ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(33) 2020/4/20(和訳)

話 ベルリンシャリテ ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン
聞き手 コリーナ・ヘニッヒ

2020/4/20

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ドイツの4分の3以上が、接触制限に協力し、プライベートな接触を全くしない、もしくは最小限に留めている、とロベルト・コッホ研究所とサイエンス・メディアセンターによって行われている1000人を対象にした世論調査の結果がでています。 新しい週が始まったと同時に、徐々にお店も営業開始が許可されましたが、店内に入る際にはマスクか布で鼻と口を覆う、という規定になりました。 先ほどの世論調査によると、いままで、4分の1がこれまでにもマスクの着用をしてた、ということです。 この緩和がどのような影響を及ぼすのか。数と共にみていきます。集団免疫、子供の感染、そして、無症状者の割合について、など、今日も、ベルリンのウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン氏にお話を伺います。 聞き手は、コリーナ・ヘニッヒです。

前回お話いただきましたが、対策をしていても、感染は拡がっていく。現在のR0値は1程ですが、これは、1人が1人に感染させる、ということですので、緩和後にまた上がる可能性が高まります。 この緩和によって、人々の危機感が薄れることへの懸念はありませんか。 対策の効果があらわれて、安心してしまっているのではないでしょうか

心配はしています。 政治的には、R0値がまた高くなる、ということは想定していなく、これまでの対策が身を結んだ、という解釈です。 もちろん、それ自体は間違ってはいませんし、様々な計算をしていていっても、やはり徐々に経済も通常化していかなければいけないだろうと思います。 今、R0値が1以下、という成果はでていますし、これから、対策を見直しで、細部の修正をして、可能な部分の自由度を上げる、という、この方針に基本的には同意できます。 しかし、常に考慮しなければいけないのは、何か忘れたことはないか、ということです。学者としてもそうですが、病院、そして、今は特に意思決定者達、、、政治家だけではなく、病院の責任者、会社の責任者、組合など、、これらの組織内で決断や意向を決める人たち、そこで、常に、何か、見逃したことがあるのではないだろうか、という問いをしなければいけません。 そして、もしそうであれば、それがなんなのか。 様々なことが考えられます。 対策の影で、感染が知らないうちに拡がっていくだろう、と、先週お話しましたが、この、拡大とはなんなのか。 これは、拡散プロセスで、どこかの地点で始まったものは自然と拡散していく。 感染濃度が高いところと、低いところがあると、制御不可能な自然な作用によって、そこの濃度が揃ってくるのです。 これが、拡散の原理です。

感染者数、がですか

感染の拡散ですから、感染者数ですね。 例えば、誰かが、スキー旅行から帰ってきたら、その人が住んでいる地域で、感染がはじまるでしょう。 他の地域、スキー旅行帰りの人がいない地域でははじまりません。 このように、1つの感染源からなる感染の拡大は、初期の段階でドイツでも3月の頭にはじまりました。 その比較的直後に、接触制限の対策がとられたので、この地域の不均一性と感染の度合いの差はストップしました。 感染者数はドイツ全体の合計ですので、感染者が多い地域と全くいない地域はあります。この地域差は、今現在でもあるでしょう。ドイツの感染分布図をみれば明らかですが、州によっては真っ赤な地域と青い地域があります。 感染がはじまった感染濃度が高い地域では把握できていますが、わからないのは、知らないうちに拡がっている感染です。 例えば、(制限があるのにも関わらず)旅行をしてしまった人がいたり、人と会ってしまったり、特別に許可された会合等で、、、そのようなケースは、まだ表面にはでてきていません。 まだそこまで時間が経過していませんから。 これが、地域での拡散モデルです。 それと、年齢分布の拡散もあります。これも、もうすでに起こっていますが、はじめは、年齢層が比較的若い成人、スキー旅行者とカーニバルの参加者、と、ここでも年齢層が偏っています。25歳〜45歳くらいの、アクティブでパーティやスポーツが好きな人たち、交流関係の年齢層も同じような層です。 ドイツでの感染者層はこのような年齢層だったのですが、イタリアでは全く違いました。イタリアでは、感染者は高齢者にかたまっていて、これは、家族構成、子供の影響もあったと思います。ドイツには、そんなにおじいちゃん、おばあちゃんが同居している家庭はいませんし、子供もそこまでいません。 ドイツのこの真ん中の年齢層ではじまった感染が全体に拡散していくだろう、ということ。 これは、老人ホームでの集団感染のことではありません。 介護施設での感染は、特殊な感染状況です。 そうではなくて、これから、高齢者の層にも徐々に拡がっていくでしょう。まだ、あまり目立ってはいませんが、もうすでに75、65歳の層で、感染がひろまっています。 友人同士で集まってしまったり、おじいちゃん、おばあちゃんに会いにいってしまったり、といった際に。

無症状者の感染も大きな意味を持つからですよね。

そうです。無症状者は自覚がありません。知らないうちに感染させます。 まだこの部分の感染が表にでてきていません。 今、R0値は1以下で、それは正しいのですが、そこには、この隠れた感染拡散は入っていないのです。 もし、今後、R0値が1以上になることがあったら、、、その時には、いままでとは全く違うかたちと速度での感染が広範囲ではじまるでしょう。 対策を緩和し、正常化して1ヶ月以内に、、予想もしなかった感染拡大がおこる。もちろん、そうなれば、死者もでますし、重傷者は集中治療が必要になり医療に大きな負担をかけることになります。 今は、集中治療病床は半分しかうまっていないのだから、これから少なくなっていくだろう、と油断している人が多いと思いますが。 ちなみに、ベルリンのシャリテの集中治療者数は少なくなってなどいません。 ベルリンでは比較的感染者が少ないのですが、それでも、集中治療を必要とする患者数は、増加するばかりです。徐々にですが、一人、また一人、と。 このような効果が、、不安の要素です。 それに加えて、今、感染者としてでてきてる人たちは、35歳ではなくて、70歳です。 そして、その人たちの交流関係、趣味の会、などで感染がおこっている。 ここで、懸念することは、ここからまだそのような効果がでてくるだろう、ということです。 ここで、だろう、ということを強調していますが、これは、学者としての控えめな予測ではなくて、、、そうなるだろう、ということが、拡散の原理からこれは必然だからなのです。 この新しい傾向の分析をしなければいけませんが、それが間に合わないかもしれないのです。 周りの国をみて、外国の専門家の意見を聞いた方がいい。 私は、情報をドイツのテレビや新聞から集めません。 勿論、ドイツの新聞で学術的な記事を取り上げているものは読んだりしますが、大体は、外国の論文、アメリカ、イギリス、そして香港の専門家の意見を参考にします。

シャリテは、国際的にも、コロナウィルスのレファレンス研究所ですが、例えば、スウェーデンの専門家とのコンタクトはあるのでしょうか。スウェーデンでの死者数が急増しているなか、リスナーからも多くの質問が寄せられるのですが、、、それと同時に、スエーデンのように、何も対策をとらなくても、それなりに大丈夫なのではないか、という意見もあります

スウェーデンとは、特別なコンタクトはとっていませんが、これから、スウェーデンでも対策の強化がとられるでしょう。スウェーデンの専門家たち、私も個人的に面識がありますが、とても優れた学者たちです。 今、スウェーデンでおこっていることは、わざと持ち上げられているのではないか、と思うのです。 スウェーデンが、まず、禁止をするのではなく、国民に説明し協力を促すことによって行なっていた、小さな行動習慣、考え方の見直しは、ドイツでも、接触制限をすることによって、私たちの思考修正にもつながったことです。 そして、対策が緩和される現時点で、もしかしたら、スウェーデンとドイツは同じような境遇にあるのかもしれません。 スウェーデンの対策がものすごく少ない、というわけではありません。 確かに、対応が大変ゆっくりだったので、死者数も上がってしまいましたが。

メディアでつくられたイメージも大きいのでしょうね。 感染者で、、、無症状、ほとんど、症状の自覚がない感染者についてですが、その割合についての論文はいくつかありますが、新しい発表がイタリアからでました。

とても興味深いものですが、、、小さな村、ヴォーという村で行われた調査です。 この論文はプレプリントで公開されましたが、イタリアの疫学者とイギリスの疫学者ニール・ファーギソンとの共同研究で、、

インペリアル・カレッジですね

そうです。 ここで興味深いのは、無症状者の割合です。 この村は、数百人しか人口がないのですが、ここはイタリア国内でもはじめに感染が勃発した地域です。2月21日に死亡者が発生してから直ぐに外出禁止令がでて、2週間の間、比較的短い期間ではあるのですが、徹底調査が行われました。 2週間のうちのはじめと最後に、ほとんど全員のPCR検査をしましたが、これは村の人口は少ないので可能なことでした。 興味深い結果がでていて、ほぼ全体の年齢層が網羅されたなか、41%が無症状でした。2回目の検査では、45%でした。 検査と検査の間隔が短いこともあって、2回検査された人の確率は高く、毎回、症状についての問診があったので、症状の有無ははっきりと把握されています。 この情報内容の確実さと、検査割合の高さの上で、割り出された無症状者の数値は43、2%でした。 すべての年齢層の平均値です。 この正確なデータ分析は感動的です。この数値はかなり参考になる数値ではないかと思っています。 というのも、この村では、把握しきれなかった感染ケースはなかったと思いますし、この短期間の間にほぼ全員のPCR検査をしたわけですから。 勿論、抗体検査などはされませんでしたが、このくらいの細かい検査をした結果であれば、、この数値には説得力があります。 

この数値のほうが、ガンゲルトの調査のように抗体検査ではなく、ウィルスの検査をした結果である、ということもあって、意味があるものでしょうか。

完璧な検査はありません。 PCR検査にも抗体検査にも限界はあります。 この補助的対策はとれますし、ガンゲルトでもPCR検査の検査も並行して行われましたが、徹底度の面などでもこのイタリアの村とは比較できません。 ガンゲルトのほうが人口が高いですし、この村ではほぼ全員が検査されたわけですから、ほとんど取りこぼしがないのです。 これもこの間言いましたが、、、ガンゲルトのデータはまだ発表されていませんので、詳しい詳細はわかりません。 報道された数値はありますが、学術的にまとめられた最終的な内容を待たなければ、これについてはまだ何も言えない状況です。

その際には、またこのポッドキャストでお話いただけれるでしょう。 ガンゲルトの調査で大きなテーマだったのは、集団免疫です。制限期間中では、自覚がない感染ケースは抑圧された状態ですが、、新しい研究はありますか。 カリフォルニアの論文が発表されたようですが

そうですね、サンタクララの研究があります。ベン・デービッドの研究チームによるもので、速い速度でまとめられましたが、サンタクララで、市民の抗体検査がおこなわれました。 現在、どのくらいの割合が抗体を持っているのか。どのくらいがいままでに感染したのか。これは、症状があってもなくても関係ありません。ここでは、無症状と症状があったケースが一緒にカウントされます。 この論文は、週末発表されて、専門家の間でかなり議論されたのですが、、、専門家もツイッターで議論しますので、私も時々、覗きます。 今、どのような話題が議論されているのか、と。 そして議論されている論文を読んだりするのですが、今回もそのように興味を持った論文で、、この研究では、3300人が検査されました。ここで使われたのは、ラボの検査に使うエライザテストではなくて、ラピッド検査です。 ある会社が開発したもので、、そのことに関してはこの場でもお話しましたが、まだあまりよく検証はされていないテストです。 志願者を対象に、ドライブイン形式で、針を刺して指先からとった血液を、妊娠検査薬タイプのラピッド検査で検査する方法で、募集はフェイスブックでされました。 結果は、1、5%が抗体を持っていました。3300人中の1、5%です。 ここから、疫学的な修正がされたのですが、まず第一の修正は、年齢層です。 検査した年齢層は、実際の年齢分布とは違いますよね。 これは、想像できることですが、子沢山の家庭は、子供を全員連れてこないでしょうし、高齢者はフェイスブックをやっていないので、募集できなかったかもしれないし、車も持っていないかもしれません。 というわけで、検査された年齢層を、実際の年齢分布にあわせるためには修正ファクターが必要です。 この修正ファクターを入れて計算すると、大体2、8%くらいになります。

そして、検査に志願する人は、興味がある層だ、ということも、前の回でおっしゃってましたね。 周りに感染者がいた、など、関心がある人たちです

そうです。そのような疑問点に関しては別に取り上げたほうがいいかもしれませんが、まずは、どのような数値がでたか、ということをお話します。年齢分布で修正した結果が2、8%。3000人中、ですね。 規模的には悪くない大きさです。 もう一つの修正ファクターは、検査の精度です。 感染の陽性確認がされた37人と、陰性確認がされた30人を、このラピッド検査で検査したところ、すべての結果は一致せず、68%の確率でした。 この結果をもとに、配慮しなければいけませんが、70%の確率なのであれば、100%にするには30%足さなければいけませんね。わかりやすい、と思いますが。 その一方で、これを開発した会社は、70人で検査した結果が100%だ、と言っています。 この数値をとって、計算してみると、、、大体、2、5%〜4、2%くらいになります。 一番高い数値をとると、全体有病率は4、2%、年齢層の修正をすると2、8%です。

有病率とは、感染した割合ですね。

感染して抗体を持った割合、ということです。ここで、大きな不確かな点ですが、、、この検査の特異性です。 この論文ではこの点があまりよく検証できていません。 著者もこの部分の検査をしようと試みていますが、検査対象者数がとても少ないのです。 ラボでのエライザテストでも、この時期、まだ風邪の流行が終わったばかりで、IgM抗体が多く存在する時期には、大体2%くらいは、他のコロナウィルスの抗体での誤結果が出る確率があるのです。

他のウィルスに反応する、ということですね。

偽陽性反応です。 もし、100人中、100人に正しい結果が出る場合は、100%の特異性がある、ということになります。 この2%の偽陽性率は自分の経験と検証実験からおおよその数値としてあげています。このパーセントを引かなければいけないのですが、このような30人規模の調査ではそもそも難しいです。 100人中の2人の偽陽性の割合を30人中でだそうとしても、、、この結果は、統計的なものでしかないでしょう。 この研究では、30人の陰性のグループからは偽陽性は1人もでませんでしたが、ここには意味はない、と考えます。

偶然、ということもありますよね

そうです。偶然の可能性もありますし、この結果は検査が完璧な特異性を持っている証拠にはなりません。 ですので、またここでも修正されなければいけないでしょうね、、、そう考えると、やはり、数値的には、、2%くらいでしょうか。 ここであげている数値は、意識的に、とても大雑把な数値をあげています。 すべての数値を書き出して計算していませんし、計算するつもりもありません。 ここで重要なのは、数値が、低い1桁だ、ということです。 その他にも、重要な欠点がこの研究にはあって、、、このような調査では、志願者を募る、というやりかたは、理想的ではありません。 志願者を募集すれば、少し前に具合が悪かったひとや、感染者との接触があったひと、など、自分が感染したかどうかを知りたい人がくるでしょう。 その他の、具合が悪くなくて、周りに感染者もいない、という人たちは、関心もないので、そのような検査には参加しません。 ですので、このような方法だと、正確な結果は出せず、確率が高めにでるのです。 有病率の。 このような偏った影響がこの論文には色濃くでています。 そのような理由から、ここから正確な数値というものはだしたくないのです。 しかし、この論文のメッセージは、、全体の抗体有病率は、とても低い1桁のレベルだ、ということです。 これは、他のヨーロッパ諸国から聞く数値、ドイツのラボでの研究、そして、私自身、数千件の抗体エライザテストをもうすでにしていますが、、、そこからもわかるように、検査をしているラボからはどこでも、、、大体2%、多くても3%という結果がでているのです。 この数値からはまだ何も引かれていない、ということを念のために言っておかなければいけないと思いますが。 とにかく、今現在では、集団免疫に近づいている、と言えるほどの数値には程遠い、ということです。

これから、どのように感染が続いていくのか、ということは、この間の回でもお話いただきましたが、子供についてです。 子供の感染状態と、感染源としての子供の役割になど、中国の論文が発表されましたが、罹患率についてです。

中国だけではなくて、アイスランドの研究もあり、この、アイスランドの論文のほうが専門家の間でかなりの議論されています。公、というよりは、専門家間で、ですが

プレプリントでの論文ですね。

プレプリントの時点ではかなり前から知っていたので、このポッドキャストでも一瞬取り上げようかとも思ったのですが、偏っている、と判断したので、取り上げるのをやめた論文です。 とてもインパクトの強い研究ではあるのですが、広範囲にわたったPCR検査をした結果、子供の感染率がかなり低い、というものです。 問題点は、、ここでは、あまり掘り下げては説明しませんが、大雑把に言うと、、、偏りは、まず、大きく2つ分けれられていて、感染リスクが高い国からの帰国者と、感染者との濃厚接触があった人たちの検査、もう一つは、志願者での検査、ここでも、フェイスブックで募集していたと思いますが、その条件が、軽症、風邪の症状くらいまで、となっていました。 重症の人は来ないように、という配慮でしょう。 今、わかっているように、無症状の人の割合が多いわけですから、あまりこのようなかたちでは意味がありませんし、この条件で、子供の立ち位置、は何なのか。 旅行者のグループでは、ほとんど子供はいないでしょう。出張が主でしょうから。 志願者グループでも大人が大多数です。というのは、大人が、感染を心配したり、症状に気をつけたり、このような募集に関心をしめす、からです。 そして、大きな問題が無症状者です。 今までの研究でもわかっているように、子供は、大人以上に症状がない場合が多い。 ここで、保育施設や学校の再開を検討する際に重要なポイントにもなってきますが、、、子供は感染しやすいのか。そして、周りへ感染させるのか、というところです。 この点についての研究は、私が知る限り1つしかなくて、、、中国の論文です。3月27日に、プレプリントサーバで発表されたものですが、ここでは、大規模な、家族間での感染についての調査がされていて、1286人の接触中、400人の家族内の感染者という結果がでています。 家族内に感染者がいる環境で、どのくらいの割合で感染がおこるのか、という調査です。 この結果は、、、あらゆる年齢層の子供も大人も、、同じ罹患率でした。 ここでは、20代、30代、0歳児から19歳まで、、すべての層で割合は同じ、という結果で、 唯一、確率が高い層は、60〜69歳でした。

ということは、少し期待をしていた、子供は大人とは違う罹患率かもしれない、という問いには、良い答えはないかもしれないのですね

そのような答えをだすこともできるでしょう。 しかし、これはまだ研究が1つしかありません。 このような研究はいくつか違ったものもなければいけません。 1つの論文からはあまりはっきりしたことはわかりませんので。 そして、ヨーロッパの研究も重要です。家庭構造や、環境は中国とヨーロッパでは違います。 そして、もう一つ、まだよくわからないことは、ウィルスの放出率はどうなのか、ということです。 子供は、感染してもあまり、もしくはほとんど症状がないですが、放出するウィルス量は大人と比べて多いのか少ないのか。 このようなウィルス量の調査も必要です。 感染した子供と大人での比較です。 インフルエンザでは、子供のほうがウィルスの放出量が多いのですが、この季節的な風邪は、風土的ですから、大人にある基礎免疫と、それがない子供との差ができます。 しかし、今回の新型コロナでは、大人も子供も同じように免疫がないわけですから、ウィルス量にも違いはないかもしれません。 子供も大人と同じかもしれませんが、、、そうだとしても、保育施設や学校の再開は慎重に行われなければいけないでしょう。 とはいっても、ここでは数値にとどまりもので、政治への推薦ではありません。 この論文からうける印象は、子供も大人も同じように感染する、ということです。 同じように放出するかどうかは、、まだわかりません。 このウィルスの放出について、興味深いことに、イタリアの論文で

ヴォーですね。

先ほどもお話した村ですが、そこで、無症状者と症状がある感染者との比較がされています。 半分半分のグループで。 年齢層はすべての年齢層で、おこなわれていますが。 そこで喉のウィルス量を比較しましたが、、、どのグループもすべて同じ量でした。 症状があってもなくても、ウィルスの量は変わらなかったのです。 これは、喉のウィルス量ですから、肺のなかでは違うかもしれません。 しかし、喉のウィルス量の比較では、症状の有無は影響しませんでした。

このことからも、距離をとる対策は重要なのですね。 咳がなくても、普通に話すだけで感染する可能性がある、自覚はなくても感染させてしまう可能性が常にある、ということですね。

この論文については、もうお話したことがありますが、香港の論文で、ここで話題にしたときには、まだプレプリントの段階でしたが、最近、ネイチャー・メディシンで発表されました。 ちなみに、ここで、取り上げたプレプリントの論文はかなりの確率で著名な学術雑誌に掲載されています。ここで話題にした論文は、必ず、ネイチャーやニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン、ランセットやに載りますので、、高確率ですよね 笑  クオリティを嗅ぎ分ける鼻がありそうです。笑  その論文では、44%が症状がでるまえに感染性がある。 そして、一番感染性が高い日、というのは、症状がでる前の日なのです。そして、症状がでてから4日くらいで感染性がなくなりはじめ、1週間後には感染性はありません。

それは、、この場で金魚の例でもご説明いただきましたが、PCR検査で陽性反応がでたとしても、ですね。 ウィルスの検出と感染性は違いますよね

その通りです。 それとこれとは全く関係がありません。 金魚で説明した通り、3〜4週間後にも陽性反応がでる可能性はあります。 しかし、これはRNAが、PCRで反応するだけで、この論文で調査された、症状が出る前が一番感染性が高く、症状が出始めて4日後には感染性がなくなる、というのは、PCR検査でウィルスの検出した結果ではありません。 統計的に出された、感染経路の分析からわかったことです。 誰が誰にいつ、感染させたのか。その時の症状はどのようなものだったか。そこからだされたもので、ラボでの検査結果ではありません。正確な疫学的なモデル計算です。 何度もここで言っていますが、ここで、もう一度、言っておきます。 疫学的なシュミレートモデルは、単なるモデルであって、1つのファクターを変えた途端に、ガラガラとトランプタワーのように崩れ堕ちていく、というのは、間違いです。 疫学的なモデルは、現状を把握するために必要なもので、一箇所を変えた途端に全てが崩れるようなものではありません。 現在のモデル計算はとても高度なもので、重要な数値は、それぞれが他の数値を調整する役割をしていて、とても現実的な数値をだすことが可能です。 疫学的なシュミレートは、この15〜20年の間にかなり進歩を遂げていますので、全く現実とはかけ離れた予測が出る可能性は極めて低いです。 興味深いのは、この4日後に感染性がなくなり始めて1週間で完全になくなる、という結果は、ミュンヘンケースでも観察されていました。ここでは、ラボで、感染性を確認するために、細胞培養で検査しました。 この検査は手間がかかるので通常はされない検査なのですが、ここでの結果も、1週間後には、感染力のあるウィルスを検出することはできませんでした。 喉からも、肺からの痰からも。 喉のウィルスに関してはその前に感染力を失います。 感染から数日間の間だけです。 このことからも、疫学的なモデルは、全くちがう視点と方法で同じ結果に至っているのです。 科学的には、全く違う方法で同じ結論に達する、ということは大変重要な意味を持ちます。

今日もどうもありがとうございました。 またよろしくお願いいたします。

ベルリンシャリテ
ウィルス研究所 教授 クリスチアン・ドロステン

https://virologie-ccm.charite.de/en/metas/person_detail/person/address_detail/drosten/






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