ドロステン教授インタビュー 2021/12/30(和訳)

ベルリンシャリテ ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン
 聞き手 フィリップ・マイ
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Deutschlandfunk - Der Tag

今日のゲストは、2020年引き続き2021年も時の人となったお方です。ちょうど1年前のインタビューでは、それは特にご本人が意図したことではない、ということを仰っていましたが、その時にはちょうどイギリスから新しい感染力が増した変異株、B117、のちのアルファ株が出てきたところでした。現在ではオミクロン、ギリシャ文字の15番目まできてしまっています。今日はいままでのパンデミックを振り返り、今後の展開に関する見解をクリスティアン・ドロステン教授にお伺いします。

フランス、デンマーク、イギリスなど多くの国で毎日記録が塗り替えられている状態ですが、ドイツではまだはっきりとはわかっていません。クリスマスの祭日の間の登録漏れが原因ですが、ロベルト・コッホ研究所は正しい数値が出るまでにあと2週間かかるであろう、と言っています。これはパンデミックの2年目においてあっても良いことなのでしょうか?

うーん、他の国でもクリスマスの間のデータの漏れはあります。ドイツ特有の問題ではないのですが、ドイツではクリスマス前に単純にまだオミクロンでのケースが少なかったのです。ドイツでの拡大速度は、例えばイギリスなどと比べると若干遅いのではないかと思われます。イギリスが2日ごとに倍増している、とすると、ドイツは4日くらいでしょうか。ざっくりと言えば、ですが。クリスマス前には私の研究所でもほとんどオミクロンはありませんでした。私のところはベルリンの大きなラボではあるものの、勿論そこでの状況を全国に当てはめることが出来ないのはわかっています。しかし、現時点で50%がオミクロンで、他のラボに聞いても大体そのくらいのところが多く、確かに、もっと高い割合の地域、そして明らかに低い地域もあります。いまのところ、少し全体的に不均一な状態ですが、それでも明確な傾向は見て取れますし、特別ドイツが遅れている、ということではなくて、少しだけ拡大速度が緩やかだ、ということだと思います。

基本的にはポジティブなことですよね。盲目飛行をしているとはいえ、そこまで爆発的に拡がってはいない、と。

数的には、、、そうですね。勿論、イギリスのほうが圧倒的な数です。それはドイツよりももっとコスモポリタンだ、ということもありますが、それよりも大きな違いは、対策がほとんど解除されていた、というところで、パブも通常営業していましたし、マスクの着用もされていませんでした。そのように対策がとられていない状況下で知らないうちに拡がってしまったのだと思うのです。ドイツでは違います。ドイツではまだデルタの感染流行の真っ只中で、、11月末を思い出してみて欲しいのですが、バイエルンなどでは対策の強化を余儀なくされて、、医療の逼迫が酷くほとんどロックダウン直前の状態でした。ドイツ全体でも、何らかのかたちで接触制限が行われ、、2Gとかそのような規制ですね、そのようなことをしていたのが最終的にはオミクロンの拡大にブレーキをかけたのだと思われます。

それでも、新保健相、カール・ラウタバッハ氏は、発生指数は発表されている数値の2倍、3倍だろう、と言っています。ということは、200台ではなくて、600くらい、ということでしょうか?

うーん、どうでしょうね。今すでに、7日間の平均発生指数が600であるかどうかはわかりません。勿論、そうではない、とは言い切れませんが、勿論、クリスマスの祭日の間の登録漏れは取りこぼし率をあげますから、その分上乗せしなければいけないことは確かです。ここで数をあげることは控えますが、とにかく、1月中旬には明確な数が出てくる頃には大変高い数値となっていると思われます。

オミクロンについて今までにわかってきたことなどを踏まえると、、、どのようなことを覚悟しておくべきなのでしょうか?

まだ、かなりはっきりしない、と言えると思うのですが、クリスマス前にはそれこそ全く情報がなくて、今は情報こそ集まってはきましたが、それらは2つの別々な方向に向かっています。1つの方向は、、多くの国で拡大速度が大変高い。イギリスやフランスでは莫大な数の感染者が出ていて、、1日に20万人とかそのようなレベルにもなっていますから、、大変な数です。国の規模的にはドイツとあまり変わらないですし、、ドイツではそこまでの数になったことはありません。衝撃的な増え方です。その一方で、実験ウィルス学や疫学的な方面からは、重症化の傾向が少なくなっている、というデータがでてきて、それを裏付けるエビデンスの数も増えています。例えば、動物実験では肺へのダメージが少なくなっている、などというデータがあったり、、そうであれば勿論これは重症化とも関連性がありますし、それがたとえ人間ではなくて動物でのことであっても、です。疫学的な統計でも入院確率が下がっている、というデータがあり、つまり罹患してから入院するケースが少なくなっている、ということですが、例えば、予防接種を打っていない人がデルタ株に感染した場合と、予防接種をしていない人がオミクロン株に感染した場合とを比較すると、入院するリスクは4分3です。さらに、予防接種者でブースターもしていた場合には、入院するリスクは20%より低くなるわけです。

ということは、この高い感染力を持っても、、これは先生や、他の専門家も意見が一致しているところですが、、医療の逼迫は免れる可能性はある、ということでしょうか?少なくとも、今の強化された対策を続けていけば、といことですが。

そうですね。それはドイツのメリットでもあるでしょう。デルタに対する対策をしていたために、(オミクロンが入ってきても)初めから制限がある状態だった、というところで、ですね。特にデルタによる感染が酷かった地域もそうですが、1月に入ってもその効果は続くと思われます。拡大速度が遅いのはこのせいですが、それでも4日ごとの倍増、という速度は大変速いです。もし、重症化する確率が下がったのだとしても、、そこで下がった分は、予測的倍増のサイクル4日、1クールでもう追いついてしまうでしょうから、そこで何も得るものはありません。それよりも、これが何を意味するのか、ということをもう少し長い目で考えていく必要があるのです。この、病院の入院率、というものがかなり大幅に削減する、となっても、入院患者数は多いままだと思われます。ただ、それがどのような配分になっていくのか。多分、通常病棟と救急に集中すると思われます。そこから集中治療が必要になる人は少なくなるかもしれません。これはイギリスのナショナル・ヘルス・サービスが報告している状態と一致します。全体の感染者数の増加に伴って、総入院患者数も勿論上がりますね。しかし、そこから酸素吸入が必要になる人はそこまでいない。人工呼吸されなければいけなくなる人は減っている、ということです。病院での負担が別のところに移行した、ということになります。

そこからまた逼迫状態になる可能性がある、ということですね。別の分野で、ということで。

別の分野、というのがキーワードだと思います。負担は病院以外にも起こってきます。これから、入院率が下がって、全体の疾患経過が軽度になった場合には、政治的、社会的にも今までよりも高い発生指数を許容していく傾向に向かうでしょう。そうなれば、社会のなかで、職場などで、高い病欠率が起こることになりますが、ここから2つの影響が出てきます。まず、インフラが脅かされるリスクです。トラックの運転手が病気になれば、スーパーへ物資を運ぶことが出来なくなりますね。これは大変な脅威です。もう一つは、、これは大きな希望でもありますが、、これから国民の一人一人の意識に変化が起こって、、自分の知人友人、親戚、職場の同僚に感染者が出初めたら、、誰もが自然と気をつけるようになると思うのです。感染したい、と思う人はいませんからね。まあ、なかにはどうでも良い、という人もいるとは思いますが、、通常は感染するのを避けるでしょう。この自然と出てくる危機感が、このようなウィルス、、ここには感染数学的な理由があるのですが、、今日はそれについては割愛します、、このようなウィルスの拡大には個人の意識変容が大きな影響を与えます。

例えば、隔離期間を5日に短縮する、などをして、組織を維持していく。ドイツ、という組織全体を動かしていけるようにするべきなのでしょうか?

そうですね。意味はあるとは思います。これは自主隔離のことだと思いますが、例えば、感染後に、、症状が軽症であれば一定の期間後に検査して感染性の有無を確認してから職場に復帰する、ということはできると思います。感染防止対策、感染のチェーンを断ち切るための隔離では、、このウィルスはエンデミックに向かっているために重症化の確率は低いわけで、そのような場合には、全ての感染を断ち切ることは不可能、もしくは不必要になってきます。ここでも隔離期間の短縮は必然的になってくると思います。それをすることによって一部の感染が見逃されてしまうことになっても、です。この議論はもうかなり前からされていることで、、私ももう1年半前から言っていることですがまだ決断するには至っていません。もし、オミクロンが実際に、、ここでは、この「もし」というところが、まだ明らかになっていない現時点では重要ですが、、「もし」本当にオミクロンの疾患経過が軽度であるならば、、そのような方向に行くことになるだろうと思われます。

ラウタバッハ保健相が言うには、新設専門家会議、、先生もそのメンバーでいらっしゃいますが、、ここからまた新しい推奨がだされ、それに従って対策も強化されていく、されていくべきである、と。どのような心の準備をしておくべきでしょうか?

専門家会議の意見、というのを言うのは難しいです。これは多くの専門家からなる組織で、私はその中の一人でしかないので、、それでも、私の個人的な意見を述べると、、私は引き続き対策は不可欠だとみています。現時点ですでに対策を行なっている、という点は良いですし、これから明確なデータが出て来ればそれをもとに対策の改善、改正を行なっていけると思います。今できることは、状況の変化を予測して準備することです。それが今されていることで、これは別に専門家会議だけではなくて、行政レベルでも準備が必要なことは明らかです。接触制限も調整されなければいけなくなることは確かですが、接触制限の必要性は明らかでもそれを実際に実行することが、、常に容易ではないのです。

実行の容易さ、という面では、学校の閉鎖があると思います。またそのような必要性が出てくると思われますか?全国レベルで、ということですが。少なくても期限限定で1月に抑え込みを目的に、など。

それに関しては、私からはなんとも言えません。これは政治的な決断です。学校を閉める、というのは、単に学校というものを閉鎖するだけではなくて、それに伴って様々なダメージが起こるわけですから、、保護者が欠勤しなければいけなかったり、、など、そのようなことが起こることを前提でする対策で、かなり強いレベルのロックダウンに近い対策です。勿論、いままでの経験上、感染拡大を阻止する、発生指数を抑えるという点では大変効果がある対策であることは明らかですが、、犠牲も大きい対策ですから、これは、もし、オミクロンの疾患経過がやはり軽症ではなかった、ということが明らかになった場合などに、、行政が行う最終手段、ということになるでしょう。感染者が増加していった場合に、、ラボでの結果からもその傾向はもうすでにみられていますので、、1月ですでに感染者数が増えていくのがわかると思いますので、増えていくことは確かですが、確かではないのが、軽症なのかそうではないのか、とい点です。ここが決めてになると思います。

感染流行はどのくらい続く、、と思われますか?ドイツ国内でのオミクロン、ですが。

数学的なモデリング試算では、1月中旬から始まって、、3月中旬まで続く、と出されています。勿論、これは単なる計算上の期間です。ここには、対策などの影響は配慮されていませんし、行政がロックダウン対策に踏み切ったり、先ほども言いましたが、各自が危機感を持って行動様式を変えた場合には、毎晩大きなイベントに行かなくなったり、レストランに行ったりしなくなるでしょう。そのような個人レベルでの意識変化は時には政治的な対策以上の効果を引き出します。どちらにしても、この数学的な試算通りにはなりません。これはそうなる可能性があるシナリオの一つでしかありませんが、いままでの経験、そして常識的に考えて、、1月中旬から明らかになってくる問題と向き合い真剣に対処していって、、気温が穏やかになってくるイースター後には落ち着くようにさせていく必要があります。そのためには、疾患経過がどうなのか、というところを明らかにしなければいけませんし、もし、それが軽症ではない、ということになれば、、この前の冬、春と似たようなシチュエーションになるでしょう。とはいっても、今はあの時とは違って大きな武器、ワクチンというものがあります。オミクロンに対しても、ブースターによる効果は期待できます。2回の接種だけでは残念ながらそうではありませんが、、3回の接種では効果がありますし、クリスマスの前にすでにブースターによるデルタへの効果がはっきりとみられました。重症化が阻止されて集中治療が必要になる割合を削減しています。特に集中治療患者の削減は、モデリングで試算されていたものを大幅に超える削減でした。これはブースター接種が進められた結果です。これは、もし、(オミクロンの)疾患経過が軽症ではなかった、ということになっても、ブースターによって1年前と同じ状態にならなくても済むであろう、と思われるのです。

ブースターによって感染流行を終わらせることができるのでしょうか? ラウタバッハ保健相がそのような期待を述べていますが。

イギリスのような速度でドイツでも拡大するのであれば、、ブースターだけでは困難だと思います。もし、それよりも緩やかに拡がっていくのであれば、、そして、1月にさらに対策がとられるのであれば、、理論的には可能です。しかし、正直なところ難しいのではないか、と思っています。実際に、予防接種の技術的、ロジスティック的な面での限界というものがありますから無限に接種速度を速める、ということは不可能です。ですから、ブースターしか救いの道がない、ということではなくて、、後は、この点も考えていかなければいけないと思うのですが、、もし、本当に軽症ですむ、ということになったらどうするか、ということです。

どうなるのですか?終わりますか?

うーん、そうなれば、エンデミックに近づく、ということです。これは、これからもう2度と新しい変異株が来ない、とかそういうことではないですし、アップデートワクチンも必要ない、とかそういうことでもないです。アップデートワクチンは第二四半期に使えるようになるでしょうし、そして、それも必要になると思います。アップデートワクチンの接種は必然になり、この次の冬にも感染者の増加は起こると思います。そして、高齢者などのハイリスクにもう一度追加接種をしなければいけなくなる可能性も高いです。これからウィルスが進化的にどのように変わっていくか、ということはわかりません。デルタと再構成する可能性もありますし、そうなればデルタとのハイブリッドになりますから強くなりますし、もうすでに循環しているオミクロンでの変化が始まっていてさら強い免疫回避の傾向がみられます。ウィルスはまだまだ進化している、ということです。しかし、それと同時にブースターすることによって集団での免疫もどんどん安定していきます。勿論、まだ1回目の接種もしていない人たちを取り込んでいく、という課題も残っていて、これはドイツ特有の問題だと思いますが、、予防接種の穴を埋めていかなければいけないのです。ドイツには予防接種をしてない人が多く存在し、特に60歳以上は問題です。そのような人たちのリスクが大変高い。オミクロンでは特に、、大変リスクが高いです。先ほども言ったように、オミクロンはかなりの速度で拡がっていきますから、そのような人たちが感染します。そして、その人たちの重症化の削減はそこまで大きくないと思われます。軽症化は幸いなことに、未接種者、未熟な人たち、、免疫的に未熟、という意味です、、感染経験がない人たちですね、、そのような場合にも今でてきているデータによると、、若干の軽症化はみられます。しかし、残念ながらほんの少しです。ここがワクチンや感染による免疫を持たない人たちの問題です。

先ほど、たくさんの未接種者が存在する、ということでしたが、それは事実として受けれるべきことなのかもしれません。つまり、一定数の人たちは、どんなに説得しても、どんなにデータを並べても予防接種はしないと思うのです。どこ段階から、それを問題視する必要がなくなってくるのでしょうか? このくらいまで、集団での免疫が確保できたら、社会として、問題なく日常に戻ることができる、エンデミックな状態になる、と言えますか。

私は、オミクロンが短期間でそれを解消してくれる、という楽観的な見方はしていません。というのも、このオミクロンが別の血清型を持つからです。つまり、今、免疫を持たない人がオミクロンに感染した場合に、別のデルタなどの変異株に対しての免疫を持つかどうか、という点は不明なのです。ちなみに、デルタなどは消滅するのではなく引き続き同時に存在することになります。

ちょ、ちょっと待ってください。一つ良いですか。ということは、2回の接種をしてブースター、そしてアップデートを接種した場合には、2種類の免疫を取得することになるのでしょうか? デルタに対するものと、オミクロンに対するものと。

そのようになっていくでしょう。ラボのデータからもここでの違いは明らかです。さらに、オミクロンが他の変異株とどんどん遠ざかっていく傾向にあるのはアメリカで起こっていることを見てもわかります。今おミクロンに起こっている変異によってもっといままでのウィルスから離れていっています。ここから、私は新しい血清型が生まれつつある、とみていますが、これは他のウィルスでも起こることで別に特別なことでもなんでもありません。第二四半期にアップデートが出たら、それを接種しなければいけないことになると思います。しかし、それをすればかなりの広範囲での免疫がつくことになり、両方の血清型に対応したものとなるのです。しかしそれは、まだ1回も予防接種をしていない人には当てはまりません。これはドイツ特有の問題です。他の経済大国でここまで大きな未接種層がある国はありません。これは大きな社会問題であり、エンデミックへの移行を阻止し、そこから社会的、経済的な問題とダメージに繋がる深刻なデメリットとなるのです。なんとかして解決しなければ、、そうなります。そして、また次の冬に同じ事の繰り返しです。「イースターまで我慢すれば暖かくなるからそこでひと段落ついて、全員知らないうちに感染して夏には落ち着く」というようなことにはならないのです。もし、この未接種層が残るのであれば、また次の冬で同じ問題が起こります。ですから、ここをなんとか解決していかなければいけなくて、、政治は今、ワクチンの義務化の議論をしていますが、、勿論、これも一案でしょう。他にも別の方法があるかもしれませんし、私が思うに、未だに、無知からくる間違った情報が堂々と主張されていて、、それが予防接種をすることの障害となっているだけで、別に全体が過激化しているわけではないと思うのです。過激派はどんなに説得しても無駄ですが、その割合はそこまで多くないと願います。

正しい情報を発信する、という点では、、これは私の受ける印象ですが、、十分に行われてきた、と思うのですが。それとも、私の見方が間違っていますか?

正しい情報が常にそれを必要とする層にきちんと届いたか、ということだと思います。メディアのなかには不安を煽る情報ばかりを報道するところもあって、それを支持する層も存在しますし、もうかなり長い間、もう1年以上も特定の層が、反コロナ運動、「コロナは大したことはない」「パニックになっているだけだ」「騙されているんだ」と騒ぎ立てていて、何をどう考えて良いかわからなくなっている層も存在すると思うのです。そのような人たちが好んで使っている媒体を今一度見直して、そこから何らかのアプローチができないものか。というのも、これは本当に深刻な社会問題であり、経済問題だからです。

公共放送は、「不安を煽る側」として批判されることも多いです。私たちのところにもそのような批判が寄せられることもあります。

私はそうは思いません。公共の報道は、公の機関からの情報を報道しているわけで、中立的であり、時には対比するポジションの報道の場合もあります。先日、今のシチュエーションへの警告を解除するような意見も報道されていましたし、同時に批判的なトークショーもありますし、偏った報道、という印象は私は受けません。問題なのは、別のメディア、、例えば、大衆紙であったり、ソーシャルメディアですが、これらをコントロールするのは困難です。

先生は、先日、ツイッターで、、いわゆる、間違った免疫についての考えについて呟いていらっしゃいましたが、、

あれは、別のインタビューで聞いたことを引用したもので、、というのも、「免疫を高めれば感染なんかしない」というようなことをよく聞きますし、「Sars-Cov-2ウィルスに感染することによって免疫を強くすることができる」と言う人もいて、これは明らかに間違って認識されていることなのです。これがどれだけ間違った認識なのか、ということを明確に正すべきで、「免疫を強くする」とか、Sars-Cov-2のような危険なウィルスによって「免疫がトレーニングされる」とか、そのようなことが間違って理解されて人々に広まってしまっていることも、予防接種を拒絶する人が存在する原因にもなっていると思われます。

ウィルスに関しては、、まだドイツでエンデミックになるかどうか、ということは確かではありません。しかし、いつか以前のように、、前のような状態になる日は来るのでしょうか?

勿論です。エンデミックにはいつか必ずなります。重要なのは、そのためにどれだけの犠牲を許容するか、ということです。どれだけの死者を出し、そして、政治的にどこかで調整するのか。エンデミックになるまでにゆっくりと時間をかけるのか、それとも、免疫的に未熟な層を妥協して、感染させ、病院で治療して、助からない人が出てきても仕方がない、と受け入れるのか。エンデミックにならなければ、寒い季節に引き続き何度も何度も対策の制約を我慢し続けていかなければいけません。他の予防接種率が高いヨーロッパ諸国は、、特に高齢者の接種率が高い国はこれからエンデミックに移行します。勿論そうなっても、次の冬にこれらの国ではマスクをしなくても良くなるのか、というとそうとは言い切れませんし、引き続きしばらくはマスクが必要かもしれません。私は預言者ではありませんから、今後どうなるかは予言できません。もしかしたら、アップデートを打てば全て終息するかもしれないですし、ウィルスが弱くなっているかもしれませんし、、とにかく、このように接種率が高い国ではこれから何年も問題が続くことはないと考えます。しかし、ドイツに関しては、、残念ながらそうではない可能性が高いです。

先生は、SZのインタビューで、「イギリスは次の冬にはエンデミックになっているだろう」とおっしゃいました。しかし、イギリスはそのために大きな代償を払ってきています。高い感染者数と死者数、です。これが裏の面ではないのでしょうか? ドイツはその反対に大変慎重深く判断してきたために、今の状態にある、とも言えませんか?

勿論、これは裏の面ではありますが、国民への予防接種に対する説得に成功した国々、高い接種率を誇る国々というのは、、この場合はスペインなどの国です。イギリスは接種率から言うと、ドイツとそこまで変わりません。しかし、高齢者の接種率は高いです。死者はワクチンという選択肢が出てくる前に多く出ましたので、その点ではイギリスは政治的な大きな過ちを犯した、と言えるでしょう。第一波と第二波で、です。言っておかなければいけないことは、イギリスではこの秋にワクチンがあるから、といって、かなりはやい段階でほとんどの対策が解除がされましたが、それはするべきではなかったと思います。その時にも1日で200人レベルの死者が出ていて、それをかなり長い間許容していたことは確かです。それでも、ブースターの効果がデルタの流行の最後ほうで出てきて、今、オミクロンで再度感染者は増えているものの、死亡者の数は引き続き減少傾向にあるのです。これはブースター接種のおかげです。ドイツはまだ隣国レベルには達していませんが、、なんとか追いつくべきだと思います。

ドロステン先生、最後に2つ質問をさせていただきます。1つ目。中国です。2022年、約2ヶ月後に北京オリンピックが開催されます。中国製のワクチンはオミクロンに対して効果がない、とされています。勿論、いわゆる「バブル」のなかでの開催にはなるのでしょうが、それでも千人単位で選手や関係者が入ってきます。これをどうみていらっしゃいますか?

うーん、中国にオミクロンを運ぶのは別にオリンピックである必要ないと思いますし、、もうすでに入っているでしょう。オリンピックが始まる時には、十分な割合に達っしていると思われます。それよりも、トータルな面での心配をするべきです。中国では不活化ワクチン、つまり、死滅させたウィルスを使ったワクチンが接種されていますから、オミクロンにはほとんど効果はないと思われます。ただ、それプラス、mRNAワクチンを打てばかなり良い効果が得られる、というデータはあります。キャパ的にも可能だとは思いますが、そこまで速くはできないでしょうね。ですから、中国では接触制限が必要になるでしょうし、それが世界経済的な影響を与えると思われます。私は経済学者ではないので、、コメントはできませんが、どちらにしても、オミクロンが中国で大きな問題となることには間違いありません。

今までのお話を聞いていても、、、2022年もまだまだ「普通」な状態からは程遠いままである、という印象を受けます、、、

私は、、予防接種に積極的な人たちにとっては、、2022年は普通の日常が戻ってくる、と言えると思っています。ドイツ国内の移動は問題なくできますし、パンデミックはその人たちにとっては収束です。しかし、ドイツに未接種者層が存在する限り、引き続きそのような人たち、理解がない人たちへの配慮を続けていかなければいけなくなるのです。ですから、予防接種をしていてもある程度の接触制限は続きますし、次の冬にもまだマスクの着用を続けることになっても驚きません。しかし、いままでのように大きな負担が病院にかかる、ということはなくなります。

最後の質問ですが、もう年末です。来年、2022年の抱負をお聞かせください。今までお話していただいたこと以外で、もっとたくさんの人が予防接種を、ということ以外で、です。

そこが鍵、ですよね。勿論、これは奇跡の特効薬ではありませんから、基本的な対策があっての、話です。しかし、ワクチンなしでは、、アップデートなしではどうにもならないのです。このウィルスの感染拡大能力は高すぎます。ですから、これはドイツにとって、そして世界全体で、、アフリカでみられているような軽度の疾患経過であるように、、願います。そう簡単にはアフリカ全土で予防接種をすることはできませんし、不可能に近いことは自覚していますので、、アフリカでの軽症傾向が持続することを願います。

今日はどうもありがとうございました。


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