ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(81)  2021/3/23(和訳)

フランクフルト大学病院 ウィルス学教授 サンドラ・チーゼック
エッセン大学病院 小児救急医療 クリスティアン・ドーナ=シュバーケ 
聞き手 コリーナ・ヘニッヒ

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第三波に突入するにあたり、緩和はありません。これが、政治会議で決められた一番重要な点でしょう。そして、ウィルスにはイースター休みが課せられました。州は7日間指数100で必ず緊急ブレーキをかけるように念を押されたところです。
連邦政府と州での対策は勿論無視できませんが、このポッドキャストの主題は科学的な面からの考察ですから、今日のテーマは内科分野、ということだけ少し予告しておきます。何を理解し、何を理解することが可能なのか。ワクチンの接種とともに発症した血栓についてもとりあげます。また、子供や青少年で感染後に起こる症状についてもみて行きたく思っています。今日もフランクフルト大学病院、医療ウィルス学教授、サンドラ・チーゼック先生にお伺いしますが、後半には小児感染医のゲストをお招きしています。

専門家はいままでに沢山の発言をしてきました。非医薬的介入である対策やモデリング試算、緩和によるシナリオなどについてですが、先日決議されたこれから数週間の対策については、科学的にはどのようなことが言えるのでしょうか?

これは、主に政治的な決断であって、科学とはあまり関係がないものだと思っています。ですから、科学ポッドキャスト内でそれに関して話すことは困難に感じます。

そうですよね。イースターの5日間の静止期間、というものが決められましたが、通常の祭日に2日間が付け足される、というかたちになっていて、この期間内でのシャットダウンが決議されました。イースターの土曜日にはスーパーは開ける、とのことです。このような短い期間のロックダウンは、去年オーストラリアが行いましたが、純粋に疫学的にみて、ここからどのような効果が期待されるのでしょうか? この5日間のシャットダウンは、それと比較できるのでしょうか?

難しい質問ですね。比較をする、といっても、オーストラリアでされていた外出制限の範囲は、今ドイツで実行されているものとは全く別物でしたし、発生指数も大変高いので、このような短い期間でのシャットダウン、しかも、土曜日に中断される、というかたちでは、皆が期待するような効果を得るのは難しいと思いますし、勿論、潜伏期間、ということを考慮した場合に感染チェーンを一旦経つことはできなくもないでしょうけれど、それも全員がしっかりとルールを守ることが前提となります。私は、大きな効果を期待するには短すぎる、と思います。

オーストラリアの対策は、感染の速攻の追跡と感染チェーンを断ち切る、というものでした。しかし、それはドイツの発生数ではもうすでに不可能ですから、ちょっとした追加の効果を期待する、という程度でしょうか。

多分、そうなると思います。状況が全く違いますし、感染の追跡はできません。もし、全国で1人とか10人くらいの感染者数であれば話は違いますが、今現在の状況はそうではありませんので。

繰り返すことになってしまうかもしれないのですが、今、またロックダウンをした場合、といっても、ドイツではいままでのロックダウンもそういう意味では厳しいロックダウンはされてこなかった、と思うのですが、、それでも、効果がみえてくるのは2週間後、ということになりますよね?

そうですね。今日感染した人がいたとしたら、気づくのももう少し後、大体1週間後で、入院することになったとしたら、さらに1週間後になるので、常に時間的な遅延が生じるのです。今の数をみてみると、、なかには、「死者数は減ってるじゃないか」という人もいますが、現在の死者数は、ここ数週間の状況を反映する指標ではありませんし、また激しく増加することだけは避けなければいけません。確かに80歳以上、そして老人ホームでの予防接種は終わっていますが、それでも完全に警報解除、という状態からはまだ程遠いと言えるでしょう。というのも、今の病院での重症患者、60〜80歳の患者は、まだ予防接種をしていない人たちですし、また増加する可能性はあって、とにかく(死者数を上げないためには)全体の感染を抑えこんでいくしか他に手はありません。

政治がこれから強化していこうとしている部分は、職場での検査です。大部分の感染は職場で起こっている、という理由からですが、そのことはかなり前からわかっていることはあるのですが、、ここでの検査を強化することは重要でしょうか?

勿論です。特に、テレワークが出来ない会社などでは重要だと思います。テレワークに切り替えているところは多くありますが、工業の分野や、工場、食品加工や工事現場などではテレワークにする、ということにはいかないわけですから、そこでの感染を検査によって発見し、感染のチェーンを断つことが重要です。

先ほど、これは政治的な決断であって、科学的にはコメント出来ない、と仰っていましたが、先生の同僚やお仲間で政治的なアドバイザーをしている方々の雰囲気はどのような感じなのでしょうか? まだ熱意を持ってアドバイスしよう、という気力は残っているのか、それとも、科学とは別なところですでに決断されることについて失望のほうが大きいのでしょうか?

私の同僚たちの意見を私一人が代表することは出来ませんが、、私は個人的に大変大きな憤りを感じています。というのも、どうすれば感染を防ぐことができて、ウィルス学的な手段によって感染を削減していくことが可能であるか、ということはかなり前からわかっていることだからです。勿論、政治では別のことも重要な役割を果たすのでしょうし、何がどう重要なのか、という点では私達学者が把握していないところもあるとは思います。しかし、経済的なことであったり、子供の教育もそうですが、この、頑なに真ん中を取ろう、全てに満遍なく中間を取っていこうとする姿勢が逆に多くの人の不満を生んでいる、と私は思うのです。学者として、そして一般人としても私はそのように感じます。出来るだけ多くの人から文句が出ないように中道を選ぶ、というのは必ずしも最適な決断ではないと思うのです。

チーゼック先生、またアストラゼネカが紙面を賑わしました。これに関してはリスナーからも質問が相次ぎましたが、ワクチンの直後に発生した症状についてです。アストラゼネカは新しい効果率に関する論文を、チリ、ペルー、アメリカのデータを元に発表しました。今の時点では記者会見のみですが、有症状の感染に対して79%の効果である、ということです。重症化に関しては、100%ということですが、これもまだ分析前のデータだ、ということで議論になっています。しかし、それよりも私たちが知りたいのは、稀に起こる副作用に関してですが、この研究では血栓の発生率の増加は認められませんでした。しかしここから、ドイツでのケースは偶然だったかもしれない、と安堵しても良い、、とは言えないですよね?

うーん、それはないと思います。これは、まだ製薬会社が行った記者会見だけですし、完全なデータはまだ出てきていません。会見で発表されたデータは勿論良く、特に65歳以上での効果に関しては素晴らしいですが、副作用、という点では、この治験は約3万3千人の参加者で行われていますが、全員が予防接種されたわけではありません。私が知るところでは、3分2にワクチンが打たれたはずですが、、

2万人くらい、ということですね

大体2万人のなかの20%が65歳以上だった、ということです。ここでは脳静脈洞血栓症が起こる可能性も低いわけですから、この2万人のなかで20%が高齢者だった、という条件下で脳静脈洞血栓症 が出なかったとしても不思議なことではありません。ヨーロッパでの発生率はそれよりも低かったわけなので。ここからも、第IV相試験の重要性がわかると思います。これは医薬品やワクチンの承認が降りた後に行われる治験で、2万人や3万人という規模ではなく、百万人、千万人単位でおこなわれるものですから、この規模でやっと稀に起こる副作用、というものの把握をすることができるのです。ここで何も出てこない、というのは想定されていたことですが、これは私たち専門家の間では、underpowered、と言われるものです。逆にポジティブにみるのであれば、脳静脈洞血栓症 が出なかった、ということは、血栓のケースが増えていない、ということでもあるので、とりあえず、頻繁に起こる副作用、もしくは、一定の周期で突発的に起こる副作用、ということではなくて、大変稀なものであるのではないか、ということも考えられますが、この論文からはそこの決定的なデータを得ることはできません。

とはいっても、そのような方向性は見て取れますよね。狭い見方をすれば、 「ドイツやヨーロッパでそのような例がいくつも出た」となるでしょうけれど、全体の割合で考えると、大変稀な副作用です。この間のポッドキャストでドロステン先生にもご説明いただいたのですが、その時点ではまだ情報も少なく、出てきたばかりでした。臨床的な部分を順を追ってみていこうと思うのですが、ここでの副作用は、脳静脈洞血栓症 、つまり脳でできる血栓で、これは稀はありますが、脚などでできる血栓よりも危険な疾患です。医学的に脳静脈洞血栓症で何が起こるのか、という説明をしていただけますか?

静脈洞とは、脳の硬い脳膜で、硬膜静脈洞と呼ばれますが、そこに張り巡られている静脈血のなかに血栓ができる可能性があるのです。ここは通常の血管のように静脈弁などはなく、筋肉もありません。脳膜に張り付いている状態、という感じです。ここで血栓、血液の凝固が起こってしまうことを脳静脈洞血栓症といいます。このように凝固が起こると詰まったり、詰まるとゆう出性出血や脳の腫れに繋がることがあります。頻度でみると、大変稀な疾患です。動脈閉塞と比べると、6分の1の確率で、脳梗塞は、10万人に182人ですが、脳静脈洞血栓症はもっと少ないです。深部静脈血栓症では、100万人中3000ケース、静脈洞血栓症は、100万人中3〜5ケースです。1000倍の違いです。脳梗塞だと、100万人の1800なので、それに対して、100万人に3〜5ですから、こちらも明らかな違いです。それくらい稀なことですから、コロナのパンデミック以前や、ワクチンの報道の前には脳静脈洞血栓症、という言葉さえ聞いたことがなかった人のほうが多いのではないでしょうか。患者の70%が女性である、というところも言っておかなければいけません。つまり、女性のほうが罹りやすいということです。原因としてはその頻度をとっても様々なものがあります。ここでは典型的な脳静脈洞血栓症でお話ししていますが、頻度が高いのは突発性なもので、20〜35%を占めます。突発性、とは、どこから起こったのか、ということが医師もわからない場合を指します。避妊ピルの服用が原因の場合もあって、ホルモンの関係や産後、産褥中に静脈洞血栓症になったりします。妊娠期の後半3分の1に頻度が高いです。勿論、先天性血栓性素因などによって血液凝固障害などの傾向を持つ患者はそもそも血栓になりやすいですし、遺伝子の欠陥、第V因子ライデンや、プロテインC、プロテインS欠乏も原因の1つです。これらの疾患は、医学を勉強する際に全て学ばなければいけないことですが、大変複雑です。後、原発性抗リン脂質抗体、というのもありますね。このように、本当に様々な血液凝固障害が先天性血栓性素因に含まれるわけです。このような素因を持っている人たちは勿論ハイリスクです。そして、悪性腫瘍、つまり癌患者にも血栓ができることは多く、この静脈洞血栓症もみられます。血管炎症候群、これは血管で炎症が起こることを言いますが、これもリスク因子です。子供や青少年にも、静脈洞血栓症は起こり、この場合は遺伝的な先天性血栓性素因の初期症状であることが多いです。あとは、稀に感染症の後や、副鼻腔炎などの感染時に最悪の場合には静脈洞血栓症が起こったりもします。

しかし、これを診断するのは難しいのではないでしょうか?というのも、すぐには症状はでませんよね?

ここでは、典型的な脳静脈洞血栓症と、アストラゼネカの脳静脈洞血栓症とを区別することが必要だと思います。もう少し典型的な症状をみていきたく思うのですが、この場合にはその疑いがあれば、画像で判断することになりますが、つまり、CTやMRTなどを使って撮った血管の状態です。これを、頭部のアンギオCT、アンギオMRT検査、と言います。血液検査からも兆しが発見できることがあり、血栓症がD-ダイマー値の上昇の原因であることもあります。画像ではかなりはっきりとわかりますので、様々なリスクに発展する周期での診断はよくできます。典型的な症状について知りたい、と思う方が今多いと思いますが、頻繁に起こる症状としては、鼻から目にかけて起こる痛みと視力の低下です。そこから、激しい頭痛と首の痛み、これは脳膜への刺激から起こる頭の痛みで、目の周りと視力に違和感を感じるところから激しい頭痛に移行していきますが、 これは頭痛になった時に誰もが経験することだと思うのですが、なかなかよく治療することはできません。後は、水が溜まる、浮腫と呼ばれるものがまぶたやほうれい線に出ることがあります。同時に、もしくは時差で神経的な症状、痙攣、癲癇が出る場合もあります。しかし、これは初期症状ではなくて、その後に出てくる症状です。重度の静脈洞血栓症の症状をみていくと、発熱や麻痺、眼球運動障害、粘膜の腫れ、頭蓋内圧などですが、この頭蓋内圧が問題になる場合も多く、これによって脳や脳の一部が圧迫されてしまうからです。これがこの後に患者が死亡する原因に繋がります。

アストラゼネカのワクチンとの関係性においての特殊な条件に移る前に、もう一つ質問したいのですが、このような典型的な脳静脈洞血栓症は治療が可能なのでしょうか?

初期発見をすることができれば、治療は可能です。医療従事者はその点の訓練がされています。画像診断から静脈洞血栓症の疑いがあれば、そこには症状経過を重症化されるリスク因子があるわけです。ここでの血栓は脳の深部でできているものですが、高齢者が昏睡状態に至ったり、出血なども同時に見られた場合には重度であることを意味しますが、通常の初期の段階での静脈洞血栓症においては出血も少ないので治療もそう難しくはありません。治療の目標は血管の還流障害を無くすことです。それにはヘパリンなどが使われますが、これにも低分子量ヘパリンと、未分画ヘパリンがあります。

血液をサラサラにする、ということですね。

そうです。ヘパリンは、典型的な抗凝血剤で誰もが知っている薬だと思うのですが、血栓の予防などに使われるものです。入院の際に、脚やお腹に注射されます。この薬、ヘパリンで治療が可能ですが、これに関してはまた後で説明はしようと思いますが、、この場合は違うであろう、と思われます。それから、長期の治療では別の方法もありますが、急性の周期の後に内服薬タイプの抗凝血剤が使い、これは錠剤で12ヶ月ほど血栓の予防に有効です。これは、静脈洞血栓症ではあまり使われません。患者が重症である場合には勿論症状ごとの治療もしますが、例えば、頭蓋内圧を下げるであったりとか、痙攣には抗てんかん薬が使われたり、などです。

専門用語の説明の補足をしたいと思うのですが、先ほどの抗凝血剤というのは、血液の凝固を抑えるものですね。

あ、申し訳ないです。今日のポッドキャストは少し内科学的な内容でしたね。

いえ、私は準備をしてきましたので大丈夫です。この血液の凝固を防ぐ抗凝血剤にヘパリンのような薬がある、ということですね。

そうです。大まかにヘパリンのような薬があり、皮下注射で投与されるものですが、内服できるものあります。この内服薬では、多分、フェンプロクモンという名前は聞いたことはある方もいるのではないでしょうか。これは処方されることが多い薬で錠剤ですが、長期での使用も可能です。錠剤のほうが注射よりも患者的には楽です。

アストラゼネカワクチンとの関連性において、グライフスヴァルダーの輸血医学者が、血小板減少症である可能性を指摘しています。これは、血小板の欠如ですが、根本的には血小板血栓は、傷を塞ぐために必要なもので、つまり必要とされる部分での血液の凝固です。

アストラゼネカワクチンによって起こった脳静脈洞血栓症の際に、同時に血小板の減少がみられていますが、これは本来であればありえません。というのも、血小板が少なくなっているのであれば、出血が止まらなくなることは予測されるものの、血栓ができる、とは考えられないからです。矛盾しています。そのような場合に内科医、医師として考えるのはHITである疑いです。HITは、Heparin-induced thrombocytopenia、ヘパリン起因性血小板減少症の略ですが、この名前のようにヘパリンが引き起こすものです。これはアストラゼネカとは別に、独立した病症としてみる必要がある、ということです。

まずは類似点、ということですね。

HITとは何か、ということですが、ヘパリンが起因となって血小板が減少するので、これは出て欲しくないヘパリンの効果だと言えるでしょう。別の副作用は出血、さらにHITで起こる免疫反応も起こって欲しくないものです。HITには2種類あって、HIT1とHIT2がありますが、HIT1のほうが頻度が高く、これは免疫的なものではありません。血小板の減少がはじめの数日間で4分の1、30%以下になります。通常の場合は次第に回復します。しかし、今問題とされているのは、HIT2のほうで、これは免疫的なヘパリン起因の血小板減少症で、これがパラドックス的ですが、血栓を引き起こす可能性があるのです。ここでは、ヘパリンによって抗体ができて、それが血栓を引き起こします。ちょっと混乱するかもしれませんが、これは内科医であればよく知っている病症でヘパリンを投与する際にはわかっていなければいけないことです。病院ではヘパリンは頻繁に使用されますが、HITによって静脈、動脈の閉塞に繋がることがあります。そこまで稀なことではなくて、投与されてから5日後に起こる確率は 0,5〜5%です。これは特定のヘパリン、低分子量ヘパリンではあまり起こりませんが、未分画ヘパリンでは出る可能性があります。ざっくりと言うならば、このような感じですが、HIT2で典型的なのは、ヘパリン投与から5〜14日後に起こる、ということ。これは抗体がまずつくられなければいけないからです。ここにアストラゼネカワクチン接種との相似がみられます。アストラゼネカでは、3〜14日だったということです。先ほども言ったように、HIT2では5〜14日です。ここで共通点があります。抗体がある程度の濃度に達するまでにそれだけの期間を有するのです。HITのリスクは、血栓ができる確率が比較的高い、ということ。50〜75%ですから、ここで注意をしないで間違って患者に高濃度のヘパリンを処方してしまったりすると、大変なことになってしまうわけですね。症状を悪化させてしまうことになりますので。HITは静脈での血管閉塞が多く、動脈の約5倍です。半分ほどが肺血栓塞栓症にもなりますが、他の部分、脚などでもかなり頻繁にみられます。心臓発作もありますし、脳卒中、そして、この脳静脈洞血栓症、もしくは腸の動脈閉塞になることもあります。

これは理解が少し難しい分野ですよね。話についていくのがやっとです。メカニズムについてもう一度お伺いしたいのですが、 HITは、ヘパリンによって引き起こされる訳ですから、ワクチンでは可能性としては他の素因がある、と考えられます。抗体ができることによって、血小板が凝固してしまって血栓ができる。本来であれば傷を閉じるために発動するものが活性化してしまう、ということなのでしょうか?

そうです。血小板第4因子というものがあって、これはこの疾患で重要な抗原です。それがヘパリンが血小板第4因子と結合した場合に自己抗原になる場合があるのです。この自己抗原が作られてしまった際に血小板の活性化が起こったりします。つまり、大きく分けて3つの段階があるのですが、まずは、免疫応答が HIT抗体をつくる指示を出さなければいけません。自己抗体ですね。次に第二段階として、血小板がそこから活性化されてトロンビンの形成が強化されて、その結果、血栓、血液凝固が増える。第三段階は、血栓症です。しかし、これは各患者が持つ因子によっても進行度合いなどは異なります。つまり、誰もがなる疾患ではなく、特別な因子によって重症化するか、 他の症状に繋がるか、ということが決まるのです。どのように診断するか、と言う点では、血液病専門医が血中の抗体を調べることができますので、その検査によって抗体が検出されて、血小板値が下がっているということがわかるのです。

これは、基本的にワクチンの接種後に出来る検査ですよね。

そこですが、勿論このような疑いがあった場合には検査できるでしょうけれど、ワクチン接種後に頭痛がする人たちを全員検査するわけにはいきません。きちんと診断されなければいけませんが、スクリーニングをする、という面でも血液検査をして血小板が減少しているか、というところをみることもできるでしょう。先ほどもお話したように、D-ダイマーで測ることが可能です。これは100%確実な方法ではありませんが、ここが上昇していた場合には、兆候があり血栓がある可能性があるのです。血栓がみつかれば、そこから自己抗体をみていきます。そこの重要性は、先ほどの脳静脈洞血栓症を考えても明らかだと思います。通常であればヘパリンを投与されるところですが、自己抗体があった場合は全く逆効果です。それによって病状が酷くなり悪化します。ですから、この場合にはヘパリンを使わずに、HIT2用の別の医薬品で抗凝固療法を行います。例えば、アルガトロバンです。これは多分覚えることはできないと思いますが、このような代わりの薬があるのです。 この薬や似たような薬を使って、HIT2の治療を行いますが、ここでの疑問点は、これはアストラゼネカとどのような関係性があるのか、というところです。これは2つの大きな病症です。これは私も1週間前にこの血栓のレポートを読んだ時に思ったのですが、血栓と頭のなかの出血、そして血小板の減少というコンビネーションは、HIT2の病態であると内科は考えます。先ほどのグライフヴァルトの専門家の報告にある通り、血中でヘパリンの投与がされていないのにも関わらずP4に対する抗体がみつかった、とありますから、これは特殊です。私が理解したところによると、ここでは ヘパリンなしでHIT2に似たような疾患が出た、ということになります。勿論、これがどうして起きたのか、というところが疑問で、ドイツではいくつかの脳静脈洞血栓症のケースが血小板減少症と共に起きていますが、これを比較的頻繁に起こる深部静脈血栓症と比べてはいけません。この典型的なHIT2の病態、つまり血栓と同時に血小板の減少が起こり出血傾向に繋がる、というのを見抜くことが重要で、脳静脈洞血栓症の場合は治療法が全く異なるため、迅速な対応が求められます。このような理由もあって追跡して検査することが大変重要なのです。どちらにしても、今後このような事が起こった場合にはどのように治療すれば良いのか、ということははっきりしました。ヘパリンの代用と免疫グロブリンの投与です。

免疫グロブリンは、外部から投与される医薬品としての抗体ですね。

そうです。高濃度のものです。これは自己免疫疾患の場合にはよく使われるもので、病理的な抗体が高濃度の免疫グロブリンによって抑圧されます。これによって更なる抗体の形成が阻止されるように誘導するものです。

この免疫グロブリンは、特化されたものなのでしょうか?それとも全般的な効果を持つものですか?

これは特にSARSなどに特化したものではありません。一般的な医薬品です。この免疫グロブリンは、抗体を伴う血栓症においてこの血小板をブロックします。それによってまた全体の数が増えていくのですが、詳しいメカニズムを説明することはできません。根本的には、重度の自己免疫反応の際には高濃度の免疫グロブリンを使う、ということです。

何が引き金となったのか、というところはまだわかっていません。HITに似たメカニズムで副作用がヘパリンを使った際に起こる、ということですが、ワクチンの接種時には勿論ヘパリンは使われていないわけです。この場合は何が抗原となったのでしょうか?何かタンパク質が反応したのでしょうか?これは憶測の域であることはわかっていますが、理論的に少しお伺いしたいと思います。ベクター、つまり弱毒化されたアデノウィルス、チンパンジーのアデノウィルスによって引き起こされた可能性はあるのでしょうか?アデノウィルスのDNAに抗体が反応する、といった。

この部分がこれから解明されなければいけない大きな謎でしょう。可能性的にはいくつかのバリエーションがあって、理解のために出来るだけはやく調査を進めなければいけないところです。アデノウィルスベクターである可能性は勿論あります。アストラゼネカはチンパンジーのアデノウィルスを使っていますが、ここの点もしっかりと検査されなければいけないところです。勿論、他のアデノウィルスベクターワクチンでもみられるのか、という点もはっきりさせなければいけないでしょう。他のワクチンではチンパンジーではなくて、ヒトアドノウィルスが使われていますので、もう少し広範囲で接種されるようになれば、他のアデノウィルスワクチンでも似たような反応がでるのかどうか。それとも特性はないのか、ということがわかると思います。

ジョンソン&ジョンソンや、スプートニクVですね。

そうです。今、 mRNAワクチンのデータ分析と並行してそちらのデータも分析されているところですがまだ結果は出ていません。例えば、イスラエルではもうすでにかなりの量の mRNAワクチンが使われていますし、若年層でも接種されています。イスラエルのように、ほとんどバイオンテックファイザーのワクチンが接種された国でのデータをみることは大切で、どこかの年齢層で脳静脈洞血栓症や、HIT2に似た症状が出ていなかったかどうか。この点の調査がされているのかどうかは、私にはわかりません。もう一つの仮説としては、スパイクタンパク質自身、つまりコロナウィルスのスパイクが引き起こす、というものです。

表面タンパク質ですね。スパイクのついたタンパク質です。

そうです。バイオンテックでもこのような疾患が出る可能性はあり、これから調査が必要である、と言うことを読みました。3つ目の仮説は、非特異性の炎症反応である可能性です。つまり、炎症が引き金になって自己抗体、自己免疫的なプロセスがワクチンによって発動してしまう。いくつかこのような原因が合わさる可能性もあるでしょう。例えば、スパイクと強い炎症反応が一緒に、ということです。スパイクをもう一度みてみようと思いますが、ある文献をみつけました。Covid-19感染症における、PF4もしくは、HITの発症例です。重度のCovid-19感染症では血栓症や血小板減少症は頻繁に起こります。つまり、血小板の減少と血栓傾向がある、ということです。これに関しての論文はいくつかありますが、研究自体は全く別のところに焦点が置かれたものです。例えば、ヘパリンの投与の際にどのくらいの頻度でHITが起こるか。多くの重症患者はヘパリンで治療されますが、その際にPF4抗体ができた患者がいました。勿論、これはヘパリンが原因なのか、重度のCovid-19感染症が原因なのか。これに関しては、これから解明されなければいけなません。重度のCovid-19感染症とどのくらいの頻度でHITのようなP4抗体ができるのか。ヘパリンなしでも起こるのか。HIT2の発症頻度は他の集中治療患者と比べた場合に多いのか。まだ不明な点が多いです。ここで興味深いデータをみつけたのですが、アルガトロバン、HIT2の際のヘパリンの代用ですが、これが Covid-19にも効果があった、というもので、勿論まだパズルのピースの一個でしかなくまだ今の時点では答えはでないでしょうけれど、重度のCovid-19患者に似たようなことが起こっている可能性はあると思うのです。今必要なのは、調査と並行した臨床試験です。重度のCovid-19での、アルガトロバンとヘパリンの効果の違い、そして、HITに似た疾患が、HITに似ているだけでCovid-19から引き起こされた疾患である可能性もみていかなければいけませんし、どのくらいの頻度でP4抗体がみつかるのか。このような検査は毎週患者で行うようなスタンダードの診断方法ではありませんので、きちんと特別にラボに要請する必要があります。この結果が出れば大変興味深いと思います。重度のCovid-19患者が頻繁に様々な抗原に対する自己抗体をつくってしまうことがわかっていますが、そのなかにP4も含まれます。この点については検体などから比較的はやい段階で解明されるのではないか、とは思います。

先ほど、もしスパイクタンパク質が疾患の原因であれば、他のRNAワクチンでも起こりうることになりますよね。しかしこのタイプのワクチンではまだあまり観察されていません。ここでの説明はつくのでしょうか?

多分、ワクチンだけの問題ではないと思うのです。例えば、そうですね、これはかなり大胆な仮説になりますが、、まずアストラゼネカの1回目のワクチンが免疫反応をかなり激しく刺激すること。若年層で予防接種の後で2日間くらい熱がでて寝込んでしまうケースもよくありますので、職種によっては同時にワクチンを打たないように、という推奨がされていたりするくらいです。これは、みたところ、バイオンテックの第一回目のワクチンよりも激しいです。もしかしたら、この辺りも関係があるかもしれません。つまり、激しい炎症反応と、スパイクの形成とX因子、つまり、遺伝的な因子が、ここから疾患に繋がる傾向を持っている。どちらにしても、これはこれから数週間、数ヶ月の間に調査されて明らかにされていくことだと思います。はっきりとしたメカニズムと、この疾患になるリスクを持つハイリスクグループを明確にすることが重要です。勿論、もう一度言いますが、これはかなり稀なことです。この副作用が起こる確率は全体的にみて本当に低いですから、第III相の段階で、3万人から4万人の治験者のなかでも現れなかったのはそのような理由です。

グライフヴァルトの研究では、比較として、予防接種後に副作用が現れなかった人たち、脳静脈洞血栓症が発症しなかった人たちで自己抗体を検査していますがそこでは発見されませんでした。まずは、これが予防接種者全てにあてはまる症候群ではなくて、ごく一部の血栓ができる場合のみである、とみても良いのでしょうか。

そのようなことだと思います。ごく稀で、稀な症状で稀な疾患であると思われます。どちらにしても今まで発生していない、ということはスタンダードの副作用ではありません。勿論、常に詳しく検査されるわけではありませんが、これはこのワクチン特有の現象であるのかどうか、という質問を良く聞きますし、他のワクチンではどうなのか、と。昨日、私の大学の血栓止血学の同僚に聞いてみたのですが、そこの検査はされていない、ワクチン接種の後にPF4抗体の検査はされない、と言っていました。これは特殊な検査ですからこれから更なる検査と研究が必要だと思います。しかし、先ほども言いましたが、とても稀なことには変わりはありませんので、誰もが接種後に自己抗体をつくってしまう、ということはあり得ません。

SARS-2ワクチンに関しては、私たちはとても過敏になっているので、他の疾患のワクチンの際には考えもしなかったようなことでも知りたいと思っているのだと思うのです。どのくらいまで、他のワクチンとの共通点などがあったりするのでしょうか。例えば、麻疹ワクチンなどですが。

予防接種後に血小板の減少が起こること自体は珍しいことではなく、様々な理由が考えられます。例えば、免疫性血小板減少症などが挙げられますが、これも免疫疾患です。しかし、これはHITやアストラゼネカのケースとは無関係です。例えば、子供などに点状出血、皮下の出血が認められることがありますが、この際にはどのような薬を服用しているのか、何か薬を飲んだか、感染はしているか、という点をチェックすることが重要です。というのも、感染後にそのような症状がみられる場合があるからです。もしくは、前回の予防接種はいつだったか。もっとも、ワクチン後よりも感染回復後のほうが頻度が高いです。この免疫性血小板減少症では、血小板第4因子に対する抗体ではなくて、起こっているのは自己免疫プロセスです。それによって、血小板がはやくに分解されてしまいます。その結果、数が減少してしまうのですがこの際の治療も若干異なります。ここでは、免疫グロブリンかステロイドの処方がされますが、HITと混同してはいけません。ここでも血小板の減少があり、その結果出血も認められますが、血栓に繋がるリスクというものはないのです。ですからここでの病態は異なります。先ほども言ったように、他のワクチンでは、この特殊なP4に対する自己抗体の検査はされていません。私がおかしいな、と思ったのは、血栓と出血が同時に起こった、ということを聞いたからです。これは、多分アストラゼネカの接種を予定している人、そして接種した人が参考にできること、どこに注意をすれば良いのか、という点にもなると思うのですが、風邪のような症状、関節の痛み、筋肉痛や頭痛などは頻繁にはじめの2日間の間に起こりますので全く問題はなく、この病態とは関係がありません。心配をする必要はありません。3日以上副作用が続いた場合、つまり重度の症状であったり、めまいがしたり、頭痛で物がはっきりみえなくなったり、という際には医師の助言を仰ぐ必要があると思います。血液検査をしてもらえば血小板の状態もわかります。血液塗抹もできますし、Dダイマーを測れば血栓の傾向もわかるでしょう。そこでの疑いがあるのであれば、CTやMRTの画像診断から、血栓症や血小板減少症であるかどうかをみることができます。もし、それが確認されたのであれば、ヘパリンの投与はせずに、この病態からの判断で血小板第4因子に対する自己抗体があるのかどうか、ということを確認してからヘパリンの代用で治療する、ということになります。

先生の病院ではもうそのようなケースはありましたか?多くの人がワクチンの後に、「あぁ、頭痛がするけどどうしよう」と2日、3日後に心配するのではないか、と思うのですが。

心配することはないと思いますが、心配してしまう気持ちもわかります。注意深く自分の症状を観察してしまうでしょうし、判断も難しいです。先ほども言ったように、血液検査で比較的簡単に検査はできます。不安の度合いはその人その人で度合いが違うと思いますが、かなりの人が不安になって、質問も多く寄せられてきているのは確かです。「5日間も頭痛が続いているのですが、どうしたら良いでしょうか」など、やはり心配をしている人は多いようです。

これは少しスクアセスメントですよね。今までわかっていることからどのように考えれば良いのか、ということですが、アストラゼネカワクチンとの関係性はあるものの、バイオンテックやモデルナのようなmRNAワクチンには今のところありません。もし、私が保育関係者で30歳だとしたら。避妊ピルを飲んでいたとしても重症化するリスク自体は低いです。そのような場合に、ワクチンのリスクよりも感染リスクを選ぶ、という決断をするかもしれませんよね。しかし、保育園の安全やパンデミックの抑制対策にも協力したい、と思うかもしれません。もし、若年層の女性のリスクがアストラゼネカだけであるのだとすれば、それがたとえ稀なことであったとしても、アストラゼネカワクチンの接種対象を高齢者に、そしてmRNAワウチンを若年層に、という変更する、という決断もできるのではないでしょうか。フランスがすでにそのようにしていますが。

難しい問題ですね。これに関してははっきりとお答えできません。まず、このケースに関しての学術的なデータや患者データに目を通していない、ということと、判断の手段が新聞に載っていた情報だけだ、ということです。どのような共通点があったのか、という点などでも詳しいデータが必要ですし、どのくらいの病態が出ていたのか、どの点をもっと検査できるのか、などですが、データは公にされていません。ですから、私が感じることや、個人的な意見しか言えないのですが、例えば、免疫学的にみても、脳静脈洞血栓症の18のケースをとっても、ベネフィットのほうがリスクよりもはるかに大きい。20〜55歳の女性でみても、です。脳静脈洞血栓症の頻度が上がったとしても、疾患とその結果起こりうるLong-Covid のような後遺症との比率、そして若年層での重症化のリスクとの比率でみるとここでもベネフィットのほうが高い。もし、1つしかワクチンがないのであれば話は少し違いますが、実際にはいくつか種類があるわけですし、今のところmRNAワクチンで20〜55歳の女性でそのようなことが起こった、という報告はありません。そして、ハイリスクではない20〜55歳の女性も大勢います。今の時点ではアストラゼネカのワクチンの数も限られているわけですから、まずは55歳以上に打つか、20〜55歳の男性に打つか、そのようなところの検討もできると思います。いくつかのワクチンが選択肢としてあるので、その点の調整が可能だと思いますし、フランスのような選択肢もあると思います。全てのデータがオープンになっていない状態で、新聞だけの情報、これも間違いが含まれている場合も多いわけですから、そこからだけで何かを判断することは私にはできません。しかし、それに関して議論することと、フランスのように決めるかどうか、という検討などをすることには意味があると思います。私たちには選択肢がありますし、ワクチンの数が少ない時点でアストラゼネカを無駄にしないためにも、予防接種は進めなければいけないのです。ワクチンを待っている55歳以上の国民は大勢いるのですから。

この複雑な問題に関しての知見はまだまだ出てきますね。先ほど、情報が新聞からしか、と仰っていましたが、データもこれからきちんとしたものが発表されるでしょう。冒頭でも言った通り、今日はゲストをお招きしています。子供、という医学的な問題を掘り下げていくために、クリスティアン・ドーナ=シュヴァーケ教授にお話を伺いますが、ドーナ先生は、エッセン大学病院の小児救急医療科長であり、小児科の専門医、救急治療、感染学の専門家でいらっしゃいます。現在の状況をみていきたく思うのですが、先生は小児科がご専門でご自身にも4人お子さんがいらっしゃいます。今の学校でのシチュエーションをみてみると、まだまだテスト環境が整っている、と言える状況ではありませんし、子供の感染者数も増加しています。ロベルト・コッホ研究所もそう発表していますが、子供の制約はかなり長く続いています。学校を持続する、持続させたい重要な理由はいくつもありますが、今のドイツのシチュエーションをどうご覧になっていますか?専門家としてと、プライベートでお伺いします。

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ イースターの休みが間近である、というところで少し言い訳ができるかもしれませんが、、 現在のRKIの数をみると、子供たちの間での感染がかなり増えてきてる、ということは明らかで、これは前からずっと重要だったことではありますが、今一度しっかりと学校を注意深くみていくことが重要です。私は、もう少し学校を閉鎖しておいたほうがよかったのではないか、と考えていて、例えば、最終学年、卒業間近の学年だけを再開する、などのほうがよかったと思います。これから近い将来的にも、きちんとしたテスト方針を確立させることは必然で、十分なテストキットの確保がされなければいけません。イースターの休みが終わったら、テスト対策をもって対面授業を徐々に増やしていけるように努めなければいけませんし、そのようなことを医療的なところからは望みます。プライベートの視点から言うと、私の子供たちは大変窮屈に感じています。それでもなんとか頑張ってやっていますが、感じていることは他の友達や子供たちも同じでしょう。

先生はノルトライン=ウェストファレン州にお住まいで職場もそこにあります。自治体が高い発生数のために学校を閉鎖しようとした際に大きな衝突がありましたよね。州はそれを禁止しました。基本的には、科学的にも地域ごとで決断されるべきで、疫学的にも、教育的な面でもその辺りの折り合いはつけられるべきだと思うのですが、どうなのでしょうか?

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ その通りだと思います。地域で起こっていることは、その自治体が責任をとるべきだと考えますので、どうしてそのようなことになったのか理解に苦しみます。地域ごとの解決策がとられることが可能になることを願います。

子供たちの感染に関しては、論文での結果はかなり一致していて、科学的な知見のコンセンサスも広範囲においてありますが、ここで簡単にまとめると、子供の感染症は多くが無症状か軽症である。年少であればあるほど軽症だが、発生数が多くなるにつれて子供たちの感染者数も増加する。実際には医師的視点からみると、パンデミックのなかでどのように変わってきているのでしょうか?論文の知見の通りなのでしょうか?実際にもそのような状況ですか?

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ 今、起こっていることはその通りだと思います。重度の急性感染症はほとんどみられなく、免疫疾患、腫瘍的基礎疾患、肺疾患などを持つハイリスクの子供たちでも重症化することは極々稀です。ハイリスクの子供でも急性感染はレアなケースであることは本当に幸いなことです。

今日は、特殊な問題について取り上げたく思います。PIM症候群です。これは、Pediatric Inflammatory Multisystem Syndromeの略で、小児多臓器系炎症性症候群というものですが、去年の春にもこのポッドキャストで取り上げられた問題です。あの時点では病名はまだなくて、MISC、Multisystem Inflammatory Syndrome in Children などと呼ばれていましたが、これは極稀であるものの、SARS-CoV-2感染症において起こる可能性がある、危険性の高い炎症性症候群です。エッセンの集中治療病床ではどのくらいの子供がこの症候群で治療されたのでしょうか?

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ 集中治療では10人ほどで、全体では19人いました。この割合は、大体論文や、同僚などから報告されるものに一致します。全体の約半数が集中治療が必要になり、もう半分は軽症です。

年齢的にはどうなのでしょうか?今年のはじめではかなり小さな子供たち、ということでしたが。

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ 詳しいことは言えませんが、大まかに言うと、就学児童の年齢層で、5〜17歳までですが、例外もあり、もっと小さい子供が罹患する場合もあります。私は個人的には診ていないのですが聞いたところによると、37歳の男性の例があり、これはかなりの確率でこのPIMSに罹っていたと思われるケースです。そのような例外は医学においては必ずあります。100%、ということはありえませんので。しかし、通常は5〜17歳、ということです。

かなり稀な症候群であることを先ほど言いましたが、どのようなことがおこるのでしょうか?これについて初めて聞いたリスナーもいると思うのですが、どのような症候群なのでしょうか?

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ   まず、高い熱が長い間続きます。そして、多くの場合に、胃腸の不具合、ざっくり言えば腹痛ですね。これは単に腹痛だけではなくて、下痢や嘔吐も併発する場合もあります。これは、5分の4くらいの患者にみられるもので、そのなかにはあまりの激痛から盲腸の疑いがかけられるくらいのケースもあるくらいです。場合によっては、盲腸の炎症を確認するために開腹されることもありますが、もちろんそのような炎症はありません。多くの場合は熱と腹痛です。蕁麻疹も起こります。目の結膜炎も頻繁にみられる症状です。この疾患の危険なところは、循環器に様々な影響を与える、というところですが、心臓であったり、心筋の炎症は深刻なものに繋がる可能性もありますから、この場合は薬を使わないと十分な血を心臓に送ることができなくなります。ショック症状にもなる場合があって、血管や毛細血管、皮下脂肪組織の血漿などに、血が十分にまわらなくなると、ショック症状が起こり、それによって酸素欠乏が起こる危険性があるわけです。これがこの症状が危険である理由です。

ここで質問ですが、Covid-19においての重症疾患経過は男性に多くみられますが、子供たちではどうなのでしょうか?男の子や女の子のどちらかに多くみられる、などということはあるのでしょうか?

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ それはあります。ほとんどの国で同じ現象のようなのですが、男の子のほうに多くみられるようです。男の子が60%、もしくは、3分の2です。男の子のほうが罹る確率が高いのは明らかです。

先ほど、これがSARS-2、つまりコロナウィルス感染症によって引き起こされるものであることは言いましたが、これはかなり後で出てくる疾患なのですよね? 今、学校で感染してしまったとして、すぐにこの症状がで始める、ということではない、と。

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ そうです。その点が大変重要です。これは急性感染疾患ではありません。稀に、鼻喉の検体から低濃度のウィルスの検出がされる場合もありますが、通常では、急性の感染はもう終わっています。感染から4〜6週間経った後で、この免疫の反応が起こってきて、感染後に作られる抗体は、通常であればウィルスに特化しているものですが、この場合につくられる抗体はウィルスだけに特化しているのではなくて、いわゆる宿主抗原に対しても反応してしまう。宿主、とはこの場合は人間ですが、抗体は結合し、ここから炎症性メディエーターが放出されます。この現象は4〜6週間遅れて出ますが、この炎症性メディエーターはサントカインとも呼ばれ、ここから発熱や先ほども説明したような血管や心筋の変化に繋がるのです。

ということは、感染から6週間後に何もなければリスクはゼロ、ということでしょうか?

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ ゼロ、とは言えません。しかし、感染から時間が経てば経つほどリスクが少なくなっていくことは確かです。そのリミットを6週間とすることは出来ませんが、8〜10週間くらいでしょうか。少なくともこれ以降で起こった、というケースは聞きません。

有症状でCovid-19に罹った子供たちとの関連性はあっても、無症状の感染者ではどうなのでしょうか?全く感染を自覚していない場合などですが。

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ その場合も同様です。これは、私の経験からも言えることですが、私が治療した患者のなかにも、患者だけではなくて、家族全員が全く感染に気がつかなかった、というケースもありました。抗体検査で陽性反応が出て驚いていましたが、これは感染したことがある、という証拠です。

サンドラ・チーゼック 医大生の頃に、川崎病、というものを勉強しましたが、はじめの頃は、この症候群との比較がされていました。しかし、この疾患はかなり小さな子供が罹るもので、年齢的にも異なるもののようです。川崎病の発生数は、10万人あたり9人で、5歳以下です。頻度的には、川崎病くらいなのでしょうか?それとも、まだはっきりしないのでしょうか?

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ データは少し揃ってきました。ドイツの記録簿には、本物の川崎病ケースのデータも集められはじめましたが、この記録が取られはじめた時から、これは去年の4月くらいからですが、、そこからの発生数は、本当の川崎病で60人、PIMSが245人です。今日のためにもう一度確認してみたのですが、確実にコロナパンデミックとPIMSの増加での関連性はみられます。先ほどもサンドラが指摘していた通り、この関連性はPIMS疾患の症状が川崎病と大変似ていたからなのです。しかし、川崎病はもっと小さな子供に多い疾患で、PIMSは違います。

川崎病は、パンデミック前にも頻繁に起こっていた疾患なのでしょうか?

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ いえ、これはかなり稀な疾患です。たまに診ますが、PIMSとは比較になりません。

ちょっと、説明をしますが、、、先ほど、ドーナ先生がチーゼック先生を下の名前で呼んでいましたが、先生方はお知り合いなのですよね? チーゼック先生は、エッセンで勤務されていたことがありますので、一緒に仕事をしていた同僚同士、ということになります。 さて、子供、特に幼い子供の診断は容易ではありません。ドーナ先生、小さい子供が自分ではコロナ感染に気がつかない状態で、発熱や腹痛などの症状が出る、ということですが、子供は何か身体の調子が変な場合に良くそのようなことを言ったりしますよね。実際には全く違うことも多いと思うのですが、心配になった家族で救急外来が一杯にならないためにも、、、PIMSの診断の決めてになるのはどの指標なのでしょうか?

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ まず、熱は勿論症状ですが、これが頻繁に起こるものであることは先ほどの指摘通りです。勿論、これも他の症状とのコンビネーションで判断されなければいけません。重要なのは腹痛でしょう。ここには気をつけていただきたいです。もっとも、子供のなかには感染に気がつかない子もいるでしょうが、大体の場合は自覚があると思うのです。つまり、感染経験があって、長期間熱が下がらない、腹痛がある、となれば気をつけるべきです。問題的としては、この肌に起こる異常がもう少し後で起こってくる、という点です。

腹痛はどうして起こるのでしょうか?

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ 腹痛は、血液内のサントカインの影響で起こる炎症によるものだと思われます。他の血管の炎症、血管炎症候群とも言いますが、その際にも腹痛は起こったりします。多分、酸素供給の低下によって腹痛が発生するのだと思います。

チーゼック先生、このサントカイン、炎症メッセンジャー物質に関してはポッドキャストでもお話いただいていますが、素人でも理解できるように説明するならば、これは、Covid-19感染症の際に大人でも起こる複雑な疾患経過、過剰反応ということで理解しても良いのでしょうか?それとも、全く別物ですか?

サンドラ・チーゼック 一見似たように聞こえます。サントカインストームや、このサントカインの放出はみられて、それによって血管での炎症が起こるのですが、これはPIMSの場合も同じです。共通点があるのは確かだと思います。

PIMSが疾患的にどのように進行していくのか、ということをみた場合、病院に入院し、集中治療が必要になるケースが先ほど出ました。知らずのうちに治ってしまう、ということもあるのでしょうか?それとも、ほとんどが重症化するのですか?

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ 私の経験からと、文献から知っていることからお話しすると、発症した患者はほとんど全員入院しなければいけなく、重度の疾患経過を経ています。外来でどのようになっているのかはわかりませんが、少なくともそのような例は聞いたことはありません。

初期発見はどのくらい重要ですか?診断が容易ではないために、手遅れになることもあるのでしょうか?

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ 勿論、治療を出来るだけはやく始める、という点でも、出来るだけはやく受診することが重要です。これはこの疾患のメリットでもあるのですが、診断がされたら2つの治療方法があって、どちらも免疫の過剰反応を抑えるものです。まずは、免疫グロブリン、つまり抗体ですが、それの投与。もう一つは、高濃度のコルチゾン投与です。ここで、両方同時に投与するかしないか、という点では意見が分かれます。それとも、まずは、免疫グロブリンで初めてコルチゾンにするか、など。私の病院では、まずは免疫グロブリンを与えて12時間待った後に改善がみられなかった場合にコルチゾンに移行する、という方法をとっています。

どのくらいはやく治療できるものなのでしょうか?抗体だけではなくコルチゾン治療でもですが。つまり、どのくらいはやく回復できるものなのですか?

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ 私たち、集中治療医的にはかなりはやく、と言えます。12〜13日の間には明らかな症状の改善は期待できます。ここの比較をした研究があって、抗体単品と、抗体とコルチゾンのコンビネーションで、ですが、比較の最終地点は、「熱は何日続いたか」というところですが、免疫グロブリンだけ投与された場合は、5日間続き、免疫グロブリンと抗体を投与された場合には、平均的に2日間熱が続いています。ここでの患者は、かなり生死を彷徨うような重度の疾患により、高濃度の循環器系作用薬を必要としていたのですが、この投与によって2、3日で薬が全く必要ない状態まで回復しています。

サンドラ・チーゼック ここでの熱とは、38度とかではなくて、40度くらいの高熱ですよね?

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ そうです。

後遺症というものはあるのでしょうか?その辺りのデータはありますか?

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ 少しだけわかっていることがあって、これはドイツの記録簿にも乗っていますが、ここには7%に後遺症がある、とあります。逆に言えば、80%異常が後遺症なく退院しえいる、ということにもなります。私の個人的な経験から言うと、後遺症はケースバイケースです。例えば、生理不順や、集中力の低下であったりとか、倦怠感、だるさ、などです。私の大学病院に入院していた19人のなかでは、2人リハビリ施設に入らなけれない患者がいました。リハビリをしたほうが症状の改善になると判断されたからなのですが、この疾患の病態に関しては最近わかってきたばかりですので、治療もしっかりと管理され、監視されているのです。例えば、似たような経過が心筋梗塞であったとしたら、心臓のCTをとるでしょう。そこで後遺症の有無をみますが、ここでどこかに線維化部分がみつかったとしたら、それが臨床的にはそこまで深刻ではなくても後の段階で、問題に発展する場合もあるからです。そのような点でいうと、今のところ幸いなことに問題はありません。

これは大変稀な症候群だということは発生数からもわかりますが、世界的にみてどうなのでしょうか?少なくともドイツとの比較になるような国はありますか?

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ 1000から5000の Covid感染症のうちで、1人PIMS疾患患者、というくらいだと思います。稀ではありますが、これよりももっと稀な疾患もあることは忘れてはいけないと思います。

まだはやすぎるとは思うのですが、変異株、イギリスなどの変異株の疾患や疾患経過や頻度などへの影響はありそうですか?

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ 重要な質問だと思います。私はその点に関してはお答えはできませんが、今のところ、B117型によって頻度が上がった、という印象は受けません。勿論、まだそのような判断をするにははやすぎると思いますし、絶対にそうではない、と言い切ることもできないでしょう。ただ、まだ(イギリス)変異株があまり浸透していないアメリカでも多く発生しています。

つまり、発生数は増加している、というところが懸念されますね。これからも増える、と思われますか?

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ 勿論です。そのようになる、と思いますし、それは確実です。例えば、イギリスを例にとっても、1月のはじめに第二波のピークがあって、そのちょうど4週間後、2月のはじめに一番PIMSの発生数が多かったのです。イギリス全土で100人の子供がPIMSを患い集中治療にかかっています。

最終的には多分あまり比較はできないでしょうね。というのも、B117型変異株はもう大多数を占めてしまっていますので。多くの小児科が子供用のワクチンが必要だ、と言っていますが、子供用はまだありません。ワクチン開発の段階で、子供用のワクチンからつくらない、というのは極めて普通のことですが、私が知る限り、2社が治験を12歳以上と、若年層で始めた、ということです。バイオンテックとモデルナです。

サンドラ・チーゼック モデルナは、6ヶ月の乳児での治験をアメリカとカナダで開始しています。

それは期待が持てますね。心配な保護者の方も多いでしょうから、これから注目していかなければいけません。パンデミックの抑制的にも希望が持てます。しかし、リスクもあるわけですよね。先ほどから言っているように、PIMSはそこまで頻繁に起こる疾患ではありませんが、子供でも重度の感染が起こることがある、と理解して良いのでしょうか。

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ 正直なところ、ここの判断は大変難しいところです。基本的には、子供の予防接種は歓迎します。PIMSを予防する、という理由だけでも十分だと思いますが、勿論最終的にはきちんとした試験で安全性と効果が立証されなければいけません。基本的には私は賛成です。

ドーナ先生、最後にお聞きしますが、パンデミックのはじめの頃を振り返ると、子供の重症化が少ないために、小児科の役割はあまりない、と言われていましたよね?

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ 私もそう思っていましたし、今でもそこまで重要な役割はないと思っています。グローバルなネットワークのおかげで、急性感染に関しても、後遺症に関してもかなりの情報がはいってきますので、どのような疾患に子供がなるのか、ということもわかってきています。しかし、全体的にみても、他との比較でもそこまで大きな役割は果たしません。

つまり、今日はかなり重度の疾患を取り上げましたが、今心配している保護者に対して、基本的には心配はいらない、パニックになる必要はない、と言えるでしょうか。心配せずに学校に言っても良い、と。

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ 私たちにある知識は多く、症状もわかっています。治療もしっかりできます。これは重要なことです。勿論、パニックになって、「これからPIMSが増える!」と考える必要はありません。その点の心配はしなくても良いでしょう。

通常の感染症に関しても、いままで通り、子供は軽症で済む、と理解しても良いのでしょうか?

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ そうですね。そこのあたりもこれからよくみていかなければいけないところだと思います。報告のなかには、Long-Covidのような後遺症のケースもありますし。それでも、大人に比べればかなり低い確率ではあります。

ドーナ先生、今日はお時間をいただきありがとうございました。大変勉強になりました。お仕事も頑張ってください。

クリスティアン・ドーナ=シュバーケ ありがとうございました。

チーゼック先生、先生には今までにも多くの内科的な質問にもお答えいただいてきています。先生は内科医でもいらっしゃいますので、内科も専門ですが、ウィルス学者としての見解をお伺いするほうが多いです。ですから、最後にウィルス学的なテーマを取り上げたく思います。この間、フランスのブルターニュ地方で起こったクラスターでは、PCR検査で検査不可能なウィルスのバリエーションがみつかった、と報道されていました。つまり、特殊な変異株を検証できない、ということではなくて、PCRが反応しない。ウィルスの検証ができない、ということになりますが、情報のソースも曖昧です。メディアの報道だけで、ラボのデータもありませんから、注意深くみていく必要はあるのですが、どのような原因が考えられるのでしょうか?

メディアからの情報からみてみると、まず、ブルターニュの病院とその近辺で79ケース起こり、そのなかの8ケースが、先ほどのバリエーションがシークエンジングによって立証されています。これは全て1つの病院内の話で、結果的には全員死亡しています。PCRで検査ができない、ということはどういうことなのか、というところですが、B117型にもS遺伝子の欠如はある、ということはこのポッドキャストでもお話しています。つまり、このS遺伝子をPCRが認識しない、ということです。しかし、PCRは基本的に2つや3つの異なるゲノムを使って検査を行いますが、製造会社によってその種類は異なり、常に同じものが使われているというわけではないのです。シークエンジングの際には、全ての部分の証明を行いますから、これがどうして可能なのか、という点は謎です。多分、ここにはPCRで認識できなかった、という原因はないのではないかと思います。いくつかのケースはPCRで反応が出ているわけですし、私が理解したところによると、鼻喉からの検体、つまり上咽頭での検体での反応がなかった、と。つまり、肺の奥からしかウィルスの検証ができなかった。1年前、10ヶ月前のことを思い出すと、そのようなことは頻繁に起こっていました。つまり、よくわかっていなかったので、かなり後で診断された例がたくさんあったのです。そのような場合には、ウィルスは痰や肺液のなかにしかなくて、気管支鏡を使ってしか検証できませんでした。ウィルスはまずは上気道で増殖し、その後に気道の奥に移っていくことがわかっています。はじめの頃のケースで覚えているのは、ある患者でCovid-19感染の立証ができなかったことがあります。臨床的には、それ以外考えられなかったのですが、検査の結果が出なかったのです。最終的にはその患者は亡くなり、検死されました。そこで肺に物凄い量のウィルスがみつかったのです。つまり、これは診断的な問題かもしれないのですが、それを新聞の記事から判断するのは不可能です。確実にできることは、他の方法で検査することで、例えば、検便であったり、気道の奥から痰をとることもできるでしょう。そこではウィルスは見つかるはずです。私が理解したところによると、このバリエーションは、さらに速く呼吸器の下のほうに移動していく、ということなのではないか、ということです。複雑な問題です。何日目に入院したのかはわかりませんし、いつ検査されたのか、というところも不明です。私が理解したところでは、地域的なものだった、ということですから、院内感染も起こったかもしれません。そして、どのくらいの頻度でスクリーニングされたのか。重症化してからだったのか。診断のタイミングはどこだったのか。など、全てがはっきりしていません。混乱するような情報ばかりですが、パニックになる必要はないと思います。単純にもう一度、どこに問題があるのかをみなければいけないだけです。

ただ、もしこの変異によって、肺への移動がはやくなったのであれば、少し心配ではありますよね。それによって重症化する確率があがる、ということにはなりませんか?

それはそうなのですが、まず、どの段階で診断されたのか、ということでしょう。そして、どのような患者だったか、というところも重要です。もしかしたら、免疫不全の患者だったかもしれませんし、これは変異では興味深い点でもあるのですが、多くの変異がSタンパク質部分で起こっていますから。つまり、ここでは9つの変異がスパイクで、他の欠如も別の場所で起こっています。つまり、オープンリーディングフレームでですが、これはPCRにも使われている部分なのです。どちらにしても引き続き調査が必要です。とはいっても、どのくらい重要な意味を持つのか、というんでは今のところはまだ何も証明がありませんし、感染力の増加や疾患経過の変化などに影響があるのかどうかもわかりません。まだそのような判断をするのは早すぎるでしょう。これはコロナウイルス2020/12/01変異種ではありません。ここには3つの変異株しか含まれません。南アフリカ、イギリス、そしてブラジルだけです。それ以上はありません。他の変異は、疾患に影響を与える可能性と、感染伝播の変化などが懸念されますが、今のところは観察の最中で研究は続けれ、例えば、ワクチンの効果などの調査は続けられています。

調査が続けられて、興味深い変異だとしても、Variants of Concern、コロナウイルス2020/12/01変異種ではない、ということですね。Variants of Concernとは直訳すると、危惧される変種、ということですが、ここでみられた変異は、これまでの変異、例えば、N501Yのようなイギリス型の中心となるものではないわけですね?

ここでは別のゲノム部分の交換がみとめられています。この501部は含まれません。

まだまだたくさん話題はありますが、今日はこの辺りにしたく思います。どうもありがとうございました。








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