ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(39) 2020/5/7(和訳)

話 ベルリンシャリテ ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン
聞き手 コリーナ・ヘニッヒ

2020/5/7

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緩和のなかでのコロナウィルス、という見出しで今日のポッドキャストははじめても良いかもしれません。連邦と州が、ブレーキを少し外す決断を下しました。そのなかには、店の営業再開、サッカー、そして幼稚園が含まれます。今日も、ウィルス学教授、クリスティアン・ドロステン氏にお話を伺います。聞き手は、コリーナ・ヘニッヒです。

やっと、自由だ!と言う人もいれば、冗談じゃない、緩和は間違っている!という人もいます。このニュースを聞いてどうお考えになりましたか。

これは、もうかなり前からそうなるだろう、ということは予測できていましたから、今更驚く事ではありませんでした。 私がこのポッドキャストでの見解は、国際的にみても主流の意見だと思います。専門家間でも若干意見が食い違う場合もありますが、それは少数派でしょう。 ですから、マックス・プランク研究所、ヘルムホルツ、フラウエンホーファーとライプニッツ協会の合同声明も大まかな点で一致しています。しかし、政治は妥協策のほうを選択しました。 これが討論の一部です。
とは言っても、ドイツがもうこの先絶望的な展開になる、という訳ではありません。引き続き、具体的な行動様式によって感染率を抑えていくチャンスはありますし、ドイツ国内での意識は変わったと思っています。 社会的距離対策は、沢山の学びをもたらしました。そして、これから夏が来ます。密室での接触が減り、屋外に出る機会も増えるでしょうから、これから、感染を少なく保っていけるのではないか、という希望を持っています。
勿論、私が危惧しているところ、秋、そして冬になって、この効果も危機感も薄れ出した時に、、というのはあります。夏の間、そこまでの対策制限をしなくてもいいかもしれませんが、秋、冬に根本的に条件が変わってしまうのです。 私は、現在、進んでいる治療薬、治療薬の開発、現在の薬の活用、そしてワクチン完成に拍車がかかる事を願っています。 しかし、やはり、社会的距離に並行して、何か冬までの対策がないと、、、かなり厳しい状態になるでしょう。

メディアでは、受動免疫が報道されていますが、このポッドキャストでも取り上げました。アイデアは、、、完治した人の抗体を治療に使えるか。ここに期待して良いのか。 ブラウンシュバイクのヘルムホルツ協会が、人工的に抗体をつくって治療に使う主旨の発表をしました。

様々な研究グループがあります。イスラエルからも大々的な発表がありました。ケルン大学ウィルス学部のフローリアン・クラインとドイツ中央感染研究所との共同研究もかなり進んでいますが、これは、抗ウィルスのモノクローナル抗体の開発で、受動的な免疫確保です。 勿論、臨床分析において全ての条件が規制を満たしていなければいけませんし、ラボで開発しただけでは実際には使えません。 第一弾のプレスリリースだけです。 患者での試験もまだです。そんな事を言ったら、ワクチンももう完成している、と言ってもいいことになります。 ラボ段階で完成しているワクチンはもうとっくにいくつもあるわけですから。

まだ長い道のり、ということですね。今日は、少し前をみていこうと思います。 これから、人々の接触が多くなってくると思うのですが、感染の早期発見の為に、何が出来て、何をしなければいけないのでしょうか。 重要なポイントは、WHOが 検査、検査、検査、と言っていますが、始めの頃、症状が出ているのに、イッシュグルのスキー場に行っていなかった、もしくは、感染者と同じ職場で働いていない、という理由で検査を拒否される人が出ていました。現在では、検査体制ももっと整っているでしょうから、軽症、もしくは、無症状でも検査してもらえるようになるのでしょうか。

政治も、特に無症状者の検査ができるように、その方向で動いてはいます。一定の領域ではこれは正しいでしょう。 例えば、老人ホームなど、リスクが高いところ、でなどでは。しかし、ドイツでの問題は検査数ではなくて、ロジスティックだと思うのです。サンプルが何処に運ばれるのか。どこの部分負担を軽くし、何処を強化するのか。 具体的な改善が必要で、単純にラボ内での検査数を増やさなければいけない、というのではなく、ロジスティック面でどうすれば検査数を増やすことが出来るのか。 患者は、ラボに直接検査をしてもらいに行くわけではないのですから。その為にはスタッフが足りませんし。

これから再開される施設での検査には意味がありますか?例えば、幼稚園や学校などですが。子供は検査しないにしても、先生や、教育関係者など。

幼稚園や学校、、、という一番難しい分野をだしてきましたね、、、一番の難関は、保育施設でしょう。ここが感染源のひとつですから。ここには、幼児が沢山いて、幼児は、症状がなく感染していてもわからない、という事がわかっています。しかし、一方では、このグループは感染から守らなければいけないリスクグループではありません。守らなければいけないのは、その家族である大人であったり、保育士などのスタッフです。なかには、高齢者もいます。ハイリスクですし、家庭内に基礎疾患を持つハイリスク患者がいる場合もあるでしょう。  この部分で、診断、という手段を考えると、保育施設では、診断検査というのは一番の予防策ではなくて、何処に誰が配属されるか、といったスタッフへの配慮のほうが重要だと思います。何故なら、これから緊急託児が増えます。保育施設を突然全て再開するのではなく、25%くらいからでしょうか。そこで直接の接触があるスタッフが発生する事になりますが、普段の3分の1の動員であれば、その中からスタッフを選ぶ事も可能でしょう。 例えば、若いスタッフと年配のスタッフがいたとしたら、若いスタッフに幼児の世話をまかせる。 若い世代は重症化するリスクが低いですから。 それと同時に、家族にハイリスクがいるスタッフは避けてもらう。家に心臓疾患がある夫がいる場合、などです。この場合は、別なスタッフに代わってもらい、自分は事務の仕事したり、と接触を避けることも可能だと思います。

それは、学校の先生にも同じようなことが言えるでしょうね。リスナーから、子供の話題ばかり話さないでほしい、とメールが来ていますので、、、違う視点に移りますが、、、ロジスティックと検査についてです。 以前の回で、簡易抗原テストについてお話しいただいたことがあります。 似たような名前ですが、抗体テストではありません。 ウィルスを検出するテストです。 基本的には妊娠検査薬のような感じで、15分後に結果がわかるタイプです。 遺伝子ではなく、ウィルスのタンパク質に反応するものですが、学術的な検証が始まっています。このテストを広範囲で使えるようになりますか?

興味深い事に、開発しているチームの第一弾の論文がでてきていますが、まずは、基本的な説明からすることにします。 このテストは、直接ウィルスを検出するものです。 以前に、抗体テストでもありましたが、妊娠検査薬のような形をしています。アジアからのものが主流ですが、これらは技術的には未熟なレベルです。中国や韓国では大量につくられていますし、ヨーロッパにも大量生産品はあります。eBayや薬局でも買えますが、、それの、抗原テストバージョンが出てきています。 これによって、新しい検査カテゴリーができます。Pont-of-Care-Testing といいますが、ラボではなく、患者から直接サンプルをとってその場で結果がわかる検査方法です。サンプルをラボに運ばなくてもいいですし、テストを患者のところに持って行くだけでいいですし、患者が直接薬局で買ってくる事も出来るでしょう。 さて、ここから、技術的なレベルとコスト面ですが、、今、ウィルスのPont-of-Care-Testingでかなり高レベルタイプ、核酸の検出をベースにしたものがありますが、生産コストが高い為に、今のところ、病院での使用しか出来ません。 これから、お話しするのは、このタイプではなくて、技術的に低いレベルのテスト、妊娠検査薬のように喉からサンプルをとって溶液なかにいれ、その溶液を試験紙に浸す、、、試験紙は妊娠検査薬と同じです、一本目の線は、コントロール用、二本目がでたら、陽性、という検査キットの話です。
ここで、重要なのは、どの位の感度なのか。 PCR検査感度は高いですが、この検査についてはまだはっきりしません。 はじめの試験結果が出てきましたが、開発チームが独自に発表した論文です。 この開発チームがどうしてこんなにはやく開発できたのか、というと、開発にはモノクロナール抗体が必要ですが、これを、Sars-Cov-2からではなく、2003年のSARS-コロナウィルスのもの使ったからです。

確認ですが、これは、人工的つくられた抗体ですね。患者から検出されるのではなく、テストキットの一部ですよね。

そうです。モノクロナール抗体は、ウィルスに付着しますが、それがウィルス検出につながります。その為には、少なくても2つ抗体が必要です。付着抗体と、検出抗体、と。これつくるには、かなり技術が必要になってきます。大体、、、数ヶ月はかかります。この時間を、この開発チームは、もう既にあるモノクロナール抗体を使う事によって短縮したわけです。 数多くある抗体のなかから一番適しているものが選ばれています。
この方法を使っても良いとは思います。旧型SARSと、SARS-Cov-2は似てますから、そのモノクロナール抗体を使えるとは思いますが、近い将来、やはり、SARS-Cov-2のモノクロナール抗体を使った改善版ができるでしょう。 しかし、まずは様子見、です。 さて、結果ですが、、、ここでは、330のサンプルが気道からとられ、事前に検査され検証されています。PCR検査には、感度の測定単位があり、Ct値と呼ばれるもので、PCRサイクル、複製サイクルがウィルスがみえるある一定量まで達しなければいけないのですが、ここに魔の境界線があるのです。ここが、患者が高い感染力を持っているのか、そこまで高くないのか、ということの境目なのですが、ここでも、著者は良い選択をしています。 サイクルは25、この数値の意味は医師と専門家は理解してもらえると思います。一般のリスナーにはわからないと思いますが、これはそこまで重要ではありません。 ある数値以下だと、高い感染力を示し、それ以上だとそこまでの感染力はありません。感染力の高い患者の陽性率は、75%でした。 まず、PCRで検査をし、2つのグループに分けます。1つ目のグループは、検査で陽性反応が出ていて感染も確認されたが、感染力はないグループ、もう一つのグループは、かなり高濃度ウィルスが喉にあるグループ。 2つ目のグループを簡易テストで検査した場合、4分3に陽性反応がでています。1つ目のグループの結果は、最悪です。全く使い物になりません。 ここで、(この簡易テストが)どのような立ち位置にあるかがわかるでしょう。 もし、これから近い将来改善がされないようであれば、このテスト方法は、早期の診断用、という事になると思います。これはこれで、とても大切で役にも立ちます。診療所や、救急で、速攻で判断しなければいけない時、この患者は感染力があるのか、ないのか。特に、産婦人科や、違う科の救急で、新型コロナの外来診療をしていないところでは大変重要なことです。 新型コロナ感染者から、他の患者を守らなければいけませんし、普通の外来なら、院内に、1〜2時間以内に検査結果が出る救急ラボはないでしょうから。 今すぐに、感染力があるのか、ないのか、待合室で待たせていても大丈夫なのか。そのような状況で使えるテストです。そのようなテストが、数週間後、もしかしたら、1〜2ヶ月後かもしれませんが、大量生産品としてアジアから入ってくるでしょう。間違いないです。このようなシチュエーションで使うには大変適しています。事前にするテスト、感染力があるか、ないか、ということをはっきりさせる、という。 この妊娠検査薬にこう結果が出ているから、注意が必要だ、と

しかし、妊娠検査薬とは違って、薬局で自分で購入して自宅でテストする、という感じにはならないですよね?

妊娠検査薬にあるように、感度が物凄く高い、生理予定日の3日前から結果が出るような、、ところまでにすることは不可能でしょう。あり得ないでしょうね。 ですから、PCR検査はしなくてもいい、ラボでの検査は必要なくなる、という事は今後も絶対にありえません。 そうではなくて、緊急に感染力が高いかどうか、という確認しなければいけない時に使われるべきです。救急車や救急外来、介護施設、そして、ロジスティック関係で検査が間に合わない場合にはPCRの代わりに使ってもいいでしょう。 そして、PCR検査がままならない国でも使えると思います。 様々な状況がありますから。

では、病院や介護施設などで使えば、常に防護服などを着て対応しなければいけない状況も減るかもしれませんね。

そうですね。しかし、このようなテストでは注意が必要です。このような簡易テストの感度の限界を忘れてはいけません。病気の診断確定にはなりませんから。 現時点での感度では、初期の感染力の確認です。始めの、初期の評価です。病院や介護施設での患者とのはじめての接触時にまず確認出来ること。1日待たなくてもいいという事は大きいでしょう。多くの場合は、この間に感染が広まりますから。

最悪の場合は、一番感染力が強い時期ですよね

そういうことです。

これは、喉でサンプルとる、という事ですが、リスナーなかにも、もうこのようなテストをしたことがある人が何人もいますが、喉の奥まで入り込んでとても痛みを生じる検査方法です。 唾液で検査はできないのでしょうか。 そのようなに喉からではなく、唾液のサンプルで検査する方法を聞いたのですが。

そうですね。そのような論文が数個出ています。これも、勿論PCR検査をベースにしています。PCR検査が基本中基本です。

ラボで検査されるのですか?

ラボでの検査が必要です。しかし、やはり、このような咽頭からサンプルをとる、という面倒な方法をとるのはどうだろうか、という検討はあって、、、そこにはいくつかの理由があるのですが、リスナーのなかには、既に、鼻咽頭でサンプルをとった事がある人もいるかと思いますが、鼻の奥にまでスワブを入れるのでとても痛いのです。涙が出てきます。これを聞いている医師の方々は、鼻咽頭でのサンプル採取でのミスがおこりやすいのは承知の事実かと思います。咽頭までいくところが、鼻の穴前方部分を擦っていただけ、という事はよくあるミスです。このように、サンプルをとるのはとても面倒です。 もう一つ別の理由は、採取の際に使うスワブも消耗品ですから、お金がかかるだけではなく、、、安いものではありません、、、品薄になって供給が難しくなる場合もあるのです。 マスクと同様に、スワブも足りなくなってきています。このような理由からも、研究チームが色々と試験してみたのです。 唾液はどうだろうか、と。唾液の検査、というものは、呼吸器系の病気ではあまりされないことです。しかし、ここでは、基本的なところでの疑問、このウィルスではどのような反応が出るのか、というところの調査をしたのですが、驚くほど良い結果が出ています。 3つ論文があって、それぞれ違うベースで調査されていますが、結果は大体一致しています。 例えば、アメリカの研究チームでは、44人中38人に、良い反応が出ています。常に、患者からは咽頭からのサンプルと唾液を同時にとりましたが、ここでは、咽頭サンプルのほうが偽陰性反応が出ています。 対象患者はもう既に陽性が確認されている人達ですので、陽性である事は明らかなのですが、咽頭では、21%、5分の1が偽陰性、唾液では、8%偽陰性反応がでました。

これは、サンプルがきちんととられなかった事が原因なのでしょうか。それともウィルス濃度が足りなかったのでしょうか。

そこの追求をしなければいけません。各箇所の原因は何か。これは、ひとつひとつの原因ではなく、いくつかの要因のコンビネーションでしょう。 咽頭からの採取が容易ではない事もあるからです。ここでのミスもあると思います。それに比べると、唾液の採取は簡単です。 そのような原因があったと思われます。
他の論文はタイのものです。こちらの方法は違います。200人、通院してきた患者で検査したところ、実際には21人の陽性患者がいました。 そこで、2つのサンプルをコンビネーションする方法、咽頭と鼻咽頭の両方から採取したもので検査したところ、19人に陽性反応が出ました。2人誤結果だったわけですね。次に唾液で検査したところ、18人に陽性反応がでました。3人に反応が出なかったわけです。この結果からは、唾液検査のほうが感度が低い、という印象受けるかもしれませんが、コンビネーションした検査方法では、2つサンプルを取っていますから、1つしかない唾液よりも確率が高くなるのは当たり前です。 それよりも、唾液での結果の安定さと感度に良い意味で驚いています。  
もう一つは、トロントの論文で、ここでも似たような結果が出ています。しかし、ここでは時間的な制限があります。比較的大人数で調査が行われ、発病1週間目の患者で、両方の検査が行われ、11人に陽性反応がでて、咽頭での検査で2人、唾液では陽性反応が出なかった人が出ています。そして、唾液検査でも、咽頭では陽性にならなかった人が1人でました。 ここでも、同じような感度、唾液のほうが若干感度は低いかもしれません。 それから、2週間目も患者での検査です。この論文の良いところは、この(週ごとの)分離がされているところですが、発症から8〜14日目までの患者では、13人が、両方で陽性、5人が、咽頭のみで陽性、4人、唾液のみで陽性でした。3週間目からは、咽頭のほうが感度が高かった。ここからいえることは、もし、実際にスワブが手に入らなくなった場合に、唾液での検査は十分に使える方法だろう、という事です。

現在の検査容量の補足的に、という事ですね。

臨床での補足的な役割ですね。今後、もっと更に研究が重ねられたら、代替にもなる可能性もあるでしょうけれど、私は、患者の診断時ではなく、治験者などでの調査時にはこの方法のほうが適しているのではないか、と感じます。検査キット送り、唾を入れてください、といった方法のほうが良いでしょう。簡単でミスがないですから。

この他に、ウィルスを直接検出する方法ではなく、免疫を確認する方法があります。この場でも何度も取り上げてきましたが、今後日常で重要になってくるだろうと思われます。抗体検査です。例えば、金曜日の午後、、、私の感覚では、いつも病気になるのは火曜日ではなくて金曜日の午後ような気がするのですが、、、金曜日に喉が少しだけ痛くなって、週末に症状が少し進んだとします。月曜日は、数えて4日目です。検査キットまだ手に入れていません。ウィルスの検出は1週間目が一番良くて、2週間目からあまり良くなくなっていきますが、ここで、抗体テストが役に立ちますか? それとも、そんなにはやくは抗体は確認できないのでしょうか。

そんなにはやくは無理です。 1週間目は、PCRしか頼るものはありません。2週間目になってやっと抗体が出来始めてきます。2週間目に出来始めて、3週間目には確かになります。先程のシチュエーションは、プライベートな家族内での話でしたが、もう一つ別のシチュエーションがあります。病院です。患者が、自宅で既にかなりの症状が出た後で病院にやってきた場合、悪化して息をするのが困難になって来院するのですけれど、そのような場合には大体2週間目の半ばくらいです。 もう、病院では、この時期に咽頭でのPCR検査をして陰性反応がでても、陽性ではない、という証拠にはならない事は皆わかっています。 新型コロナ感染していない、という診断結果にはならない、ということですね。 この時期のPCR検査で断定できないことは、もう既に医療関係者の間では常識になっています。
では、どうすればいいのか。 頻繁には、CTをとり、典型的な肺の炎症状態から判断する、という方法がとられています。その地域で既に感染者が出ている場合は特にその方法で、Covid19感染症だと診断します。PCRで陽性反応が出ていなくても、です。その後で、肺分泌物を検査すると、PCRでも陽性反応が出ます。  病院での初診の際に、判断する情報が少ない、という事は多々あります。今、どのラボでも抗体検査は広範囲でできるようになっていますので、PCRをする際に同時に抗体も検査する、という事もできます。どちらにしても、採血する訳ですから。PCRと抗体検査がお互いに補いあう、という事です。この方法では、2つ、説得力ある確認が出来、CTをとらなくても診断する事ができるのです。しかし、実際には、病院に来る患者は、肺の状態がかなり悪化しているから来院するわけで、、、肺の状態をみなければいけない場合がほとんどでしょう。

3つの診断方法がある、という事ですね。 しかし、病院から退院する際ですが、抗体検査の特異性はあまり高くなく、他の抗体に反応してしまいますが、、、どうでしょうか。

この事に関しては、新しい情報はありませんが、少しまとめると、、抗体検査での偽陽性反応が出る理由はいくつかあります。まず、純粋に技術的な原因。今のところ、1〜0、5%だと言われています。これは、血液バンクでの調査の結果です。献血する人のなかには病気の人はいませんし、少し前に病気だった人も献血できないので健康な人たちの集団です。そこ血清を使った調査で出たのが、1%の偽陽性反応です。1〜0、5%ですね。 しかし、他の問題もあります。 風邪のシーズン、そして風邪のシーズン後も、風邪は一年中ありますから、そのなかで、普通の風邪コロナウィルスにかかる事もありえます。 普通のコロナウィルスも、はやく出来る抗体とその後に出来る抗体があって、初期に出来る、IgA と、IgMは、貪欲な抗体で、きっちりとはまるところはないものの、付着しやすい。

ウィルスに、ですね。

そうです。ひとつひとつの部位にははまらないので、親和性は高くありません。この抗体は特異性結合があまりない代わりに、多くの結合部持っていて、ウィルスにくっつきます。この特性が、他のウィルスにも付着してしまう原因になるのです。この場合は、親戚にあたるウィルス、Sars-Covid-2です。 言い方変えると、、、風邪コロナウィルス感染していた人の抗体は、Sars-Covid-2ウィルスにも付着するので、それが偽陽性反応として出てしまうのです。 これは、風邪シーズンの後にはかなり頻繁に起こる事です。この抗体は、6週間後にはなくなります。5週間か7週間か、というところでこだわらないでくださいね、大体目安、です。大学では、学生に、IgM抗体が存在する期間は、四旬節、絶食期間同じ、と教えています。覚えやすいと思います。長い間残るのは、IgG抗体のほうで、こちらは特異性があり特異的結合をします。

日常に置き換えると、新型コロナに感染したのではないか、という疑惑があって、でも、PCR検査はしなかった。その後、抗体検査をする。そこでの陽性反応が、偽陽性である可能性がある、という事ですよね。その結果信じて喘息持ちの叔母さんのところ行くのは危険です。 しかし、長く待ってから抗体検査をすれば、、、偽陽性な確率を下げる事が出来る、という事でしょうか。

うーん、学術的にはそう言えるかもしれませんが、日常では、そうはいかないでしょうね。多くの抗体検査キットには、IgMなのか、IgGなのか、という明記がされていません。医師の解釈もそれぞれでしょう。 私がこの事を重要だ、と感じるのは、今までこの場でお話ししてきた抗体の論文でも、この点が配慮されていない場合も多いのです。 つまり、今、行われている抗体調査でも、必ず偽陽性の割合というものは入っているのです。これを常に結果から引かなければいけません。

週の頭に、大きな見出しで、スイスの製薬会社、ロシュの新しい抗体検査が発表されました。保険相が、大量にドイツで使用する意向を示しています。開発元は、この抗体検査は、いままでの抗体検査比べると比較できないくらい高い感度と精度である、と言っていますが、どこが特別なのでしょうか。それとも、他のものとあまり変わりませんか。

まず、、、この製薬会社はドイツにもあります。現在のシチュエーションでは、広報的にも、ドイツの産業のアピールをしなければいけない、という背景あるでしょう。この会社他にも、ドイツにはとても良い検査をつくっているところがありますし、もうかなり前からラボで使われています。 クオリティ的には同じくらい良いものだと確信しています。 その他にも少なくとも2つ違う会社から新しい検査キットがロシュ同時に市場に出てくるはずです。 数値での比較は難しいのですが、、、私達のラボでも、様々な検査を比較はしています。 まだ、試験は始まったばかりで、開発元が提供する検証データの規模もまだ大きくはありません。 今の時点では、違う感染症、例えば肝炎などで抗体検査のようなデータは集まっていないのです。そこまでにはまだ長い道のりです。
そうは言っても、開発している会社は全てかなり高い技術持っている会社ばかりですから、とんでもないハズレがある、ということは考えられません。現実のものとの比較をするのはあまり好きではなく、若干大袈裟になる事はわかっていますが、、、例えば、70年代の車は、2年後にはかなり錆びついていましたが、今はそのような事はないですよね。根本的なところでの最低品質基準が変わったのです。それと同じように、製薬部門でも、品質への信頼ベースはあります。ラボとして、どれを買ったらいいのか、という質問には、私は、どれも良いはずだ、と答えるでしょう。今、公の関心も高く、メディアも保険相も、それに応えるべく意欲的な意思表示をしなければいけないことから生じている競争だと思います。

リスナーから、個人のケースについてメールも届きますが、このポッドキャストでは取り上げる事は出来ません。しかし、時々、それらの話が一定の方向に向いていることがあり、それらは取り上げる事ができるかと思うのですが、、、質問は、、、抗体がなくても免疫がある人、というのはいるのでしょうか。例えば、リスナー1人で、新型コロナの典型的な症状が出て、PCR検査をしたら陽性だった。数週間に抗体検査をしたら陰性だった。感染していたのに、免疫ができていないのか、とショック受けているといいます。抗体反応はなくても、免疫はできている、という事はありますか。

そのようなケースは、医師からの相談のなかでもありましたから知っています。このような事はあります。このような場合は、常に、反対の質問をしなければいけません。 PCR検査の結果は確かだったのか。たまに、PCR検査したけれど、結果出なかった、という話も聞きます。大体が無症状場合ですが、採取する際にミスがなかったとしたら、、、どこか、診療所からラボで開封される間に何かあったのか、なんらかの理由で、偽陽性反応が出る場合があります。実際には、感染していないのに、そのような反応がでる。 しかし、これは本当にレアなケースです。
これよりも、もっとレアなのは、実際に陽性で完治したのちに、抗体検査で陰性が出る、というケースです。 ここでは、2つのバリエーションがあって、一つ目は、待つのが長すぎた、というものですが、これは、今現在ではあり得ません。一番初めの感染者が1月ですから。しかし、なかには、かなりはやく抗体が検出されなくなるケースはあります。この場合は、ラボで(抗原検査は)陽性だったのに、抗体で陰性、というものですが、これは免疫がなくなった、という証明にはなりません。というのも、免疫は抗体のみでつくられる訳ではないからです。抗体は言ってみれば、細胞免疫の背景的な目盛りです。勿論、抗ウィルスの働きはします。特に専門家のため念のため言っておきます。ドロステンが間違った事を言っていた、という事になってはいけませんので。勿論、そのような働きはするのですが、抗体検査で陰性反応が出たとしても、免疫がなくなった、ということにはなりません。 かなりはやい段階で、抗体が検出されなくなる人もいますし、ラボで検出可能な抗体そのものができない人もなかにはいるのです。とても稀ですが、存在しますし経験しています。私がかなり研究経験がある、Sarsウィルスでもいましたし、Mersウィルスでもいました。これらの患者が持っていた抗体は、別なもので、ウィルスの別な場所に作用する抗体です。この抗体を調べる検査方法、というものもありますから、診療所で偽陽性の可能性を疑うケースがあれば、法的な理由で血清は一定期間保管されているでしょうから、その血清をラボに送って再度この方法で調べてもらう、ということは可能です。患者も医師に相談すれば、そのような検査を申請できます。

検査について、全体的見渡すと、PCRの検査方法、抗体検査などは、絞った検査には大変意味がありますが、広範囲でスクリーニングでは、偽陰性、偽陽性が出る確率が高いのではないでしょうか。

今の質問で指摘されている点は、反応適中度の問題点でしょうね。これは、コホートの調査の際にも、スクリーニング調査でも、個人の検査の際にもあります。どんな検査にも、偽陽性反応というものはでる可能性はあります。実際感染者数が多くなれば多くなるほど、この偽陽性確率、というものは低くなります。それと同時に、陽性反応適中度が高くなるわけですが、今現在の時点でのまだそこまで感染が蔓延していなく、しかも、対策によって感染の抑圧がされて、新しい感染もあまりない状況では、検査ででる陽性反応が偽陽性である確率、というものは、感染濃度が高く全体的に感染している確率が高い地域よりも、高くなるのです。 これは確率の問題です。

ということは、広範囲でのスクリーニングは今時点ではあまり意味がない、ということでしょうか。

大々的なスクリーニング、例えば、今行われている全体の抗体率などの調査は重要です。 しかし、注意は必要です。このような検査をした際に出てくる陽性反応を、診断としての陽性としてみるのではなく、シグナル、反応度としてみる事が重要でしょう。そこから、診断をする場合は、勿論、違う検査、抗原検査などやほかの検査で確認する必要があります。
ここで、説明した事がある思いますが、中和検査がそのような場合に適していて、エライザテストの結果確認に使います。陽性確率は低く、1000人検査して15人くらいでしょう。この15ケースを中和検査で再度検査します。この検査は手間がかかります。このためには、技師が防護服着て、S3ラボで、感染性があるウィルス使った細胞培養をしなければいけませんが、現在、検査量が多くないので可能です。 感染者が増えて、検査量が多くなれば、、、難しいと思いますが、その場合には、反応適中度も上がるわけですから、結局は、偽陽性率も低くなるのです。

統計的な数値は変化する、ということですね。 最後に、、、ここで、「私はウィルス学者である前に、ひとりの人間であって、逃避すこともある」と。リスナー質問通じてお聞きしたのですが、研究所での1日が終わり、希望が見える結果もあれば、失望する事もあるでしょうけれど、、、、コップは半分入っていますか。それとも、半分空ですか。

複雑な状況です。もう何度も言ったかもしれませんが、ドイツは例外的な非常に恵まれているシチュエーションなのです。多くの事を成し遂げてきました。 メディアが対立するような伝え方をするほど、私は批判的ではありません。良い状態であるとみています。政治的な決断に関しても、多くの点では賛同できます、勿論、学者として純粋に科学的にみた際には、もう少し緩和する前に抑え込んで欲しかった、という気持ちはあります。全体的にみて、ドイツの対策は悪くないでしょう。  しかし、今後、そして地域的にみていくと、そうでもありません。これは、私個人の意見ではなく、また学者としてですが、なんとか、夏を乗り切ったして、その後の秋に何も準備が出来ていなければ、、、ハイリスク守るための治療薬などですね、そのときに、ワクチンがその時に突然出来ている、、というのは常識的に考えてありえませんので、、、冬に波が来るでしょう。 この心配をしています。 後は、、、これは、メディアでしか情報が入りませんが、グローバルにみて南の方の事です。例えば、インドのニュースが入ってきていますが、日々増え続ける死者数は膨大な数です。そして、その背景にある脱落率はかなりでしょう。 現実的に接触制限は困難です。 しようとしても、インドに行った事がある人はわかると思いますが、どの位それが難しいか、ということは容易に想像できると思います。同じようなことがブラジルでもおこっています。公には、他の諸国と同じように、接触対策が打ち立てられていますが、実行されているのかどうか。それと同時に発表される莫大な死亡者数です。初めの死者から感染を止めるまで、、どの位かかるか、ということは、フランスをみてもイタリアみてもよくわかると思いますから、、、 これに関しては、全く楽観的にはなれません。そして、アメリカ関しても、楽観的にはみれません。CDCが発表したモデル計算がニューヨークタイムズ掲載されていましたが、そこには、5月末までに、22万5千人の新規感染者を予測しています。そして、1日で3000人の死者です。学者としては、この数をみると反射的に、このままじゃいけない、速攻に何か対策打たなければ!と思いますし、実際に手を打たなければいけないのです。 このようなモデル計算をするならば、近い将来の予測と論理的に結論を考慮した決断をしていかなければいけないでしょう。 しかし、新聞には、、、私は新聞しか読まないのですが、、、そこには、全く反対の方向に進んでいる内容が書いてあります。政府は、緩和ばかりを決行している。 アメリカはドイツとは比べものにならない状況なのに関わらず、です。

今後も、治療薬などの研究の成果期待したいです。パンデミックのなかで、、ドイツの視点からだけではなく、ドイツ以外にも視野を広げるべきですね。 パンデミックは世界的な問題ですから。今日もありがとうございました。

ベルリンシャリテ
ウィルス研究所 教授 クリスチアン・ドロステン

https://virologie-ccm.charite.de/en/metas/person_detail/person/address_detail/drosten/

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