ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(3) 2020/2/28(和訳)


話 ベルリンシャリテ ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン
聞き手 コリーナ・ヘニッヒ

2020/2/28 ←注 コロナアップデートの第3回目です。

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感染の連鎖を断ち切る、これは、ここ数日何度も聞いた言葉です。まだ可能なのか。それとも、それが無理なのであればどうすればいいのか。Sars-Cov-2ウィルスは、思ったよりも広範囲に拡がってしまっている、ということなのでしょうか。今日も、ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン氏にお話を伺います。聞き手は、コリーナ・ヘニッヒです。

今日も最新情報と、症状などについてお聞きしたいと思います。感染の確率といつ免疫ができるのか。 この間、ここ数日、ヒステリーの限界が超えることが多くなっている、とおっしゃっていましたが、新型コロナの危険性は? コロナウィルスはどのくらい危険なのか?というような、見出しをみて、どう思われますか。きちんと情報が行き渡っているのでしょうか。

そう簡単には答えられません。 このくらい危険です。とか、このくらい準備ができています。など。 そのような質問には、たまに、皮肉で返したくなりますね。 もし私に、また誰かがコロナウィルスはどのくらい危険なのか、と聞いてきたら、数字だけ言って、聞いた本人にその数字の意味を自分で考えてもらう、ということをしてしまうかもしれません。

例えば、どんな数字ですか?

そうですね、、、今の時点では、、致死率が0、5%、とかでしょうか。 そこでまた、聞かれるでしょうね。それを何を意味するのですか?と。それって、多いんですか?少ないんですか? そうやって、テレビなどで騒がれてますから。 ですので、あまり言いたくもありません。 あ、なんだ、そんなにたいしたことがないな、1%にも達してないじゃないか、という人もいれば、計算しはじめるひともいることでしょう。この数値をドイツの人口にあてはめて計算すると、恐ろしい数の死者がでてくるわけで、それがツイートされます。 もう全て、実際にあったことです。 簡単に一言で片付ける、ということはできないのです。 やはり、もう少しきちんとした背景から理解し、比較できなければいけないのです。
このウィルスでは、今の段階のデータで、0、5%の致死率がでていますが、ここから修正していかなければいけません。 例えば、まずは、中国のデータに影響されないこと。中国のデータはいろいろな意味で偏っているからです。ドイツの致死率をきちんとだそうとした際には、中国の数値は残念ながらあてにはなりません。 中国以外でも感染ケースはたくさんありますが、私は、イランも外します。 なぜなら、イランでは、検査体制が整っていないので、軽症者はほとんど把握されていないからです。 これは、感染者数に対して、死者数が多すぎる、ということからも明確ですが、現地の状態は、イランから直接、援助の依頼がきていて、検査のサポートなどをしているので、よくわかっています。 イランのラボは、まだ検査をする環境にいないか、準備をはじめたばかりか、なのです。

キーワードは、数値 です。 ロベルト・コッホ研究所は、昨日、新型コロナで死亡する確率は1〜2%、と発表していました

ロベルト・コッホ研究所は、困難な状況にいるでしょう。ここは、国の保健機関です。そのような機関がだす数値は、私のような大学教授が、あぁ、この数字なんて、いらない。こことここも間違ってるから、、それを引いて、、、足して、大体のところで、、、このくらいか!と計算してだすのとは訳が違います。ロベルト・コッホ研究所は公の機関ですので、登録された公の感染者数がベースです。そこから計算され、分析され、発表されます。それが、実際の数とはかけ離れていても、です。

ということは、数値は調整されていない、ということでしょうか。

そうです。ロベルト・コッホ研究所の発表は、厳格な数値ベースに基づいています。 2%か1、5%というのは、中国以外の国をみた場合でしょう。 中国ではもっと高いです。様々な理由から、どの国のデータを信じてはいけないのか、参考にしてはいけないのか、ということはわかります。ちなみに、今の時点では、イタリアも参考にしていません。把握される感染者数が今後増えてくる、と思うからです。 このように計算していくと、、、先ほどの0、5%、という数値がでます。

国内の危機感は、先日のロベルト・コッホ研究所と保健省の会見で高まったと思うのです。 質問も多く届いています。 ウィルスは、冷凍庫で死にますか? 消毒液の効果はどうですか? スポーツジムには行ってもいいですか? ドアノブは拭いたほうがいいですか? 繰り返しになってしまうかもしれませんが、もう一度、これからウィルスが広がっていった場合に、私たち一般人が気をつけなければいけない点についてお話しいただけますか。 

そうですね、、、今の時点で、私自身が実行していること、そして、家族や周りの友人たちがやってることは、、、、何もないです。 今、しなければいけないことは、何もありません。 現時点で心配することは何もないのです。 勿論、パンデミックの心配はしています。勿論、致死率0、5%の心配もしてますし、計算をすればするほど、0、5以上、1%になるかもしれない、という結果が出てきて、心配は募るばかりです。 しかし、私の心配は、来週、来月の話ではなくて、一年後にどうなっているのか。 どんな状態になっているのか。 今年の夏の後の冬には何が待ち受けているのか、というところです。 今後においては、これから、感染クラスターがみつかるでしょう。 今は、外から持ち帰った孤発例がメインで、そこから新しく感染が拡がっていっていますが、まだ、発見が可能な範囲ですので、調査をおこない、感染の減速をする。 今後も、感染クラスターが発見され、それが抑え込まれるでしょう。しかし、感染ケースのなかには、発見されずに感染が続いてしまう場合もあります。 これは、ウィルスの持つ習性で、全てをコントロールできません。 それでも、今は、全体的にまだまだ少ないですから、国民の感染リスクは低いです。 統計的にみても、、日常のリスクのほうがそういう面では高い、と言えるでしょう。交通事故の統計をみても、毎年何十万人ものひとが、自動車や自転車の事故でなくなっている訳ですから、そのリスクを避けるために、これからは全て徒歩で行くことにする。ということと同じレベルです。 今現在では、そうです。 突然大変なことが発生する!と今は、考えなくてもよいのです。

ここで、もう一度、お願いなのですが、、、サージカルマスクと消毒液は、病院や診療所で必要なのです。 普通の病気の治療も日々されていますから。

そうです。他の病気でもそうですし、今後状況が進んで、Covid患者、そして、Sars-CoV-2の疑いがある患者の治療が始まったとしても、、、一般人は、サージカルマスクを買う必要はありません。防止になるというエビデンスがありません。消毒液も同様です。病院で、消毒液を手に塗るのは、手を洗うことの代用になるからで、日常では必要ありません。 中国でタンク車が消毒液を道に撒いている図がテレビで報道されていますが、あれには意味がありません。 そして、サージカルマスク。これは、病院の救急や病室内で必要です。 医師や看護師が、患者との接触をする際、つまり、気管からサンプルをとる、気管挿管の際には、飛沫が飛んでくることがあります。 勿論、病院内では、常にサージカルマスクを着用していなけえばいけません。 ハムスター買い(買占め行為)などが原因で、病院で不足することが大きな問題です。

少し科学的な分野に移りたいと思いますが、先ほど、1年後の心配をされている、ということでした。 ということは、今、入ってきたウィルスが、このまま残り、変異し、、、もっと危険な病気の原因になるかもしれない、ということでしょうか。

私は、このウィルスがパンデミックを引き起こすだろう、と思っています。 これは、止められません。しかし、ヨーロッパから拡がっていくかどうか、はわかりません。 これから暖かくなっていって、、それまで辛抱すれば、ヨーロッパの多くの国でコントロールが可能であるかもしれません。 今後、感染は増えます。 常に新しい感染ケースがみつかるでしょう。メディアもいつか疲れてきて、全く報道しなくなる。 違う話題がでてきて、みんな、そちらのほうに注目して、このテーマについては誰も話さなくなる。 そして、コメディアンは、面白おかしく、このことをネタにするでしょう。   中国は、過酷な処置によって、新しい感染の拡大を抑制することが可能である、ということを証明しました。毎日の新しい感染者数ですね。 これ自体は、素晴らしいことです。技術的に疫学的にみれば。しかし、今後、感染が再度拡がる要因が2つあります。  1つ目。緩和後にまた人々は出勤しはじめるでしょう。経済的なダメージは大きいからです。この延長された春休みが終わり、旅行もするようになれば、、感染者はまた増加するでしょう。 これは間違いありません。 2つ目。イランで感染経路が不明なケースが多発しています。いつ国内に入ってきていたのか、ということもわかりません。パキスタンではどうなのか。中国と地続きになっている地域ではどうなっているのか。そこでも、今後、感染が爆発することが予想されます。 そして、その次にはアラブ諸国です。サウジアラビアは、メッカへの巡礼をストップさせました。 大巡礼ハッジではなくて、小巡礼ウムラですが、これは対策としては規模が小さい。 中東全体に感染が拡がり、アフリカとの繋がりも濃いですから、そこからまた夏以降にヨーロッパに入ってくるでしょう。 それか、気がつかない感染クラスターが静かに拡がっていく。軽症の風邪くらいの症状で、私たちの認識もその程度でしょうから、日常生活の一部として受け入れてそのまま普通に生活する。 たまにニュースで死亡者の報告があるでしょうけれど、インフルエンザの死亡ケースや、他の呼吸器系の死亡者もニュースにはほとんどなりません。 常に死亡する人はいるのにも関わらず、です。 そして、秋が来ます。 私が心配するのはそこからです。

変異の危険性はありますか? それとも、もうすでに変異しているのでしょうか。よく話題にされていますが、実際のところ、何を意味するのでしょうか。

変異というものは、ウィルスでは常におこっています。ウィルスは変異するものです。 動物も、植物も、変異しますが、ウィルスのほうが速度がはやいのです。 ここでは、遺伝子情報が変わります。 多くの場合、アミノ酸情報や構造も変化しますが、この部分での変化があってはじめて、ウィルスの性質に影響がでてきます。 どのような影響か、ということですが、進化、という過程のなかでの変異は大体においてウィルスにとっては、メリットよりデメリットのほうが多いのです。 変異した集団を排除する、というメカニズムがありますので、変異したものは淘汰されていく傾向にあります。  これがウィルスでは、、とても速い速度でおこなわれます。 選別された特異ウィルスに対して、通常の変化していないウィルスは有利なので、この野生型が安定していくのです。ウィルスの場合、ですが。野生型、とは、普通のタイプで、変異していないウィルスのことです。

変異したウィルスが排除されていくのであれば、良い方向にいくのか、と思いましたが、普通のウィルスが安定していく、ということであれば、、、悪い方向、ということになるでしょうか。

いえ、そのようには片付けられません。白か黒か、ということではないからです。 今、お話ししたのは、通常ではそうなる、ということでしたが、違うこともお話ししなければいけません。 しかし、ウィルスの変異について、きちんと説明しようとしたならば、、、10分では足りません。 そして、そうしたきちんとした説明が無理であれば、話し合う意味もないのです。 よく、大衆紙の見出しにあるような、ウィルスの変異! というような、レベルでは。

そのようなレベルでの話はしたくありませんし、特ダネも必要ありませんので、変異についてはまたの機会にお願いしたいと思います。 リスナーの質問ですが、完治したはずの患者が、また陽性になった、というニュースがでていますが、これはどういうことなのでしょうか。 免疫ができない、ということはありえますか?

そのことについては、例外なケースだ、と言えるでしょう。 このような報告はあります。 最近では、日本からの報告がありましたし、中国でも数件あります。 正直なところ、どのように解釈して良いのかわかりません。まず、感染生物学的には意味をなしませんが、分析検査的と臨床的には、、、説明はつきます。
例えばこうです。患者がはやくに退院してまた具合が悪くなった場合。大多数は軽症ですから、検査をして陽性で入院しても、3〜4日後に、もう元気のようだし、病院のベットをこれ以上使うわけにはいかないから、退院させよう。そのような決断を中国のようにエピデミックな状態である場合にはすることも多いでしょう。 しかし、この感染症では典型的なのですが、軽症で治るか、重症化するか、というのは、1週間目の終わりか、2週間目のはじめに決まるのです。もし、1週間目の最後のほうで退院したとして、その後で自宅で重症化する、ということは大いに考えられます。違う病院に行って、完治して退院したのですが、また具合が悪くなって、、と検査したら陽性だった。 このようなことが、大雑把に伝達されると、、、完治して退院した患者が、また病院に運ばれて再度陽性だった。 しかし、この患者はずっと陽性だったのです。

感染リスクについてはどうですか? 感染者はどのくらいのウィルス量を持っていると感染させますか。

ここで、また教授として一言言わなければいけませんが、、、、ウィルス量は、HIV感染症の場合だけに使う専門用語です。他の感染症で、ウィルスの濃度測定の話をする場合は、ウィルス濃度、と言います。このウィルスの場合はこのことは重要です。というのも、ウィルス量とは、血中のウィルスの量のことを指しますが、この感染症では血液中にはウィルスは検出されません。ウィルスは喉と便で検出されます。どうしても、ウィルス量と言いたい場合は、少なくも、喉のウィルス量、とか、肺や便のウィルス濃度、と言うべきでしょう。 この感染症では、はじめに喉のウィルス濃度が高く、数日後には肺での濃度のほうが高くなります。感染性はどちらもあります。 はじめのほうでは、喉からでる、、簡単に言うと唾、とかですね、その後では肺からでる咳、部分的には目に見えない小さな粒子など、、で感染します。

ということは、かなりはじめのほうで感染してしまう、ということなのでしょうか。 議論は数週間前からされていますが、無症状の感染者もいるのですよね? 症状が全くなくても感染させることはありますか? 症状が軽症すぎてほとんどわからない?

そのようなことはラボで調査するのは難しいので、学者も、ジャーナリストも、ツイッターでそのような件について議論する学者をフォローしたりしますが、妥当ではありません。とにかく、率直に言うと、ラボで検査されるためには、まず病気でなければいけない、ということ。 そして、病気のひとは、まずは病院に行きます。そこでとられたサンプルは、、、ほとんどの場合が、発病してから、はやくて2〜3日目です。発病1日目のサンプル、などというものは、本当に稀なのです。 朝に喉の違和感を感じで午後に病院に行くでしょうか? 行かないですよね。たぶん、一晩様子ををみるでしょう。そのようなケースがほとんどです。そのような理由からラボにあるサンプルは2〜3日たったものです。そこサンプルからデータをとって、その後の観察をし、グラフにすると、、、2日目には、喉の濃度は一番高く、肺よりも多い。それから、喉の濃度が下がり始めて、肺が上がり始める。 もし、0日と1日目のサンプルがあったとしたら、、、喉での濃度のピークでだろう、ということです。 その前のマイナス0日、つまり、症状がでる前の日、その状態は勿論わかりません。

リスナーからの質問にうつりますが、イタリアから帰った来た人がいて、全く元気だったのですが、雇用主から、念のために自宅待機してほしい、といわれたそうです。そこで、病院から病院にいって、ハンブルクの大学病院までいって、検査を頼んだそうなのですが、検査はしてもらえなかったそうです。このような場合の検査に意味はありますか?

そのような場合は検査はできません。つまり、無症状の場合は検査できないのです。 今、無症状者についていろいろと議論されてはいますが、意味はありません。 ラボでの検査での偽陽性の確率もありますが、具体的な接触がない人までも検査する意味はないでしょう。 もちろん、濃厚接触の疑いがある場合、例えば、感染者と15分話した、など。そのような場合は、無症状でも検査をする意味がでてきます。

最新のケースを見ていきたいと思います。疫学的な視点で、現在のドイツ国内の感染経路の調査、孤発例の追跡はどうでしょうか。進んでいますか。

まだ、よくわかりません。 今日、シークエンジングの第一弾の結果がでてきます。 感染勃発の情報は、ラボよりも報道のほうに到着するのが先、ということもよくあって、、、これはロジスティックの問題ですが、保健所も、まずは現地のラボにサンプルを送りますので、それと同時に私たちリファレンスセンターにもう一度サンプルを送るような時間もなかなかないと思うのです。でも、現地で全て検査できる、ということは素晴らしいことです。ドイツの検査体制はそれなりに整っていますが、ふらふらと無症状者が、、ここでは症状がありませんので、患者、とは言いません、、入ってきて検査、ということにはなりません。 それは、今の時点では、まだ作られている途中の船がもう出航しているようなものだからです。ラボのなかには、もうかなり整っているところもあれば、まだできない、もしくは、そこまでの量の検査ができないところもあります。 ですので、この状態で、無症状者を受け入れて検査にブレーキをかけることはできないのです。 まだ、この感染クラスターの詳細がはっきりしていない今、今週末に私のところのラボで結果がでます。 そこで、このウィルスが、イタリアから入ってきたものなのか、違う由来なのか、がわかります。 それから、とても興味があるのは、ノルトライン・ウェストファーレンの感染ケースです。まだどこから来たのか感染経路がわかりませんから。 接触者などの調査も続けられていますが、本当にこの人たちはここから感染したのだろうか。それとも、全く違うところから発生しているのか。

結局のところ、全てを遡って行くと、中国に、、人獣共通感染症に、、たどり着くのでしょうか? それとも、かなり前からドイツ国内に知らずに入ってきていて、クラスターの発見で発覚したのでしょうか。

もうすでに、多くのヨーロッパ内のラボで、11月と12月の風邪のサンプルの検査がされています。そのなかには、新型コロナはありませんでした。このことからも、ヨーロッパに去年の段階で入ってきた、と言う可能性は低いでしょう。

もう一度、症状についてですが、、頻繁に聞きましたが、、風邪のような症状で始まり、多くの場合が風邪のような症状で終わる。 完治した患者から何がわかっていますか? どのくらいの期間で治るのでしょうか。感染はいつしなくなりますか?

臨床的には、普通の風邪は、1週間で治ります。 重症化して、呼吸困難や激しい咳がでてくて、集中治療が必要になれば、2週間。集中治療で呼吸器が必要になったりすると合併症が起こったりします。そこで長引くこともあります。ケースバイケースですが、2〜3日呼吸器をつけた後に改善する人もいます。

最後に、、、今現在の過剰な不安については、もうお話しましたが、昨日、ロベルト・コッホ研究所、そして、保健省が、大きなイベントについて会見しました。 このような議論には意味がありますか? 例えば、サッカーの試合に行かない、とか、ブンデスリーグを中止にする、など。他の国で決断されたように

難しい問題ですね。これは、政治的な判断で、科学の判断ではありません。 政治は、科学的な意見を元に、様々な視点から決断を導きださなければいけません。例えば、あるテレビ番組では、カーニバルは中止にするべきだった、と言っていましたが、そんなことはわかりません。しかも、過ぎてしまった後なら尚更です。 それと同時にニーダーラインのような小さな都市で感染経路が不明なケースが発見されたら、、、学校と保育施設を閉鎖するか、どうか。 これはもちろん、閉めたほうがいいにきまってます。感染が広まる場所ですから、そこを封鎖することで、急速に拡大している感染を少し抑えることができるかもしれません。それによって、感染経路の調査を進めることもできますし、感染は隔離によってもストップすることができます。 このように、小さな地区では、感染の把握が比較的良くできますが、本当に、この地区からウィルスが来たのか。 多分、違うと思います。どこか違うところだったと思うのです。しかし、このことをみつけだすのは今ではなくてもいいのです。まずは、感染をストップさせることです。 困難なのは大都市です。ベルリンでは大きな見本市もありますし、たくさんの訪問者が訪れます。今の状態では、その際にたくさんのウィルスがベルリンに運ばれて見本市で拡散するでしょう。もちろん、その他にも常に多くの観光客がベルリンを訪れます。感染拡散のためには、見本市などいらない、と学者は言うでしょう。通常の観光客数と、見本市の訪問者数を比較して、有意性検定を行う。そこで、見本市のほうが、感染リスクが高い、となれば、中止になるでしょうし、そうでなければ、そのまま開催されるでしょう。こう学者は説明するでしょう。
政治家や公的機関の責任者は、また別なところも配慮しなければいけません。これは、開催地にどのような経済的な影響をもたらすのか。副次的なダメージは何か。もし、病院のキャパが超えたらどうするのか。ビジネスが成立しなくなれば、どのくらいの影響がでるのか。 これらは、もうすでに科学の分野ではありません。 そのために、地域によって異なる決断が下されています。今の所、どこにガイドラインがあるのか、と言われても困難です。ロベルト・コッ研究所がガイドラインを発表しないなんておかしいじゃないか。と思われるかもしれませんが、各都市で、まずは決めるしかありません。 これは、もうすでに医学や科学の情報ではなくて、ケースバイケースで決断されなければいけないのです。

また来週、科学的に判断できる分野でのお話を伺いたく思います。いつもお時間を取っていただきありがとうございます。おかげで、少しずつ知恵がついてきているように思います。

ベルリンシャリテ
ウィルス研究所 教授 クリスチアン・ドロステン

https://virologie-ccm.charite.de/en/metas/person_detail/person/address_detail/drosten/


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