ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(26) 2020/4/2(和訳)
話 ベルリンシャリテ ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン
聞き手 コリーナ・ヘニッヒ
2020/4/2
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良いニュースです。昨日は緊急に病気の為にお休みをした、ドロステン 教授の声が少し話せる位にまでは戻りましたので、今日もお話しを伺います。 聞き手は、コリーナ・ヘニッヒです。
私達の希望であると共に、苦慮させるテーマである、ワクチン。 ワクチンを一刻も早くつくるべく、 世界中で、60以上の開発プロジェクトがsars-cov-2のワクチンの開発をいそいでいます。 完成するまでには、1年から1年半かかるであろう、というところでは、研究者の意見は一致していますが、ワクチンはどのような働きをするのか、長期戦である開発の近道はないのか、そのあたりのお話を伺いたいと思います。
体調はいかがですか。
声は、、、出るようになりましたが、、、まだちょっと、、変なかすれ声なのはお聴きの通りです。
最後まで声が続くことを願います。 先生の研究所などで、重要な任務があるスタッフは、やはり毎日検査をし合うのでしょうか。 昨日は、検査結果が陰性だった、と仰っていましたが。
研究所、そして、他の大学病院全般でもそうですが、研究は研究だけで成り立たなければいけませんけれど、、、やはり、それぞれが重要なポジションにいますから、、、検査します。 私達のところでは、スタッフは毎日検査します。 私の風邪の場合も、2回検査しました。 ちょっと、症状が長引くな、と思ったので、念の為に、もう一度検査してみました。
そして、2回とも陰性だったわけですね。
そうです。
今日は、ワクチン、という大きなテーマです。 複雑で、わかりづらい分野でもありますが、、もう既に、アメリカでは、ワクチンの治験のための、被験者への投与が始まりましたが、それでも、ワクチン開発的にみると、その段階からもまだまだ長い道のりです。 どこかに近道はないのか。 複雑なワクチン事情に触れる前に、まずは、根本的な質問からさせて頂きたいと思います。 開発のどの時点での短縮が可能でしょうか。
この近道は、可能性、ではなくて、もう既に実行に移されています。 例えば、ワクチンのベクター、もう既に使用されているベクターを使う、など
運び屋、ですね。
そうです。これは、ベクターバックボーンとも呼ばれますが、このようなワクチンタイプでよく効くのは、MVA、modified-Vaccinia-Ankara で、これは、ワクシニアウィルスの一種ですが、これは、とても安全なベクターです。 ここに、新型コロナウィルスのタンパク質や、抗原を組み込む。 そこから、体内で、ウィルスのタンパク質免疫が反応して抗体がつくられます。
通常、治験が行われる前にも、様々な検査をしなければいけなく、人体で試すことが出来るようになる段階まではかなりかかります。 しかし、このベクターを使ったワクチンはもう既にいくつもあるので、安全性は確認済みです。 ですので、例えば、動物実験で動物がどのように反応するか、補強剤は負担をかけないか、とか、そういう、薬物動態学的なことや、筋肉に投与されたときに、筋肉はどう反応するか、とか、、、このようなことは、全てわかっていますから、これらの検証をする手間が省けるのです。 この実践経験があるベクターを使った際にも、もちろん、ウィルス特有の箇所は変えなければいけないわけですが、それは、MERSウィルスの際にも経験済みですし、調整はそこまでする必要がないことはわかっています。
これは、麻疹のワクチンと同じようなものでしょうか。 ベクターとして、弱毒性のウィルスが使われ、それが遺伝子的にタンパク質が変換される、という
麻疹ワクチンは、生ワクチンで、弱めた麻疹ウィルスを使います。 しかし、ここで、風疹ウィルスを利用してSars-CoV-2ウィルスの情報に変える、ということもできます。 これは、現在、研究されているところです。
この近道の方法はもう実行されている、としたら、他にもまだ短縮できる箇所はありますか。 この場でもご説明いただいたように、通常であれば、治験はとても大切で、動物実験、そのあとで、また数多くの検証、そして、やっと、人体でのテストを、被験者のコホートを使ってする、という一連の過程があると思うのですが。 どこかの過程を同時に、、などは可能でしょうか。
そうですね、、、もう既に、安全性が確認されているワクチンであれば、臨床試験をする前の実験などは、省略できるでしょう。 被験者で安全性が確認されれば、かなりはやく次の段階に進めると思います。 今、学者間で懸念され、議論されていることなのですが、、、ワクチンを健康な被験者で試した、としましょう。その後で、この人たちは、腕をまくって、言うでしょう。 本当にワクチンの効果があるのかどうか、実際のウィルスで試してみてください、と。 勇気ある志願者たちです。 この志願者たちは、有効なワクチンが1日でもはやく開発されるために協力したい一心なのでしょうけれど、このような試験の責任者は様々な点を考慮しなければいけないのです。 例えば、ラボで培養したウィルスを喉につける、といっても、どのくらいの量が適量なのか。 自然な感染と比較してどのくらいか。 動物実験の場合の負担感染では、かなりの高濃度のウィルスを確認のために使いますが、それを同じように人間でも使うわけにはいきません。 ですので、やはり、近道をしよう、と思っても、適した動物での実験を通しての確認は避けられません。 ここで、問題なのは、どの動物が適している、のか。 最近の新しい研究で、どの動物の喉でウィルスがよく増幅するのか、ということはわかってきていますが、ウィルスの増幅に適している動物と、ワクチンの開発に適している動物、というのは違うのです。 動物の免疫システムは、人間とは違いますし、動物での病症はあまり明確にはでなかったりまします。 動物は、ウィルスの増幅はしても、症状がでないことも多いのです。 そのような理由もあって、かなりよく考えてしなければいけないことです。 これは、あまりしたくはない方法ではありますが、、、猿での実験です。 もちろん、猿人類での実験ではありません。そのようなことはもう行われませんから。 マカク属、アカゲザル、とかで、、数はとても少ないですが実験は行われます。 猿の免疫システムと人間では類似点がかなりあります。 ワクチン開発の途中では、やはりこのような実験も必要になってきます。
他の方法としては、ワクチンを打ってから、人為的にウィルス感染をさせる、というのではなく、抗体ができているか、ということを調べる。 免疫細胞が反応したのかどうか。 これは、試験管のなかで確認できます。 ワクチンを打った後に、血液を採取して、そこから免疫細胞をとりだし、それを試験管のなかでウィルスと一緒にして反応をみるのです。
もう一度、念のために言いますが、、、私は、ワクチン開発者ではありません。普通のウィルス学者です。 まあ、疫学的なコロナウィルスには特化している学者ではありますが、、、ウィルス開発、というのは、独自の学術分野になりつつあり、そこでの研究は私の研究ではありません。 私よりもずっとよくわかっている専門家はいます。 その専門家たちの論文では、もし、今、安全性が確認されているワクチンをベースに、今年の夏くらいから、効果の治験をはじめることができたら、、、、試験管内での効果ですね、免疫細胞の反応はあるか、抗体はどうか、、、それがわかれば、自動的に予防効果もわかります。 もちろん、この被験者たちは、その後に感染したのかどうか、や、全体の感染状態、予防接種がされていない人との比較、などをして、記録をしていかなければいけません。
いままでもこのポッドキャストで、抗体や免疫反応については、詳しくお話ししていただいていますが、、、抗体にもいろいろな種類があって、効果的な抗体もあれば、そこまでの威力がない抗体もある、ということを学びましたし、細胞レベルの免疫もある、ということも。 ワクチンをつくる際には、どの免疫反応を誘導すればいいのか、ということも重要になってきますか? 体がタンパク質を察知して反応する際にですが
もちろん、重要です。 まずは、自然感染、そして、自然にできる免疫環境を、できるだけ模倣したい、ということ。 しかし、この方法には、、、今は時間がないと思います。 今は、免疫の研究を長い時間をかけてすることはできません。 勿論、必要な研究なので、並行しておこなわれてはいますし、ワクチンの開発にはこの結果は反映されています。 ですが、最終的な研究結果がでるまでには、まだまだ時間がかかることも事実です。 そこで、また違った方法、感染状態が、新型コロナに似た、他の感染症、、、例えば、旧型SARS、これはかなり似ていますし、他にも呼吸器系の感染症はありますので、そこで、中和抗体をワクチン抗原をつかって、積極的につくる。 自然感染でつくられるようなものを準備する。 例えば、外膜のタンパク質は、自然感染では、過程を経て変化していきますが、、、
スパイクタンパク質ですね
そうです。スパイクタンパク質です。 ワクチンには、ウィルスを感染直前の状態でいれることができます。 はじめ、ウィルスは正体がわからない姿で侵入し、細胞に侵入する直前に変化しますが、この時、外膜のとても敏感な糖タンパク質の部分がむき出しになります。 そこに反応する抗体があれば、ウィルスは細胞にはいりこむことができなくなるわけです。 ウィルスが、最後の最後まで隠しているこのエピトープが、ちょうど出ている状態でワクチンすれば、抗体はすぐに認識することができます。
先ほど、ベクター型の生ワクチンについてお話しいただきましたが、生ワクチンと違って、死菌、不可性ワクチンというのもあります。例えば、破傷風ワクチンなどがそれですが、、今回は、どのような意味を持ちますか。
その前に、少し遡って、一つ前の質問についてですが、 1つの方法として、外膜を変化させたウィルスを使うことで、活性化された中性抗体をつくる、というのがありました。 そして、もうひとつは、活性化された細胞免疫をつくりだす、というものです。 ウィルスの外膜のタンパク質を、細胞免疫を活性化する効果があるベクターのなかに組み込みます。 自然感染では、細胞免疫と、液性免疫の両方が作動しますから、免疫を活性化させるベクターをつかって、ウィルスそのものよりも、もっと効果的な免疫反応をつくりだすことができます。 免疫の度合いを測って、それを最大限に活性化させるのです。
これで、先ほどの質問にお答えすることができるようになりましたが、、、、不活性ワクチン、でした。 そして、同時に、弱毒生ワクチンのこともいっておかなければいけませんが
毒性を弱めたもの、ということですね。
この不活性ワクチン、というのは、一番つくるのが簡単なワクチンです。 ラボで、ワクチンを培養して、、、殺します。 ホルマリンを投入したり、熱したり、、、いろんな方法がありますが、、それを筋肉注射します。 2、3回後に、免疫反応があるかないか、を確認。 抗体ができていれば、細胞免疫が活性化されています。 これが効く場合も多くあります。 この方法は大昔からされているワクチン形態です。 効果がある、とされているワクチンは、変わることなく、ずっとそのまま使われます。 効果的には、、このタイプのワクチンはあまりよくありません。 不活性ワクチンには、2つデメリットがあります。 一つ目は、細胞免疫の活性化が完璧ではない、ということ。 免疫の一部だけが活性化されて、他の部分には変化がない。 バランスが悪い免疫反応です。 さらに、このバランスを崩すのが、、、、先ほどもお話ししましたが、ウィルスは感染しようとする際に、一部を隠して侵入します。 感染過程のほんの短い間だけ、この部分が露出されるのです。 死んだウィルスを使った場合、この自然な感染経過はありません。 ですので、この重要な部分が露出していない状態ではいってくる。 そのために、免疫反応のバランスが崩れます。
どういうことですか。
抗体は検出されても、、、この抗体は、役に立たない抗体かもしれないのです。 例えば、の話、、、以前にお話ししたことがありますが、抗体には、中和抗体と普通の抗体、があります。 必要なのは、中和抗体のほうです。この抗体が、感染を阻止するからです。 他の普通の抗体は、、ワクチンによっては、免疫反応に悪影響を及ぼすこともあります。 免疫細胞はかなりの数ありますが、そこに、抗体のレセプターがあります。 レセプターは、ウィルスにはまる鍵のような形をしています。この形はいつも同じです。 免疫は、抗体で包まれた病原体を認識し、これを食べる司令をだします。 これは、細菌の場合などに頻繁におこる反応です。 抗体がくっついた病原体を単球が取り込んで、食べるのですが、この際に、まわりについている抗体が、実は付着しているだけでウィルスをブロックしていなかったら。 ウィルスを阻止する中和抗体ではなく、付着だけの普通の抗体だったら。 単球がウィルスを取り込んだ際に、そのなかでウィルスが増幅してしまいます。 通常であれば、単球はウィルスを取り込む、ということはしません。 レセプターを持っていませんから。 免疫は、抗体に反応して、ウィルスを退治しようとするのですが、制御されていないウィルスが単球にとりこまれることによって、そこで増幅してしまう、という現象がおこってしまう。 これによって、免疫反応が邪魔をされます。
このように、バランスのとれていない免疫反応を引き起こすワクチンは、抗体をつくるものの、役に立たない、間違った抗体をつってしまう。 これによって、症状の悪化がおこります。 ワクチンを打ったことによって、ワクチンを打つ前よりも容態が悪くなる。 本来であれば、ウィルスから守る働きをする免疫が、ウィルスの標的になってしまったからなのです。 抗体依存性の悪化です。 いくつか理由をあげてきましたが、、、このようなこともあり得るので、簡単には、さあ、新しいワクチンを試してみますから、腕をまくってください、とはいえないのです。 簡単なことではありません。
どちらの方法で、、成功しそうですか。 不活性ワクチン、ベクターワクチン、、
新型コロナのワクチンを開発している研究者は、、、このような副作用がおこる確率は、、そこまで高くはないだろう、とはいっています。しかし、今の段階では憶測にすぎません。 これをはっきりさせるためには、、、やはり、動物実験は避けて通れませんし、試験管内での検査もしなければいけません。 人体での感染を使って検査しなくてもよくはなりますが、こちらも時間はかかります。 先ほどの質問、どちらの方法、細胞免疫の強化か、抗体免疫か、、、今は、まだはっきりとはいえません。 今のところ、期待が持てる結果がどちらの方法にもでています。
ワクチン開発というのは、ものすごく大きなプロジェクトなのです。 製薬会社は、どこかの時点で、研究チームとともに、方向性を絞る決断をしなければいけません。 そこからは、そう簡単には比較することはできなくなります。 開発の段階で、双方が比較されながら、、というのは、、、時間的にも、労力的にも、経済的にも、不可能です。 研究チームは、ある過程地点から、研究を最終的な結果がでるまでやり遂げなければいけません。 その後で、比較をすることはできるでしょう。 ですので、今の段階で、こっちのほうが期待が持てる、というようなことはわかりません。
ただ、一つ言えることは、簡単なワクチン、不活性ワクチンに関しては、とても注意が必要だ、ということです。 先ほど、言った、抗体依存性の症状は、突発的に考えられる症状のひとつですし、、、、やはり、技術的にも高度なワクチンを優先したほうがいいでしょう。 ここで、少し、現在、開発時点で期待が持てるのは、中和抗体を優先的につくるワクチン、これは、タンパク質だけでできてるワクチンで、こちらのほうが、バイオ分野でよりはやく正確につくることが可能です。 ベクターワクチンのような高度な技術が必要な生ワクチンは、製造の過程で大量の培養細胞が必要なので、あまり量産することができません。 それに比べると、バイオテクノロジーでつくるワクチンのは、効率的で、あまりパラメーターの調整を必要としませんし、とにかく、純度が高いものをつくることが可能です。 ワクチンの純度は大切ですから。 なので、やはり、こちらのほうが、はやく、大量に、、、という点では優れているかもしれません。 とはいっても、こちらのほうが、最終的に、早い時点で完成するか、というと、そうでもないので、、、
あと、新しい興味深い方法では、遺伝子のみをワクチンにする、という方法があり、RNA、もしくは、DNAワクチンです。 RNAワクチンは、期待できるテクノロジーで、がん治療などによく使われています。 ワクチンを受け取る側、予防接種をされる側が、自分でワクチンの成分をつくりだす、というものです。 ワクチンのなかには、タンパク質もはいっていませんし、ベクターでもありません。 タンパク質は、摂取後に、体内の細胞内でつくられます。 まだ、これからどのように研究がすすむのか、というところでは、もう少し待たなければいけませんが、 これがうまくいけば、、、かなりの過程を省略することができるのです。 RNAをつくることは、化学的な工程ですから、これは、かなり興味深いワクチン開発といえるでしょう。 この方法は、たぶん、、、はやく使えるようにはなるかもしれませんが、広範囲で大量にするワクチンではなくて、、対象を絞ったワクチンになるかもしれません。
医療関係者などの、、、感染リスクが多い職種、とかでしょうか。
そうですね。基本的に、医療スタッフは健康で、良い免疫反応が期待できます。 これは、このワクチンに限ったことではありませんが、どのワクチンも、優先順位としては、ハイリスク層、をあげる、と思うのです。しかし、これも、そう簡単にはすまされない問題で、、、まず、はじめにできるワクチンは、数が多くできないワクチンであろう、ということなのです。 社会全体での効果、最適な効果を得ようとするならば、、、、医療スタッフへの予防接種は、一番効果的ですね。 医療を維持するために必要ですから。 これは誰にでもわかることです。 しかし、高齢者へのワクチン使用には、、、大きな問題があります。 高齢者にはより多くのワクチンが必要なのです。 若い世代と同じ免疫反応を起こそうとすると
必要な量が多い、ということですね。
そうです。でも、問題は、、ワクチンの量に限りがある。 あるグループは普通の5倍の量が必要だ、となったときに、5倍の量のワクチンをつくるのは無理です。 ここで、5倍分のワクチンをひとりに使うのか、それとも5人に使うのか、、、使う人数を増やすことができれば、それによって全体の予防率はあがります。 そしてそれは、パンデミックの終息をはやめることにつながるのことを意味するのです。 このようなことは、、どのワクチン開発の際でも、、、個別に考えられなくてはいけないことです。 このポッドキャストでは、表面的なところしか話し合えません。 どこにどのような問題があるのか、、ということを簡単に掲示することしかできません。 ここで例をあげた件にも、それぞれいくつもの問題点があって、、、しかも、ワクチンの種類によって、さらに別の問題がでてきます。
倫理的にも、、、難しい問題ですよね。 先生、声にだんだん負担がかかってきたように思いますので、最後の質問にはいらせていただきます。 世界じゅうでワクチン開発が行われていますが、 研究機関同士の協力体制、というのはどのなっているのでしょうか。 情報提供などがされれば無駄も省けるのではないか、と思いますが、それぞれが独立して開発をすすめるものなのでしょうか。
治験の段階では、そのような協力体制はあります。 例えば、臨床試験が始まる際に、違うワクチンを比較しながら同時に使う、などという。 もちろん、企業秘密などもあります。開発をしているのは製薬会社ですから。 大学病院ではワクチンの開発はされません。 ワクチンは産業的につくられるものです。 そこには、莫大な投資がされるわけで、保護されなければいけない部分も多いです。 どこかに特許があって、わからないようにする、とかいうものではありません。 だいたい会社同士ではお互いに何をしているかは把握しています。 そうではなくて、厳守されるのは、ある一定の過程までの試験内容で、それを外部の間違った解釈から守る。 そうしないと、ある程度のところまで進んだ研究がストップしてしまうリスクがでてくるのです。 投資されるお金の一部は税金からの援助ですが、大部分は製薬会社が負担していますから、小さな製薬会社にとっては、死活問題にも発展しかねません。 それが、ワクチン開発の際に、ある程度の段階までは、完全にはオープンにしない、という理由です。
先ほどの、バイオを使ったタンパク質ワクチンは、他の方法で必要な12〜18ヶ月の開発期間よりもはやくできそうですか。
今、(ワクチンができるまで)12〜18ヶ月と言われていますね。 これも、全てがうまくいけば、です。 うまくいけば、そのくらいに許可がおりて承認された使用可能なワクチンができます。 来年の今頃か、夏くらい、ですね。 開発チームは、皆、全員、どこかで短縮できないか、と頭を巡らせています。 ワクチンが、このパンデミックの状況改善の鍵であることは、誰もがわかっていますから。 それでも、圧倒的な近道は、、、なかなかみつかりません。 メディアでは、画期的な発見だ、と報道されることもありますが、、、、それも、最終的には開発を加速させるものではないでしょう。 そのうちに、まだ治験が完了していない、許可は降りていないけれど、ほとんど完成したワクチンは(12ヶ月よりもはやい段階で)できるでしょう。 しかし、大量に用意されて、病院で広く使えるようになるには、、、、やはり、はやくても、来年の今頃になるでしょうね。
これは、私も唖然としましたし、他の研究者も同じ意見ですが、最近、メディアで報道されて、拡散されているニュースで、中国で不活性ワクチンが開発された、というものがあって、、、今、治験がされている、と。 ここで、このような簡単なワクチンだったらもっとはやくつくれるのではないか、という声が出てくるわけですが、、、これは、慎重にみなければいけません。 本当に、簡単に(安全で効果のあるものが)できるのか、、注意が必要です。
今日は声のためにも、このあたりで終わりたいと思います。 ありがとうございました。また明日よろしくお願いいたします。
ベルリンシャリテ
ウィルス研究所 教授 クリスチアン・ドロステン
https://virologie-ccm.charite.de/en/metas/person_detail/person/address_detail/drosten/
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