ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(106)  2021/12/21(和訳)

フランクフルト大学病院 ウィルス学教授、サンドラ・チーゼック
聞き手 コリーナ・ヘニッヒ

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「科学は全てを掲示した」とは9月末のポッドキャストでの言葉ですが、今回も連邦政府専門家会議が明確に厳格な接触制限の推奨を提出しました。理由はインフラへの過度の負担を回避するためです。それは病院だけではなく、警察、通信、電力などの分野でも問題でもあります。個人の自粛に頼る、ということには限界があり、最新の調査によると、先週の段階でまだ今後も感染者数が減少していく傾向にある、という認識の人も多く、危機感が薄く「感染者が減っているから人と会っても良い」と接触がまた増加しています。 今日のポッドキャストは、連邦による今後のパンデミック対策についての決議が行われる前に収録されています。ですから、これをお聞きの皆様は現時点での私たちよりも詳細をご存知のことと思いますが内容の一部はその前にも発表はされました。どちらにしても、テーマは科学的なところに焦点を当てていきたく思っていますので、勿論接触制限以外のテーマも取り上げます。これから何が必要になってくるのか。刻々と近づくオミクロン拡大まで時間を稼ぐために何をするべきか。そして、オミクロンについて科学的にはどこまでわかってきたのか。予防接種の効果、予防接種者はどれだけの予防効果を持っているのか、ブースターの効果はどの程度か。今日も、フランクフルト大学病院、医療ウィルス学教授、サンドラ・チーゼック先生にお話をお伺いします。聞き手はコリーナ・ヘニッヒです。

オランダでは現在、営業停止令と接触制限がクリスマスにかけて行われていて、最大で4名をゲストとして招くことが許されていますが、ドイツではクリスマス期間での制限はされない、という方針です。このポッドキャストの収録の最中にそのニュースが入ってきましたが、結局、接触制限は12月28日から、専門家会議の推奨は一刻も早く、ということでした。オミクロンへの時間はまだ残されているのでしょうか?先生はどうお考えでしょうか?

難しい質問ですね。現時点で感染者数が減少傾向にある、という見方には信憑性はないと思います。隣国をみただけでも、、オランダ、イギリスでは、2日、3日ごとにオミクロンの数が倍増しているわけですから、ドイツでも今後増えていくでしょう。ドイツだけが違う、という理由は私には見当たりません。倍増するのが2、3日で接触制限されるのが1週間後。ここから何が起こるか、ということは容易に計算できると思います。まず、4倍、8倍のケース数になり、2週間後には25倍、128倍です。本当であれば、1日も無駄にできる時間はないのです。

このような指数関数的な増加になる、ということは、感染者の数がそこまで多くないとなかなか想像できないのかもしれません。そこまで早く爆発的に増える、という自覚が持てないのでしょう。今朝みたアメリカのニュースでは、ここ2週間でオミクロンの割合が12%から75%になった、と。

ここをしっかり自覚するべきです。オミクロンの存在が認識され命名されたのは3週間前です。そして、今、もうすでに南アフリカをはじめ、アメリカ、デンマーク、イギリスなどでデルタを追いやり優勢になりました。信じられない速度です。このようなことはパンデミックのなかでも初めてのことです。

先ほど、オランダでの例をあげましたが、ドイツでは、例えばノルトライン=ウェストファレンでは日曜日の特別セールデイが開催、クリスマス市では大混雑です。2Gであれば安心だ、ということだからだと思うのですが、危機感を持つ人はまだ少ないのではないでしょうか。先生の印象はどうでしょうか?2G、2Gプラスに対する誤解がありますか?

そうだと思います。デルタでは100%ではないにせよ、かなり良く機能していましたので。デルタでは2回の接種をしていれば、かなり良い保護効果と感染伝播を阻止する効果がありました。状況はオミクロンによって変わります。オミクロンの割合が増えてくれば、2Gは意味がなくなってくるのです。今後、それがはっきりしてくるでしょう。 そして、クリスマスシーズンで祭日が来ますから、状況の把握ができなく無視界飛行のような状況になる可能性は大きいです。去年も、年末年始には検査数も少なくなり結果が登録されるまでに時間がかかっていました。保健所も勿論24時間体制で7日間仕事をしているわけではありませんし、ラボも同様です。ですから、これから年末にかけての数値はあまり信用できないものであると言えますし、間違った安心感を与えてしまうものとなるかもしれません。明確な状況の把握ができるようになるのは1月の中旬になるでしょう。先ほども言いましたが、私はドイツだけが隣国とは違う、というのはあり得ない話だと思います。

感染者数、つまり発生指数がここのところずっと下がってきた、ということも難しい点ですよね。これは、デルタに対する対策の効果だと思うのですが、その裏で密かにオミクロンが増えている、ということですね。

そうだと思います。ブースターはデルタの拡大を阻止するのに有効だと思います。今、約30%がブースター接種を終えていて迅速に効果的に行われていますが、前にも説明したように、ブースター接種によって抗体がかなりはやく増えて保護効果に繋がりますから、デルタには効果があります。それも理由のひとつだと思います。

イギリスでの拡大速度が先ほどでました。最新のロベルト・コッホ研究所のリポートによると、ドイツ国内でのオミクロンの割合は1桁のレベルだ、ということで、一見そこまでひどい、という印象ではありませんが、登録の遅延もありますし、イギリスで倍増するのが2日、となればドイツではどのくらいの速度で拡がっていくのでしょうか?

ドイツでは、多分3日で倍になっていくのではないかと思います。どのくらいのタイミングで優勢になるか、というのを計算すると、クリスマスにはそうなるのではないかと思われます。ドイツの問題は、この時期にはシークエンジングにも時間がかかりデータが揃うのに2週間くらいかかってしまう、というところです。ロベルト・コッホ研究所がカウントしているのは、登録されたケースのフルゲノムシークエンジグのみです。ここが問題で、例えば、ラボでは変異株対応のPCRでオミクロンの特定はすぐにできますが、それをシークエンジングするまではケースとしてカウントされません。それに加えて、世帯内感染であれば、「このオミクロン感染者が父親、母親、兄弟に感染させた」ということが明らかですが、ロベルト・コッホ研究所は、この二次感染をオミクロンケースとしてはカウントしません。シークエンジングがされていないからです。さらに、シークエンジングはCt値などの関係でできないこともあるのです。もうすでに、Ct値が高すぎてシークエンジングができなかったケースがありました。この場合にはカウントされません。ですから、ドイツ国内のオミクロンケースは低く見積もられていることは確かでしょう。

Ct値が高い、ということはウィルスの量が少ない、ということですね。これは感染伝播の際には重要なことですよね?

それに関しては何度も取り上げていますが、Ct値が高くても感染させない、という保証にはなりません。そこに相互関係はありますが、分析前条件、つまり検体がどのように取られたのか、というところにも関係がありますから、特に小さな子供から検体を取る際には痛くないようにあまり深くスワブを入れることは避けます。嫌がらないように唾液を採取したり、口のなかを拭ったり、、そのようにして取られた検体はCt値が高くなります。だからといって感染性も低いか、というとそうではなくて、頻繁に検体の取り方によって数値は高くなってしまいますので、どのように取ってどれだけ取れるか。そしてそれがどこまで使えるか、です。

ロベルト・コッホ研究所のデータには制限がありますが、地理的なオミクロンの分布のばらつきはどう解釈すれば良いのでしょうか?ノルトライン=ウェストファレン、バイエルンとハンブルクには多く、メッケンブルグフォアポメルンとザールランドではまだ0ケース、ということですが。

これは私も興味深いことだと思っています。デンマークやイギリスと比較すると、そこでも集中している都市、ロンドン、コペンハーゲンで爆発的に増えそこで優勢になっています。シュレスヴィック=ホルシュタインはデンマークから入ってくるでしょう。デンマークではオミクロンがすでに優勢になっていますから。ノルトライン=ウェストファレンは、ルール地方に集中しています。それでも地域的な差はあります。例えば、ヘッセンではまだそこまでオミクロンは爆発していません。ほとんど帰国者の範囲です。しかし、どこかでクラスターはおこりますし、イギリスやデンマークでもそうであるように、オミクロンでのスーパースプレッダーイベントは増えてきます。例えば、デンマークでは、学校のクリスマス会で150人中60人が感染していますから、このようなスーパースブレッダーイベントによってどんどん拡がっていきます。その人たちの接触範囲によってもさらに加速するのです。勿論、大都市では大勢の人が接触し、交通機関が発達しているという点も感染拡大に好都合です。田舎のほうでパンを買いに行くにも移動には車を使ったり、という状況とは異なります。

オスロでのスーパースプレッダーイベントについてはこの後取り上げますが、この間のポッドキャストでも少し話題にのぼりました。この件に関しての分析データが出されています。その前にもう一度お伺いしますが、今の不確かなシチュエーションのなかでクリスマス中に感染した場合にはそれがオミクロンによるものだ、という可能性は高く、それは高齢者や感染者のリスクを意味しますが、予防接種をしていても、ブースターをしていても感染してしまう、ということでしょうか?

感染拡大速度が速く、日に日に増えていっていますから、オミクロンに感染するリスクは高いです。デルタを追いやって優勢になってきていますので、ドイツでもオミクロンがメインになるでしょう。デルタとオミクロンが同時に存在する可能性、という事も一時言われてはいましたが、現時点ではそのような傾向はありません。デルタを追いやってオミクロンが優勢になっています。これから日が経てば経つほど、デルタではなくオミクロンに感染するリスクは高くなりますが、それも地方での差が大きくあります。先ほどもあったように、ドイツでもオミクロンが多い地域はあります。ラボでは常にオミクロンの検査をしていますが、地域での差はあります。

渡航制限はこのようなシチュエーションでどの程度の意味を持つものなのでしょうか?

良い質問ですね。多分、渡航制限だけではなくて、旅行自体をできるだけしないようにするのが重要だと思います。旅行には常に感染リスクが伴います。とはいっても、これは渡航制限、というよりも、空港での帰国者の検査、イギリスからの入国者を全員検査するべきか、という点については議論です。私はもう意味はない、と思っています。これは、PCRが患者、有症状患者や別のところで必要だ、ということと、イギリスからの入国者が全員空港から入ってくるわけではないからです。バスもありますし、車もありますし、列車でもリスク区域からドイツに入ってきます。その人たちを全員検査する、ということは実際問題不可能です。そのような人たちが自覚をもって接触を削減し自主隔離をすることを願うしかありません。そして症状が出た際には検査をする。しかし、空港での無差別検査をするにはもう遅すぎます。もう入ってきてしまっているのですから、阻止することはできませんし、今別なところで必要なPCRを無駄にしてしまうだけです。

今、見えない拡大が起こっているなかで、オミクロン拡大が何を意味するのか、というところの理解も重要だと思います。先ほど、スーパースプレッディングイベントは出ましたが、オスロで大きなオミクロン集団感染があり、そのデータが出ました。具体的に理解するためにこれを少しみていけるかと思うのですが、117名のパーティ客のなかの4分3が感染してて、全員2回の予防接種をして事前に抗原テストもしていた、ということです。その後でも感染が拡がってしまっていますね。

そのようなことが書いてあります。全員がこの調査に協力したわけではないようです。たしか、117人中の111人だったと思います。しかし、100人以上は2回の接種をしていて数名は感染回復者でした。このパーティの前に抗原テストで陰性だったのにも関わらず、約4分3が陽性になっています。参加者は若い人たちでした。ここでよくわかるのは、これは私も実際のケースで経験していることなのですが、潜伏期間、感染者から次の感染者への状況をみている限り、オミクロンでの潜伏期間が若干短い印象を受けます。オスロのケースでは中間値が3日、デルタや他の変異株では5日くらいです。感染ケースをみてみても、感染したであろうと思われる日から数えて2日、3日後に陽性になっています。これも、ここまで急激に感染が拡がる要因の一つだと思われ、潜伏期間が短いことによってより多くの人に短期間で感染伝播させることができるのでしょう。それに加え勿論、感染力が強い、ということもあります。これもオミクロンがどうしてここまで爆発的に拡大できるのか、という説明が少しつくかと思います。ここでのケースでは2回の接種をしていたのにも関わらず3つの症状がでていますが、そこからさらに重症と中等症に分けられています。勿論これは主観的な分け方ではありますが。多くの人に出ていた症状は咳、鼻水、倦怠感、喉の痛み、頭痛、約半分に発熱が認められました。今の所、このなかで入院しなければいけなかった人はいません。この人たちが大変若かった、ということも言っておかなければいけないところだと思いますが、平均年齢は30代後半、38歳です。そして、全員職場の同僚だった、というところも重要で、もしかしたらこのパーティの前に感染伝播が起こった可能性もあります。その前にも接触がありましたので。さらに、このなかで何人かが感染をしていて同時に周りに感染させた。一人が多数に感染させたのではなくて、複数の感染経路があった、という可能性も勿論あります。しかし、私的にはこの論文の重要なポイントは潜伏期間が比較的短い、という点です。つまり、これはそれをふまえて対応、考えていかなければいけないのです。そのほかには、症状がかなりはっきりと現れていた、というところです。2回の接種をしていても、家で寝込むくらいに具合が悪くなっています。もっとも、ここから臨床的にどのようにオミクロンが経過するのか、ということはわかりません。このコホートからのデータには限界がありますし、全員若い世代です。

しかし、2回の接種をしていた、というところと、入院しなくてもよかった、というところも重要だと思います。しかし、寝込むくらいの疾患経過、ということは、数日欠勤しなければいけない、という点でも経済的なファクターですよね。

勿論です。それに関してはまた後でふれますが、オミクロンの一番の問題は、大変多くの人が感染してしまうだろう、というところと、2回の接種では保護効果が薄い、というところです。そして、多くの人が感染して1週間自宅療養になる、もしくは2週間隔離、ということになってしまうと、、デンマークでは発生指数が10万人あたり1100ですから、ドイツに置き換えても莫大な数の人が仕事にいけなくなることになります。勿論、家族にも影響がありますし、子供がいる場合にも子供が病気になるでしょうし、場合によっては2週間、3週間、4週間、と休まなければいけないことになります。それが特定の分野で多くの人が欠勤してしまうと、社会の様々なところに支障がでてくるのです。

先ほどの潜伏期間もそうですが、抗原テストの効力にも影響がでますよね。特にオミクロンでは症状が出始める前、ということですが。

それに関してはまだ答えることはできないと思います。現時点で言えることは、私たちが検証した抗原テストやジュネーブで検査された抗原テストでは、オミクロンによる反応の変化は認められていません。オミクロンの変異があるヌクレオチドの部分も認識されました。感度が落ちたか、という点についてはもう少しきちんと調べる必要があります。そのようなデータはまだ出ていません。私のところの患者で検査した際には、症状が出てからは全員陽性反応がでて、それが比較的長く陽性のままだった、という点では違いがあります。デルタの時には、3日、4日でしたが、オミクロンは7日、8日間も抗原テストで陽性反応が出る場合も多いです。私はこれはかなり長い、と感じます。そして、ここに感染力と感染性との相互関係がある、という見方もできると思うからです。

念の為に抗原テストを個人的に使う、ということは引き続き重要ではあるかと思います。ウィルスの増加がはやい場合もあると思いますので。ハーバードのマイケル・マイナ氏も、予防接種者では症状が出るのがはやい、と言っています。ということは、抗原ラピッドテストの結果を長くは信用しないほうが良い、ということですよね。昨日の陰性でも今日は違い結果になる可能性があります。

それはどちらにしてもそうです。半減期が削減されますから注意深くしなければいけません。つまり、検査結果が2日前のものであったら、残念ながらほとんど意味がありませんし、数時間の間で結果が変わることもあります。それは患者でよくみられることです。これはデルタでも部分的にみられたことではありますから、オミクロンだけが特別だ、ということではありません。この抗原ラピッドテストの感度が50%、60%である、ということも忘れてはいけないことです。つまり、感染の半分、もしくは、若干半分以下を見逃してしまいます。完璧とは程遠いものだ、と言わざる得ません。パンデミック対策においては重要なツールですし、特に連続で検査した場合、つまり毎日検査した場合には感染をみつけることはできます。しかし、1回だけの検査では、感染を見逃してしまう可能性は高い、ということを、やはり何度も繰り返して言っておかなければいけないと思います。これは、多くの人がまだきちんと理解していないところでもあって、陰性結果がでたら安心だ、と思ってしまう人が多い、という印象を受けます。特にクリスマスのシーズンには、このテストが100%の保証をするものではない、という点を自覚することが重要だと思うのです。

どちらかと言うとスクリーニングに適したものだ、ということですね。もしくは、様々な対策があるなかの1つのツールだ、と。スイスチーズのスライスのように、同じところに穴があるチーズを重ねないようにする、という。

ないよりはましですが、100%の診断方法ではありません。

オミクロンに関するラボデータを見ていきたく思います。先生の研究所での研究結果も重要ですが、まず、感染伝播でみていくと、免疫回避との関連性で、ここから疾患経過の重症度への影響があるかどうか、ということはわかっているのでしょうか?香港の研究者のレポートで、オミクロンが気道で大変よく増殖できることが発表されました。私の理解が正しければ、、肺ではあまり増殖しなくて、上部のほうが増えやすかった、ということですが、勿論データの量は十分ではありません。それでも、いままでのオミクロンとのデータとあわせるとどのような知見につながりますか?

これに関しては、どのような意味を持つのか、、と考えるのに時間がかかりました。私はここからなんらかの臨床的な関係性に結びつけることは現時点では困難に思います。確かに、気管支と肺との比較をする、というのは良いのですが、両方とも場所的には気道の奥です。気管支、というのは気道の下部で気道から肺に繋がっている部分でそこでの比較、ということになります。ここでは、気道の上部の調査を行われていなくて、つまり、鼻や喉ですが、そこのほうが気道の奥よりもさらに伝播においては重要だと思われます。ですから、ここから感染性の増加、という結果に結びつけるのは少し困難です。やはり、鼻の上皮細胞と、喉の上皮細胞でもみたいところです。しかし、デルタよりもオミクロンのほうが気道でより速く、より激しく増殖する。24時間後、というのは興味深いです。ここでも少し細胞レベルでの時間速度の調査が必要ですが、ここでは細胞培養シャーレでの実験のみです。ここでは時間速度に若干のばらつきがあるようにみえますので、細胞レベルで動物実験などでのデータをみないかぎりは、例えば、「オミクロンでは肺であまり増殖していないから臨床的に病原性が弱まっている」などという判断に至るのは困難に思います。そうであれば喜ばしいことではあります。しかし、別のラボでの研究結果ではオミクロンが細胞培養しづらい、という報告もあり、それは私たちも同じ経験をしていて、他の研究チームからも「自分のところでは難しいから」と私たちの研究所の分離ウィルスを分けて欲しい、という問い合わせが来たりするくらいです。どうして、オミクロンがデルタに比べて細胞培養において違う性質を持つのか、というところはもっと明確に調査しなければいけないところです。とはいっても、これは大変人工的なシステムである、ということを自覚する必要があって、つまり、細胞培養からでたデータをあまり過大評価してはいけない、ということです。やはり、動物での実験や患者から直接とったデータのほうがより確かなものなのです。例えば、昨日、ソーシャルメディアで、培養細胞のFCSがオミクロンでの感染に影響がある、というニュースが出ていました。FCSは、ウシ胎仔血清で細胞培養に加えられるものですが、ここからもこの実験がどれだけ人為的なものか、ということがわかると思います。この実験環境は人間の体内で起こっているものとは異なります。他にも生物学的な理由もありますが、ここではそこまでは説明しません。専門的になりすぎますので。しかし、この実験がかなり繊細なものでFCSの割合で簡単に結果が影響されてしまうことは明らかです。ですから、私がこのデータから実際にどのような解釈をするか、という点について大変慎重なのはそのような理由からです。はじめのデータとしては大変興味深いものではありますが、ここからさらなる調査が必要です。

これはそう言う意味ではきちんとした論文ではありません。どちらかといえば短いレポートです。もう少し安定したデータも見ていきたく思うのですが、世界中の研究所がオミクロンの解明に勤しんでいます。そのなかで、先ほども言いましたが、先生のフランクフルトの研究所でも、抗体による中和反応についての実験が行われました。中和アッセイ、というのは、様々な免疫レベルの人間の血清がどのようにウィルスに反応するか、という実験ですが、どのように行われたのでしょうか? どのワクチンと感染回復状況とオミクロンの関係性でしょうか?このプレプリントの説明をしていただけますか?

私たちはあの日、オミクロンが発見されて南アフリカから直接帰国した感染者から検体をとるチャンスが与えられたのです。感染が確認されてから、かなり早い段階でそれがオミクロンによるものだ、ということが明らかになりました。そして、その次の日にも数人患者がいましたので、この2名の患者から取った検体からウィルスの分離をしました。そして、比較として保管されていた様々なコホートの血清を使い実験を始めましたが、それはその時点からコホートをつくりサンプルを集め始めると単純に時間がかかりすぎるからです。使われたグループは8。ワクチン接種状況が異なる8パターンのグループです。例えば、2回予防接種をしたグループ。2回接種から6ヶ月経った場合も追加しました。接種直後のデータは長い目でみるとあまり参考にはなりませんので。6ヶ月、というのは現時点で多くの人に当てはまるタイミングであって、夏の初めに打った場合には今、6ヶ月です。比較したのは、バイオンテック2回、モデルナ2回、アストラゼネカ1回バイオンテック1回の接種をした場合での6ヶ月後です。これらの人たちの血清にはどれくらいオミクロン感染を中和することができる抗体が含まれるのか。それとデルタ感染の比較をおこなりました。デルタはその時点で優勢だった変異株で大きな感染流行を引き起こしたウィルスです。デルタに対しての保護効果を持っていたのは、約半数。つまり、半分に中和抗体があり、もう半分にはなかった、ということです。オミクロンでは、すべてのグループに中和抗体はありませんでした。ここがまず注目されるべき点だったのですが、実際の感染ケースをみてみても、二回の接種から半年経っている人たちにはオミクロン感染から守る保護効果はない、ということが明らかになってきました。それから、ブースターではどうなのか、という実験をしましたが、それに関してはサンプルに限りがあります。それは他の研究所でも同じだと思います。私たちのところでは、バイオンテックによるブースターが行われたものを使用しました。これは、大学病院で行われたブースターがバイオンテックだったからです。このコホートは病院の医療従事者で、ブースターから2週間です。かなり直後ではありますが、そのコホートのものしか使えなかったのでそこでの比較をしています。ここからは、デルタに対する効果は大変高いことがわかりました。ほとんど100%です。つまり、2週間後には全員がデルタに対する抗体を持っていた、ということです。ここからも、ブースターの重要性がわかると思いますし、デルタへの効果も高いことがわかると思います。オミクロンに対しては、60%前後、つまり、58%から78%で、アストラゼネカの場合にはもう少し低い%が出ています。それでも、ブースター接種から2週間の時点では、オミクロンに対してもかなりの量の中和抗体ができていることがわかります。デルタよりも効果が落ちるだろう、ということは想定内です。このワクチンはオミクロンに対応するように作られていませんので。しかし、ブースターが保護効果を明らかにあげる、ということは確かで、そこからもう少し範囲を広げたデータ、、個人的にはこれが一番興味深いデータだと感じますが、、そのデータを最近まとめることができました。それは、ブースターから3ヶ月、4ヶ月経った場合です。2回の予防接種をしてから、夏にブースターをした場合、トータルで3回の接種です。対象は全員医療従事者で、特に第一線で働くフロントラインワーカーとして1月に予防接種し、夏にブースターを打った人たちです。まずは、ポジティブな点からいきます。デルタに対しては引き続き高い効果がみられ、85%でした。これは良い数値です。ブースター後でもデルタによるブレイクスルー感染はあるものの、3、4ヶ月後でもデルタに対しては比較的安定した保護効果があります。これは、デルタ拡大を抑制するためにもブースターが必要だ、ということの裏付けとなるものです。オミクロンに感染した場合にはというと残念ながら、3回接種しても3ヶ月、4ヶ月経ってしまえば、中和抗体は25%程度、多くの人には全く中和抗体がありませんでした。これは引き続き観察すべきことです。これは勿論、他の研究とは大きく異なる結果ではあります。多くの調査では、ブースター接種から2週間後、1ヶ月後の反応をみていますから、そこでは明確な抗体の増加もみられますし良い結果がでています。しかし、これらの効果には時間的な制限があり、徐々に少なくなっていく、というところを考慮しなければいけません。

少しがっかりな結果です。とにかく2回の接種だけではオミクロンには十分な効果がない、ということですね。ブースターの効果は短期間ですが期待できる、と。これからどうなっていくか、というところはみていかなければいけないところですが、このラボでのデータは、このまま実際のワクチンの有効性とは1対1で置き換えることはできませんよね?

それはできません。そこも念を押しておきたいところですが、この、37倍の削減、という数は一般の人には多分理解が難しい数値だと思うのです。というのも、これは保護効果が40倍減った、ということではないからです。この数値は多分どちらかというと混乱させる数値ではないかと思います。ですから、私はこのような数値を挙げる際には、どちらかというと、どのくらいの%の中和抗体があるのか、というほうが良いように思っています。先ほどもあげられていたように、確かに感染伝播に関しては別のことも重要になってきます。どのくらいのウィルスを取り込んでしまったのか。ウィルスの量です。マスクは着用されていたのか。そして、免疫の他の部分も重要です。遺伝子的な感染のしやすさもありますし、環境もあるでしょう。研究をみていく際には、、発表される論文の数は日に日に増えていきますが、、それらは3つにわけられます。まず、第一の段階は、シュードタイプウィルスを使ったものです。これは本物のウィルス、本物のSARS-CoV-2ウィルスではなくて、ウィルスの表面にあるスパイクタンパク質を取り出して、そこにオミクロンの変異を組み入れるものです。その他の部分はレンチウィルスですから、全く別のウィルスです。これを実験に使います。つまり、ここではウィルスの侵入の際の特性、スパイクタンパク質の特性を調査するのですが、その他の部分、細胞内で起こることはSARS-CoV-2とは関係ないことです。

このポッドキャストでは、変装ウィルス、と名付けました。

そうですね。これは個人的には人工的なシステムで、なぜなら、スパイクタンパク質単体では存在しないものだからです。相乗効果、相互作用、別のウィルスタンパク質とのコミュニケーションなど、これらのことは全て調べることができません。さらに、このスパイクが実際の自然のウィルスと同じくらい安定している、という保証もないのです。ですから、シュードタイプウィルスを使った実験からのデータは若干異なり、その理由は先ほど言ったようなことではないかと思います。2つ目には、本物をウィルス、患者から取り分離したウィルスを使うものです。ここから細胞培養するのですが、これが私たちがしたこと、そして、南アフリカでもされたことです。この方法だと少なくとも本物のウィルスでの実験をすることができますが、それでも培養細胞内でのことです。3つ目は、実際に起こっていることを調べることです。つまり、コホートの保護はどうなっているのか、ということになりますが、これはイギリスですでに調査されていて、ブースター接種後には70%、という数値が出ています。これは、実際にどのくらいの効果があるのか、という点では大変重要なデータです。勿論、実際には培養細胞シャーレのなかの細胞内で起こっていること以上に様々が関係してきますが、それでも、私たちのデータからもブースター接種が非常に大切だ、ということ、そして非常に効果的である、ということはわかると思います。オミクロンに対しても明確に効果をあげることができますが、これが短期間に限定される効果だとすれば、この中和抗体の効果が消滅した後に何が起こるのか、ということを考えていく必要があります。どの点を考えていくべきなのかというと、まず、この夏にブースター接種をした人たち、というのは、理由があってしているわけで、それは医療現場に置いて第一線で働いているからです。その人たちはどうなるのか。その点に関しては現時点では全く議論されていません。例えば半年後にもう一度ブースターする、とか、つまり4回目の接種は必要なのかどうか、などということについてです。それとも、重症化はワクチンで十分に阻止できるのでその必要はなく、アップデートされたワクチンを待ったほうが良い、という判断なのか。勿論、忘れてはいけないことは、この人たちも感染する可能性がある、ということで、毎日患者との接触のなかで感染伝播させてしまうかもしれない。免疫的な保護が十分ではない患者にうつしてしまうリスクもあるのです。ですから、AHALルール、マスクの着用、といったものは、いままで以上に病院では必然となってきますし、ここを疎かにすることは許されません。勿論これは、老人ホームや介護施設でも同様です。そこでもブースターは比較的早い段階で接種されましたので。

補足ですが、先ほどの70%、というのはロンドンのインペリアルカレッジのデータです。先ほど、病院のスタッフがあげられていましたが、たしかにワクチンを摂取してブースターもしていると重症化はしないかもしれません。しかし、患者にうつしてしまうリスクとともに欠勤、という問題もあると思うのです。この点も専門家会議が指摘していたところです。たとえ、オスロのケースのように重症ではなくても数日間寝込んでしまうような状態になれば、インフラにも深刻な影響が出てきます。

数日熱が出て寝込むだけではなくて、隔離もされますから大体2週間は働けません。ここが大変大きな問題です。例えば、私のところのラボで考えると、何人も病欠してしまったら今できている検査ができなくなります。ですから、早期発見が大変重要です。そして、大きなグループで集まらないこと。そのなかから多数が同時に病気にならないように、です。例えば、私の研究所では今年はクリスマスの会食は行いません。もう少し説明すると、私たちはどちらも50歳前ですから、ハイリスクには含まれません。そして予防接種をしてブースターをしています。それによって私たちの個人的なリスク、重症化するリスクというのはかなり削減されていると思われますし、もし今、罹ってしまったとしたら多分1週間から2週間くらい自宅で療養することになることはあるかもしれませんが、集中治療病棟に行くことはないと思われます。そう願います。しかし、今、私が自分の同僚に、他の四人の医師にうつしてしまったら。PCR部門の医療技術師チームの五人にうつしてしまったら。そうなったら、この分野の仕事はおこなえなくなってしまうのです。病院という分野ではテレワークにする、ということはできません。ですから、このような重要な分野、ここには警察、消防、保健所、そして老人ホーム、介護施設、病院なども含まれますが、そのような重要不可欠なインフラストラクチャーを維持することに努めなければいけないのです。どのようにグループを小規模にしていくか。つまり、1つのグループが病気になっても別のグループから助っ人を呼べる。このグループ間の接触はないのが好ましいです。そして感染をどのくらい早く発見することができるか。これは大変重要です。そして、数人で集まらなければいけない場合には常にマスクを着用する。これは勿論私たちもしていますが、FFP2が最適です。休憩中の食事の際もそうです。全員がずっとマスクをしていても休憩時間にまた食堂でマスクなしで集まってしまっては意味がありません。休憩中にどうすれば感染のリスクを下げることができるのか、ということを考えなければいけませんが、休憩室が一つしかない病院などでは容易ではないと思います。特に冬場は困難です。しかし、これはすべての雇用主、責任者の方々にお願いしたいことですが、このような点、グループを小規模にして、出来るだけ接触が起こらないようにするにはどうすれば良いのか、ということを至急考えて欲しいのです。オミクロンの場合には、一人が病気になったら、他のところから人材を持ってきて補う、ローテンションを組むなどしてやっていく必要があるでしょう。そのようには私のところではできませんが、できる職場もあるでしょうし、一部をテレワークにする、仕事場を分けたりしてグループ同士が接触しないようにする。このようなアイデアやコンセプトは多分沢山あると思います。そのような分野での責任者は、これから1月、2月をどのように乗り切るか、ということをしっかりと計画していって欲しいです。

先ほどの食事、というのは注目されるべきところだと思うのですが、ここは盲点になっている場合が多くて、例えば、今は旅行自体を自粛する傾向にはありますが、、数週間前、数ヶ月前の飛行機内のシチュエーションです。搭乗するときには全員がきちんとFFP2マスクを着用しています。しかし、飲み物が出てきた途端にマスクを外して飲んだり食べたりしますよね。これは、公共交通機関でも同様で、動いたり、座っている距離が狭かったりしますし、朝食をかじったりすることもあるかもしれません。

勿論、それも問題です。私は個人的にそのようなことを出来るだけ避けます。ミーティングはオンラインでできますし、大勢で会うことや出張も延期、または中止にできるでしょう。旅行の数も減らせます。公共交通機関で陽性者と接触するリスクがあることは確かです。ですから、出来るだけ利用しないようにすることと、FFP2マスクを常に着用することです。勿論、それが不可能な人もいるでしょうけれど、自転車を使ったり、徒歩にしたり、可能な限り別の手段を取るのが望ましいと思います。

オミクロンの感染力がアップしている、というのは現時点では少なくともそのような傾向にある、と言われています。感染に必要なウィルスの量はあまり多くなく、デルタよりも室内で感染する可能性のある時間も短い、ということですよね。

そのような傾向はみられます。しかし、ここでもう一度言っておきますが、、というのも、私のところにも莫大な量のメールが来るので、、3ヶ月後に全く保護効果がなくなる、ということではないです。つまり、この力価、これは人によってかなりのばらつきがあります。個人差が激しいのです。そして、「ブースター後の数値が、〇〇あれば、3回の接種後の3ヶ月間は100%の保護がある」などということはできません。そのようなことはないのです。多くのひとから、「今、〇〇、〇〇、〇〇、という数値が出ていますが、私は保護されているのでしょうか?」というメールをもらいますが、そのような判断をすることはできません。その点を知りたい、はっきりさせたい、という気持ちはわかります。しかし、ここは少し車で比較できるかと思っていて、車でシートベルトをしてエアバックをつける、というのはリスクの削減的に効果があります。しかし、車が100kmで壁に正面衝突すればその保護効果も十分ではありません。ですから、100%の保護、というものはなくて、その人の状況、環境、どのように生活しているか、というところも重要なポイントなのです。毎日クラブやディスコに行って数百人との接触がある人は、どんなに予防接種をしてもブースターをしても完全に感染から身を守ることはできません。この点の理解が十分ではない場合が多いと感じます。100%の安全はない、ということと、特にオミクロンでは感染力が増していますし、ある意味私たちの免疫をすり抜けることができるわけですから、誰もがこのウィルスと接触する機会が来る。その確率は確実に増えました。これは夏にドロステン先生が何度も言っていたことで、批判もされた発言ですが、多分、それが現実です。これは私が常に言っていることですが、予防接種をしてブースターをすれば、それは個人でできることを少なくともすべてしたことになります。重症化を阻止して、感染を防ぐ。しかし、それはずっと持続することではありませんし、永遠に阻止できることではありません。しかし、勿論各自が積極的に防止対策をすることは大変重要です。

特に、今、ですよね。そして、ある段階まで来れば、「私は重症化、重度の疾患経過に対しては保護されている。だから感染してもそこまで心配する必要はない」と割り切っていけるのでしょうが、ドイツではまだその段階に入っていません。そしてまだそのように割り切るわけにもいかないのです。ブースター接種をとっても、先生は培養細胞でブースター接種の数ヶ月後の効果を調査されましたが、実際に効果が減少してくるタイミングはまだわかりません。もしかしたら2ヶ月後かもしれませんし、やはりここは、「better safe than sorry」という言葉を常に頭において、「ブースターをしても引き続き用心することに越したことはない」ということです。

さらに、万が一ウィルスと接触してしまったとしても、ウィルスの量は少なければ少ないほど良いのです。というのも、これは疾患経過にも影響があることですから、マスクを着用し、室内で多人数で蜜になることを避けなければいけません。これは何度も何度も言われていることですが重要なことです。勿論、感染に対しての保護効果がどのくらい持続するか、ということはわかりません。しかし、重症化を防ぐ効果はありますから、インフルエンザの場合でもそうですが、熱がでて1週間寝込む程度で終わる。しかし、現時点ではまだそこまでいっていません。オミクロンに関してはまだデータが十分ではないのではっきりとしたことは言えないのですが、悪い予感はします。オミクロンが軽症だ、とよく言われますが、私は今の時点ではそうは思いません。現時点でのデータはまだまだ不安定です。私が今の段階でまとめたデータからみると、いままでと大きな違いはどの方向でも見当たりません。もし、入院率がデルタを下回るとしても、、例えば、デルタの3分の1、とかですね、そうなったとしても、総感染者数が増えればそのメリットだってすぐに何の意味も持たなくなるからです。この点は自覚するべきです。勿論、各個人的には削減されることは良いことです。しかし、現時点ではまだ明確な傾向はない、というのが私の見方です。

データは少ないですが、今出ているデータをみていっても、まず、パンデミックにおいては感染者が増えれば自動的に重症患者の数も増えます。この点は、連邦政府の専門家会議が指摘しているところでもあります。免疫回避、という点でもお伺いしたいのですが、感染回復者、もしくは、完全回復後に1回のワクチンを接種した場合にはどうなのでしょうか?

外国の実際の感染状況からみると、感染回復者もオミクロンに感染しています。私の研究でも2回接種後にブレイクスルー感染をしたグループがあります。しかし、これは特別で、別のグループが若い医療従事者だったのに対して、このグループは高齢者でした。平均年齢は87歳です。老人ホームの研究の際に使った検体を使いましたので。ここでの結果は、デルタに対しては比較的良い効果がみられ、それは3回の接種後と同じくらいです。オミクロンに対しては大幅に削減されています。この人たちが高齢だった、ということは置いておいても、オミクロンでは保護効果が少なくなる、ということは重要な点です。これは3回接種でも似たようなものだと思います。2回接種して1回感染した場合と3回接種した後でのデータだけではまだ十分ではありませんが、初めのデータを見る限りでは極めて似ていると言えるかと思います。

ここから、ポッドキャストでも告知していた、重症化と免疫システムの役割について取り上げたいと思います。細胞免疫、というのが重症化から守る際に重要になってきましたが、この辺りのデータもまだ十分ではありません。ですが、少しT細胞の役割、これは中和抗体と並んで重要なものですが、キラー細胞とヘルパー細胞です。今のところわかっていることは何ですか?

まずは一般の方のためにざっくりと分けると、、B細胞抗体産生は感染からの防止で、感染に至らないようにします。このブロックが破られると感染してしまいますが、そこでT細胞がウィルスによる疾患の制御を始めます。これによって重度の疾患に進行することを阻止することができるのです。つまり、細胞の免疫応答というものは、感染自体を阻止するものではなくて、重度の疾患になるのを阻止するものであるといえます。南アフリカのケープタウンからのオミクロンに対するT細胞応答のデータがありますが、ここでは白血球を分離して、例えば、インターフェロンやインターロイキンなどの製造を、、

情報伝達物質ですね。

これらの伝達物質はオミクロンスパイク、、つまりこの変異株と接触があって誘発された場合に免疫応答には欠かせないものですが、、数名の患者、たしか16名だったと思いますが、2回バイオンテックでの接種が完了していた人たちです。ここでは、ブースターワクチンでの場合は調査されていません。2回の接種の場合のみです。2回目の接種から1ヶ月後ですから比較的摂取直後、ということになりますが、ここでは、T細胞応答、特にCD4T細胞応答が若干の削減、20%、30%の削減がみられています。これは中和抗体のデータと比較するとそこまでの削減ではありません。これは想定内のデータで、免疫学者たちからも、T細胞応答はオミクロンの変異に対しても幸いなことにそこまで下がらないだろう、と予測はされていました。そして、CD8T細胞応答ですが、これな別のT細胞応答で、ここではほとんどの検体で変化がみられていません。まずはとてもポジティブなことで、ここから感染してしまってもかなり安定した重症化に対する保護効果があるであろう、と思われますが、ただ、この結果は2回目の接種の後の1ヶ月後のものですし、調査された人数も多くありません。これが別の研究で検証されることができたならば、、T細胞応答が中和抗体とは違って長期に渡って持続する、ということを明らかにすることができれば非常に良いことです。

説明ですが、、CD4細胞はヘルパー細胞で、情報伝達物質を送ったり、他の免疫細胞を呼び込む。CD8はキラー細胞で、ウィルス感染細胞を殺傷する、といえますか?

私たちは免疫学者ではないので、、そう言っても差し支えないでしょう。これは大変複雑な仕組みですが大雑把にそのように言っても良いとは思います。ここでは異なるT細胞の品質と役割がありますが、重要なのは感染した後にそれと闘うために必要だということです。

ここまで単純に要約してしまったのは私ですから、、責任はとります。さて、免疫システムが重症化を防ぐためにしていること、T細胞の役割についてみてきましたが、データはまだ足りないものの少なくとも少し方向性はみえてきたと思います。別の質問は、勿論病原性です。疾患が重くなるとか、軽くてすむ、というのはどこと関係があるのか。南アフリカは国民の構造的に異なり若い人が多いためにドイツとは比較できない、ということはもう以前から言われていることですが、別の変異株も関係があります。ベータ株です。この変異株はドイツでは全く増えませんでした。感染速度が下がっている、という傾向もありますが、これも感染がほとんどわからない範囲で起こっているからだ、という説もありますよね。

ここで何らかの憶測をすることは避けたく思います。ドイツにとって重要なのは、デンマークやイギリスで起こっていることであって、そちらのほうが比較する対象として適していますし、南アフリカはもうすでに感染が全体に充満していて、それも何度も起こっている可能性も高いです。興味深いのは、デンマークやイギリスで起こっていることで、今、若い世代、20代から40代が感染している。2回接種を終えた人たちが感染している、というところです。これはドイツのデータとも一致して、この世代の人たちがオミクロンを拡大させているのです。若く、接触頻度も高く、予防接種をしているから大丈夫だ、と安心している世代。そして、ブースターをまだしていない世代です。ブースター接種率は高齢者のほうが高いので。ですから、このようなデータの解釈は注意が必要ですが、勿論、未接種の高齢者がオミクロン感染すればどうなるのか、という問いはあります。残念ながらドイツでは60歳以上の世代で予防接種をしていない層が存在しますが、その層の人たちに、「南アフリカでは、皆軽症だから」と軽く考えてほしくありません。ここから何らかの結論を出すことは間違いです。まだ何もわからないのです。誰が感染しているのか、というところが重要ですが、今、感染しているのは若い世代で、そもそもリスクが少なく、予防接種によって抗体もできている世代です。それと同じように、細胞培養データから何かを言い切るのもまだ早すぎる、と思っています。すぐどこかを切り取って、変に安心したり、恐怖煽ったり、、ということが行われますが、本当に今の時点では判断は難しい、と言うしかありません。

それはイギリスのデータでもそうですよね。イギリスでは予防接種のほかに、感染を経験した人の数が多いです。これもソーシャルメディアで読んだのですが、入院率が少し下がってきた、という傾向はあるものの、これもまだなんらかの解釈をするのは難しいですよね?

そうですね。常によくみて分けて考えることが大切です。個人の視点と社会の視点と、です。これがごちゃごちゃにされていることが多いのです。例えば、私にメールを出す人のなかには、「私の個人的な保護はどうなのでしょうか?」と書いてくる人がいます。しかし、私たちウィルス学者が、「オミクロンが拡がることを大変懸念している」と発言した場合には、これは個人レベルでのリスクを指しているのではなくて、社会全体、社会のなかで起こること全般のことを言っています。この辺りが混同されていることが多いように思います。

病原性に関してのデータがケンブリッジから出てきました。どのくらい容易にウィルスが細胞のなかに入り込んでくるのか、ということです。この結果と、香港からのレポートをあわせると、初めに話したように、オミクロンの疾患程度が、軽いのか、変わらないのか、という傾向はわかってきていますか?

いえ、まだわかりません。重要なのは常に、「ここで臨床的に重要なことは何か」ということです。ここでも肺での感染が起こりづらかった、という結果がでていますが、これも動物実験などでさらなる検証が必要です。とはいっても、様々な研究で変異株同士の比較をしていくことは大変有益なことですし、そこから新しい知見、そして学ぶことが多くあります。治療面でも重要になってくる違いもあるでしょう。そして、これから、実際に病原性が違う、ということが明らかになれば大変良いことです。しかし、今の時点ではまだ早すぎますし、実際の人間に置き換えることも注意が必要です。このデータを持ってしても大変難しいです。実際の状況からとったデータがやはり重要です。これは少し乱暴な言い方かもしれませんが、私の叔父がオミクロンに感染して死亡してしまった、として。しかし、細胞の分析的には感染する可能性は極めて低い、という結果がでていても、何の意味もないでしょうから。これが、本当の意味で、病原性はどうなのか、ということです。治療の面ではどうか。症状の治療的にはどうか。何か方法を変える必要はあるのか?それに関してはデータがまだまだ出揃っていません。

何の意味があるのか、というのがキーワードですが、現在一番大きな層は、2回接種をした人たちで、ブースター接種率は全体の3分の1ほどだ、ということです。さらに、最近予防接種に踏み切った人たちもいます。子供や青少年などもブースターを打つまではまだしばらくかかりますが、2回の接種でどの程度の保護効果があるのか。もしくは、どの程度保護されていないのか。今後の感染状況的にもブースターをすぐに打つことができない場合にはどうとらえてば良いのでしょうか?

それにはお答えできません。データがありませんので。ここで憶測したり、ということも正直したくないです。まだわからないのです。わかっていることは、若い人たちの抗体形成は大変よい、ということ。上の年代よりも良いです。しかし、そこからどのくらいの速度で抗体が減少していくのか。どのくらいのタイミングでブースターするべきなのか。先ほども言ったように、長期に渡って感染を阻止することはそもそも可能なのか、それとも重症化を防ぐ、というものなのか、という点でもはっきりしません。それよりも、今、欠如しているのは、このような子供や青少年の問題ではなくて、8月にブースターを打った医療従事者をどうするか、というところです。これから4ヶ月ごとにブースターを打ち続ける、ということはできません。これが非現実的なことであることは明らかでしょう。国民全員に6ヶ月ごとにワクチンを打つこともそうです。これは解決策ではありません。ですから、私の第一の問いは「(医療従事者は)これからどうなるのか」というところです。今のところ、4回目のワクチンについての論文や研究をしている国は聞いたことがありません。イスラエルをとってもまだ実施していなく来年から始めるようですし、さらにアップデートされたワクチンが出る、ということも重要な点です。4回目の接種をいままでのワクチンで早い段階でしてしまったら、5回目にアップデートを打つことになるのか?ということです。そのようなところも現時点では大変困難でしっかりと最後まで考えられていないように思います。今は、どちらかというと緊急事態だけに集中して、どのようにオミクロンを抑えていくか、ということにしか気がまわったいないのでしょう。その後にどうなるのか、という点では私には全く未知です。子供の問題など。子供でも抗体は少なくなっていくのは明らかですし、特に中和抗体は減ります。しかし、T細胞応答がどうなのか、というところではわかっていることが少なすぎて、この年齢層でのブースターのタイミングがはっきりしません。そして、この世代の問題、心筋炎のリスクにおいても3回目、4回目のワクチンがどのような影響を与えるのか。これに関してはもう少し時間が経つのを待つしかないです。データをもっと集めて学ぶしかない。これ以上は、今のデータからは言えることはありません。

「多ければ多いほど効果がある」という見方を考え直したほうが良いのかもしれません。出来るだけ早く、可能ならもう一度ブースターを打つ、というのは危険な可能性もあるかもしれないですよね?

ご存知かどうかわかりませんが、南アフリカで研修をしているドイツ人医学生達でのリポートがあって、たしか7名だったと思いますが、全員ブースター接種をして、年齢も若かったのですがオミクロンに感染しています。先ほども言いましたが、ブースターにより100%の保護はありませんし、私たちはいつか必ずウィルスと接触します。ここでの問いは、3ヶ月ごと、6ヶ月ごとにブースターを続けなければいけないのか、それとも感染を阻止することを諦めて特定のグループだけにブースターすることになるのか。そこには勿論重症化のリスクがある人たちが含まれますから、そのようなグループは常に免疫状態を最適に保つ必要があります。それプラス、そのようなハイリスクとの接触がある人たちもです。つまり、インフルエンザと似たような扱いになる、ということです。病院、介護施設で働いていて場合には感染を防止する必要があります。これをこれから数ヶ月の間に知見をもとに考えていかなければいけないことです。私は、ブースターの効果と、ハイリスクでの4回目のブースターの調査をすることになると思います。「多ければ多いほど」よい、というものではないのです。それもまだわからないことですし、そして、ブースターの接種期間を短縮することもできません。免疫学的視点でみると、まずは免疫反応が落ち着いて成熟するする必要があります。数日前にニュースで読んだのですが、4週間後にブースターした方が良い、と。私が知っている免疫学者たちは全員、それには反対の意見です。というのは、免疫の成熟が終わっていない上に免疫応答も理想的ではありません。多分、4ヶ月後であれば大丈夫だとおもいます。しかし、これも長い目みてどのようにしていくべきなのか、という点でも考えていかなければいけないところです。もしかしたら、別の技術のワクチンでの他の可能性もでてくるかもしれませんし、それもまだはっきりしない事でもあります。例えば、mRNAワクチンとタンパク質ワクチンをあわせると免疫反応にポジティブな影響を与えるかもしれませんし、とにかくまだわからないことばかりです。

キーワードはノババックスです。その前にもう一つお聞きしたいことがあるのですが、重要なのは根本的にまずは社会全体の負担を軽くしオミクロンの拡大まで時間を稼ぐこと。60歳以上のブースター接種率は55%です。まだまだやることはあります。

そうですね。すべての人にブースターをすることを勧めるしかありません。個人レベルでの保護を高めること、出来るだけ軽症の疾患経過にすることは重要です。効果が出るのもかなりはやいです。抗体は1週間から2週間で増えます。ブースターすれば感染リスクが削減されますから、社会全体的にみても、インフラを守るためにも重要なのです。これはオミクロンでも同様です。たしかにデルタよりも効果は下がりますが、それでもブースターをしない、という理由にはなりません。各自個人的な面でも、パンデミックの面でみても、です。

Stikoは推奨内容を改正しました。今、ブースター接種の推奨は3ヶ月後からです。もう一度説明ですが、免疫学者はmRNAワクチンは3回の接種が必要である、というところで意見が一致しています。他のワクチンにもそのようなワクチンはありますが、その場合にもブースターは不可欠で単なる追加ワクチンではありません。つまり根本的には、少なくともデルタでは3回目の接種後によりよい免疫応答が2回目後よりも得られる、ということです。これから子供達へのブースターに関して科学的な議論が行われていくと思われますが、それはバイオンテックが治験から10分の1の接種量では2歳から5歳児におけるワクチン効果が成人を下回る、というデータを出したからでもあって、今、接種量を上げるかわりに3回目の接種を検討しているようです。

3回目の接種に関しては、すでに低い接種量で2回の予防接種を済ませているコホートで3回目の接種をするのか、それとも新しく1回目の接種からはじめるのか、という点が会見でははっきりしませんでした。「この量では足りないから3回目をする」という理由なのかもしれませんが、もしかしたら、初めからもう少し量を多くしたほうが2回の接種で済む可能性もあるかもしれません。この点がはっきりしないのですが、もっと違う情報をお持ちでしょうか?

私も先生と同じ理解です。

この子供達の3回目のブースターについては議論が必要です。副反応、副作用が極端に上がっては困りますし、まだデータがありません。

もう一つ、ブースター接種者に関しての議論されていることがあって、それは保健相の発言、「ブースターをすれば検査から免除される」というもので、ブースター接種へのモチベーションを上げるために言ったのかもしれませんが、それに対しては先生がツイッターで意見を述べていましたから、どのようにお考えなのかは知っています。「良いアイデアではない」ですよね?

まず、モチベーションを上げる必要は特にない、と思います。それよりも、今、ブースターの希望者のほうがブースターの在庫を上回る状態です。科学的に、そして経済的にまとめますが、ブースターの後に効果があがることは確かです。しかし、もう何度も言っているように100%はありませんし、ブースターをしても感染する可能性はありますし、周りに感染させる可能性もあります。何をツイートしたかというと、、ブースター直後に抗原検査をしてヘアサロンに行ったとしても何の問題もありません。確かに、何度検査をすればブレイクスルー感染を発見することができるのか、という点では意見が分かれるところでしょう。しかし、ハイリスク接触となると全く状況は異なる、ということです。ブースターをしたとしても100%の保証はない。この自覚をしなければいけません。医学には100%は存在しません。今、おばあさんを老人ホームに会いに行こうと思った場合に検査をしない、となるとこれは良いアイデアではありません。病院で勤務している場合、家族と会う場合にも同様です。ブースターをしていれば検査は必要ない、ということになったとしても検査をする。これは責任です。これは、これをお聞きの皆さんも常に自問するべきことだと思います。「自分を守るためには何をするべきか」そして、「周りを守るためには何をするべきなのか」「周りへのリスクはないか」それは、今、私がどこかのお店に入ったり、髪を切りに行ったりする場合と、老人ホームに行くのでは全く違うレベルでの話です。ですから、このようなハイリスクの領域では絶対に疎かにされてはいけませんし、間違った特権は誰の得になることではありません。特にそのような施設で働いている人たちは、毎日周りへの責任を抱えているわけですから、「検査をしなくてもよい」というのはメリットでもなんでもなくて、検査をしないなら施設に訪問するべきではない、思っている人のほうが多いと思うのです。自分が集団感染を引き起こしてしまった、というようなシチュエーションになるかもしれないからです。

老人ホーム、介護施設を守る、ということは重要なテーマですが、100%は不可能です。しかし、ブースターによって間違った安心感が生まれてしまっては困ると思うのです。そのような施設では抗原テストよりもPCRをしたほうが良いと思うのですが、難しいでしょうか?

勿論、PCRのほうが正確で感染の発見には適しています。ロジスティックとキャパ的に可能であれば、早期発見もできて大変良いのですが、理想を追い求めるとキリがありません。実行可能なところでやっていくしかないのでそう簡単にはいかないことも多いです。

ラボのキャパでも決まりますよね?今、また負担が大きくなってきています。地域差はありますが。

それが一番の問題です。勿論、毎日全員をPCR検査するに越したことはないのですが、それは現実的ではありませんから、抗原テストでまかなう場面も出てきますが性能的には劣ります。しかし、全くやらないよりはましなのです。そして、検査と同じくらい重要なのは、衛生管理です。どんなに検査をしても感染自体をなくすことはできません。検査は感染をみつけるだけです。施設で働く場合、訪問時には、手の消毒、マスクの着用、それも定期的に新しいものに変えること、また意識的に衛生管理に気を配る必要があります。

老人ホームや介護施設でのブースターの効果に関しては、経験値がありますよね?きっちり6ヶ月待たずにリスク削減のためにはやめに施設全体のブースターをしたところもあります。ヘッセンもそうでしたよね?

6ヶ月、というのは適していないと思います。ドイツでは、施設の予防接種は2021年の1月、2月に行われています。高齢の入居者の優先順位は高いので。ということは、この6ヶ月、という期間はもうすでに夏に来ていたのです。夏に、「推奨がまだでていない状態でどうすればよいのか」という議論をしたのを覚えています。ヘッセンではその時に老人ホーム研究を始めてその結果はプレプリントになっていますが、そこでは高齢者の中和抗体が6ヶ月後にはほとんど残っていない、という結果がでています。

デルタに対して、ということですね?

そうです。デルタです。介護スタッフは年齢も若いですし、全く異なるデータでした。ヘッセンでは、かなり早い段階、8月、9月に老人ホーム、介護施設でブースターを打ち始めましたので、デルタの感染流行に関しては良い結果が出せていると思います。比較的集団感染が少なかったのもこれが理由だと思いますし、患者数をみてもかなり抑えられています。私の同僚で研究のために75歳以上の感染者を治験者として探していた人がいるのですが、「なかなかみつからない」と言っていました。とても良い流れだと思います。早い段階でのブースターが良い決断だった、と思うのです。批判もありましたが。推奨がまだ出ていなかったので困難であった面もあります。しかし、振り返ってみるとやはり決断は間違っていなかったと思いますし、ヘッセンの良い状態をみてもその効果である、と思われます。

別の重要なツールとして、これも何度も取り上げたことはありますが、先生の研究でも重要な役割を果たすのが、モノクロナール抗体です。これは、一番重要な治療薬で、早期に使えば重度の疾患経過を防ぎます。価格は高いですが、効果も高いです。しかし、オミクロンの免疫回避で少し状況が変わってくるのでしょうか?何がわかっていますか?治療に使える薬はあるのでしょうか?免疫回避に対してはどうでしょうか?どのようなデータが先生のところでは出ましたか?

重要な質問ですね。ドイツで使用されているモノクロナール抗体での研究です。発音するのが困難な名前がついている治療薬ですが、、通常の治療に使われている薬です。残念ながらオミクロンには効果がありませんでした。これは変異からみても想定内の結果です。アッセイからもほかの研究チームのデータからもその裏付けはあります。しかし、少しだけトンネルの向こうに光がみえたのは、12月17日にヨーロッパでさらなるモノクロナール抗体が承認されたことです。この薬の名前も覚えづらいですが、、ソトロビマブ、という名前です。この抗体は大人と青少年、12歳以上の子供、つまり40キロ以上での使用が承認されていて、コロナに罹患し重症化の恐れがある場合、酸素吸入以前の治療が必要になるリスクがある場合に使用できます。治験データでは、患者の1%に治療後1ヶ月以内に24時間以上の入院が必要になった、とあります。この治療薬は承認されたばかりですので1月から実際に使えるようになると思います。投与は静脈注射によるものですが、このソトロビマブの治験では、筋肉注射によるデータも出てきていて、そこでも同じような効果がある、と。しかし、承認されているのはいまのところ静脈注射での使用のみです。感染後の症状が発症してから7日以内に使わなければいけなく、勿論、処方箋医薬品です。この薬は医療施設で使用されることが推奨されています。これに関しても説明したことはありますが、ここにはロジスティックの面での問題もありますし、タンパク質系異物、つまり抗体が含まれますから、アレルギー体質の場合には重度のアレルギー反応が出る場合もあります。ですから、点滴中は少なくとも1時間の監視が必要です。そのようなこともあって、病院で使われることが多いですが、オミクロンが出てきてすぐにオミクロンにも効果があるモノクロナール抗体が承認された、ということは大変喜ばしいことです。これは今後大変重要な重症化においての武器となることは間違いないです。

先ほどもおっしゃっていましたが、ロジスティック的な問題もありますよね。そして、モノクロナール抗体は早期に使われるべきものですが病院での治療が理想的です。デルタに効果があった以前の治療薬の際に編集部のスタッフがリサーチしたことなのですが、、オミクロンがでてくる前ですが、、連邦政府が購入したモノクロナール抗体で実際に使われたのがごく一部だった、というショッキングなことがわかりました。その他は未使用で病院に保管されていて、患者の多くが使用するには手遅れな段階で入院してきていたために使えなかった、と。今の状況はどうなのでしょうか?少し改善されたのでしょうか?先生の大学病院ではどうですか?開業医からの情報などはありますか?

初めに色々と躊躇していしまうのは仕方がないかと思いますし、この薬は大変高価なものですから、使うべきなのか、使っても良いものなのか、迷ってしまうのもわかります。しかし、それも明らかに変わりました。以前よりもかなりの頻度でモノクロナール抗体は使われますし、特に院内感染などでは広範囲で使用されています。システムをまずはつくっていかなければいけないのです。私は、使用頻度が大幅に上がった、という印象を受けますし、知識も幅広くなっています。以前のポッドキャストでも言ったと思いますが、このような薬がある、ということがまず知られていなければいけませんし、病院、診療所などでも浸透していなければいけません。このような薬があって、治療に使える、と。 そして使うことを遠慮しないこと。とても高価な薬を使うことに抵抗がある医師は多いでしょうし、ミスをしたくない、無駄にしたくない、という気持ちが働くのは当然です。しかし、この数週間でかなり状況は変わりました。

老人ホームなどでは、患者が病院にいくのではなく、出張外来で行われるのですよね?

そのほうが良いですね。特に認知症などのお年寄りを入院させなければいけない、ということになれば色々と困難なことがでてきますので。これから、筋肉注射でも投与できるようになれば、出張外来でもさらに簡単に使えるようになりますので理想的です。勿論、アレルギー反応には最善の注意が必要ですので監視時間はきちんと守られなければいけません。これは今後も大変重要なツールとなりますから、もっと良く体制を整えていくべきです。とはいっても、開業医的には容易ではないでしょう。老人ホームへ外来にいく医師が、入居者5人の治療をしなければいけないとして、監視もしなければいけない。多分、ここで半日は潰れます。ですから、半日診療所を閉めるくらいの時間があることも前提です。

他の治療薬はどうでしょうか?この前のポッドキャストで、パクスロビドとモルヌピラビルという抗ウィルス剤を取り上げました。オミクロンに対する初めのデータが出てきていますよね?

そうです。ベルギーから出ています。ここではオミクロンに対しても抗ウィルス効果があるのかどうか、というところをみていますが、この場合には常に50%まで削減するのにどのくらいの薬が必要か、というのが基準となっています。簡単に説明すると、ですが。結果は、変異株での違いはみられませんでした。追加で言っておかなければいけないことは、モルヌピラビルについてはこの前のポットキャストでも話しましたが、また新しい論文が発表されました。今回はデルタでのサブグループ解析で、実際の患者でのデータですがどちらかというと残念な結果です。どのくらい臨床的に効果があるのか、というところをみていく必要はあると思います。その点では、パクスロビドのほうがいまのところ明らかに効果がありますが、それもまだ培養細胞レベルでの話です。

ここでもう一つ取り上げておかなければいけないテーマがあります。ノババックスについては何度も取り上げてはいますが、これはタンパク質ベースのワクチンです。これが承認されました。欧州医薬品庁から承認がおりたこのワクチンは、常にmRNAワクチンに否定的な人たちにとっての代案である、と言われてきました。ここでは、身体がスパイクタンパク質を自分でつくる、ということはせず、タンパク質の一部を接種する、というものです。このタンパク質は人工的につくられたものだ、ということも言っておかなければいけないと思います。昆虫の細胞で、だったと思います。有効性データはかなり良い、とのこと。しかし、治験データは勿論オミクロンでのものではありませんし、大部分がデルタでもない、ということですよね?

そうです。デルタへの効果はあまりはっきりしませんし、勿論オミクロンはさらに不明です。ですから、最終的な有効性はあまり高くない、ということも考えられます。製造元では今オミクロンでの実験をしているようですし、オミクロンに適応したスパイクタンパク質でのワクチンの開発を始めたとのことでした。このようなことを始めた、ということは効果が削減した、ということがわかっている、とも解釈できるかもしれません。ノババックスについて言っておかなければいけないことは、私はこのワクチンが追加されたこと自体は大変喜ばしいことだと思っています。まずポジティブな面ですが、現時点で、5種類のワクチンがあり、特に30歳以下での心筋炎リスクによるモデルナの接種制限があるために、バイオンテックが少し品薄になっている状況です。30歳以下、18〜30歳の1回目の予防接種の分、ですね。ですから、さらなるワクチンが使える、ということはとてもありがたいことです。しかし、免疫学的な視点からみると、免疫の極一部でしかワクチン効果が得られません。つまり、mRNAワクチンよりもポテンシャルが低いのです。mRNAワクチンは先ほども話したように、キラー細胞、T細胞とメモリー細胞もつくりますが、このタンパク質ベースのワクチンはT細胞にはほとんど刺激を与えず、抗体応答に限られます。これも何度も言っていますが、抗体の持続期間は長くはありません。ですから、このワクチンが長期間においてどれだけの効果があるものなのか、という点ではみていく必要があります。問題はその辺りがまだ明らかになっていない、というところです。さらに、ノババックスはこれから大規模な接種が始まるわけです。去年を思い出してみても、アストラゼネカでの稀な副作用、mRNAワクチンでの心筋炎、そのようなことが大規模な接種ではでてきました。これから、ノババックスが何百万人へ接種された時に治験ではみられなかった副作用が出てくる可能性もあります。ですから、やはりmRNAワクチンのほうがお勧めできます。こちらはもうすでに何億という人に使われていますしリスクもわかっています。とはいっても、勿論、こちらのほうが良い、と思う人はこのワクチンで予防接種を行うことは重要です。

オミクロンでは時間を稼ぐことが重要ですし、ワクチンもブースター接種も重要です。しかし、単独ではあまり効果はありません。やはり、様々な対策を続けるのは不可欠であって、ロベルト・コッホ研究所も、「接触制限は必然である」と言っています。ハンブルグは、クラブとディスコの閉鎖を決議しました。クリスマス後からは集まっても良い人数は10人まで、と制限されています。お店は、引き続き2Gです。先生は専門家会議のなかには入っていませんが、先生のスタンスは私たちも大体わかっています。1年前のポッドキャストで、「ウィルスからのプレゼントはない」と仰っていました。これは、ほとんど、映画「恋はデジャ・ブ」効果ですよね?先生は今回も「オミクロンはプレゼントを持ってこない」と。

そうですよね。このポッドキャストの準備をする時に、何度も、「一年前にも同じことを言ってたな」「同じことが起こっていたな」と思ってしまったりします。何度も同じことが繰り返されている、と。しかし、もう少し深く掘り下げていくと、全く同じことが繰り返されているわけではない、ということがわかるのです。ですから、楽観的に考えることも必要だと思います。ブースター接種が進んでいることもポジティブなことですし、希望者も多いのも喜ばしいことです。最近、1回目の接種に踏み切ったひとも多い、と同僚から聞きました。大変良い傾向です。特に、60歳以上の高齢者が予防接種をする、という決断をすることに関してはそう感じます。もう年末になり、「これからどうなっていくのか、、」「オミクロンが本当に最後なのか」と、残念ながら、2022年に入っても疑問は少なくはなりません。正直なところ、私自身もこのような展開になるとは思っていませんでした。わからない事ばかり今日もお話ししましたが、「4回目の接種はどうなるか」「中期的、長期的なワクチン接種間隔はどうするべきか」例えば、3回目の接種を夏にした場合などです。現時点では、ブースターに集中していますから、まずそれを終わらせなければいけませんが、その後にどうなるのか。その点の議論が全くされていません。しかし、私はその点も大変気になります。ブースターの研究を1月、2月がするのかどうか。それとも、十分である、ということを前提にアップデートを待つのか。どちらにしてもやるべきことは山積みです。このタイミングでのオミクロンは誰にとっても予期せぬことだったからです。

この間、「今後、ポッドキャストを短くする」と仰っていたところに、オミクロンが登場して、、また話すことが増えてしまいました。

「やめる」とは言っていなくて、「短くなるだろう」と、、、

また長くなりました。最後にお伺いしたいのですが、私たちの日常生活に置き換えた時に、、「祭日はどう過ごせば良いのか」と考える人も多いと思います。自主的に集まる人数を少なくするひともいるでしょう。しかし、予防接種をしている人たちが室内で何時間もの間マスクをし続ける、とか、家族にも会わない、というのは非現実的だと思うのです。他にできることはありますか?特に、潜伏期間が変わった、という点でも。例えば、家族に会うために短い自主隔離期間を5日設ける、とか。祖父母に会うためにはやはり気をつけるべきですよね。

そうですね。これは全て去年も取り上げたことですが、そのように気をつけることで良い効果は得られると思います。重要なことは、どの接触が不可欠であるか、ということを常にチェックすることです。どの接触を避け、どれを延期することができるか。旅行などは根本的にリスクですし、控えたり、年末年始は少し大人しくする、ということも重要だと思います。それによって拡大速度も少し抑えることもできますので。勿論、大変困難なことではあります。検査をして、自主隔離して、換気をして、、もうリスナーの皆さんは聞き飽きたことでしょう。しかし、やはり一番重要なのは、一人一人が「何が重要であるか」「どのように守ることができるのか」というところを正しく理解することなのだと思うのです。そして、周りのために何ができるか。 私が多くの人が理解していなく、大きな問題である、と感じるところは、パラドックスが存在する、というところです。医学的、保健政治的には勿論予防対策をうたなければいけないのにもかかわらず、法廷では、「数が十分に増えないうちは対策の強化の理由にはならない」と。これをどう解決するべきなのか、ということは私にも理解できません。私に理解できないことが、専門家ではない一般人がどう理解しろ、と言うのでしょうか?しかし、これはパンデミックになってからずっと付き纏っている問題です。未然に防ぐ、ということが、法的、規則的に制限されてしまう。ですから、少なくとも個人レベルで可能な限り予防対策をしていくしかないと思います。「禁止されていないからしてもかまわない」という理由は存在しないのです。




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