ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(49) 2020/6/16(和訳)

ベルリンシャリテ ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン
聞き手 コリーナ・ヘニッヒ

2020/6/16

————————————————

政治面でかなり大きな動きがあります。ドイツ連邦政府は、ワクチン開発に協賛し、コロナアプリが用意されました。夏休みの後には、、学校も通常に再開される予定です。科学の面でも新しい知見はあるものの、まだはっきりとしないことも多く、もちろん、結果を出すためには様々な方向からの検証が必要です。それが研究の基本でもありますが、今日もコロナウィルスの全体像を作るべく、さらなるモザイクのかけらを集めていきたいと思います。 年齢が上がるについれて変化あるのでしょうか。感染の頻度の変化、子供と大人の感染力の違い。そして、ウィルスがどのように細胞内に侵入するか。このようなテーマについての新しい知見が発表されましたので、今日も、ベルリンのウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン氏にお話を伺いたく思います。聞き手はコリーナ・ヘニッヒです。

昨晩から、コロナ接触追跡アプリがやっとダウンロードできるようになっています。 計画よりも何週間も遅れましたが、、、、もうダウンロードされましたか?私は今朝、早速ダウンロードしましたが。

今朝はまだ時間がとれませんでした。というか、携帯が死んでいたので、、、充電しなけれいけませんでした。

では、これからダウンロードですね?

もちろんです。この後すぐにダウンロードします。

このようなアプリの効果については、数週間前にすでにテーマとしてとりあげました。オックスフォードのクリストフ・フレーザー率いる研究チームによる論文でしたが、国民のアプリでの協力体制に関するアンケートの結果がいくつかでています。やはり、60%が気軽に、「もちろん、やります」とはいかなく、こんなものは意味がない、今やっても仕方がない、という意見の人も多いようです。しかし、使用率60%というのが、オックスフォードの研究チームが割り出した、アプリが(対策としての)効果が発揮できる目安となる割合でもあります。 それについてはどのようにお考えでしょうか? 今現在の低い発生数の際でのアプリ導入には効果が期待できるのでしょうか? そして、あまり多くの人が参加しない場合、例えば、10人に1人とか、その場合には、感染者の追跡や発見の確率は低くなってしまうわけですよね。

この発生数が低い今の時点だからこそ、このような接触トレーシングをしなければいけないのです。これは、基本的な対策を緩和していくなか、このような接触トレーシングを使うことによって、発生数を抑えるためにかなりよい効果を得ることができる手段でしょう。統計報告でもみることができますが、トレーシングが機能すればするほど、秋冬までの期間を乗り越えることができるのです。トレーシングアプリが重要な理由は、感染伝播の速度が速いために、通常のトレーシング方法では把握するのが遅すぎて間に合わないケースが多いのです。電話での調査が始まるところから、、、もうすでに多くの時間が失われてしまいます。もしも、アプリをダウンロードする人数がたとえ少なかったとしても、全体からの割合がそこまで高くなかったとしても、それでも多くの場所で決め手となる違いは出てくるものと考えられます。

個人一人一人で、ということでしょうか、それとも、再生産数を1以下に持続する、という意味での効果でしょうか。

そこが私が言わんとするところで、、、私たちは現在、再生産数を低いレベルで保てていますが、その低い発生数をさらに低く押さえ込んで感染がクラスターにつながらないようにする。クラスターの把握とは、クラスター内の感染ケースを迅速にみつけることです。この感染者はどこで感染したのか。ということは、接触を遡っていく調査でも重要な点です。

ここで夏にむけてですが、、、アプリ、マスク、距離、、、といった対策は、全てハイリスクグループを守るために実行しているわけですよね。ハイリスクとは、高齢者をはじめ、若くても喘息、心臓疾患、または肥満の人たち、ですが、ランセット誌に、モデリング研究の論文が掲載されました。それによると、世界中の5分の1がCovid-19で重症化するリスクを持っている。Covid-19感染症の臨床的な病症についてはかなりわかってきてはいますが、まだまだ全てが解明されたわけではありません。特に長期間渡る影響、完治後の後遺症もあることから、さらに、ウィルスがどのように体内に侵入するのか。という視点での研究は重要です。これまでにも、ウィルスの殻上のスパイクタンパク質に結合する酵素、ACE2受容体については話題にしてきました。この尖った部分、コロナウィルスの名前の由来ともなった部分ですが、ACE2はこの部分、鍵部分にはまる鍵穴です。研究チームが、2つ目の鍵穴、つまり違う受容体が重要な役割をはたしているのではないか、ということをみつけだしたようです。ニューロピリン1というものですが、これはどのような受容体なのでしょうか?どこにありますか?

そうですね、、まず、言葉を選ばなければいけなくて、、、ここでは受容体、という言葉は使わないで、重要なさらなる宿主因子、と言ったほうがいいでしょう。いまのところ、そういうことにしておかなければいけない理由は、まだ、この分子、ニューロピリン1が本当にウィルスを受け取るかどうか、ということが不明だからなのです。そのような結果がみられる実験はありますが、ウィルス学のなかでは他にも宿主因子はあって、たとえば、補助受容体と呼ばれるもので、これは、直接的なウィルスの侵入にはならないものの、ウィルスを細胞上でつかんで、本来の受容体の近くまで導く。これが根本的なしくみです。 これに関しては、今、プレプリントの段階での論文が2つあり、、、これらが公に発表されることはかなりたしかですが、、この、2つの研究チームが、お互いに独立したかたちで同じ結論にいたっています。ここでは、ある広範囲によって体内にある分子、それは、細胞内、特に肺の表面、鼻の細胞、そして、副鼻腔にもあるものですが、そこで、この分子、ニューロピリン1、これを使った実験がおこなわれました。このニューロピリン1はあらゆるタンパク質内のタンパク質モチーフと結合する性質をもっていますが、これは特にウィルスに特化したかたちをもっているわけではなくて、他の受容体分子で頻繁にみられるような、ウィルスの進化過程でここに適応してきたものではありません。SARS-2ウィルスの表面にはSARS-2特定のタンパク質モチーフがあって、これが他のSARSウィルスやコロナウィルスのものとは異なるモチーフなのです。 この遺伝子発現はある一定のタンパク質配列がこのパターンとモチーフによって可能なので、モチーフであるフーリン開裂部位、つまりアミノ酸パターンには長い間注目されていました。この遺伝子発現は、多くの風邪ウィルスや高病原性鳥インフルエンザ、その他にも表面分子を使うウィルスの多くにもみられることです。そこには、プロテアーゼ開裂部位があり、ここでタンパク質を処理する酵素がタンパク質に切れ目をいれます。この開裂部が、遺伝子発現には必要です。 これは、表面タンパク質ですので、このタンパク質の役割は、細胞に近づいたり、受容体と結合する際に、このタンパク質の一部が自由に動けるように、その変化を促することです。この機動性がタンパク質が切り取られる過程の前提です。こう想像してもらえればよいでしょうか。工作用の画用紙にミシン目がついてて、まずはそこから切り離してから使う、と。ハンペルマン人形のようなものをつくるとして、そのかたちを画用紙からミシン目にそって切り離すことができる。ウィルスのタンパク質もそのような感じです。機能するためには部分的に動くようになっていなくていけません。このミシン目は、様々なかたちになっていて、旧型SARSウィルスとSARS-2ウィルスの間には大きな違いがありますが、この追加されたミシン目がフーリン開裂部位なのです。

ということは、ニューロピリンとACE2は、協力しあわなければいけない、ということですね?結合の際に、ということでしょうか?それとも、ウィルスの細胞内での増殖ですか?

ニューロピリンとACE2の間で何らかの協力体制があることは、まだわかりませんし、ここで重要な点ではありません。そうだとしても不思議ではありませんが、しかし、このニューロピリンが特定のタンパク質のパターンを認識するのではないか、と言われています。それが、このミシン目部分、フーリン開裂部位です。このフーリン開裂部位を持っているタンパク質、因みに普通の細胞代謝にもそのようなタンパク質はありますから、それがニューロピンで結合されるのです。これは、特定の成長因子の機能が拡大する為にも重要なことです。血清によって流れてくる成長因子は間質細胞に行き、細胞の周囲ですね、そして、ニューロピリンを持つ細胞と接続し、シグナルを発動させます。これは、例えば、細胞の成長や毛細管内皮細胞の情報などです。ここで、このウィルスはここにフィットしようとするわけですね。まずは、ACE2ではないところ、本来の表面分子で、本来のウィルスの受容体であるACE2ではないところにくっつくのです。この二つの研究で著者は、このACE2との結合がもっと重要で、確実な方法だとしています。ACE2なしだとあまりうまくいきません。しかし、ウィルスのなかには、この(ACE2ではない)受容体、ニューロピロンだけでも侵入することが可能であることがわかってきました。とはいっても、あまりうまくはいきませんので、これだけでは、ウィルスは流行に発展する病原体にはなり得ません。しかし、このニューロピリンを追加的に使える事によって、特に上気道での粘膜での決定的な変化につながったことで、このSARS-2ウィルスが、どうやって上気道での感染がしやすいウィルスとなり、最終的にはパンデミックな病原体になることができたのか、という説明にもなるかと思われます。

もう一度お聞きしますが、ウィルスの細胞内の増殖とは関係あるのでしょうか?

勿論、増殖サイクルと関係があります。細胞侵入は、増殖サイクルのなかで一番重要な段階のひとつですから、それが、より効果的になり、ウィルスが細胞内に入り込みやすくなるのです。細胞に付着する手段が増えた事によって、1時間毎のウィルスの数が多くなる、とも言えると思います。

二つ論文があると言いましたが、一つ目は、ブリストルで、もう一つはミュンヘンのもので、様々な研究者との共同研究です。このなかで、どうやってウィルスが中枢神経に運ばれていくのか。ということが研究されていますが、いままでも、病症として、嗅覚と味覚の欠如が報告されています。このことからもこの方向にいくであろう、ということは予測できますが、ここでのニューロピリン1の役割とは何なのでしょうか?

このニューロピリンは鼻の嗅覚上皮の表面に多く存在します。そして、嗅球、嗅球は脳の一部で頭蓋骨内の軟骨にありますが、そこの小さな穴のあいた部分にある嗅覚繊維束からウィルスは中枢神経にはいこむことが可能です。この中枢神経から場合によっては脳まで入り込む、ということが、このニューロピリン受容体、私も受容体、という言葉を使ってしまいましたが、、、これによってもっとやりやすくなる、ということです。

これは、治療薬の研究にも影響がありますか? この過程を阻止する方法を検討するなど。

そうですね。基本的には、このようなウィルスが細胞内に侵入するリスクゾーンについての新しい知見は医薬分野の目標につながります。ライブラリー、つまり、候補となりうる成分のなかから、成分分子をつくり、スクリーニングし、このウィルスと細胞の相互作用を妨害できる成分を検討します。ひとつ忘れてはいけないことは、ニューロピリンのような分子は、細胞の基礎的な細胞状態と普通の身体の機能にも必要なものだ、ということです。ここでのメリット、デメリットのバランスを考えるのは常に必要で、この相互作用を邪魔した場合、通常の代謝機能に影響はでないだろうか、ということを常に考慮する必要があります。 それに関しての結論はこの研究ではでていません。まだ入り口に立ったばかりで、現時点では、基礎的な研究で新しい相互作用が認められ、今後の研究するに値すると認識された、というところですので。この研究では、モノクロナール抗体しか検査されていません。ここから掘り下げていって、抗体より小さな成分、抗体よりも表面にたどりつくことができる成分などのの検査や研究もされなければいけないでしょう。まず生物化学的、分子生物的な研究、そして、動物実験による副作用の有無を確認する研究もされなければいけません。

人工的な抗体はどうでしょうか?基本的に、受動免疫についてはここでもテーマにしたことがありますが。

そうですね。これは今現在選択されている基本的な方法ですが、ニューロピリンや相互作用部だけではなく、モノクロナール抗体によるACE2への受容体結合や、表面タンパク質、ウィルスに直接作用する部分に対するアプローチですね。この分野での研究はたくさん行われていて、このなかで期待ができる抗体がいくつか発見され発表されています。

今日は、別の大きなテーマにもふれていきたいと思いますが、これはもう何度も取り上げているテーマではありますが、子供、です。現在、ドイツでは、夏休みの後には全員学校に行く方針です。今週、それに関してのガイドラインが決められる予定になっています。 私もそうですが、先生にもお子さんがいらっしゃいます。このポッドキャストでこの話題を取り上げるのは、子供を持つ親の為だけではなくて、感染流行、パンデミックの経過のなかで重要な点だからですが、この年齢と関係性がある過程に関してはまだ決定的な答えがでていません。どうして、このテーマが全体的にみてもこんなに重要なのでしょうか。

現在、ドイツでは、大きなアウトブレイク、スーパースプレッディングイベントを阻止する、という明確な目的に集中しています。これについては何度もお話しましたが、ドイツでは、接触制限をはじめとする対策の成果がはっきりと現れている今、事実上、落ち着いて、大きな感染伝播クラスターを阻止することだけに集中できる状態です。このまま注意深く持続できれば、秋と冬もこのまま第二波が来ることなく乗り切れるのではないか、と期待できるくらい、現在は良い状態です。 巷では、第二波が来るか、来ないか、という議論がされていますが、結局行き着く結論は、全て我々次第である、というところです。第二波は、来てしまったら為す術もない、というような天災ではなく、今の状態からはコントロールできるものなのです。
心配するの声もよく聞くので、ここで、比較をあげますが、、、アメリカをみてもらいたいのです。アメリカでは、ブラジルやインドのように(感染状態が把握できずに)手探り状態なわけではなく、透明性もあり、通知機能の欠如があるわけではないのにも関わらず、あのような状態になっています。アメリカには積極的な通知システムがあるのです。アメリカの半分の州は、ドイツのように比較的長く接触制限があった、もしくは部分的にまだあり、州によっては未だに接触制限があります。アメリカでは、感染のブレーキをかけはじめるのが大変遅かったので、もっと長い期間での制限が必要だったのです。気づくのが遅すぎました。しかし、州のなかには、比較的早い段階での緩和がされしまっています。これは明らかにブレーキを解除するのがはやすぎで、発生数がまたすぐに急増しまいました。ドイツのように、緩和の影響を静かに見守る、というような状況とは全く違うシチュエーションです。ドイツでは現時点で、新しい感染者数はほとんど増えておらずとても良い状態ですが、アメリカは残念ながらそうではありません。緩和から2〜3週間の待ち時間が経った現時点で、新しい感染ケース数が急上昇してきています。最初の発生数のピークを間もなく超えることが予測できるような展開です。社会的にもとても大変な状況です。ドイツと同じように、もう誰もロックダウンなどしたくありませんし、経済的なダメージが大きい広範囲におけるロックダウン政策には戻りたくないのです。"The hammer and the dance"のhammerの部分ですね、そこに戻りたくなるのはわかりますが、どうして、ダンスがうまくいかないのか、ということを考えなければいけません。どうして、うまくいかないのでしょうか。確実に言えることは、スーパースプレッディングイベントを効果的に阻止するために不可欠な条件、発生数をかなり低いレベルまで抑え込む、ということをしなかった、ということでしょう。発生数を低く抑えることができれば、背景でおこる個別の感染ケースをあまり重要視しなくてもよくなり、アウトブレイク現象に集中することができます。このほうが効果的であり、一度に多くの隔離対策もとれるのです。ただ、この対策は、保健所が感染伝播クラスターを発見し追跡できる、ということが前提でできることなので、そのためには、クラスター数も少なくなければいけません。
ドイツでは、この達成された成果を出来るだけ長く持続することに努めなければいけません。夏の効果もこれからあるでしょう。しかし、秋に入るとまた大きな変化があります。学校や保育施設がまた全面的に再開されるからです。学校の再開は、社会的に不可欠なものである、という認識で誰もが一致しています。今は、試運転と前準備段階だと言えるでしょう。まず、とりあえず再開してみて、その後にどちらにしても夏休みがくるわけですし、たとえ、何かがうまくいかなくても、その際には、危ない、危ない、もう少しで大変なことになるところだった、とりあえず、夏休み中にもう一度どこが間違っていたか考えないど、と深呼吸しつつ分析ができます。そのような大変な状況にあと数週間で突入するかもしれません。ならないに越したことはないですが、、、これも部分的には確率であって、起こるか、起こらないか、というのは統計的な偶然とも言えるのです。しかし、考えてみてください。安易に捉え、9月に全州が一斉に通常のクラス運営をしはじめたとしたら。低学年の子供達が距離対策を守れるわけがありませんし、マスクを常に着用することも無理です。ここで重要なのは、これが何を意味するのか。その為に、ポッドキャストの数回をこのテーマに割いてきたのです。

そして、また今日も話したいと思うのですが、先ほど、他の国についてのお話がでました。理想的に考えて、私たちがしたくないのは、学校のオンオフ、です。つまり、学校を再開させて、また閉鎖する。 そうではなくて、可能な限り、どのような対策が学校の通常運営に必要なのか、ということを明確にする。この大きな複雑な問題のなかの答えのひとつであろうと思われるのは、子供達のウィルスに対する感染親和性、つまり、どのくらい感染しやすのか。無症状者が多い為に、この点はまだよくわかっていません。そして、感染した場合の周りへの感染性はどのくらいあるのか。これに関しては様々な研究がありますが、そのなかでイスラエルからの論文があります。陽性確認された600世帯での調査です。これは、確率的なモデルで分析で、ラボで誰が誰に感染させたか、などという検査はされていません。どのくらい確実な方法なのでしょうか。

これは、純粋な疫学的な研究で、ここで調査されたのは、誰が世帯内で一番初めに症状がでたのか。そして、次に誰がいつ症状がでたのか。そこから、誰が誰に感染させたのか、という伝播経路をだします。そこから遡っていくと、特定のカテゴリー、、、例えば、子供ですね、どのくらいの子供が感染したか、どのくらいの子供が感染させたのか、ということもわかります。かかりやすさと感染性の関係性の比較です。つまり、ウィルスをもらう過程と、放出する過程です。

これはテルアビブの郊外で、ブネイ・ブラクというところです。ここはとても人口密度が高い地域ということもあり、少し特殊です。正統派のユダヤ人が多く住み、大家族で子沢山な家庭が多いのですが、そのような特殊な環境の調査で、私たちのシチュエーションとの比較はできるのでしょうか?

この大きな世帯環境だからこそ、研究対象として適しているとも言えるかもしれません。勿論この調査も、時期的にはロックダウン中に行われています。多くの国がそうだったように、イスラエスでもそうでした。ということは、子供達は学校や幼稚園に行かずにいた。たしか、初めの頃の短い期間中はまだ学校が開いていた、と書いてあったと思います。しかし、基本的には、この論文も他の論文と同じように、残念ながら、この人為的因子、影響因子の下で調査されている。つまり、子供が学校に行かずに外での接触が閉ざされた状態、感染は世帯内でしかおこらない。子供達は家にいますから。つまり、ここでの調査は世帯内調査です。しかしここで、興味深くなってくるのは、世帯内の子供の人数が増える、ということは、統計的、もしくは平均値的に、学校での状況に近くなっていく、ということなのです。そして、ここでの調査対象には実際に子供がたくさんいる家族がたくさん入っています。子供が10人いる家族もいるくらいです。勿論、それは少数派で、2人世帯も多く入っていますが。しかし、少なくとも、子供が大勢いる家族が調査対象となっている、という点では比較状況に近づけることができるのです。

どのくらい感染しやすいのか、という問いに対してと、どのくらい感染性の違いが子供と大人にあるのか、という問いに対して、様々なデータがでています。順を追って話していったほうがよいかもしれません。まず、、子供は、大人に対して45%ウィルスにかかりやすい。これが、この研究からでた結果のひとつですが、これは期待していた数値ですか?

正直いって、、、私は子供に関するデータに、、何か期待をする、ということはありません。データは、多くの場合、単純に調査結果をまとめたものですし、ドイツでは、子供はかかりづらいようだ、という結果もでてますが、それはそれ、これはこれ、です。データのベースとしているのが、血清有病率だったり、PCR検査だったり、症状からだったり、、。 しかし、この全てのデータに必ずある欠陥。それは、ロックダウン中の調査だ、ということです。ロックダウンなしでできた調査期間はほぼありません。中国ですら、始まったのが春節の休み中でしたから。 クリストフ・フレーザーは世界的な疫学モデリングの専門家ですが、彼がもとめたものによると、このシチュエーションの調査が可能だった期間は、世界中で僅か2週間の間だけだったであろう、と。これは誰のせいでもありませんし、私たち科学者はそれでもなんとか集めた知見をもって、様々な種類の問題の解決策を模索するしかないのです。そして、結果はまだ確定していません。過去に話題にだした、チャン研究チームの論文がサイエンス誌に掲載されました。ここでも、伝播状況が調査されていますが、パンデミック前とその後の世帯内感染と二次発病率とを結びつけています。ここでは、純粋な数値的には、子供は大人と同じような発病率であったものの、子供のほうが全体的に(大人よりも)接触機会が多い、という事実に基づく確率的な修正をした結果、子供のほうが大人よりも感染しづらい、という解釈がされています。これが、このイスラエルの研究にも当てはまり、ここでも著者は、子供は大人にくらべると45%の発病率である。これは、大きさとしては中国の研究とだいたい同じ規模です。当時、これはとりあえず私の仮説です、と言いましたが、この子供は発病率が(比較すると)低い、ということは、私が私のウィルス量の論文を発表した時点でも言っていたことです。同じ日にこの(中国の)論文についても話していたかと思います。その時点から、私の見解は変わっていませんが、このような形で違う研究での検証がでてくることはとても興味ぶかいことです。 しかし、次の段階ではもっと違う視点から感染性をみていく必要性があると思います。子供からの感染はどうなのか。これに関しても、私のウィルス量研究で比較はしていて、ここでは、統計的な数値としてではなく、ざっくりと計算すると、子供、特に幼児では少しウィルスが少ないのではないか。それから、もっと細かい統計計算をして再分析したところ、この違いを検証することができました。その量はだいたい、2分の1log、つまり、約3分の1のウィルス量です。これはウィルス学的にはほとんど差はありません。ウィルス量と病症に関しての経験値からみてみても、2分の1logの違い、というのは、少しだけ(その差について)注意してみはじめる、くらいの差ですし、通常では臨床的にはほとんど(差として)注目されません。私は自分の研究論文のなかで、この比較が意味するところの解釈に関しては他の文献の分析を踏まえながら詳しく明記していて、比較は香港でのインフルエンザの世帯調査のデータを使いました。そこで出した結論は、もし、ウィルス量に違いがあったとしても、その差は20%以下で止まるであろう。つまり、一人の子供が10人に感染させるか、9人に感染させるか、というレベルでの差です。この違いから、政治的な決断はできない、ということは誰もが直感的に感じるところではないかと思います。私の意見は、とにかくかなり少ない差だ、ということです。
興味深いことは、このイスラエルの論文の著者が、子供は、モデル計算の結果、たぶん、大人とくらべると85%の感染性を持っているだろう、と述べているところです。ここでも、数値的な差がでてはいますが、大人は平均的に10人に感染させ、子供は8、5人に感染させる。簡単に言うとこうです。 さて、ここでの疑問点ですが、これは重要なポイントでしょうか? そこまで重要な違いなのでしょうか?ここでは、この決断は社会と政治にしてもらうのがよい、と言っておきます。科学者には、別のことを聞くべきです。例えば、学校を再開する、ということは、子供のためにも、保育のためにも、仕事を持つ親のためにも、不可欠なことであることは明確です。たとえそこにリスクがあったとしても再開しなければいけません。そうなったときに、科学者に、どうすればよいのか?科学の力を使ってリスクを下げることはできないか?という助言を仰ぐことができると思います。それに対して、科学者は具体的な案をだせるでしょう。勿論、方法はある、と。例えば、検査分野であったり、他の対策の面であったり、です。このことについて、今、政治は検討するべきなのです。 学校を再開するか否か、ではなく、どのように学校を再開すべきなのか。秋冬に向けて、大きなアウトブレイクに繋がらないようにする改善案です。学校全体を隔離するのではなく、学級ごとに閉鎖するのも理想的です。

研究のなかに特別な観察部分がありますが、1歳未満の幼児の発病率が1〜4歳児の幼稚園児よりも低かった。これはどのように説明できるのでしょうか? 他の風邪ウィルスなどの交差免疫でしょうか?

さまざまな説明があると思います。ここで著者がはっきりと断言しているかどうかは疑問ですが、、、しかし、説明となるモデルはあって、生後10〜12ヶ月で、母体抗体による受動免疫はなくなるので、1歳から定期的に風邪を引き始めます。つまり、胎子が母親から胎盤を通じてもらったもの、、、これは母体から抗体が移行する能動的な濃縮プロセスですが、、この母親からもらった抗体は一年くらい持続します。そして消滅します。そこから、風邪をひくようになるので、子供のグループ内には風邪のウィルスはたくさん蔓延しています。交差免疫が作動して感染しづらくなる、SARS-2感染症にかかりにくくなる、ということは大いに考えられます。
これも、年齢が上がるにつれて風邪を引く機会も減り、この抵抗力が低くなり、感染しやすくなる、という説明にもなるかと思います。そうかもしれません。しかし、この反対の検証結果もでていて、例えば、小さな子供がいる親たちがSARS-2ウィルスに感染しづらい、ということは立証できていません。幼児は常に保育施設から風邪をもらってきますので、親も常に鼻風邪ぎみで、実際に頻繁に風邪のコロナウィルスの感染をしているわけですから。このようなことからも、そこまでの説得力はないかもしれません。 もしかしたら、全く別な理由があるかもしれなくて、交差免疫ではなくて、その反対に、風邪コロナウィルスの抗体が症状を悪化させる可能性もあります。この危懼は、特に獣医学分野での実験とワクチンの経験からされていることです。人間ではまだあまりよくわかってはいませんが、人間も一応、、動物ですから。その可能性も無きにしも非ず、です。
つまり、ここで考えられることは、全く違うことで、風邪コロナウィルスから出来た免疫は感染から守るのではなく、感染しやすくするのではないか。それだと、子供はまだあまり感染経験がないので、感染しづらい、という説明にもなります。しかし、乳児は母親からもらった抗体があり受動免疫がありますから、かえってリスクが高くなり、感染率が高くなる。年齢があがるにつれて、接触したコロナウィルスの数も多くなり、背景にある免疫が増えていくので、発病率を高める抗体の背景的な有病率が多くなる。これは、反証はされていない、逆仮説です。この事に関しては、疫病学者、もしくは、実験ウィルス学者はまだまだ研究を続けなけばいけませんし、私たちもまずは、この段階で一旦おいておかなければいけないでしょう。説明ができませんから。しかし、これは、大変興味深い観察で、残念ながら両方ともそれぞれに説明がつく仮説でもあります。
ここで、ほとんど全ての疫学的な研究にあるように、この論文のなかの不明な部分に目をむけましょう。たぶん、まず、違う観察から話したほうがいいかもしれませんが、国民の感染伝播状況の変化についてですが、、まず、このような調査研究、世帯、家庭内調査では、感染している世帯をみつけ、研究対象としなければいけません。どの研究でもそうですが、そのためには、家族のなかの誰かが検査されなければいけないわけです。しかも、検査にも遊びで行くわけではなく、症状が出たから検査に行くわけですよね。ということは、対象となっている世帯のなかに症状がでている感染者がいる。因みに、この研究では、まず、症状が出た人が検査され、そこで陽性反応がでたら保健所が世帯に出向いて行って家族全員が検査されています。PCR検査です。血清検査はされていません。よく調査された研究です。
他の研究では、基本的に症状がでている患者だけが検査されてい場合が多いのですが、この研究で特に優れているところは、世帯内の全ての人が検査されていることと、子供の数が多い世帯が入っているところです。もっとも、これは基本観察で、まず、症状が出た人がいて、保健所に行き検査をする。ここで陽性だったら、家族全員を検査する。それだけです。そうではない世帯は調査対象から外されます。 しかし、大人は80%症状がでますが、子供は大体20〜40%くらいですから、確率的に、大人から感染がはじまるケースが調査対象となっていることは避けられません。
ここには、2名だけからなる世帯が150入っていて、この世帯も統計に入っています。この地域の住人が殆ど正統派ユダヤ人だ、ということを考慮すると、この2名の世帯、というのは、二人の高齢者、おじいさんとおばあさんの世帯であると思われ、シングルマザーやシングルマザーと子供、ではないでしょう。このようにもうすでにこの時点で、大人間の感染伝播に関しての研究に偏りがでていてます。

子供はただの追加的な認識、ということでしょうか。

そうかもしれませんが、そうだとしてもこれは大変良い研究です。しかし、偏りがある結果であることは念頭におく必要があります。他にも指摘されるべき点は、、、これは、この研究チームがモデリングの研究チームであって、調査を直接した研究チームではないために、元となるデータに関しては著者はどうすることもできない、ということはありますが、、、症状に関する情報です。大人に関しては問題ありません。陽性反応がでた大人の88%に症状がでていました。これはアンケート結果です。このなかには軽症者も含まれます。あっていると思います。子供に関しては、少し変な部分があって、、、PCRで陽性反応がでた子供たちのうち72%に症状が出ていた、というところです。これは多すぎます。子供たちが見逃されてしまったのではないかと思うのです。こんなに多くの子供を検査して、、、512人の陽性がいた場合、そんなに多くの症状が出ている患者はいないはずです。

どのくらいの割合で子供に症状がでるかはわかっていますものね。

そうなのです。この場合に親が子供の症状を誤認したとは考えられないので、この512人という数が少なすぎると解釈します。多分、PCR検査で、陽性の子供が見落とされたのでしょう。どうしてそのようなことが起きたのか。それは簡単です。この世帯内調査では、調査に何週間もかかっています。2〜3週間の間、調査対象となった世帯は検査を受けていました。私たちがすでにわかっているように、子供たちはウィルスを喉に持ってはいますが、大人と同じように1週間後にはもうすでの喉にはないのです。しかも、多くの子供のデータを見る限りでは、数日後にもうすでに大人比べても少ないウィルス量になっている。つまり、ここのケースの多くは、まずは大人に症状がでて検査に行った。その時には、家族内の子供にも軽症の症状がでていた。そして、これを見逃した。大人が検査され、その後に(家族全員が)検査されるまでには少なくても7日から10日が経過していた。もしかしたら、もっと経っていたかもしれません。はじめに感染していた子供たち、症状がでていたことも考えられますし、保健所に、症状があった旨を伝えたかもしれません。どちらにせよ、全員検査されたのです。しかし、PCRの結果は陰性でした。

ということは、見逃した、というのは、外見からの、ではなくて、技術的な見逃し、ということですね。

検査診断的な、見逃しです。子供たちがはじめのころ、感染していた可能性はあります。しかし、保健所がきた頃にはもうすでにPCRは陰性だった。ウィルスが喉になかったからです。もし、この際に検便されていたら、、、、
先日、Emerging Infectious Diseases誌で韓国の論文が発表されたのですが、そこの研究で、大人の場合と同じように、ウィルスが便のなかにかなり長期間に渡って排出されることが明らかになっています。このことは、以前に、ネイチャーに掲載されたミュンヘンクラスターでも述べました。因みに、便には感染性はありません。PCRで検出されるだけです。イスラエルの子供たちを検便で検査したとしたら、多分、全く違った調査結果がでたのではないかと思うのです。私が推測するに、、、どちらにせよ、数値は似たようなものですが、、大人と子供の感染感受性は似たようなもので、感染性においても似ているのではないか。そうではないか、と感じるところで、客観視することはできませんが。私の経験と、この数を見る限り、、、ここでは、数だけをみているわけでも、病気についての知識がなく言っているわけでもないです。 排泄速度もわかっていますし、どの時点でウィルスがどこに分布しているかもわかっていますし、このような世帯調査がどのように行われるかもわかってますし、時間的なずれが生じることも、いつ何が検査されるか、ということも、わかっています。それを全てわかった上で一つ一つをつなげていくと、、、私の全体的な印象は、喉からのウィルスの採取だけでみると殆ど違いはないだろう、とことです。ここでは、検便からの検査もできたでしょうし、血清検査も可能だったでしょう。しかし、この調査期間が2〜3ヶ月、ということを考慮すると、、、、検便が一番適していると思われます。 子供の場合、直腸から採取ができます。綿棒をおしりに入れるのですが、子供は殆ど気がつかないですし、痛くありません。鼻からや喉からの検体採取よりも確実に泣く可能性が低いでしょう。これは、このような研究に推奨する方法で、将来的に心がけるべきです。この方法をとっていたら、結果は全く違うものだったでしょう。
一つ言っておきたいことがあるのですが、ヨーロッパで唯一、学校を閉鎖しなかった国がありますが、スウェーデンです。因みにこれは正しい判断ではありません。勿論、スウェーデンでも高等教育過程はロックダウンがありましたが、小学校や保育施設ではありませんでした。それでも、常にクラスの半分は病欠、家にいた、という話も聞きます、低学年でも、です。しかし、スウェーデンでは、子供があまり重症化しない、という理由で、無防備に放置する方針でした。子供にとっては鼻風邪のようなものですから、そのことについては、深く考える人はいませんでした。今、他の国々で反射が起こっていて、今、子供に何が起こっているのか。1つ目の反射は、まずは、抗体をみてみよう。というものですが、問題は、大人と子供の抗体を比較する調査はまたしても、ロックダウンの環境下で行われたものですから、学校は閉鎖されていて、世帯内感染しか起こる機会がありませんでした。調査でわかることは、世帯内での感染伝播状況のみです。
子供たちが家にいて、他の子供たちとの接触がない状況のなかで、大人は買い物にも行きますし、仕事にもいくでしょう。そこで、その前に旅行先や知人友人関係ないで感染した人たちとの接触もあるわけです。そして、でてくるのが、この血清有病率の比較です。大人の抗体保有率は、もしかしたら、子供の倍かもしれない。このような状況では、これは何を意味しているのか?という問いに対しては、わからない、という答えしか出せないのです。ここからは解釈のしようがありません。子供たちは感染するチャンスが与えられていなかったのですから。しかし、スウェーデンでは違いました。スウェーデンでは、子供たちは、同じチャンス、と言っていいのかよくわかりませんが、、、、先ほども言ったように高等部は閉鎖されていましたが、その他の学年は感染するチャンスはありました。そして、血清有病率に関する調査はよく行われました。因みに、スウェーデンの疫学については弁護したいと思います。気の毒なことに、今、アンダース・テグネルは個人的な批判を一身に受けていますが、、

疫学者のトップですね。

これはたった一人見放された酷い状態です。政治側からも、です。彼は科学者として一人で決断したわけではないのに、です。多分、彼自身は何一つ決断していなくて、助言しただけでしょう。それなのに、たった一人で背負って責任を問われる、というのはフェアじゃありません。 勿論、かなり勇気のある決断だったと思いますが、独断ではなかったはずです。私たちのようなドイツの学者も同じですが、単独で政治のアドバイザーを務めることはありえません。それは常にグループで行われて、同時か、、同時の方が多いですが、、もしくは、別々に政治家に相談されます。ドイツでもそうでした。また話を戻しますが、アンダース・テグネルの研究グループはとても素晴らしい疫学的な調査をしていますし、スウェーデンの応用疫学のレベルは高いです。ですので、ここでの研究データも素晴らしく、他のヨーロッパの血清有病率研究のように学校閉鎖という影響もありませんし、常にこのような血清調査につきまとう他の問題、例えば、自発性、という問題もありません。血清有病率の調査では多くの場合は志願者でおこなわれます。これは、まずは倫理的な面では良いことではあります。強制的に採血を迫るわけには行きませんから。血清調査では血が必要です。

抗体、ですね?

そうです。抗体です。問題は、、自発的に検査を受ける人、というのは、結果に興味を持っている人、ということです。その人が興味を持っている理由、というのは、以前に症状があったなどして、感染していたかどうかを知りたい。若しくは、知人に感染者がいて、知らないうちに感染してしまっていたかもしれない、という疑いがあるなど。そのような理由で、抗体調査に志願するわけです。もし、全く感染症と関係がない場合は、興味もありませんから、検査をしてもらおうとは思いません。これが、志願者をベースにした血清調査の問題点で、国民間の有病率が高く見積もられてしまう原因でもあります。スウェーデンではその点がとてもうまくカバーされていて、ここでは志願者、ということではなく、人口統計学的に、世帯、都市、が選ばれて、全体の縮図になるような調査対象が選ばれました。ここでは、抗体検査を行いますのできてください、というような公募がされたわけではなく、まず、世帯に電話がいき、この世帯が選ばれましたので検査に行ってください。ここで、行きたくない、という意思表示をしても勿論問題ありません。もし、参加を拒否された場合は、人口統計学的なリストから違う世帯が選ばれる、というわけです。つまり、検査したくない、と言うこともできますが、調査対象は志願ベースではなく、偶然に選ばれたグループなのです。そのような調査がスウェーデンで行われました。もうすでに、短期間のうちに3つの調査期間で、です。結果は、いままで行われた調査のどれよりもよく、通常の状態での抗体有病率で、人口統計学的にも説得力があります。
スウェーデンで、スウェーデンらしい、ロックダウンをせず、学校も開けたまま、という状況下ででた結果は、、、、血清有病率は、65〜95歳、病気にいろいろと罹っている年齢層ですが、2、9%。ドイツでは平均はこれよりも少し低いです。しかし、スウェーデンでは、この年齢層を直感的に感染から守りました。広範囲な成人層、20〜64歳が6、5%。これは、かなりドイツよりも高い数値です。ここには、2つのメッセージがあるでしょう。1つ目は、ここではかなりの広範囲での感染がおこった、ということ。2つ目は、それでも、集団免疫からは程遠い、ということ。つまり、スウェーデンのコンセプト、集団免疫を5月末までに習得する、というのは、これを楽観的にみてもよいものかどうかは疑問です。ちなみに、調査期間は5月11日〜17日です。この期間に検体が集められました。1週間という短い期間でありながら広範囲の全体の把握がされ、そして、今、それが分析されてまとめられました。驚くべきことは、大人の6、5%、そして、0〜19歳が7、5%だというところ。大人よりも高い。

といっても、そこまで高くはないですね。

そこまでの違いではありません。そうだったらもっとよかったと思いますが(笑い)それでも少なくとも、(大人よりも)少なくはないので。他の研究調査での、多くのエラー因子の影響はどこまであるのか、というところが大きな問題点で、疑問点でもありますが、(そのような調査では)常に子供のほうが低いです。場合によっては、大人の半分です。ここで出たデータからみていくと、たしかに、このエラーの影響は大きくでているようです。スウェーデンのように丁寧な分析をする国のデータはこうなのであれば、いままでとは全く違う像が出来上がりますが、私たちは常に、環境状態の知識も考慮して考えなければいけません。そうしないと、文字が読める誰もが勝手に学術的な論文を持ち出して直接決断に変換してしまうことになる。これはもっともされたくないことです。私たちに必要なのは、実践的な科学的な経験と業務経験として状況の認識です。ここで残念ながら言わなければいけないことは、、、ここまで説明したことは私の業務経験から述べていることですが、それを持ってしても、このシンプルなスウェーデンの調査結果をみてからは、夏休みの後に制約なしで学校を再開することに対して批判的に考えざる得ないのです。ドイツはスウェーデンとは違う、という理由がどこにもありません。そしてスウェーデンでは、、、高等部には部分的な学校閉鎖があったにも関わらず、疫学的には血清有病率が子供の方が大人よりも少し高かった。どうして、(大人よりも)感受性が低く、感染性も低い、と言えるのでしょうか。勿論、接触機会は学校では多いです。それはわかってます。そしてこれを取り上げるわけにもいきません。私たちの目的は学校の再開なのですから。

ということは、さまざまな面から年齢別の感染感受性、感染性とウィルス量をみてみると、、、先生の研究、韓国の研究、そして、さきほどの研究。結論的には、子供と大人の違いはほとんどない、ということになるでしょうか。

そうです。ウィルス量からみてみても、もうそのような結果がでているのは私の研究だけではありません。いくつかの研究で、同じ結果が出て検証されています。比較だけした場合には、例えば、韓国の論文では子供のほうがウィルス量が大人よりも多かったりするのです。この要因はあまり追求する必要性はないと思いますが、ウィルス学者的には、ウィルス量のデータの結果は目から鱗だったのです。他の臨床ウィルス学者も同じことを感じることと思います。数人の統計学者が、こう言いました。このデータから感情をつくってはいけない、分析方法の精度が重要だ、と。それは勿論大切でしょう。しかし、認識は変わりません。全て、用心深くしなければいけない、という警告に繋がっています。ここで、学校を再開してはいけない、と言っているわけではありません。学者が言いたいことはそんなことではなくて、、、私もそんなことを言ったことはありませんし、その正反対で、学校は社会的な理由からも開けなければいけません。しかし、これもしっかりと目を開いて注意深く行わなければいけないのです。つまり、科学的手段に用いて状況を対処し、早期のアウトブレイクを発見する必要があります。そして、最後にもう一度言いますが、、、ロベルト・コッホ研究所の状況報告は1週間に一度、グラフック月で最新情報が発表され、そこで、年齢別コホートでの新しい発生数が比較されています。ここで見ていかなければいけない点は、年齢別に変化してきているところはあるのか。先週では、20歳まで、つまり、子供とティーンエージャー、生徒たちですが、この年齢層が発生数の20%を占めていました。それ以前では全く違う割合です。3月のはじめから中旬まで殆ど直線的に増加してきていることがわかります。とても低い数値から現在の20%まで、です。この20%というのは、この年齢層の全体の人口の割合でもあるので、感染流行の初期には、真ん中の成人層が多かったのが、その後に高齢者層に広がり、、これは介護施設のアウトブレイクでしたが、抑え込むことができました、その背後で増えてきているのが子供の発生数なのです。今、人口的な割合も同じ割合の20%ですが、この傾向が今後も続くのかどうか、注意深くみていなければいけないでしょう。現在は人口割合と同じくらいですので、発生数内のウィルスの拡散運動が終了した、ともみれます。子供たちの発生数は人口割合相応ですが、これからもこの傾向が発展していくならば、割合以上の子供の発生数になるでしょう。そして、その状況のまま秋に学校が再開される。

まずは、夏休みですよね。学校を再開することによって発生数が増えることは避けたい、とおっしゃいましたが、州によっては、学校を通常に再開しているところもあります。それと同時に、週末には大きなデモもありました。反人種差別運動のデモで、今のタイミングでしか開催できない、ということですが、どこでもマスクが着用されていたわけではありませんでした。マスクをしながら大声を張り上げる際には難しいですし。ウィルス学者として、この2つをみた際に、新しく感染者がでないといいけれど、、、でることを覚悟しなければいけない。

勿論です。特別な経験はしていませんが、色々な文献からも、屋外での感染率は低いです。しかし、あれだけの大人数が1箇所に集まっている、という状況では違うでしょう。勿論、感染伝播の機会がつくられます。幸いなことに、現在ドイツでは低い発生数ですので、そのような集会に一人も感染者が含まれない、という可能性もあることはあるでしょう。これは確率、そして希望でもある、ということを忘れてはいけません。ドイツの発生数は実際かなり低いので、、大きな集会が危険だ、ということとは関係なく、、危険であることはたしかですし、それは言うまでもないことですが、、それでも、何もなかった、ということは考えられます。ウィルスがいなかった、という点で。

とうことは、これから数週間、希望を持って今後の経過をみていかなければいけない、ということですね。また来週、さらなるパズルのピースを集めていきたいと思います。今日もありがとうございました。



ベルリンシャリテ
ウィルス研究所 教授 クリスチアン・ドロステン

https://virologie-ccm.charite.de/en/metas/person_detail/person/address_detail/drosten/






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?