ドイツ@Sars-CoV-2 コロナウィルスアップデート(104)  2021/11/30(和訳)

フランクフルト大学病院 ウィルス学教授、サンドラ・チーゼック
聞き手 コリーナ・へニッヒ


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50以上の変異をオミクロンは持っています。そのうちの31がスパイクタンパク質にあるようですが、これが何を意味するのか、というところがメディアでも持ちきりです。しかし、変異の数が重要なのではなくて、どの部分の変異なのか、そこで意味合いも変わってきます。どこの場所がどのような影響を及ぼすのか。 ヨーロッパの3分の1の諸国でもうすでにオミクロンは発見されていますが、確実なケースは42件です。この変異株について何がわかっているのか、ということ、そして何がまだわからないのか。新しい変異株について、今日はフランクフルト大学病院ウィルス学教授、サンドラ・チーゼック先生に通常のサイクル以外で特別にお時間をいただいています。

チーゼック先生、金曜日に始めてオミクロンの情報が発表されましたが、全てがあっという間のことでした。先生は、国際空港があるフランクフルトの研究所にもいらっしゃいますので、いままでにもたくさんの変異株を調査してきていると思います。先週末、今週はどのような感じだったのでしょうか?先生も先生のチームも大変だったと思うのですが、そこから何がみてきたのかお話していただけますか?

そうですね。ここ数日は大変混乱していた、と言えるでしょうか。金曜日に報告があって、、その直後にすぐ連絡が入って、疑わしい第一件がでてきました。フランクフルト空港の到着スケジュールをみてみても、朝にも1時間の間に1000人以上の南アフリカから到着する日もありますから、全員をすぐに検査する、ということは不可能ですし、検査をされたい、と思う人もいないでしょう。検査義務はかなりはやくだされ、土曜日の0時にはもう明確になっていましたが、その前の金曜日から土曜日にかけてが大変でした。大変リスキーな状態だ、ということがわかってから、保健省はすぐにコントロールを始めようとしたのですが、搭乗者たちも勿論、自分の権利を主張しますし、0時まではそのような権限がない、ということもわかっていましたので。それでも、検査の協力を促して隔離をしてもらえるようにたのみこんだのですが、大変困難でした。協力体制にいない人たちを説得するのに一所懸命だった保健所の係員たちは本当に気の毒だったと思います。1便は念入りにPCRと抗原検査で調査されましたが、ここで陽性反応がでれば、それを変異分析にかけ、PCR、そしてシークエンジングです。大変手間がかかる作業ですので、通常の週末とは比べ物にならないくらい忙しかったです。通常であれば、週末には、一人か二人のスタッフがラボで働いていますが、過程ごとに一人必要ですから、一人がPCRをして、もう一人がシークエンジングをして、もう一人が変異分析をして、もう一人が分離する。ウィルスを分離するのはそこから培養しさらなる知見を得るためです。そのような作業をしなければいけませんでしたので、週末は大変な状態だったのです。

ということは、先生もずっと空港で仕事をされていた、ということですね。新しい検疫規定になってから、どのようなことが行われたのでしょうか?検査は、誰が対象でしたか?

幸いなことに私自身は空港に出向く必要はありませんでした。検体がラボに運ばれてきましたが、空港では保健所と同僚がやってくれていました。土曜日の0時までは状況を把握するために全ての便を調べましたが、土曜日の0時からは24時間以内のPCR陰性証明がないと搭乗することができなくなりましたので、だいぶ落ち着きましたが。

先ほど、変異PCR、ということを仰っていましたが、以前のポッドキャストでもそれについては取り上げています。アルファ株の時でした。もう一度、短くご説明いただけますか?まず、検体がラボに送られてきますね。それが陽性になったら、ここからオミクロンかどうか、ということはどのようにわかるのでしょうか?

そのためには、キー変異部分をみます。私の大学病院では全ての分離の後にそれを行いますが、新しく診断されたケースは全てPCRで調査されます。先週までは全てデルタ株でした。オミクロンでは、 69/70での欠失がみられ、これはデルタにはありませんが、アルファにはあったものです。つまり、イギリス株にはあったものなので、過去のサンプルと比較することができます。これは1回のPCRだけでできることではなくて何回もしなければいけません。私たちのラボでは、トータルでキー変異のPCRを5回して、この変異株がデルタではないこと、全く新しい変異株であることを特定したのです。ここからオミクロンが発生している国からの渡航者との関係性が疑われますが、ゲノム解析で第一のケースが確認できました。

疑わしいケースが7件あったようですが、結果は次の日に出るものなのでしょうか?

そうです。結果は多分全員確実でしょう。これは私の予測ですが、このケースは全てはっきりとした濃厚接触があったケースですし、いままでフランクフルトでは、直接アフリカから渡航した、もしくはアフリカからの帰国者との接触があった場合のみオミクロンが確認されています。しかし、今日、たしか、ライプチヒだったと思いますが、そうではないケースが一件みつかったはずです。つまり、渡航歴がない人から発見された、ということです。勿論、その周辺をよく調査しなければいけません。どこからはいってきて、どのようにライプチヒに拡がったのか、ということです。

スコットランドでもいくつもみつかっています。ECDC(European Center for Disease Prevention in Control)は、ヨーロッパで10カ国で42ケース発見された、と発表しました。先ほどのスコットランドのケースは、渡航歴がないもの、少なくとも現時点では不明です。ザクセンの例もありますが、これはどのいうことなのでしょうか?もうすでにヨーロッパでもかなり拡がってしまっている、ということでしょうか?

そうかもしれません。しかし、もう少ししっかりとみていかなければいけないことです。例えば、ライプチヒのケースはタクシードライバーですから、空港からのゲストを乗せれば別に自らアフリカに行っていなくても感染する可能性はあります。詳しい情報はわかりませんが、渡航歴がなくても感染する可能性はありますし、必ずしももうすでにドイツ国内に拡大している、とは限りません。先ほども言いましたが、それまでの週では私たちのラボには入ってきていませんでした。私たちはゲノム解析もしていますので、そのあたりの把握はしています。スコットランドにおいては、大きなクラスターだった可能性もありますので、もう少し調査が必要だと思います。何が原因で感染が起こったのか。そしてどこで起こったのか。ただし、そこまで広く拡がってはいないものだと思われます。私たちもいままでみたことがなかった変異株ですが、金曜日から土曜日にかけて到着した便では、陽性者は全てこの変異株での感染だと思います。アムステルダムの便でもそうでしたので。そこでは、たしか、13名がこの変異株で感染していました。しかし、南アフリカでは広範囲で拡がっているものとみられます。オランダの13名、というのはかなり多い数だと思いますが、私は、トータルでどのくらいの便数だったのか、ということはわかりません。1便だったのか、それとも異なる何便ものなかからだったのか。それにしても少なくはない数です。

南アフリカでこんなにはやく発見されたのは、南アフリカでは念入りに調べているからですよね。スクリーニング検査の徹底度はアフリカでもヨーロッパでも国よってかなりの差があります。先生は、ヨーロッパでのスクリーニングは十分だとお考えですか?

とても重要なポイントですね。私は十分ではない、と考えています。この変異株が必然的に南アフリカから発生した、とは断言できませんし、ジンバブエから帰国した人もこの変異に感染している疑いが持たれています。アフリカで明らかに拡大しているのは確かだとは思います。検査の数も少ないので発見されずに拡がっているのでしょう。特に中央アフリカでは検査数もスクリーニングも少ないです。ですから、そこから南アフリカに持ち込まれた、ということも大いにあり得ることです。

PCR検査だけをして搭乗した際にどのくらいの見落としが起こると思われますか?

あまり多くないことを願います。勿論、常に難しい問題です。PCRがきちんとおこなわれた、つまり、しっかり鼻の奥から、喉の奥からとられたのであれば、搭乗するまでの12時間、24時間は信頼できる結果がでていると考えます。しかし、ここでも100%ではありません。PCRの感度が100%ではないことはわかっていることですが、それよりも良い方法はありません。土曜日から入国する渡航者は、隔離され監視されます。その間にもし感染したのであれば勿論変異株かどうかの調査も行われことになります。

変異株の監視、という面では、ドイツでのシークエンジングは十分に行われているのでしょうか?

全てをスクリーニングする必要はありません。現在、ドイツでは比較的多くシークエンジングされていますが、他にも変異PCR、つまり変異株に適応したPCRがありますのでかなりはやく特定することが可能です。来週にでも、オミクロン専用のPCRができますから、いままでデルタでやってきたと同じように大きなラボでの検体を全てのこの方法で検査し、変異のスクリーニングをすればドイツ国内での状態、どのくらい拡がっているのか、という把握ができると思います。

少し、この変異株をみていきたく思います。スパイクタンパク質に30以上の変異があり、そのなかには人間の細胞へ結合する際に重要な部分も含まれます。ここですべての場所をあげることは混乱するので避けますが、少し重要なところだけをピックアップしていただけますか? 研究者が頭を抱えている部分、例えば、別の変異株からわかっている部分の変異などですが。

まず、全体のゲノムでは50の変異があり、そのなかにはいままでにもあった部分の変異も含まれます。先ほど、69/70の欠失があげられましたが、これはイギリスから来たアルファ株にもみられる変異です。その他には、501ポジションの変異で、これはデルタにはありませんが、アルファ、ベータとガンマにはあるものです。さらに、いわゆる免疫回避変異が2つ、417と484です。これによって、免疫システム、抗体の中和能力に影響があることがわかっています。この417変異は、ベータとガンマにもみられますが、484は単純に別のアミノ酸との変異である、と言っておきます。少なくともポジション的にはそうです。その他には、フーリン切断部であるP681H、これはアルファとデルタにもみられるもので、ここが感染伝播と感染が起こりやすくなる部分だと考えられています。その他の多くの変異に関しては、まだそれが何を意味しているのか、ということははっきりしません。

以前のポッドキャストでどのように変異ができるのか、ということについてはとりあげましたが、そのなかでもリスキーなのは、免疫不全の人が感染した場合です。というのも、これが大きな進化飛躍、つまり様々な変異が同時に起こりやすい環境であるからです。オミクロンがどのようにできたのか、ということに関しては様々な憶測がされていますが、アフリカである、という説もあります。その理由の一つに、HIV感染者の数が多い、ということがあげられていますが、そのような可能性はあるのでしょうか?

可能性としてはありますし、免疫不全の人のなかで多くの変異を持つウィルスが発生する、ということは、すでにニュー・イングランド・ジャーナルで発表されています。ケースレポートですが。つまり、理論的には可能です。考えていかなければいけないことは、このようなウィルスがどのように次の感染に繋がって増殖し拡がっていくのか、ということです。それが一人から始まる、と想定した場合に、実際にはかなりの感染連鎖、もしくはスーパースプレッダーイベントが起こる必要があります。この辺りが問題です。つまり、これは可能でありますが、実際にそのように起こったのかどうか、ということはわかりませんし、それ以外にも別の条件が揃っていなければいけないことになります。重度の免疫不全患者、と聞くと、病院に入院していて隔離されている人を想像するかと思いますが、そこからどのように外にウィルスが漏れるのか。その辺りもはっきりしません。とにかく、理論的には可能ですが、明らかなことはわかっていないのです。

別の可能性として、実際の進化の飛躍はそこまで大きくはなくて、亜種を見逃してきただけだ、つまり、系統樹の先のほうだけみえているだけ、というものがあります。

例えば、そうですね。今日の明日にできた変異株ではなく、数週間、数ヶ月間の時を経て進化しているはずです。

パンデミックにおいて重要なポイントは3つあります。まずは、感染伝播。変異によって感染しやすくなっているのかどうか、というところ。次に、免疫回避。予防接種の後の免疫応答、もしくは感染回復後の免疫を回避するのかどうか。そして、病原性です。つまり、疾患経過が重症化するのかどうか。とりあえず、順を追ってみていきたく思います。多くの人が、今の段階ですでに感染力は上がっている、と言っていますが、それは比較的少ない感染者数であるのにも関わらず南アフリカでかなり速く拡大しているからです。しかし、確定したわけではありませんよね。

まだ、そうだ、ということはできません。11月末に南アフリカでは数週間の間に一気に優勢になっていきました。しかし、言っておかなければいけないことは、その時点ではかなり発生指数も低くほとんどウィルスが循環していなかった、ということです。現在、南アフリカでは50、急激に増加中ですが、このデータだけではまだ何も言えません。ファウンダー効果である可能性もあります。どういうことかと言うと、スーパースプレッダーイベントから拡散した可能性です。それによって感染連鎖が成功すると、低い発生指数の際にはまるでそのウィルスが優勢になってきたかのような印象を与えます。他のウィルスの循環がほとんどなかったからですね。ドイツでは全く条件が異なります。今、大変多くのデルタ株での感染が起こっていますから、はたしてオミクロンがデルタを押しやって優勢になっていくのかどうか。その辺りはこれから観察していかなければいけないことです。それとも、感染者数が少ない環境だから有利であったのか、どうかです。

いままでにも、南アフリカで広がった変異株はありましたが、ヨーロッパでは所々でみつかっても全体に拡がっていくことはありませんでした。ベータ株がそうです。ベータとオミクロンの違いは何なのでしょうか?

ここでもう一度言っておくべきことは、直接南アフリカと比較することはしてはいけない、ということです。あまりにも条件が違います。アフリカの予防接種率はかなり低いですから、予防接種者の数も少ないです。それに対して、感染を経験した人の数はかなり多いです。とにかく、現在、ほとんどデルタ株での感染はなく、ベータは最終的に優勢にはならなかったのです。というのも、免疫回避はあったものの、そこまで強くはなく、感染力も十分ではなかったためにそこまでのメリットがありませんでした。評価は常に全体のシチュエーションと社会構造を考慮してしていかなければいけません。つまり、どれだけウィルスが受け入れられる環境であるのかどうか、ということです。私は問題点は、どちらかというと、オミクロンがデルタとベータと比べて感染力がアップしているのかどうか、ということだと思います。一見、そうである、という印象はうけますが、オミクロンはその免疫回避の性質によって予防接種者に感染しやすい、それによってまたより多くの人に感染することが可能になったために、感染力が増して伝播しやすくなっているような印象を与えている可能性もあるからです。単に、免疫が回避されてまた多くの人が感染するようになった、という可能性です。

常に様々な因子が関係してくる、ということですね。先生は、免疫回避、というところが、重要なポイントである、とお考えのようですが、たしかに他の変異株に比べるとよりはっきりとした免疫回避を持っています。しかし、ここで、感染回復者と予防接種者の違いもあるのではないでしょうか?南アフリカの例をとっても、ですが、アフリカでは大変多くの人が感染しました。そして、予防接種率は低いです。たしか、25%ほどだったと思います

免疫回避、というところが今のところ一番明確な変異であるのは、今までの変異の経験からも言えることなのです。しかし、これはまた全く新しいウィルスゲノムですし、変異同士の影響もみていかなければいけません。いままでの、VOCにはそこまでの免疫回避はありませんでした。あまり強くはなかったのです。私が懸念するのは、今回の変異株の場合はそうではない、ということ。それは、変異のコンビネーションでわかります。この変異株には予防接種をしていても感染すること。症状がでることもあること。それは、もうすでに観察されているケースでわかっていることで、ワクチンも全てのワクチンに当てはまります。どれか一つのワクチンがそうである、というのではなく、現在市場に出ているワクチン全て、です。そして、残念ながらモノクロナール抗体、現在好んで使われる治療薬にも影響があります。というのも、これも特定の変異部分には効果がないことがわかっていますし、再感染も可能です。それは南アフリカでも観察されています。どの程度か、ということはまだわかりませんし、アフリカの環境があまりにも異なるために比較もできません。両方の可能性はある、と言っておきます。

予防接種と感染に関しては、このフランクフルトでの8件、1件の確定ケースと7件の疑惑ですが、全員、2回の接種をしていましたよね?

全員、予防接種者としてのステータスを持っていた、と言っておきます。それがなければ搭乗できていなかったと思うので。予防接種をしていないと旅行にいけない、ということだったと思います。

この場でも何回もブースターについて取り上げてきましたが、免疫回避、というよりもワクチン効果の低下という可能性はないのでしょうか?つまり、抗体の数が少なくなっているだけで、ブースターを打てばオミクロンにも対抗できる、ということはありませんか?

今の時点ではなんとも言えません。私は現時点ではそうではないのではないか、と思っていて、というのも、オミクロンでかなり免疫回避の強化がされているからです。ブースターを打っても効果が十分に得られない可能性もあります。とはいっても、抗体応答だけが全てではありません。T細胞、T細胞免疫というものあり、私はそちらのほうにあまり影響がないように願っています。これらの免疫はそこまで変異に影響されませんので、少なくとも重症化を防ぐことができれば、もし感染してしまったとしても大事には至りません。とはいっても、まだまだはっきりしたことはわかりません。残念なことではありますが。

勿論、3つめのポイント、病原性も重要です。いままでの報告からみると、傾向はどちらかというと、軽症、いままでオミクロンに感染した人たちの症状が軽かった、ということが言われています。しかし、これもそこまではっきりとはわからなく、常に誰が感染したのか、どのようなリスクプロフィールがあったのか、どのような基礎疾患があったのか、ということも重要ですよね?

この点もまだはっきりしません。もう一つ、免疫回避について言っておきたいことがあるのですが、、というのも、これにはかなりネガティブな響きがあるからです。しかし、2つ良いニュースがあります。まず、1つ目の良いニュースは、ポロテアーゼとポリメラーゼにおいてはウィルスゲノムの変異が一つづつである、ということ。それによって、治療薬パクスロビドとモルヌピラビルが攻撃するところには影響が少ない、と考えられます。ここからも、治療薬の開発も大変重要である、ということは明らかです。これらはスパイクタンパク質だけに特化しているものではないので、そこまで影響をうけません。もう一つの良いニュースは、mRNAのワクチン技術によって比較的はやくワクチンを改善することが可能だ、ということです。mRNAワクチンの製造会社はもうすでにその調整を行なっている、と発表しています。この2つは朗報だと思います。つまり、全くふりだしに戻った、とかそういうことではなくて、治療薬と改良されたmRNAワクチンがある、ということです。

はやく、とはいっても、それが製造されて出荷されて予防接種がされるまでには時間がかかります。数ヶ月はかかるのではないでしょうか?

たしかにそうです。その前に、本当に調整されたワクチンが必要なのか、というところも見ていく必要もあります。順を追って、ということですね。勿論、全て並行して行われていますし、製薬会社も、必要性も並行して検討していく、と言っています。とにかく全て迅速に行われていますが、たしかに、今日の明日でできるものではないことは確かです。

病原性についてですが、問題は誰にどのくらいリスクがあるか、というところだと思います。現時点では難しい問題ですが、いままででは、、少なくともドイツ国内で感染ケースは、予防接種をした若い世代です。アフリカはどちらにしても平均年齢が低いですが。

社会構造の比較はドイツとはできません。勿論、年齢層がずっと若いです。ドイツの年齢層の分布とは異なりますのでそこからはなんとも言えません。正直なところ、データからもまだ何も言えません。軽症だ、と書いてあるレポートもあれば、重症だ、というレポートもある上に、そもそもドイツに置き換えて考えることはできないですし、事例だけをみていっても判断は困難です。参考にできるデータは、例えば、患者の年齢、予防接種状態、症状の把握などが揃うまでには数週間、数ヶ月かかると思います。今の時点では説得力のある答えは出せません。まだ全てがオープンである、といえるでしょう。軽く考えることも間違っていますし、パニックになる必要もありませんが、どちらにしてもまだ答えはでていないのです。

理論的には、それでもその方向性がある、という可能性はありますよね。つまり、病原性は弱まり感染力があがった、など。

その可能性はありますね。結局同じことですから。とにかく、今の時点ではわからないので、これから十分な感染ケースを観察していくしか方法がありません。そして、忘れてはいけないことは、今観察されているケースは1週間前に罹患したわけですから、もし重症化するのではれば2週間目からである、ということです。どちらにしても祈りながら待つ他に方法はありません。

今後の研究はどのようにされることになるのでしょうか?今、様々なところで知見を集めるのに必死になっています。実際の感染ケースの観察以外にも、ウィルスを分離することでできる実験もあると思うのですが、そのような結果がどの位速くどこからでてくると思われますか?

私たちもいわゆる分離ウィルスを待っているところですが、そこから培養をしてウィルスを生産していかなければいけません。勿論これはハイセーフティレベルのラボで行われますが、ここから例えば、予防接種をした人の血清など使った実験もできます。全てのワクチンに対して、です。もしくは、回復者との比較で、より感染時に中和能力があるのかどうか。それをデルタ、もしくは野生株で比べる。これによって少なくとも比較的はやくどのように中和されるのか、どの程度の免疫回避であるのか、ということがわかってきます。モノクロナール抗体のような治療薬での実験もできるでしょう。全て、数週間かかる作業です。その結果は発表するつもりはないものの、プレプリントで数週間後にはデータを出す予定です。病原性の試験は実際の感染者で行われ、どのくらいの疾患重度なのか、デルタとくらべて多いのか、少ないのか。その辺りがはっきりするのは多分数ヶ月後だと思います。勿論、動物実験でも、どうしてこの変異株がいままでのものとは違うのか、という点をはっきりさせれるかもしれませんが、とにかく数ヶ月かかる話です。

これは、感染伝播に関しての、ということですね。

例えばそうですね。

まとめると、、はっきりしたことはまだわからない、ということですね。今、みえている兆しはあるものの、ただそのような印象があるだけです。南アフリカをサポートすることも重要ですよね?

勿論です。南アフリカだけではなくて、アフリカ全体のサポートが必要です。今、南アフリカだけにフォーカスするのは間違っていると思います。南アフリカはアフリカのなかで一番設備が整っている国です。他のアフリカ諸国では全然違う状況でしょう。常に言っていたことですが、ワクチンが公平に行き渡らなければ、免疫回避型の変異株が発生する可能性も高くなるわけですから、このような国々を援助していかなければいけないのです。残念ながら、今回のオミクロンでそれがさらにあきらかになったような気がします。

研究のサポートも引き続きされていくべきですよね。南アフリカの疫学者、デオリベイラ氏がツイッターで警告してましたが、渡航制限でスクリーニングに不可欠であるラボでの素材等が十分に供給されなくなっている、と。

これらの国を隔離して見放すわけにはいけません。それは大きな過ちです。制御しつつやっていくべきです。サファリ旅行とビジネス出張とは全く目的が違います。必需品を運ぶ人、荷物の発送などは必要ですし、少なくともフランクフルトではこのような国への便は再開されています。オミクロン株が可能なかぎり遅くドイツで拡がるようにするために、ブレーキをかけるため最善をつくしかありません。現時点ではデルタ株による感染の波が起こっていますが、それでも他の国を忘れてしまうのではなく援助していくことが重要なのです。

今、先生は、「ブレーキをかける」とおっしゃいましたが、今、オミクロン以外にもやることが山積みになっている状態です。ワクチンアップデートの話も出ましたが、ここでもう一度ワクチンについてみていく必要があるかと思います。ワクチン不審派の人たちから、「こんなことになるんだったら、ワクチンが改良されて新しくなってから打ったほうがよいのではないか。数ヶ月かかるとしても、アップデートされたバージョンを待とう」という声も聞こえます。これは良い考えではないですよね?

ないですね。今の私たちの問題はデルタです。発生指数が大変高いですが、現在のワクチンは大変高い効果があります。待つ、ということはナンセンスです。そして、オミクロンでわかっていることが少なすぎますし、実際にそこまで拡がっていくかどうかも疑わしいですし、病原性に関してもこれからはっきりしてくるところです。ウィルスの一歩先を行くこと、つまり後から追わなくても良いようにすることは大変重要なことではありますが、だからといってそこに縛られもいけないのです。







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