ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(32) 2020/4/16(和訳)
話 ベルリンシャリテ ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン
聞き手 コリーナ・ヘニッヒ
2020/4/16
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決断が下されました。 現時点では学校はまだ休校したままですが、2週間半後に、徐々に部分的に再開されていきます。 商業の一部での対策の緩和はされるものの、社会的距離、接触制限には引き続き制限があります。 国立科学アカデミー・レオポルディーナが推薦した内容、例えば、マスクの義務化案が、買い物時と公共交通機関利用時での着用の緊急要請、となる、など、若干違うかたちにはなりましたが、これらの対策について学術的な見解を、ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン氏にお話を伺いたいと思います。聞き手は、コリーナ・ヘニッヒです。
連邦政府、及び、連邦州で今後の対策が決断されましたが、勿論、これは政治的な決断であって、ウィルス学の領域ではないのはわかっていますが、専門家の意見もこの決断の際に考慮された、と聞きます。 先生も、このなかに入っていたのでしょうか。
いいえ、私は入っていません。 私はもう数週間前から政治には関わっていません。 新聞とかでは違うことが書かれていますが。 勿論、このポッドキャストを内閣府でも聞いているでしょうし、そういった面での影響はあると思いますが、今は、様々な分野の専門家が内閣府のアドバイザーとしていますので。 そうであるべきだとも思っています。
政治は、学校の再開を2週間後に徐々に進め、小売業には緩和の方針、しかし、マスクは義務化されませんでした。 これについてはどうお考えですか。
うーん、決断ひとつひとつに関しては、いうことはありません。 その分野の専門家ではありませんから。 勿論、数値があって、そのための対策が考慮されているでしょうし、疫学的モデル、、大体外国で計算されたものですが、、ドイツでも計算されたのか、、多分、されていると思いますが、そこで、学校のどの部分を再開すればどうなるか、という計算がされているはずです。 ドイツ国内の何人の生徒が、何学年にいる、という国勢調査データもありますし。 ヘアサロンの場合は、、難しいですよね。 どのくらいの人数が平均的に髪を切りにいってサロン内に滞在する計算になるのか。 他の分野でもそうでしょう。 ですので、大まかな全体的な対策のほうを考えたほうがいいでしょう。例えば、マスクの着用、など、、このポッドキャストでもとりあげましたが。 現実的に、改善はされつつありますが、十分な数のマスクがありません。 基本的な部分で、この状況についてどのように話し合われていくべきなのか、何を話し合っていくべきなのか、、、例えば、ヘルムホルツ協会でも、独自にシュミレートモデルが計算されて公表されていますが、そこでは、今行われている対策を強化して続けていった場合、ほとんど感染者の増加がなくなる、という結果がでています。完全に停止する、ということです。 これは、一つの方法でしょう。 もう一つの方法である緩和、をすれば、また感染者は増えます。 ここで、基本再生産数が増えますから、その状態からまた感染の停止状態に持っていくのは困難になっていきます。
基本再生数とは、1人が何人に感染させるかを示す平均値ですが、、、ヘルムホルツ協会がお話のなかででましたが、そこでは、3つのシナリオの議論がされています。 他のところでも、対策の度合いは、軽度にする、全くしない、厳しくする、もしくは、厳重な対策、となっていて、基本再生産数を長期間に渡って1以下に保つ、これは、1人が平均的に1人以下に感染させる、ということになりますが、勿論、理想的なのは、できるだけ長期間に渡って、この状態が保たれることです。 どのくらいの期間で、1以下の状態が続かなければいけないのでしょうか。 学校などを再度閉鎖しなければいけない、などの状態を回避するためには
私が知る限り、数ヶ月、ということですが、これは現実的でしょう。 しかし、こちらのシナリオは選択されず、現時点では、数値の維持を図り、追加される対策によってそこから少し抑えていく、という方向に向かっています。ここを明確にすることが重要だと思います。一番危険なのは、いままでの対策の効果が十分でてきたので、ここで緩和しよう。もう(対策に)うんざりだし、様子をみればいいじゃないか。なんとか、なるんじゃないか。という考え方。 これは、公衆の声として聞かれますし、政治家からも聞こえてくる声ですが、、一度よくなったら、もう悪くならないのではないか、と思われているようです。ぶり返さないだろう、と。 しかし、これは疫学的なモデル計算で出てくる結果ではありません。 いままでの対策を緩和した場合、それに替わる対策を追加しなければ、これからでも制御不可能な状態になる、ということなのです。 これは、ドイツでもとても現実的だと思います。 今、少しだけ対策を緩和、ほんの少し緩和した場合、感染者の増加をぎりぎりのラインで抑え、そこで稼いだ時間を、本当に効果がある対策の準備にあてる。 例えば、自動感染追跡システム、などに
携帯トラッキングシステムなどですね
トラッキングシステムも、すぐに広範囲で完全に機能しなくてもいいと思うのです。 例えば、追跡は人間がするけれど、そこにデジタルの補助的な要素が加わる。その導入には時間がかかりますので、その移行期間というものが必要でしょう。 そのための時間を稼ぐことができると思いますので、これは希望が持てることです。 勿論、他にも希望が持てることは、マスクの着用の要請、この対策によっても効果がでるでしょうし、小さな希望としては、季節の影響もあるでしょう。 季節の影響は残念ながら見込めない、という論文の結果はありますが、若干の影響はありますので、ここでまた感染速度を遅くすることができるのはないか。 そして、夏が終わって、秋に入り、冬の次の波が来るころには、製薬分野で進歩があり、例えば本当に効果がある治療薬ができて、ハイリスク患者に使える、ワクチンの効果の臨床検査がはじまる。 これが、今、描いている希望的な全体像です。
途中で少し静かな時期がある、ということですね。 季節の影響、ということをおっしゃっていましたが、、人々が室内より外にでる機会が多くなることによる密接度の現象、気温が上昇、湿度も、、関係がありますか。
何の影響なのか、、はよくわかっていません。 湿度、、たしかに冬のほうが湿度は高いですが、室内は暖房によって大変乾燥しています。 乾燥は、飛沫の乾燥を促しエアロゾルになる確率を上げますが、夏は野外にいることが多くなる。 これは、重要なファクターだと思います。ですので、一般の人たちが、正確な状況の理解をすることは大変重要だと思うのです。どのように、感染するか、ということの。 感染のメカニズムを正確に理解することが大切です。 窓をあけることはいいことです。 人が集まる際に距離をとることも重要です。 教室内の密集度が高いのであれば、じゃあ、クラスごと、外に出よう。そのようなこともできるでしょう。 これは、もちろん、学校の対策方針の推薦ではありませんが、笑 実行できることの例です。 感染経路の一つとして、エアロゾル感染がありますから、それを防止するために、空気の循環と、それに伴うエアロゾル濃度の希釈、です。
これは、学校でも重要ですね。 州によっても、モデル計算がされていて、具体的な対策が考えられていますが、例えば、1クラス15人、など。 実行できるかどうかはまた別として、理想的には、1クラス15人で、机の感覚を1、5〜2mとり、窓を開けて換気して、数時間外に行く。 研究や論文などからの見解からみると、15人か30人かでは感染に大きな違いがでるのでしょうか。
私自身の研究などではそのようなことは調べていませんが、他の文献から読み取ると、そのようなことは、良い効果をだす可能性が高いです。 勿論、一番効果がある方法は、、、全員が家にいることです。疫学的にみると。しかし、そのようなことは、社会的、現実的にみて不可能です。
先ほど、少しマスクについてふれましたが、このポッドキャストでも何度も詳しく話題にしています。 しかし、まだ自分でつくった布マスクについては話し合っていませんでした。 どのように考えると良いのでしょうか。 政治的には、スーパーと公共交通機関でのマスクの着用を推奨していますが、義務にはなりませんでした。 私がスーパーに行く際に自分でつくったマスクをすれば、周りへの配慮にはなりますよね。 手で触らずきちんと洗って、濡れたら乾かせば
それで正しいと思います。勿論、正しいマスク使い方については、いろいろとありますが、、、基本的には、自分でつくった布マスクは、、悪くないと思います。 勿論、基準や、検証論文は、医療用のマスクサージカルマスク、手術の際につけるようなタイプのマスク、でのもので、このタイプのマスクについては、研究や検証がおこなれていて、周りへの感染防止の研究結果がでています。 もう一度言いますが、大きな飛沫はこれによって口から飛ぶことがブロックされ、それよりも細かいエアロゾルもとまります。 これについては、新型コロナウィルスでの研究論文もでていますし、かなり説得力があるものです。 ここからみても、公共の場で全員がマスクを着用する、ということについての考慮は正しいと思います。 そこで、これを義務化するか、それとも、要請するか。 その点の議論になると思うのですけれど、義務化した場合は、勿論、その義務が果たせる環境にしなければいけないわけです。そのためにはマスクが必要ですが、マスクは足りません。 本当にマスクが必要な医療現場との市場競争になっては絶対にいけません。
衛生について、です。このポッドキャストでも話題にしましたが、医療機関での防護服などの不足が問題になっています。 昨日、ハンブルク大学病院が発表しなければいけない状況に追い込まれましたが、腫瘍学病棟で、患者と介護スタッフが感染してしまいました。これは、何か、他の国から学ぶなどして回避できたことなのでしょうか。それとも、防護設備の問題なのでしょうか。
院内感染の問題点に関しては、承知の通りですが、初期の段階での発見は、むしろ良いことで失敗ではありません。 今回はすぐに公表されましたが、これを、例外的な扱いをするべきではありません。 病院ではこれから、同じような問題が発生するでしょう。そして、それを解決していかなければいけません。そのために、病院衛生学、という専門の独立した分野があるのです。院内感染の対策には、院内感染の初期発見が大事です。 これ自体には、批判する点はなどなく、どのように対処するか、ということが重要で、外から入ってくる患者を検査する。 院内では、通常の環境よりもウィルスが多いわけですから。 そして、スタッフの検査をする。 ウィルスは外から入ってくるのか。それとも、院内で循環しているのか。 まず、院内で、患者との接触があるスタッフは全員マスクを着用する。 患者にうつさないようにする配慮です。これは、ほとんど全ての病院で実行されています。 そして、この原因を追求することは可能なのか。 これは、例えば、院内のウィルスをシークエンジングして、それが、いつも同じウィルスなのか。 それとも、毎回違うウィルスで、外から持ち込まれているのか、ということを調べる。 ここで、対処の仕方が変わってきます。 もし、毎回、外からウィルスが入ってくるのであれば、入院する患者を全員検査しなければいけないでしょう。 それが、院内のスタッフ間で循環しているのであれば、そこでの対策が必要になってくるでしょう。 マスクの着用、スタッフの検査、 今の時点では、それがわからないので、病院でそれぞれ状況をみて判断しなければいけない。 どのくらいのウィルスがその地域で循環しているのか。 これも、地域差がありますし、例えば、ミュンヘンなどの大都市では、ウィルスもたくさんいますし、検査される人数も多いです。それに対して、ドイツの東のほうで、まだ感染が進んでいない都市では状況が全く違います。
先ほど、ウィルスの配列をシークエンジングして、どのウィルスなのかを調べる、とおっしゃっていましたが、今現在、そのような検査をする余裕はあるのでしょうか。
そのような検査は大まかにもできますから、シャリテでもしていますし、他の大学病院でもやっています。 ここでは、全ての感染経路のチェックをしなくてもよくて、全体像が把握できればいいのです。 ウィルスが外からくるのか、院内で循環しているのか。 この大まかな把握です。
いままで、このポッドキャストでも批判的な意見もとりあげる約束をしてきましたが、いつもその前に新情報などが入ってきてなかなかできませんでした。 その中で一つとりあげたいのが、、死亡率、です。SNSで流れている批判的な意見は、死亡者に、直接的な死因がCovid-19の人と同時に、間接的な死因がCovid-19のひとも統計的にカウントされているのはおかしい。この場合は、ウィルスがどのくらい死因に影響を及ぼしたのか、というのがわからない。ということですが、これは、正当な批判でしょうか? たしかに、風邪で死亡した場合も、死亡診断書には、インフルエンザ、とは書いていないわけですよね。
この議論の論点が、、、よく理解できません。 直接的でも間接的な死因といっても、重要なのは、この患者がどこで亡くなったのか。 既に入院していたのか。 基礎疾患があって、入院中に院内で感染したのか。 このような場合は、ウィルスがその人の直接的な死亡の原因ではないという傾向はあるかもしれません。でも、よくわからないでしょう。 この場合は、ウィルスの検出をするだけではなく、肺炎になっていたのか、それとも喉でウィルスが検出されたのか、というところの検査もできます。 病状が進んでないのであれば、そこまで影響はなかったはずで、他の原因で死亡したのではないか。 ウィルスを持っていた、というだけで。しかし、そこまでの結論に達することは難しいと思うのです。 勿論、検査はできます。肺か喉か、死亡してからでも検死で可能です。 しかしそれを、どんな医学的な目的のためにするのか、ということです。 ここで、この患者は、本当に死んでしまう状態だったのか。それとも、ウィルスが原因だったのか。 そして、それを防げたのか、防げないのか。 このあたりの背景を前提に推理しはじめると、、結局、現実は、そこまでひどいことではなく、全て大げさだ、と、一括りにされてしますかもしれません。
そこです。
高齢者患者の数件をとって一般化できないでしょう。勿論、高齢で基礎疾患を抱える人たちはこのウィルスで死亡する高いリスクを抱えています。 この場合は、間接的に死亡した、とするのも正しくはないのかもしれません。誤解を招きくでしょう。しかし、 ここでは、2つの要素が混合されてしまっていると思うのです。一方で、一見医療的に聞こえる、直接的死因、間接的死因、を掲げながら、そこから、社会的な、政治的な議論になっていく。この背景には全く違う要素が隠されています。 私たちは勘違いをしているに違いない。状況の何かを見逃して、把握は大げさで、実際にはそこまで酷くないはずだ。そんなことのために経済がダメージをうけるのは間違っている。 ここにつなげるのは、私はとても危険なことだと思います。 このような場合、とても注意深くみていかなければいけません。 この議論はどこに行くのか、と。このように考えるのは正しいのか、と。そして、このような考えからイタリアで何かを変えることができたでしょうか。ニューヨークで。同じような状態になりかけているその他のアメリカの大都市、そしてイギリスで。 何かの助けになったのでしょうか。何かを変えたでしょうか。今の緊急事態の際に、距離対策などの行動原理を課す際に、何かを変えることができたのでしょうか。
暫定的な、風邪のパンデミックの際に計算されるような、超過死亡率はでているのでしょうか。 普段の死亡率よりも、そのくらい増加したか、という数値ですが、、まだ時期的にははやいでしょうか。
何度も繰り返して言いますが、この新型コロナの場合の死亡率は、超過死亡率ではありません。 そして、超過死亡率は様々な分野でまだわかりません。 様々な分野、というのは、様々な地域、ということです。 このウィルスは、地理的にクラスター化しています。 感染濃度が高い地域もあれば、低い地域もあります。超過死亡率をだすためには、小さな地域で調査しなければいけないでしょうが、比較ができるようなデータはなかなかありません。 いくつかのシナリオはみたことがあります。 そのことに関しては今、ここではお話はできません。そのためにはきちんと読んで準備をしなければいけませんから。 しかし、そのような都市での比較のデータはみたことがあります。 そして、このウィルスのそのような効果は大きです。 勿論、このような見方をすることもできるでしょう。 新型コロナに比べて、季節的なインフルエンザの致死率はどうなのか。ここでも、新型コロナのほうが高い致死率です。
致死率、とは、把握された感染者数で、未把握数は入っていないものですね。
致死率とは、感染したと確認された人数中、何人が死亡したか、という割合です。ある程度の期間でみなければいけません。 感染してすぐには死亡しませんので。 インフルエンザとの比較をするのであれば、年齢層を同じにするなど、で数値の比較をしなければいけませんが、その際に、全く異なる数値がでることでしょう。 インフルエンザの致死率のほうが低いはずです。
最後に、お聞きしたいことがあるのですが、これは、基本的には政治的なことですが、学者の視点からも、みることができると思うのです。 それは、トランプ大統領の脱退を警告したWHOに対する批判です。 前の回でも取り上げたことはありますが、全ての回を聞いていないリスナーもいると思いますので、もう一度お聞きします、このポッドキャストで、先生が、初期のパンデミックである、と発言された際に、WHOはまだ躊躇していました。 どこが、決定的な判断の違いなのでしょうか。
私は、一個人として、見解を述べることができます。 それに、賛成することもそうではないことも、ありです。それだけの権威がある、とみるか、みないか、馬鹿なことを言っている、と思うか。それも自由です。 しかし、WHOの場合は、全く異なる影響力があるのです。国連も関与していますし、パンデミック宣言というのは、状況の把握だけではなく、PHEIC、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態、という事になるからです。これは、国際的な健康規約の最終地点です。 ここには、隣国との関係にも影響を及ぼします。 これらの要因が、時間的な遅れに現れたのだと思います。 勿論、専門家委員会はあります。WHOは、国際組織なので、委員会での決議もされないといけません。 そこで、では、また来週に集まりましょう。それまでシチュエーションをみていましょう、と。このような過程があるので、国の決断よりも遅くなる。 これが、後からみたWHOへの評価です。 ここでも、純粋な政治です。 そして、ドナルド・トランプの決断です。WHOが鈍かったから、お金、拠出金を払わない、と。 感染ケースが目立ってきた初期の時点では、もうすでにアメリカにはたくさんウィルスが持ち込まれていたわけで、、そして、今、世界全体でのパンデミックですが、パンデミック、というのは、かなり世界全体に進んだ危機状況の判断からの宣言であって、一国内の状況判断とは無関係です。 自国で(感染が)はじまっているのであれば、そこで、決断するか、しないか。 これしかないでしょう。
そして、WHOは、国際的な資金問題もあるでしょうし。 最後に、国内の高齢者、ハイリスクグループになるわけですが、その層について。 高齢者のウィルスに対する姿勢に差があると感じています。 私の母親は、数週間前から、人混みをさけてスーパーにもいかずほとんど外にでません。 たまに外の空気を吸ったりはしますが、それ以外は家にいてマスクを縫っています。 私の友人の母は、こっそり外出していたようです。 先生の周りではどうでしょうか? ご自身のご両親は? 以前に、お父様は、エムスランドの田舎で、彼の友人も全く危機感がなかった、とおっしゃっていましたが。 それは変わりましたか?
私が聞いた限りでは、現在、危機感を持って暮らしているようです。良い傾向でしょう。 私はこのようなことは地域ごとにみることにしています。 統計をみると、ああ、隣の地域ではもうかなり感染者がいるんだな。 じゃあ、こちらにも来るかな。 今、対策の効果が出始めて、感染速度にブレーキがかかってきていますが、地域での感染濃度の差はいまだにあるのです。このような拡散プロセスは、どのエビデミックにもあります。このようなことを明確にすることが大切です。 今現在、地域にかたまった感染状況であることは、バイエルン、バーデン=ヴュルテンベルク、ノルトライン=ウェストファーレンを比較してみると明確でしょう。この地域とその他では、かなりの差があります。 感染が多い地域に、はやくに、多くのウィルスが持ち込まれたからだと思われますが、これも、時間とともに全体と混じっていきます。
このように、全体の立体的把握をしての理解が必要だと思うのです。 これは、スペイン風邪からの教訓なのですが、、、、今、私たちは初期の段階で、地域別な感染区域があります。その地域にウィルスが持ち込まれたので、そこでは、高い致死率です。 感染に気がつき、そして、封鎖しよう、と。接触制限もしよう。 広範囲にわたって。 このウィルスの感染速度からみると、完全に封じ込めることは難しくでも、速度の減速は可能だろう。
そして、感染があまりなかった地域ではどうなのでしょうか。 国内での感染が食い止められつつあるなか、ニュースでは、ガラガラの集中治療室の様子が流れます。 医師たちが、重症者のためにベットを用意したが、誰も来ない。 全く、判断が間違っていた、と。 しかし、この考え方は、、浅いと思うのです。 スペイン風邪で起こったことは、、、こうです。 アメリカの大都市、、この記録はきちんと残っているのですが、、大都市ではじめに感染がはじまりました。 どこでも同じように広がったわけではなくて、場所的にとても偏っていました。 とても感染濃度が高い場所と、ほとんど感染者がいない場所とがあったのです。 その当時も、外出制限や似たような対策をとりました。 因みに、スペイン風邪も春に始まったのですが、そこから夏に入り、そこで季節的な要素が影響して、一旦落ち着いたようにみえたのです。 これは、私たちの場合でも想像できることですが、現在の社会的距離対策によって、知らないうちに地理的には満遍なく感染が進んでいます。 そして、スペイン風邪が、冬にもう一度再発した時には、、、状況は一変していました。 感染は、あらゆる地域で同時にはじまったのです。ウィルスが、知らないうちに全体にひろがっていることに気がつかなかったからなのです。 この現象は、ドイツにも起こりうることです。 完全に外出制限と旅行制限をしているわけではありませんし、感染がまったくおこらない、という状況でもありません。 今の再生産数、Rは、時々、1以下になっているでしょう。しかし、これは、全く感染がおこっていない、ということではないわけですから。 私たちの研究所、シャリテのHPをみていただけるとわかるのですが、、、そこに、ドイツのウィルス配列のシークエンジング結果が載っています。 そこで、ドイツ国内のウィルスが、それだけ混じっていっているか、ということがわかると思います。 地域的なクラスターが、解けていき、全体に拡がっている。 混じっていっているのです。 それをみてとることができると思います。
ウィルスは、次の週、次の月、そして、夏にかけて、ドイツ国内全体に拡がっていくでしょう。 現在とられている対策をもってしても、均等に拡がっていきます。そして、冬にはいると、全く別のシチュエーションになるでしょう。 今、対策をやめましょう、ということになれば、地域別の高い感染区域、ノルトライン=ウェストファーレンとその周りの感染がほとんどない地域との差が縮まっていきます。 そして、突然、同時に感染がはじまる。 この時の勢いは、全くの別物です。
このリスクについては、まだあまりはっきりと自覚はないかもしれません。 コントロールされた感染をしようと試みたならば、、コントロールしながら全体を感染させていく、といった、、これは、急斜面を高速で、、、たまに飛んだり、ブレーキをかけたり、カーブしたり、、しながらも、なんとかなるだろう、、と思って滑っていく。しかし、いつか、限界がやってきます。 そこに達してしまうと、もう、普通の対策では太刀打ちできません。 そうなると、、、もう、何もできなくなってしまうのです。 そのようになってしまったところの例でみることができますが、、タンク車が道路を消毒し始める、など、心理的な効果しかない対策しか成すすべがなくなってしまうのです。そのようなことも考えなければいけません。 ここで強く嘆願するのではありませんが、、、エピデミックの裏では変化が起こっていて、それを止めなければいけない、ということです。
対策をうまくやればやるほど、集団免疫に達するまでの期間は長くなる。 パラドックスにも聞こえますが、根気よく辛抱するしかないですね。
もしかしたら、喜ばしいサプライズもあるかもしれません。 例えば、今の時点では、子供に関することがあまりよくわかっていません。 とても、系列立てて研究されている論文でも、この部分が抜けていたりするのです。 他のコロナウィルスの感染症、特に、MERS感染症の場合、子供にはほとんど感染しないことがわかっています。ここで、今回の新型コロナの場合、子供は、病症が軽症であるだけではなくて、何らかの免疫をもっているのかもしれない。 もしかしたら、全体の集団免疫に入れないくてもいいのかもしれない。だとしたら、全体の70%とはどのくらいだろう。 子供の割合である20%は配慮しなくてもいいのだろうか。、だとしたら、全体の50%が集団免疫なのか。この不明な部分に大きな希望は持てます。 そのほかに、もう一つ。 これは、すでに疫学的なモデルでも計算されていることですが、もしかしたら、風邪のコロナウィルスでの背景的な免疫ができている層がいるかもしれない、ということ。 SARS-2と他のコロナウィルスは少し似ていますから。 もしかしたら、そのような風邪コロナウィルスにここ1〜2年の間に感染した人に、知らないうちになんらかの防御システムができているのかもしれない。 この分野については、日に日に新しい事がわかってきています。 先日も、プレプリントで、中国からの論文が発表されました。ここには、とてもよく観察された、家庭内での第二次感染率が示されていますが、それが、とても低い。 12〜4%くらいです。 少し、修正したとしても、15〜17%です。どちらにしても、50〜60%といった、偶然かもしれない数値ではありません。 感染した家族はそのときに家にいなかったのだろう、などという。 どうして、家族内に感染者がいたのに、うつらなかったのか。 もしかしたら、背景的な免疫があったのかもしれません。
あとは、不安の要素もあります。今の段階では、これらを、シュミレートモデルに入れて計算しても、まだまだ、医療システムに過度の負担がかかる結果がでるのです。 ですので、対策をしていることは正しく、大変重要なことです。 これから、多くのまだはっきりしない問題を解決するべく、研究を重ねていかなければいけません。 例えば、子供はどうなのか。 重症にならないだけで、家族に感染させているのか。それとも、なんらかの免疫があるのか。 その他にも、答えをみつけなければいけない問いはたくさんあります。 どうして、家庭内では、比較的低い感染率なのか。この辺りのことは、だんだんとわかってはきています。 新しい中国の論文をはじめ、他の研究でも結果がでています。 ミュンヘンケースのなかでも、少しだけこの辺りの片鱗はみえます。 もう少し丹念に分析してけば、もしかしたら、自覚がない、背景的な、もしくは、部分的な免疫のデータがみつかるかもしれません。 しかし、このことも、いままでしてきた事が間違っていた、ということにはなりません。 この効果があったとして計算しなおしても、やはり、今、感染の暴走を防ぐ対策は必然です。 しかし、どのくらいの期間続くのか、という点に関しては、これらの新しい情報は有益でしょう。 あと、数週間、か数ヶ月後に、科学的な新情報が入り、感染の終息がはやめにくるような効果がわかるかもしれません。まだ、今の段階では言えませんが。 といっても、もうすでにいろいろとわかっているのに、公の場で言ってはいけない、ということではなく、これらは、基本的な考慮事項なのです。 まだまだ、このウィルスについては、わからないことが多いのです。 この毎週増えていく知識によって、計算にも影響がでていきます。
わからないことが段々わかっていく、ということは、悪いことではないですよね。 日常の観察、例えば、5人家族のなかで、2〜3人しか感染しない、といったことも、今後の研究に役にたつかもしれませんね。
その可能性もありますが、そうである必要性もありません。その後の段階で他の家族も感染してしまうかもしれませんし。 そのあたりはわかりません。
今日もどうもありがとうございました。 この収録を始める前に、昨晩、膨大な数の論文を読んだ、とおしゃっていましたが、明日も少しお時間がとれますように。また来週よろしくお願いします。
ベルリンシャリテ
ウィルス研究所 教授 クリスチアン・ドロステン
https://virologie-ccm.charite.de/en/metas/person_detail/person/address_detail/drosten/
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