルスの接触も少なく、早期の段階で免疫が進行にストップをかけたので、言ってみれば抗原刺激が少なかった。軽い感染でウィルスも少なければ、免疫システムへの刺激も少ない。それに対してワクチンは、比較的スパイクタンパク質の量が多いです。そして、量も安定しています。もし、これを予防接種の際に、人によって量を変えたとしたら。たまにバイアルに残ったワクチンを打ったり、医師の気分で、通常の10分の1の量にしたりしたらどうでしょうか。そんなことをしたら、予防接種でもばらつきがでてきます。自然感染をどのように捉えるべきなのか、というのをもう一度説明したほうが良いかもしれません。例えば、イギリスのSIREN試験によると、感染回復者は再感染に対して80%の保護効果を持っています。この数値はこの試験のなかでも一番大きな値です。他の論文でもデータは出ているのですが、ここには2つの大きな不明点があって、1つ目には、この感染免疫の持続期間が限られている、ということ。一定期間を過ぎるとなくなったり、削減します。完全に消滅する、ということはありませんが、少なくはなります。ここが問題です。このSIREN試験を例にあげたのはこれがかなりしっかりと行われた試験だからですが、他にもこの知見をベースとした集団試験で良いものがあり、デンマークのものも同じような結果で80%の保護が1回目の自然感染後にある、とあります。ただ、これは有症状のケースのみのデータです。これは単純に第2波の際に誰が感染するのか、というところの調査がされたからで、第1波の際にPCRで陽性になった人のほうが、一度も陽性になったことがない人よりも感染しづらいのかどうか。結果は、一度PCRが陽性になった場合には、その後感染する確率が低い。保護効果は80%である、と。問題は、第1波の際に検査された人たちというのは、ほとんど有症状だった、というところで、当時はそんなに気軽にはPCR検査をしなかったからです。検査自体が新しかったので。重点的に有症状の疾患経過、どちらかと言えば重度の疾患経過と免疫獲得が行われたわけです。ここでは高い抗体刺激が起こっていました。これが感染後の保護効果が少し過大評価されてしまった理由であると思います。ですから、私は、やはりブースターによるワクチンの免疫のほうが、1度の感染経験からくる免疫よりも、オミクロンに対してより高い効果を持つであろう、と思っています。それが、南アフリカのシチュエーションでもあります。ほとんどの人が感染を経験し回復しています。2回感染した人も多いですが、それも自然感染ですから、私はブースターワクチンの免疫のほうが効果が高い、という意見です。それがイギリスに対しても楽観的にみている理由でもあります。

先ほど、T細胞エピトープが出ました。これは細胞免疫応答に重要な部分で、ポッドキャストでも何度も取り上げてきたことですが、これはワクチンとの関係でも重要なところです。どの程度の変化がいままでの変異株でお起こってきたのか、ということを比較しご説明いただけるでしょうか?スパイクタンパク質の変異に関しては様々な変異株でよく聞きますが。

これに関しては予備調査があって、これは理論的な考察ですが、オミクロン株では、ワクチンのスパイクタンパク質のT細胞エピトープとB細胞エピトープの30%に影響が出るだろう、ということです。他の変異株は、大体B細胞エピトープにおいて10%の域でした。あ、これが抗体エピトープで、最終的には抗体が結合する部分のタンパク質をつくる部分であるために、ここに中和作用が起こることによって中和作用検査で確認することができる、という説明をしていませんでしたね。最前線の保護、粘膜にある抗体で直接ウィルスの侵入をブロックするところです。一番初めに活躍する抗体、というところでとりあえず一番重要なエピトープで、T細胞エピトープは、こちらは重症化を防ぐ保護エピトープと言えます。大変簡単な説明ですが。さて、この部分が30%オミクロンによって影響されている、というのがスパイクタンパク質をみた際にわかるのですが、ワクチンのなかのエピトープに伝達する部分がオミクロンによって30%ダメージをうけている。今までの変異株ではB細胞エピトープで10%、T細胞エピトープで15%ですから、ここからも確実に免疫の削減があるであろう、ということ。これは自然感染による免疫も同じです。

しかし、全く消える、ということはないですよね。

完全になくなってしまう、ということはなくて、削減です。

まとめると、、ハイリスクがブースターワクチンの際にゼロから免疫を作らなければいけないのではないか、という心配は無用だ、ということでしょうか?

これは、私が感覚として考えていることではあるのですが、、免疫保護効果が全てなくなってまたパンデミックの初期の段階から初めなければいけない、ということではないと思います。

ここから重要な次のテーマに移ります。「この変異株がどれだけ重い疾患経過の原因になるのか」というところです。つまり病原性です。南アフリカの感染回復者のデータは、例えば免疫的に未熟な人には当てはめることはできませんが、予防接種者にとってはどうなのか、という点では重要なデータです。勿論、これらの国の年齢分布がヨーロッパとは大きく異なるため、1対1での比較はできません。年齢も重症化に関係してくるからです。若い人と高齢者とどちらが感染しやすいのか、など、南アフリカの病院からのデータで何かオミクロンについてわかっていることはあるのでしょうか?

この国同士での比較はもう少し後でしたほうが良いかと思います。ドイツに関しては、単独で見ていく必要があります。南アフリカのデータは出てきていて、プレトリアの病院のデータがホームページで公開されています。それを短くまとめようと思いますが、一般的にわかりやすい部分だけ抜粋します。これは、データの集計と医療従事者の観察記録のミックスてきなもので、例えば、入院患者の21%に酸素が必要、これは5人に1人、ということでかなり少ない割合です。以前の感染流行時には、コロナ入院患者のほぼ全員が酸素が必要になっていました。現在、入院している患者は別の疾患で入院している人も多くて、つまり、別の基礎疾患があり、コロナにも感染している、というケースです。ここで、注意書きがされていますが、そこには、これから入ってくるケースは若干重度の患者も多くなるだろう、とあります。この点でももう少し様子を見る必要があります。他の入院患者の指標としては、最近の死亡率は6,6%で、以前は17%くらいでした。病院でのシチュエーションはドイツとは異なります。南アフリカなので。病院にはすぐ行かないことが多い、と聞いていますし、入院時には重度の疾患になっていることも多いです。入院期間は短くなっていて、約3日の短縮、以前は8,5日でした。一番の変化は、年齢層です。現在は80%が50歳以下で、以前は、40歳以上、50歳以上に重点がおかれていました。この疾患閾値の削減の理由には2つの可能性があって、まず、南アフリカでは、デルタ株による冬の感染流行で国民のほぼ全員が感染したので、これが2回目の感染である、ということ。免疫ベースがあるので重度に至らない。もう一つは、何らかの理由で感染対象年齢が下がっているとしても、若い世代はどのみち重症化はしづらい、ということ。この2つですが、多分両方当てはまるのではないかと思います。もう一つ言っておかなければいけないことは、ここは、懸念されるべき点でもあるのですが、、20%弱、入院ケースの19%が0歳から9歳の幼児、子供である、というところです。これは以前とは異なります。これとは別の南アフリカのデータでもこの傾向を示すものがあって、ここではもっと低い年齢層、0歳から4歳、0歳から5歳において、コロナによる入院率がオミクロンでの感染により急激に増えている。発生指数も若年層に集中してきていますが、学生や生徒の間ではオミクロンの増加はそこまでみられないものの、就学児以下の年齢層での増加が激しいのです。入院ケース、ということは、勿論有症状での疾患経過ですが、子供たちが死んでしまう、とかそういうことではありません。たしかに1人目の死亡者はでたようですが、どんどん死亡している、とかそのような状態ではなく、とにかく、南アフリカでは小さな子供がオミクロン株に感染しやすい傾向があるようです。

これは、絶対数からの割合、小さな子供の感染時に重症化する割合の増加、ということでしょうか?

どの年齢層にも同じような傾向、つまりどの年齢層でも同じように感染は起こっていますが、重度の感染の増加が特に小さな子供の年齢層でみられ、同時に中年層のほうが高齢層よりも増えています。これは興味深いことです。南アフリカでも高齢者を優先的に予防接種した、という事も関係しているかもしれません。まずは高齢者の予防接種が行われましたので。

ダブルの効果、ということも考えられるということですね。つまり、予防接種によって守られている世代から若い世代に移行した、ということと、免疫回避が起り、感染回復後の両親が感染すると家庭内で小さな子供にうつってしまう。予防接種をしていない子供達です。

そのように考えれるかもしれません。この就学前の子供達は冬の感染流行の際には感染していませんでした。学校に通ってはいないので。その年齢層の子供達の免疫はあまりできていない、と言って良いでしょう。そこでオミクロン株が重度の疾患を引き起こして家庭内で拡がる。若い成人、つまり、小さな子供の親の世代が今回の感染流行のフォーカスである、というところもここから想像できます。この世代で多くのブレイクスルー感染が起こっています。そうなれば、家庭内で小さな子供に第二次感染が起こります。その結果、全体的な重症化と入院率の増加がみられる、ということです。これはさまざまな憶測をする際にも重要なポイントだと思います。今の時点ではきちんとしたデータを基にした科学的な分析はまだできません。それは何度も言っておくべきことだと思いますが、それでも、このオミクロン株は予防接種をしていない人にとって決して軽いものではない、ということは確かであると私は感じています。これは私が予想することではあるのですが、この南アフリカでの免疫を持たない小さな子供たちの年齢層で起こっていることからもそうではないかと思うのです。つまり、南アフリカでも予防接種の穴がある。以前は小さな子供での重症化はありませんでしたので、そこから考えると、免疫学的に未熟な層にとってはオミクロンとの接触は良いものであるはずがないのです。そこから、オミクロンは多分免疫学的に未熟な人たちにとっては危険なウィルスである可能性が大きいと思われます。

これは、子供へのワクチンのリスクベネフィット分析にも新しい視点を与えるものです。南アフリカでも12歳以下では予防接種は行われていません。

気をつける必要はあると思います。私はここで最悪の事態を吹聴するつもりはありません。南アフリカでもオミクロンに感染した子供達のほとんどが軽症で済むでしょう。しかし、オミクロン流行では、以前よりも多くの入院ケースがでています。年齢層の移行が起こっています。私の考えはこれまでのポッドキャストの内容からも明確に伝わっているか、とは思いますが、アメリカではもうすでに小さな子供達も500万人以上予防接種されていて、特に重度の副作用はみられません。ですから、子供へのワクチンの推奨はすることができると思いますし、5歳以下の治験も行われているところです。バイオンテックは来年の頭には0歳児からのワクチンの治験データを出すことができる、と発表しています。一番小さい年齢層でのものですね。これから開発が進めはそのワクチンもでてくるでしょう。これに関してはまだ話し合う必要がありますし、オミクロン株が出てきた、ということで必要になってくることも考えられますし、オミクロンに適応したワクチンも必要です。今のワクチンでは効果が十分ではなくなっていきますから、長期的にみて改善していかなければいけません。現時点では、まだ効果は十分にありますから、ブースターワクチンを積極的に進めていく必要があります。ドイツについて話す際にまたこのテーマについては取り上げることにします。とはいっても、ワクチンのアップデートは必要になるでしょう。来年の第二四半期には次の世代のワクチンでの予防接種になると思われます。

4回目の接種、ということですね。少なくともハイリスクのためのブースターになるでしょうか。

まずは、ハイリスクへ、です。その他の層では必要ない、と言い切ることはしませんが、ここで明確にさせておかなければいけない点があると思います。今、様々なところ、特にソーシャルメディアで言われていることは、これからずっとワクチンの定期便が来る。つまり、一生ワクチンを打ち続けることになるだろう、、と。そんなことにはなりません。これからエンデミックの状態に移っていきます。南アフリカはその点では一歩先に進んでいます。このオミクロン株は再度の免疫獲得ウィルス、一番始めのエンデミックなウィルス、つまり、エンデミック、季節的流行になるために進化的に理想的に淘汰されたウィルスである、ともみることができます。多分、このウィルスが南アフリカの最後の免疫の取りこぼし部分を埋めて南アフリカではエンデミックになるでしょう。周りの国でもそうだと思います。勿論、大きな犠牲の上でのことですが、幸いなことに平均年齢が低いためにそこまでの犠牲者はでないでしょう。ドイツではそのようにはいきません。ドイツで予測される犠牲者の規模を妥協するわけにはいかないので対策が必要になるのです。これは次に取り上げるべきテーマかもしれませんが、この移行期間で何が起こるのか、というモデリングをみていきましょう。この期間はドイツにも訪れます。ドイツもいつかエンデミックの状態になるのです。その状態になれば、ウィルスの扱いはインフルエンザと同じです。つまり、予防接種が必要になるのは、ハイリスク層、高齢者と、多分、妊婦といくつかの基礎疾患も含まれると思います。これについては、もう何回もポッドキャストで話してきました。今回のオミクロン株のようなウィルスは、何年か後に出てくるだろう、と思われていました。それが今もう出てきた、ということなのです。でも、出てきてしまったので仕方がありません。今後も数年後にまた出てくる可能性はあります。現時点ではこれは私の憶測に過ぎませんが。コロナウィルスはインフルエンザとは進化の仕方が違うので、そこまでブースター接種はしなくても良くはなるでしょう。コロナウィルスはその点ではインフルエンザウィルスよりも安定しているウィルスです。いずれは、インフルエンザのように高齢者を常にブースター接種しなければいけない、ということでもなくなると思いますが、その段階に至るまでにはまずはエンデミックへの移行期間があります。少なくともその間はハイリスクのブースターは必要でしょう。勿論、国民全体でこれから数年の間は冬に適応したワクチンでのブースターが必要になる可能性が全くない、とは言い切れませんが。

可能性としては、子供や青少年も、ということでしょうか?

その年齢層も含めて、ということです。できるだけ多くの割合でブースターを、ということです。

ここで、ヨーロッパ、特にドイツへ目を向けていきたく思います。その前に、オミクロン株が出てきたことによって素人的に考えることは、この進化が永遠と続くのではないか、という恐怖です。先生は、以前比較的変異に関しては楽観的な見方をしていらっしゃいました。ギリシャ文字よりももっと多くの変異株がありますし、変異株のなかには特に特別な意味を持たないものもありました。変異的には似たような変異が多かったので。しかし、今回の変異株は、いままでの変異株の悪いところをすべてあわせて様々な性質を持ったものです。それでも、この後に、もっと大きな免疫回避、もっと大きな適応メリットを持つ変異株が出てくるのではなく、本当に(エンデミックへの)移行期間に突入する、ということになるのでしょうか?

ウィルスの進化には勿論生物学的な限界というものが存在しますが、それは私たちにはわかりません。しかし、これが発生した理由、というものはあります。これが発生したのは、免疫を獲得しつつある集団のなかで莫大な量の複製が起こったからで、それが南アフリカのような国で起こったわけです。私は、この変異株が南アフリカで発生した、というところには納得していません。隣国のどこかであった可能性も十分あります。これらの国々は全て南半球にあり、冬のデルタによる感染流行が広範囲で起こっていたのでどこの国でも発生する可能性はあります。そのなかで大量のウィルスが入り混じって増えていったことになりますが、これは大量の鶏が押し合いへし合い群がっている状態なので、そのような環境のなかでは、重複感染、再構成も同時に起こります。ウィルスは、そのような環境下では、擬似生殖、つまり、莫大な量の複製過程の中で遺伝子をお互いに交換しあう現象がおこります。通常ではそのようなことは行われません。通常の変異は順を追って一つずつ続いていくものですので、勿論時間もそれだけかかります。今回、様々なウィルス系列の様々な性質が理想的に融合した、ということは、そのような過程でできたのでしょう。ぎゃーぎゃー騒いでいた鶏達が落ち着いた時点で、ひよこが生まれますが、これがオミクロン、ということです。ここからは、普通の鶏に成長して、今、私たちの目の前にある。そのように想像できるかと思います。しかし、今回のような大量の鶏の群れはそう簡単には毎年発生するものではありません。世界規模でもある程度落ち着いてくるでしょうから、世界中でのパンデミックではなくて、一部ではエンデミックのシチュエーションになっていくのです。それからはインフルエンザに似てきます。

ヨーロッパとドイツをみていきましょう。ドイツ国内でのオミクロンはどうなのでしょうか?現時点では単独のケースが報告されている程度ですが、イギリスをみると低い発生指数からかなりの速度での増加がみられます。

ドイツでどのくらいの数があるのか、ということはよくわかりません。大学病院同士ではデータの交換をしていますが、今のところ、25から30ケースほどです。ここから短期間で増えていくでしょう。この数は公の数ではありませんから、完全なものではありません。同時に、シークエンジングも行われていますが、多分、1週間、2週間後には100単位になるのではないでしょうか。200、300になっても私は驚きません。とはいっても、現時点では単なる憶測です。そして、今のところ、感染ケースは、直接外からドイツ国内に持ち込まれたか、そこから直接接触があったクラスターのどちらかなので感染経路が明確です。今、検証されたウィルスの5%をシークエンジングするのを目標としています。今年の初めのような、アルファの状況を把握するために行なった大量検査は今は必要ないと思っていて、そのようなことをしなくても若干の時間的な遅延だけで済むでしょう。1月の初めまでは、デルタ株の背景で徐々に増えてくと思います。この点に関しては、もうすえでにクリスマスの段階で懸念されるレベルまで増えていく可能性がゼロではない、と言うしかありません。つまり、50%、70%になって飽和まで行っていても不思議はないです。わかりませんが。もう少し様子をみるために辛抱する必要はあります。今、全くみえていないところも勿論あるからです。ドイツはイギリスではないです。予防接種の分布が違います。そこがドイツの一番の弱点で、この部分での予防接種の穴があるのです。先ほども言いましたが、南アフリカで小さな子供達が突然オミクロンで罹患しているのと同じように、ドイツでは予防接種をしていない人たちがターゲットになる可能性は大です。これは大袈裟に言っているわけでも、恐怖を煽ろうと思っているわけでもなくて、単純に注意が必要である、ということと、後で、この部分を無視したり見逃したために後悔するわけにはいかないからです。今はただここでの関係性があるかもしれない、という事だけ言っておきたいです。そうであるならば、非常に大変なことですが。

特に予防接種をしていない高齢者ですね。ここに大きな穴があります。

この部分が大き過ぎます。ドイツ国内でオミクロンが急増すれば状況が急転する可能性も大きいのです。今、デルタをなんとか改善された2G規制などで制御しようとしているなかで、オミクロンが急増すれば全く新しいシチュエーションになります。入院率や重症患者の数にも影響を与えるでしょうし、十分可能なことです。もう一つ別の視点から言うと、デルタが原因でもうすでにハンドブレーキをかけたまま運転しているような状況なのです。イギリスではそこまでかけていませんし、南アフリカでは全くかけていませんでした。1日の拡大が25%というのは、R値が3、、、

3というのは、今のまま南アフリカのように増え続けたら、ということですね?

そうです。勿論、ハンドブレーキを解除した状態で、ということですから、ドイツではブレーキから手を離すことはありません。その点ではシチュエーションが異なりますし、ドイツでの拡大はゆっくりと進むであろう、ということを言っておきます。

追加接種をする時間を稼げる、ということでもありますね。

そうです。時間稼ぎは大切です。時間はハンドブレーキをかけていることで稼げるか、もしくは、オミクロンが未接種者をターゲットに急増しイギリスのようになるようであれば手遅れになる可能性もあるでしょう。

ハンドブレーキ、というのは、この場合は少しひいた状態、ということですよね。先ほど、クリスマス、という言葉が出ました。これから屋内では全く人々が集まらない、ということにはなりません。感染拡大に関しては、ノルーウェイとデンマークのパーティからのアウトブレイクで良くデータが記録されています。ノルーウェイでは120人で行われたパーティでのデータです。そのうちの半分以上が感染しています。オミクロンでの感染もこのなかに入っていますが、デンマークでも似たようなケースで、これはコンサート付きのクリスマス会だったと思うのですが、そこでも集団感染が起こっています。ここでは150名の生徒、そのうち3分の1が感染、ほとんど全員がオミクロンでの感染でした。

この変異株の感染力はかなり強い、と思われます。勿論、どうしてそうなのか、という点ではまだはっきりしたことはわかりません。ただ、これらの国においては、クリスマス会の参加者のほとんどが基礎免疫を持っていた、と思われます。なんらかのかたちで、ということですね。この若い年齢層でも、少なくとも1回の接種は終わっているでしょうし、特にスカンジナビア諸国では進んでいるでしょうから、そのような状態だということを考慮すると信じられない規模の感染拡大です。ここから、第二次罹患率などを計算することはできませんが、このアウトブレイクは、半数以上が1つの感染源から感染した、長時間に渡って同じ室内で同じ空気を吸ったことによって感染伝播が起こった印象を受けます。放出されるウィルスの量も多いのでしょう。大変恐ろしいことだ、と言わざる得ません。

ヨーロッパでのオミクロンの割合をみていると、オランダとベルギーでは5%位だと言われています。これは高く見積もられている割合だと思われますか?それとも妥当でしょうか?

これらの国には大量に外部から入ってきていますから、そのような場合には注目度も必然的に高くなりますし、検査によって感染経路の追跡もされるわけです。これはパンデミックの初期の頃に大変エネルギーを費やされ、多くの場合が諦めざる得ない結果終わったことでもありますが、感染追跡をしようとした時点ではもうとっくに時間も経っていて困難であるのと、現在の接種率からもそこまでの必要がない、と一旦考えられていたのが、今また念入りな追跡が行われています。特に小さな国で感染絶対数も多くない、空港での数件に限られる場合には明確な追跡が可能で、クラスター全てを検査しますからこの結果が全て統計に反映されることになるのです。これが、統計の注目効果です。ですから、私はオミクロンがもうすでにオランダとベルギーで5%であるかどうか、という点では怪しいと思っています。もしそうであるならばあまりよくないことであることは確かです。倍増速度もまだ確定していないものの、そこから計算すると3日で倍になりますので。もう一つの手がかりとなりそうなことは、完全に予防接種をしている人たちのほうが感染を経験した人たちよりもオミクロンへの保護効果を持つ、ということです。子供たちの重症化の情報から注意深く考察した場合に、ワクチン未接種者にとってオミクロンは無害では決してない、ということ。つまり、免疫的に未熟、感染を経験したことのない人たちにとって、ということですが、その人たちは引き続きどんなSARS-2ウィルスであっても重度の疾患経過になる可能性を持っていると言えます。ですから、慎重にみていくべきであって、新聞などでこれから報道される南アフリカからのニュースをみて安易に喜ぶことは危険です。これはほとんど全員が感染した経験を持つ南アフリカでの話です。未予防接種層があるところとは全く状況が違います。この点は忘れてはいけないところです。さらに、もしドイツでも3日ごとに倍増するのであれば、その速度には政治的な決断はついていけませんから、大変大きな問題になることは間違いありません。しかし、現在は南アフリカやイギリスなどとは違い、ハンドブレーキを引いた状態なのでドイツ国内での拡大はもう少しゆっくり進むと思われます。これは現時点で私が感覚的に思うことですが、デルタ問題は1月まで続くでしょう。そして、オミクロン問題は夏まで、です。ここで私が「イースター(4月)まで」と言わない理由は、夏を迎えた南アフリカで収まりそうにないからです。現在は、イタリアの5月くらいの気温と気候なのにも関わらず、爆発的に夏の感染流行に突入しています。ですから、ドイツではイースターでパンデミックは収束する、とは言えなくて、オミクロンが優勢になれば、その感染力の強さから気温効果による数%の削減効果だけではR値を1以下に抑えることは難しいでしょう。そのような理由から、1月からはオミクロンでの問題が始まって、全体的にはデルタと似たようなものになると思われますが、勿論パラメータ的には異なる可能性もあります。もう一つ、ワクチン非接種者への警告を言っておくべきだと思うのですが、この変異株は免疫回避という性質以外にも本質的な適応メリットを持つウィルスだ、ということです。それはいままでにも、、アルファやデルタで見てきたことですが、本質的な適応メリットが上がるにつれて重症度も上がってきました。これは特にワクチン非接種者にとって問題です。南アフリカからのデータとは反対に、重症度が増し、さらに症状の悪化、重度の疾患経過に繋がる可能性もあります。適応メリットによって伝播能力が上がった場合、それはウィルスがさらに激しく複製して増殖することを意味しますから、大量のウィルスからは重度の疾患がうまれる。簡単な仕組みです。

ということは、考えていかなければいけないカテゴリーは、こっちが正しければ、あっちは違う、ということではなくて、どちらかといえば、それらがどの程度の影響しあうか、ということですね。

これから2週間、3週間で、南アフリカ以外でも、イギリスや他の国、データシステムが整っている国からももっと明確なデータがでてくると思いますから、それをきちんとみていく必要があります。イスラエルも、ですね。しかし、イスラエルはかなりはやい段階で国境を閉鎖しました。ここで十分な感染データが出るかどうかは不明です。しかし、スカンジナビア諸国などからのデータは参考になるかもしれません。ドイツからは多分でないでしょう。それはドイツにそのようなデータシステムがない、という理由からでもありますが。とにかく、そこから分析できるでしょうから、今日のようなクイズのような考察をし続ける必要はありません。そうなればもっと明確にわかってきますが、今の時点ではざっくりとしたことしか言えませんし、不必要に不安を煽ることもしたくありません。しかし、私には「このようなウィルスの変化には常に危機感を持って対応すべきである」ということを言う責任があると思うのです。そして今日は十分に言ってきたとも思いますが、このウィルスは完璧なパンデミック後のウィルス、つまり、エンデミックウィルスの第一号だと言えるでしょう。南アフリカ諸国で淘汰されて出てきた種類です。しかし、ドイツはまだその最終段階には達していません。私たちの免疫状況がそこまでいっていないのです。いままでドイツは高齢者たちの免疫を自然感染で獲得することによってエンデミックの状態に移行させる、ということはなんとか避けようと努力してきましたし、これからも避けるべきです。それは多くの重症患者による犠牲、死者を意味するからです。ですから、時間を稼ぎ、予防接種を進めていかなければいけないのです。

予防接種、免疫を獲得する、という面では、1回目、2回目の予防接種のほうが追加効果という意味でのブースターよりもさらに重要だと言えるでしょうか。とはいっても、ブースターをする人は基礎免疫はすでにできています。

それは正しいです。現時点では、ブースター接種は新しい2回の接種だと言えるかと思います。つまり、オミクロンで起こる免疫の削減が、2回目と3回目の違いである、と。これは私の直感的な意見ですが。先ほどの発言は正しくて、優先順位的にまずは非接種者層をなくすことが一番でその次にブースターである、ということが、残念ながらメディアや政治からもきちんと伝えられていないと感じます。政治家がよく、「ブースターの必要があるならもっとはやくに言ってくれなければ困る」と言いますが、我々専門家も今年の初め段階から、「免疫保護効果は次第になくなっていくのである時点でのアップデートは不可欠である」とは言ってきました。しかし、現在の議論で全く忘れ去られてしまっていることは、まずは予防接種の穴を埋めてエンデミックの周期に入る必要がある、というところです。エンデミックになるためには国民全体の基礎免疫が必要で、そうなれば死者数も許容範囲以内となります。ワクチン未接種者と3回接種した人との差は引き続き変わることはありません。それは常に、黒対白、です。ウィルスを免疫の隙間に入り込ませるわけにはいかないのです。この病原性では尚更のことです。特に高齢者での未接種者層が存在します。ですからドイツでは特にワクチン免疫の抜けている部分を埋めることを優先するべきなのです。そして、ブースターキャンペーンに関しては、9月のポッドキャストで何度も話してきました。ブースター免疫を緊急対策として使ったのはイスラエルですが、これをドイツでも集団免疫をサポートするために使うべきです。デルタ株が出てきたことによって、早期の集団免疫の獲得は諦めざる得ませんでしたが、ブースター接種からまたIgA抗体を得ることによってまた集団の免疫レベルを上げることが可能です。とはいっても、免疫の穴はそれでは埋まりませんから、ハンドブレーキから手を離して感染を野放しにすれば死者も出ます。ですから、そのようなことは引き続きできません。それ以上にハンドブレーキを効果的な武器として使っていく。ワクチン非接種者が多く存在する分野に2G規制をして未接種者を守っていかなければいけないのです。彼らがそれを理解するかどうか、ということはまた別の話です。それでもそうするしかないわけで、オミクロンでのシチュエーションではさらに厳しくなってきます。集団免疫獲得への希望はオミクロンでまた遠のきました。まずは個人を守ることに徹底しなければいけません。そのためにもワクチン免疫の穴を速攻で埋めなければいけないのです。



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