ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(103)  2021/11/23(和訳)

フランクフルト大学病院 ウィルス学教授、サンドラ・チーゼック
聞き手 ベーケ・シュールマン

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16回続けてロベルト・コッホ研究所が7日間の平均発生指数が過去最高値に達した、と発表しました。全国の平均が399、8です。警告の声は高まっています。WHOは、ヨーロッパでCovid-19関連で死亡する人は10万人を超えるであろう、と予測しています。ロベルト・コッホ研究所所長、ヴィーラー氏も「ここまで危機感を感じたことはない」と状況の深刻さを訴えています。新しいコロナ感染蔓延防止案、病床状態、そして、誰がどのタイミングでブースター接種をするのか。新しい治療薬は希望を与えるのでしょうか。今日は、フランクフルト大学病院、医療ウィルス学教授、サンドラ・チーゼック先生にお伺いします。聞き手は、ベーケ・シュールマンです。

先ほど、先週の水曜日のヴィーラー氏の怒りの警鐘発言をあげたのですが、「最悪のクリスマスになるだろう。5万人の感染者がでることはもう阻止できない。それによって、毎日400人が死亡する。」と。先生も、ヴィーラー氏の怒りを理解できますか?

もう何ヶ月もの間予防接種を行なってきて、重症化を抑え可能な限り死亡する人の数を少なくしようとしているのにも関わらず、新規感染者の数は過去最大だ、ということに対する憤りは理解できます。集中治療が必要な人の数も増えていますし、死亡者も増えています。これは大変失望する状況ですし、何より失望するのは、効果があるワクチンがあるのにも関わらず、というところです。効果があるものが十分に、、全員の分が用意されていますが、それを使いたくない、という人が何100万人もいれば、周り全体を危険に晒すことになります。ドイツは大変豊かで恵まれた国です。私はそうではない国でパンデミックを経験したいとは思いません。ワクチンが十分にあって、、しかもそれが余って破棄寸前になっている。手段が用意されているのに有効に活用されず、新規感染者が増えていくの黙ってみているしかない。無力感、そして絶望を感じるのはよくわかります。

対策への批判の声もありますが、先ほどもおしゃったように、手段が用意されているのにも関わらず、という点でのワクチンの問題、ホットスポット、クラブなどの緩和など、先生は政治が怠った点はどこだと思われますか?

私は、夏に行われた選挙のせいで全ての関心が政治に集中してしまったのだと思います。選挙を優先したことによってパンデミック対策がおざなりになりました。誰も自分の人気を落としたくなかったのでしょう。特に選挙中はそうでしょうね。しかし、ウィルスに対する新しい知見がでてくれば、それをもとに常に新しく対策も改善されていかなければいけないのです。しかも、hit hard and early、迅速にされなければいけません。2回目の接種後に免疫効果が落ちてくる、ということは、何度もポッドキャストでお話ししてきましたし、他の専門家たちからも何度も説明があったのにも関わらず、緩和は進められました。感染者が増えるのは当然です。ワクチンの効果に関する新しい知見によって状況が変わりました。しかし、今は何を間違ったのか、と過去を振り返るだけではなく、前をみていかなければいけません。現時点での数は変えられないのですから、これからどのように削減していくべきであるのか、というところを考えていかなければいけないのです。そこには勿論、各個人が自分の周りでできることも含まれます。政治だけの問題ではありません。

政治的に前をみるとすれば、どのような対策が妥当だと思われますか?例えば、イベントやレストランでの2Gなどですが、あるところまで数が上がってしまえば、そうせざる得なくなる、とのことでしたが、どの程度意味があるものだとお考えですか?

まず、言っておきますが、どんな対策であっても、その結果ウィルスが人から人へと伝播することを困難にすることができるのであれば、そこには意味があります。勿論、ここで重要なのは、それで十分であるかどうか、です。そして、どのくらいはやく効果がみられるのか。つまり、新規感染者の増加をストップさせることができるのか。特に、レストランでの2Gに関しては、私は懸念するところがあります。本当にきちんとチェックされているのか、ということです。「ワクチンパスは勿論お持ちですよね?」と聞かれるだけでそのままスルーすることも容易に想像できますし、偽造ワクチンパスも心配の種です。深刻な問題になっている、と報道されいます。ここ、ヘッセンでも先週偽造ワクチン証明の件で家宅捜索があった、と聞きました。偽ワクチンパスポートを所有する人たちは検査もしてない状態で、偽物の証明書で動き回っているわけですから、リスクは倍です。どのくらいの頻度でそのようなことが起こっているのか、というのはわかりません。勿論、頻度が高くなれば高くなるほど問題は大きくなりますが、基本的には2Gは感染リスクを下げますが、全く感染しない、というわけではありません。2Gであっても大きなイベントに頻繁に参加すればするほど、家にウィルスを持ち帰るリスクは高くなりますから、おじいちゃんおばあちゃんや妊娠中の彼女へうつしてしまう可能性が増加する。そのことを忘れてはいけません。 そういう意味では、2Gプラスのほうが良いと思います。24時間以内の陰性証明つきですね。ここでも、抗原テストは100%の保証をするものではない、というところを言っておかなければいけません。多分、半分が見落とされているでしょう。ですから、陰性証明であれば、24時間以内のPCRが理想的ですが、イベントなどでそれを導入することは大変困難です。根本的には誰もが、今、どの集会に出席すべきなのか。どのようなに管理されている集会なのか。延期することが可能だろうか、オンラインでは参加できないのか。どのように自分のリスクを削減できるのかどうか、ということを考えていくべきです。ブースター接種をしたかどうか、というところも重要になってきますが。

個人が自覚して責任ある行動をとることが求められます。もし、政治的に、「これからロックダウン、もしくは部分ロックダウンをします。大きなイベントは禁止です」となれば、2Gよりも良い対策だとお考えですか?

単独の対策では十分ではない、と考えます。数値が高すぎます。たしかに、現時点での大きなイベントの開催はやめたほうが良いでしょうし、つまり、例えば屋内での100人以上の集会などですが、そのようなものはリスクが高いです。このようなところから、沢山の二次接触が発生しますから避けた方がよいです。私たちは、オンライン、という方法に慣れてきたわけですから、そのようなかたちをとることもできます。少なくとも、増加傾向にあるうちは、そのようなイベントなどを考え直す必要があると思います。

各州の首相たちが医療従事者のワクチン義務を要求しています。ハイリスク患者との接触があるからですが、これはどう思われますか?

この義務化は個人的には残念なことである、と感じています。強制的にしなければいけない、という点でです。しかし、たしかに、老人介護分野などでは低い接種率である、ということは確かなようですし、大変難しい問題でもあります。私は強制するよりもそのような人たちにも納得し理解してもらいたかったのです。残念ながら、そうはいかないようですが。純粋に医療的な視点から考えると、このような職種は、病気にかかっている人たち、超高齢者などの責任をおう仕事なのですから、自分が担当している患者達の安全を守る、ということは当然のことであるべきです。ワクチン義務、というものは、医療的でもワクチン学的なものではなくて、社会政治的な問題です。その他にもまだまだ多くの因子がありますから、私はこのテーマに関して、はっきりと答えを出すに適した人物ではない、と感じます。他の専門家にまかせたほうが良いと思います。

ヴィーラー氏に戻りますが、現在、把握されている感染者の他に、少なくとも倍、3倍ほどの隠れた感染者がいるだろう、と発言がありました。この数は現実的でしょうか?

そうですね。現実的だと思います。他の疾患でもそうです。私のこのポッドキャストの第一回目の回だったと思うのですが、インフルエンザの例を出しました。そこには常に一定の取りこぼし率というものがあって、これは、無症状感染というものがあるために全員が検査にいかないからです。ですから、この取りこぼされている数も常に念頭においておかなければいけないのです。これは、抗体保有調査でも明らかになることです。つまり、どのくらいの数が抗体を保有しているのか。そして、実際にどのくらいの陽性ケースが登録されたのか。その割合をみると、大体ファクター的に2から3が現実的です。多分、学校の生徒たちの取りこぼしは低い、と思います。週に3回検査していますので。これは有能です。定期的なカテゴリー検査によって取りこぼしを最小限に抑えることができます。しかし、定期的に検査されていない集団ではそのくらいの率が見逃されている、というのは現実的だと思います。

それはPCRの陽性率からもわかるものなのでしょうか?今、また増加傾向にありますが。

PCRの陽性率は、1週間の間にみつかった陽性ケース数の検査数全体での割合です。陽性率が高けなれば、取りこぼされている数も多い、と考えるのが当然で、それは検査数が多くなればラボに負担がかかって逼迫するからですね。そうなれば、検査結果をだすのに1日ではなく、3日、4日必要になります。その結果、保健所の追跡調査も遅延しますから、濃厚接触者の検査も全員は行われないことになります。例えば、ザクセンでは、先週の陽性率は37%でしたが、これは3つに1つが陽性だということですから、ラボがかなり限界に近くなっている、と同僚から聞きました。検査が追いつかなくて、4日待つこともあるようです。勿論、そのような状況では数の把握も遅れますし、実際のところ、感染追跡もこの規模になると不可能です。

今、注目されているのは入院率、という数値です。これを基準に規制していくことになっています。つまり、入院率で、2G、2Gプラスを導入するか、もっと厳しい規制にしていくかを決める、ということですが、これは一体なんなのか、というところから説明する必要があるかと思います。これはなかなか理解するのが容易ではない、と感じるのですが、通常の入院、というのは、単に人が病院に滞在する、ということです。これは別に特殊な病棟、集中治療などに限ったことではなくて、病院という施設に入ることを意味します。Covid-19で入院している人の数はロベルト・コッホ研究所が発表していますが、ただ、この入院率というのは、7日間の間に検査が陽性になったケースがその期間内に病院に入院したケースであって、つまり、検査で陽性が確認されてから、14日以内に入院した場合にこの数値に反映される。その理解であっているでしょうか?

あっています。入院率、というのは、10万人あたりの7日間の入院数ですから、10万人の人口の都市で7日間の間に3人入院すれば、入院率は3、ということです。批判ポイントとしては、登録されるのが大変遅い、というところです。これは過去を振り返る数値であって、前向きな数ではありません。登録の遅延が激しいのと、地域によっての差が大きいので全てを網羅することができていません。現時点では、たしか入院率は5,28だったと思います。州ごとにみていくと、ハンブルグは、2,11で、これは良い数値です。しかし、チュービンゲンは 17,59。これは大変高い数値です。2020年のクリスマスのピーク時よりも高いです。その時の最高値は15,5でした。ザクセンの数値をみてみると、4,39ですが、これはザクセンの状況を反映するものはありません。新規感染者数と、集中治療患者の間には相互関係がありますから、大体、新規感染者の0,8%が集中治療が必要になります。そこから計算するとこの数は全くあっていません。さらに、飽和効果、というものもあります。病床数が20病床であれが、これが全て埋まった段階でこの州、もしくはこの地域ではそれ以外の10名の受け入れはできないことになりますから、その時点で最高値に達するのです。これも、この数値が過去をみるものであって、先をみるものではない、という理由でもあります。私は個人的に入院率よりも、新規感染者と集中治療病床の稼働率から割り出すほうが良いと思っています。

もう一度、7日間の間に感染し入院することになる数、と限定するとどのくらいになのでしょうか?そんなに多くはないと思うのですが。

そうですね。ほとんどの場合はその後に入院することになります。ここではさらに、その人たちがどのくらいの期間入院するか、というところも配慮されていません。入院患者のなかには、数週間、数ヶ月治療を受けている人もいますし、特にそのような若年層が数値には含まれないのです。ですから、州によってはSARS-CoV-2陽性患者のための集中治療病床の割合が30%です。これは、ほぼ3つに1つの病床を他の疾患患者のために使えなくなっている、ということです。そのあたりが入院率だけからは読み取れませんので、現実的な状況の把握と深刻さに欠けると思います。

先ほど、病床が全て埋まることになる、とおっしゃいましたが、そうなってしまったらどうなるのでしょうか?入院できなくなって入院する人が減れば、入院率的には数値が低くなりますから、状況が改善された、という誤解をうみませんか?

入院できなくなる、ということは、ドイツではあり得ないでしょう。確かに、理想的な病床での治療できなくなるかもしれません。理想的、とは、high care病床、つまり大学病院のECMO装備の集中治療病床ですが、そうではない病床は十分にあります。道端にたおれる人が出る、などということはないと思いますね。常に完璧、と理想的な治療を区別する必要があります。そこがしっかりとされていないと混乱を招きます。私は、病院が実際にどのように運営されているのか、というところは、一般に人には大変理解が困難なところだと思っています。そして、今、少なくとも南部では病院内の再構成が行われはじめていますが、北部の同僚と話をすると南部の問題には理解を示してくれません。私はちょうど中部にいって、南に近い中部です。もっと南に行くとバイエルンとザクセンですから、そこでの状況はまた全く異なります。そこでは病床のキャパを増やしている最中ですし、手術後に使う病棟を集中治療用に使えるようにするなど工夫がされています。

マックスの状態を基準にしてしまうと、その数値に達した時点ではもう何も打つ手がなくなる、と思うのですが。

そうなのです。私の意見は、新規感染者と集中治療病床の稼働率でみていくほうが良い、ということです。そうすることによって、地域の状況も把握できます。どちらにしても、現時点での状況の把握は必然ですし配慮されなければいけません。

ここで、ランセット・オンコロジーに掲載された記事を取り上げたく思うのですが、ここには、コロナパンデミックにおいて、全世界で多くのがん患者の手術を断念しなければいけなくなっている、と。同じようなことを、英国のバーミンガム大学ヘルスリサーチ研究所も指摘して、全世界で約2800万件の手術が延期、もしくは中止された、とあります。ドイツでは90万件以上です。先生も大学病院でそのような経験をされましたか?

それは、がん治療専門外科医に聞かないとフェアではないと思います。手術の予定を組んでいる専門医が一番よく把握していることだと思うからです。偶然ですが、私の身近なところにそのような専門医がいて、、、私の夫ですが、夫は大きな大学病院に勤務する外科医です。彼から聞いたことをここでお話しします。勿論、延期する、ということは可能でそれも代案の1つではありますが、夫が言うには、彼が勤務する病院ではがん手術は延期されることはなかった、と。されたとしても数日だったようです。全く手術ができなくなったことはなく、負担が大きかった週を避けて数日、数週間ずらされたようです。しかし、全く手術ができなくなった、ということはなかった、と言っていました。パンデミック初期には、院内での感染を恐れていた人が多くいて、多くの患者が手術を自らキャンセルしたり、通院しなくなったりするケースもありました。それによって起こったダメージも過小評価されるべきではないと思います。夫はさらに、その地域の構造も非常に重要である、と言っていました。麻酔科のなかの集中治療病棟と、いくつもの専門科の集中治療病棟にわかれている病院とでは全く条件が違います。例えば、外科の集中治療病棟がある病院だとその病棟は外科の手術だけに使いますから、Covid患者のために空けることは困難です。ですから、一言ではなんとも言えないのです。しかし、夫曰く、数日から数週間の延期はあったものの完全に中止された手術はなかった、とのことです。

ドイツ病院協会は、全ての延期が可能な手術を延期するように呼びかけているところです。先ほどの先生のご主人のお話を参考にさせていただくと、このような場合には何を基準にするのでしょうか?どのような手術が延期可能で、どのような手術が不可能なのですか?決断の基準はどこなのでしょうか?

その問題に夫も今ぶちあたっています。夫曰く、基準はどのような設備などが必要になってくるか、というところで、詳しく言うと、集中治療ベットが必要な場合には延期すべきなのかどうか。しかし、外科では、鼠径ヘルニアなど、集中治療ベットが必要ない手術も沢山あります。このような場合には2日くらい普通の病棟での入院になります。そのような手術を延期する理由はあるでしょうか?集中治療のスタッフのキャパがマックスになっている時に、この分野の看護師、介護スタッフも手持ち無沙汰になります。そうなっても何の意味もないでしょう。ですから、どのような設備が必要なのか。何をするのが一番良いのか。病院には手術の緊急度レベル、というものがあり、4レベルに分けられています。緊急度が高いのは、動脈からの出血が止まらない場合、循環器が機能していない場合などですが、そのような時には躊躇している時間はありませんから、すぐに手術が必要です。もし、その際に集中治療病床の空きがなければ術後に使う病床に一旦待機して、空きを待つことなりますが、そのような状況になるのは極めて稀です。最悪の場合には、救急外来での手術も行われますが、これは一刻も争うような状態での話です。例えば、中空臓器の損傷、つまり、胃や腸に穴が空いた場合などですが、そのような場合には勿論速攻で対処される必要があります。それと同時にがん手術などの緊急度がありますが、これは数日延期することも可能です。数日前後しても患者へのダメージはありません。その間に他病院、他の州に受け入れ先を見つけそこで手術するようにオーガナイズすることも可能です。その他には、鼠径ヘルニアや甲状腺の手術など、延期しても問題はないものの、集中治療病床が必要ない手術もありますから、例えば、20歳で鼠径ヘルニアの手術をした場合に集中治療が必要になる可能性はどのくらいか、と考えるわけです。第一波の際には、このような手術もすることができませんでしたが、それは集中治療病床が原因ではなく、単純に資材が不足していたからです。つまり、手袋をはじめ、消毒液、オペ着も足りなかったので、第一波の時には優先順位を決めて、全て資材を集中治療病棟にまわすことにしたのです。そのような問題は現在ありません。このようにこれは大変複雑なテーマです。単純に全ての手術を中止にする、ということは必要ないことだと思いますし、その日その日で臨機応変に調整していくことになるでしょう。そのあたりをどう平等に決断していくか、というのが今医師たちに課せられている課題です。現在の状況をみると、バイエルン州に緊急事態宣言が出されています。つまり、他の州との連携体制で援助を行わなければいけない、ということです。医師が何時間も電話で受け入れ先を探す、ということもありますから、そのような場合には状況を把握してオーガナイズするところが必要になってきます。

Covid-19患者にとっては少し朗報があります。詳しくは、2つあるのですが、2つの治療薬、ウィルスに対する医薬品です。これは静脈内投与が必要なモノクロナール抗体ではありません。錠剤で内服できるものです。まず1つ目には、パクスロビドというバイオンテック・ファイザー社の医薬品です。これは、アメリカのアメリカ食品医薬品局FDAに緊急承認の申請が出されています。2つ目は、モルヌピラビルで、こちらはメルク社の医薬品で、ヨーロッパ医薬品庁EMAが申請審査をしているところです。モルヌピラビルに関してはポッドキャストの100回目、ドロステン先生にもお話を伺っていますが、もう一度、短くこの薬についてご説明いただけますか?

これは両方、いわゆる抗ウィルス剤で、モルヌピラビルは、ウィルスの増殖時にゲノムのなかに複製エラーを誘発させるものです。その結果、新しくできたウィルスにエラーが組み込まれウィルスは自滅します。これがざっくりとしたメカニズムです。ここでの問題は、この組み込まれる複製エラーがSARS-CoV-2に特化したものではない、というところで、つまり、突然変異誘発の問題です。これが人間にも起こる可能性がないとは言えません。

つまり、人間の DNAに変異が起こる可能性がある、ということでしょうか?

そうです。これが一番の問題点です。内服期間は5日間、と短いですから、平均的な人には問題はないと思いますし、問題ではありません。しかし、妊婦は絶対に使うべきではありませんし、妊娠可能な若い女性も避けるべきです。もし、この薬を使うのであれば避妊は必然で、その後も数日間妊娠しないようにしなければいけません。大変大きな影響がある可能性があります。授乳中もこの薬避けるべきで、もし使用するのであれば授乳を一旦中止し、治療後最低でも4日間は授乳はするべきではありません。このように、この薬は、(STIKO会長)メルテン氏が言ったように、決して「スマーティーズ」のようなものではなくて、強い副作用がおこる可能性を持つ薬なのです。そこのあたりの理解をする必要があります。多分、多くの患者には問題は起こらないと思います。それでも、妊婦や、特に妊娠初期の使用では深刻な問題、間違ったヌクレオチドへの組み替えが起こる可能性があり、十分な注意が必要です。

パクスロビドはどうですか?

パクスロビドは、いわゆるプロテアーゼ阻害剤です。ウィルスはプロテアーゼを持っていますが、これは酵素で、ウィルスのタンパク質を最終的なかたちにする役割をしているものです。パクスロビドはこの酵素を抑制します。興味深いところは、これは単独で使われてる薬ではなくて、抗ウィルスとプロテアーゼ阻害剤とリトナビルとのコンビネーションで使われる、というところです。リトナビルはHIVの治療に使われる薬ですが、これは、プロテアーゼ阻害剤が肝臓で分解した酵素を作用する前に抑制するものです。ここからも、プロテアーゼ阻害剤がまだ理想的ではない、薬理学的に、という意味ですが、、単独では効果がそこまで期待できないので、ブースター効果があるものが必要であることがわかります。リトナビルは、体内での分解を緩やかにし、これは肝臓内の酵素誘導によってつくられますが、ここでの問題は、別の医薬品と兼用した場合、、例えば、高齢者や基礎疾患がある人は5種類、10種類の薬を服用している場合があるかと思うのですが、そのような場合に強い相互作用が起こる可能性があります。つまり、他に服用している薬の成分も同じようにゆっくり分解されることになれば、例えば、血圧の薬や免疫抑制剤の薬物濃度も急激にあがり危険な状態になることもありますので、どの患者に使うのか、どのような条件で使うべきなのか。慎重に選ぶことが必要です。

この2つの薬はどのくらいの効果があるものなのでしょうか?

モルヌラビルの治験からは、入院率を50%削減できた、とあります。パクスロビドは89%ですが、パクスロビドは症状が出てから3日以内に服用する必要があり、モルヌピラビルは5日以内です。ここでも、先ほど出た問題、、PCRの結果を4日間待たなければいけなくなったら、、そこから薬を調達しなければいけないとしたら、、全然間に合いません。なんとか、もっとはやく必要としている人たちが使えるようしなければいけませんので、そこが問題だと思いますし課題です。誰にどのように使うのか。しかも、それが迅速に行われなければいけない、ということです。

はやい段階で使えば、感染伝播も防げるのでしょうか?

良い質問ですね。そこはまだはっきりしていません。治験は今行われています。現在、いわゆる曝露後予防の効果があるかどうか、つまり、老人ホームなどで陽性者が出た場合に他の入居者に感染予防目的にこの薬が使えるかどうか、ということです。もしくは、例えば、家族のなかに重度の疾患が原因でワクチンの効果が得られず抗体ができない人がいる場合。その可能性を今調査しているところです。とは言っても、この治験は非接種者を対象に行われてるものです。ですから、予防接種後の効果についてはわかりません。現時点では予防接種を行なっていない人で、重度の疾患のハイリスクを持つ場合、高齢者であったり別の疾患があったり、とその場合に重症化を防ぐ効果がある、ということです。

承認が降りて実際に使えるようになるまでにあとどのくらいかかると思われますか?

私は、モルヌピラビルは年末までには承認されると思います。12月中に使えるようになるでしょう。しかし、使える量には限りがあります。誰もが使える、ということにはなりませんし、薬局で気軽に買えたりすることにはならないでしょう。まずはハイリスク患者だけに使われることになると思います。世界中でこのような薬の需要は高いですし、可能な限り平等に分配されるべきです。ですから、今年中に使えるようにはなるものの、使える範囲は限られている、ということです。パクスロビドにおいては、もう少しかかると思われます。多分、1月になるのではないかと思いますが、こちらも数には限りがあります。

新しい変異株が出てきた場合に、この薬の効かない可能性はどの程度あるのでしょうか?

ここがモノクロナール抗体との重要な違いですが、理論的には両方の薬はいままでの変異株全てに効果がある、とされていて、デルタ株にも効果があります。変異株の主な違い、というものは、スパイクタンパク質の変異の違いですから、つまり、表面のスパイクタンパク質が免疫から攻撃されるわけです。モルヌピラビルとパクスロビドの場合の攻撃部位は違う部分にあります。例えば、プロテアーゼ、もしくはポリメラーゼなので、これから免疫回避型の変異株がでてきても、スパイク部分の変異ですからこれらの薬の効果へはさほど影響はでないのではないかと思われます。ここがこの薬の大きなメリットでもあります。モノクロナール抗体では、一箇所変異が起きただけで抗体の効果がなくなることもありますが、この薬ではそのようなことは起こりません。

先ほど、副作用についてご説明していただきました。モルヌピラビルは妊婦には使えない、ということですが、他にもどのような副作用がありますか?

モルヌピラビルは、動物実験の段階で妊娠中の被験動物に毒性があることが確認されています。これが使用されるべきではない理由ですが、その他の副作用に関しては軽症から中軽症程度のものです。めまい、頭痛、吐き気、下痢、蕁麻疹が数件、水泡が1件でています。パクスロビドでは、いまのところ副作用に関する詳細は出ていません。しかし、大多数が軽症である、とされていて頻度はプラセボグループと同じ程度である、ということです。レトナビルの副作用、つまりコンビネーションでの使用の際ですが、これはHIV治療でわかっているものです。後、よく目にする批判に、モルヌピラビルが耐性につながる、もしくは、抗ウィルス剤自体が耐性をうみだす、といういうものがありますが、これはHIVやHCVの治療薬で知られていることですが、ここで1対1での比較をすることはできません。HIVやHCVの場合には常に2種類、3種類の異なる治療薬を使った混合治療をおこなりますが、投与期間もかなり長期に渡り、一生飲み続けなければいけない場合もあるのです。今回はどちらの薬も服用は5日間です。勿論引き続き調査は必要であることは間違いありませんが、現時点でこれは主となる問題ではないと思われます。

この2つが自宅で使える新しい治療薬ということですが、勿論、モノクロナール抗体よりも使いやすいことは確かです。モノクロナール抗体は病院で静脈内投与されなければいけません。そして、かなりの初期に使われなければいけない、というデメリットもあります。ここで、例えば、免疫不全の人たちに予防として2ヶ月に一回与える、というのはどうなのでしょうか?つまり、そのような条件が揃っている人たちのワクチンの効果が十分かどうかはっきりしない際に使う、ということはできるのでしょうか?

興味深い質問ですね。いまのところそのようなことは行われていません。使われるのは、接触があった場合か、陽性反応が出た場合のみです。これは価格的にも手頃な薬ではありません。モノクロナール抗体は効果です。そして、無限に在庫があるわけでもありません。ここが一番の問題だと思います。さらに、使われるのは異物のタンパク質ですから、アレルギー反応が起きる可能性もあります。それでも、モノクロナール抗体、コンビネーションでの使用がさらに好ましいですが、それによって特にアストラゼネカの半減期を延長することができる、ということは読みました。これは、6000人以上の治験者で行われいる治験によると、半減期が6ヶ月から12ヶ月だということですので、そうなればワクチンの効果が十分に得られないハイリスクにとっては朗報です。十分な保護効果がない免疫不全患者などに、晩夏頃に抗体を投与すれば、6ヶ月から12ヶ月効果が得られることになります。とは言っても、これはまだ将来の話です。しかしそうなれば素晴らしいです。ここでは2つの抗体をコンビネーションして耐性ができないように工夫されている、ということを付け足しておきます。モノクロナール抗体の問題点としては、変異がおきたり、新しいウィルスがでてきたりすると、全く効果がなくなる可能性が常にあることです。それでも、大変興味深い分野ではあります。これも大変高価な薬になるでしょうから、誰にでも使える、というわけではありません。しかし、特定の患者にとっては天からの恵みであることは間違いありません。3回予防接種をしても十分な反応が得られない人の数は少なくないからです。そのような人たちにとってはこれらの治療薬が承認されることは重要なことなのです。

もう一度、ここでお聞きしますが、これらの治療薬は根本的にワクチンの代わりとなるものではないですよね?というのも、ワクチンを打ちたくない人たちのなかには、このような良い治療薬が出てくるのであれば、予防接種なんてしなくても良いだろう、と考えている人もいると思うのです。

そうではありません。まず、そんなに簡単に手に入るものではない、ということ。つまり、健康な一般人は買うことはできません。ドイツに入ってくる数も限られています。そして、優先順位も守られなければいけません。誰が重症化のリスクが高いのか。そして、かなりの初期に使う必要があります。そのタイミングを逃すことが大変多いのですが、そのようなリスクは犯すべきではありません。そして、この点はしっかりと説明しておきたいのですが、この薬はスマーティーズチョコのようなものはない、ということです。かなりの強い副作用、相互作用があります。そして、妊娠可能な女性には使えません。この治療薬は、間違いなくアスピリンやパラセタモールのように気軽に飲める薬ではないのです。勿論、重症化のリスクをワクチンによって削減したほうが良いに決まっています。ワクチンは十分な数ありますし、この治療薬を使うよりは断然安全でもあります。重要なのは、この薬を本当に必要としている人たちから奪ってはいけない、ということです。ワクチンを打っても効果を得ることができずに困っている人はいるのです。これが、誰でも使える薬ではない、という理由です。

つまり、この治療薬が使えるようになること自体は素晴らしいことですが、ワクチンの代わりとなるものではない、と。次に、ブースターワクチンについてお伺いします。先週の木曜日に常設ワクチン委員会がブースターワクチンの推奨を18歳以上、としました。それまでの推奨は70歳以上と免疫が低下している場合と介護施設の入居者と従事者、医療施設の従事者に限定されていました。それと同時に委員会は、ブースターの優先順位は引き続きハイリスクに重点をおく、と言っています。基本的には2回目の接種の6ヶ月後です。場合によっては5ヶ月後にも接種は可能です。夏に1回目と2回目の接種の話をした際に、接種間隔が短ければ、若干免疫効果も劣る、ということでした。接種間隔も理由なく決められているわけではなくて、ワクチンの効果を理想的に得るためのものです。このようなことは3回目への間隔でも言えることでしょうか?

多分そうだと思います。今わかっていることは、18歳以上ではワクチンの効果を完全に持続させるためには3回目の接種は必然である、ということです。3回必要なワクチンは他にもたくさんあります。例えば、B型肝炎ワクチンもそうです。この場合には0日目、4週間後、そして6ヶ月後に接種します。似たような間隔ですね。このような予防接種は特にめずらしくはありません。今回のワクチンもそのようになると思います。ジョンソン&ジョンソンの場合には違って、ここも何度も繰り返し言っておかなければいけなところだと思うのですが、、ジョンソン&ジョンソンを打った人たちはもう一度4週間後に2回目を打つことを薦めます。1回で済むワクチンではありますが、2回目も必要です。勿論、データはあまりありません。本来であれば、 Head-to-Head比較試験が必要で、3ヶ月と6ヶ月で行われた3回目のワクチンを出さなければいけませんが、そのようなデータがある、ということは聞いたことがありません。これは、ワクチンの数に限りがあるために3ヶ月後ではなく、5ヶ月後、6ヶ月後に徐々に打ち始めることになったからで、世界のどこかにそのような調査がされていないかどうか、みてみる必要はあると思います。現時点では私はみたことがありません。

6ヶ月待った方が良いのか、5ヶ月で打った方が良いのか、という点で悩んでいる人も多いと思うのです。早めにブースター効果を得るほうが良いのでしょうか?

私は5ヶ月でも6ヶ月でも問題はないと思います。ここでの大きな違いはありません。ただ、2ヶ月後、3ヶ月後に違いがあるかもしれない、ということです。それに関するデータがありません。しかし、5ヶ月なのか6ヶ月なのか、という点ではどちらでも良い、と私は思います。どちらにしても、免疫応答は期限切れになりますからブースターを与える、ということです。

数ヶ月前のポッドキャストでも取り上げましたが、1回目をアストラゼネカで接種した人たちは2回目は別のワクチンを接種することになりました。その間にアストラゼネカの推奨内容が変わったからですが、その際に異種接種、つまり、この場合は、1回目はアストラゼネカ、2回目をmRNAワクチン、バイオンテックかモデルナを打った方が、2回ともアストラゼネカを接種するよりも効果があがる、ということがわかっていません。これは、ブースターワクチンでも同じことが言えるのでしょうか?例えば、1回目と2回目をバイオンテックで打った場合に、3回目はモデルナを打った場合に良い高い効果が得られる、ということはあるのでしょうか?

アメリカの論文にそのようなことを示唆するものはあります。つまり、3回目はモデルナを接種したほうが、3回目もバイオンテックを打つよりも良い、と。ここで言っておかなければいけないことは、この試験では、100マイクログラムのモデルナが摂取された、ということ。つまり、通常のブースターワクチンの量の倍です。通常のブースターでは50ですから、半分の量でもこのような効果が実際にあるのかどうか、ということは明らかではありません。それに加えて、臨床的にこの小さな違いがどの程度重要になってくるのか。その点では私は疑問に思います。はっきりとしたことはわからない、と言った方が良いでしょう。私は、用意されているワクチンを接種するのが正解だと思っています。バイオンテックでもモデルナでも30歳以上であればどちらを接種しても問題ありません。30歳以下であればどちらにしてもバイオンテックになります。重要なのは、ブースターを打つことです。どちらのワクチンも明らかな中和抗体の増加を促します。どのワクチンが良いのか、ということは二の次なことです。もう一つ重要な点は、、もし、以前の予防接種で問題があった場合、Covidアームなどがよくある例ですが、そのような副反応が出た場合には違うワクチンを選ぶ、ということもしてもよいかもしれません。別のワクチンにしたら、Covidアームが起こらない可能性はありますがそれもはっきりとしたことはわかりません。とにかく、準備されているワクチンを接種してください。私がみた限り、そこまでの違いはありません。

これは、メールでの問い合わせがよく来る内容でもあり、私の知人友人の間でも懸念されていることなのですが、モデルナのワクチンが効果面で劣っているのではないか、ということです。多くの人が、シュパーン保健相が、開業医は期限切れになる前にモデルナを使い切るように、という発言に不安を感じ、シュパーン保健相も言い方が適切ではなかった、とその後で訂正しました。モデルナはバイオンテックと同じくらい効果があるのですよね?

その逆です。モデルナは治験データからみると全く劣っていません。モデルナの問題は、心筋炎のリスクのために30歳以下に打てない、というところですが、これも代わりがありますからリスクをおさえることができます。しかし、30歳以上ではリスクもありませんからモデルナを拒絶する理由がありません。治験データ的には同じように効果があります。これも、リスナーの皆さんにとって重要な情報だと思うのですが、アメリカの治験から、ブースターの接種からの7日後、つまり1週間後ですね、その時点で明確な保護効果の増加がみられる、ということです。効果を得るために長く待たなくでも良く、かなりはやく効果が出ます。これは、1万人の治験者で行われたもので、有症状の疾患に対する保護効果が95%に上がっています。しかも、1回目、2回目に比べるとはやいです。1回目、2回目では数週間待たなければいけませんが、ブースターはかなり早く効果が出ます。1週間後には明確なリスクの削減がみられています。

先ほど、ワクチンアームについて出ましたが、ブースターによる副反応に関してはどうなのでしょうか?

そうですね。それもこの治験では調査されていますが、反応的には1回目と2回目の接種と似ている、とのことです。しかし、心筋炎や心膜炎は起こっていません。とはいっても、治験されたのは1万人です。2回目の接種時よりもリンパ節腫脹がみられた、つまり、リンパ腺の腫れと痛みを感じる人がいたということです。私の経験から、副反応は、2日間寝込んだり、熱が出たり、悪寒、腕の痛みを感じる人もいれば全く何もない人もいるのです。身体の反応は人それぞれですし、個人差があります。助言をするならば、もし、木曜日にブースター接種をする予定になっているのであれば、金曜日に大切な試験やイベントなどを計画しないことです。大事をとって、1日、2日は空けておくのが良いでしょう。これまでの予防接種でもそれは推奨されていたことです。全く何も感じない人もいますが、高い熱がでたり悪寒が止まらない人もいるからです。

ブースターについてですが、よく、若い世代はブースター接種の前に抗体力価を測ったほうが良いのか、という問い合わせメールがきます。つまり、血中の抗体の量ですが、3回目を打たなくてもどれだけの抗体があってワクチンの効果が持続しているのか。もしかしたら、3回目は必要ないかもしれませんよね?

それは違います。というのも、どこからが十分な免疫なのか、ということをはっきりさせることができないからです。 カットオフ値、というものがメディアで騒がれていますが、私は、1000の値を持っていても感染し、Ct値が19だった例をみています。ですから、これは完全な保護を保証するものではありません。ラボでも、この値であれば絶対に感染しない、などという保証書は発行できませんし、基準値のようなものはありますが、それがあってもあまり意味はないのです。そして、この抗体の鑑定というものは、免疫応答の極一部なわけですから、それをすることはナンセンスです。お金の無駄です。どちらにしても、検査をした日の数値からは何もわからないわけです。4週間後には全く違う数値になっている可能性もありますから、このような検査をする必要があるのは免疫不全の人が、そもそもワクチンの効果が出ているのかどうか、というところを調べる時のみです。これは、モノクロナール抗体を使う際にも重要になってきます。しかし、若くて健康な人に関しては、測ったところで意味はありません。絶対に感染しない、と言い切ることはおろか、この数値が何を意味するのか、ということさえはっきりしないのですから、あまり意味がないことです。

つまり、まとめると、、若年層でもブースターは重要だ、ということですね。そして、この世代は接触頻度も高いですから、自分を守るだけではなく周りの高齢者や子供たちを守ることになります。子供についても取り上げたく思うのですが、もう少しで子供も自分で保護できるようになります。少なくとも、5歳以上の子供は、です。ドイツでは、Stikoからの推奨がまだ出ていません。先生はこの推奨をどう思われますか? EMAの承認がありますから、小児科はもう現時点で予防接種を行ってもよいですし、もうすでに Off-Labelワクチンというわけではありません。Stikoの推奨にはどのような意味がありますか?

EMAの承認があれば予防接種をすることができます。Stikoの構造的にも遅延が生じるのは仕方がありませんが、ハイリスクの子供や、家族にハイリスクを抱える場合には勿論今すぐにでも予防接種をすることは可能なのです。Stikoが子供のワクチンの推奨を出すためには科学的なデータを全て揃えなければいけませんから、勿論時間もかかります。それは、今までにも妊婦や12歳から17歳までのワクチンでも同様でした。いつ推奨が出るか、という予測をするならば、私は今年中には出ないのではないか、と思っています。Stikoには、科学的なデータを集め分析し、そこから判断した上で推奨を出す、という責任があります。そういう意味では、ドイツは少しメリットがある、というか、メリットと呼んで良いのかどうかわかりませんが、、とにかくアメリカがもう数週間前にこのワクチンでの接種を始めていて、数百万人の子供にワクチンが打たれています。ここからのデータも安全性や副作用などに関しての判断の基準となるでしょう。とにかく、この年齢の子供たちのワクチンは今年中に可能になります。Stikoの推奨はその後だと思います。今週中に決断される、ということは聞きましたが、この特別な子供用もワクチンは大人のワクチンとは異なるものですので、それに関しては12月中旬になると思われます。

ということは、理論的にはもう開始されても良い、ということですよね。それでも、Stikoの推奨がなければ不安だと感じる保護者も多いと思います。その気持ちもわかります。先生はどう思われますか?先生も周りでもそのような声がありますか?

勿論です。保護者のなかには、12歳から17歳の子供をもうすでに予防接種させていて、同じように下の子供も予防接種させることに抵抗を感じない人たちもいますし、自分の子供には大きなリスク因子はない、そこまでの接触、リスクを伴う接触もないからStikoの推奨が出てくるまで待とうと思う、という人もいるでしょう。私はどちらも正しいと思います。勿論、議論はさまざまなところでされていますし、このような感染状態ですから、大変難しい決断であることは確かです。とにかく、手に入れることができる情報は全てあつめて、自分と自分の子供と家族にとって最適な決断をしなければいけません。

国民の一部にだけを対象にStikoが推奨を出したとしても、その他の国民にとって悪影響があったり効果がない、ということではありません。Stikoの推奨がどのような意味を持つのか。いつ推奨して、いつ推奨しないのでしょうか?

例えば、インフルエンザワクチンですが、Stikoからは全員への推奨は出されていません。推奨は、高齢者と接触頻度が高い人たちが対象です。しかし、Stikoは、それ以外の人たちはインフルエンザワクチンを打たない方が良い、といっているわけではありません。重要なのは、個人のリスクと個人のベネフィットです。私は個人的にインフルエンザワクチンを勧めてきました。予防接種をしない場合のリスクを自覚しているからです。推奨がない、ということは、害がある、ということでは決してありません。








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